北村からのメッセージ

  第113回(7月1日)修正案を了承 波乱万丈の郵政夏の陣

 郵政民営化関連法案を巡る攻防は、3日の東京都議選直後から国会が終わる8月13日までの短期決戦40日間に絞られてきました。自民党執行部は6月28日、多数決という異例の形で修正案の総務会了承を取り付け、一気呵成に同月内の衆院通過を目指しました。だが、友党の公明党が都議選前の採決に反対したため、通過は4日以降に持ち越しました。首相がサミットへ出発する5日前に衆院通過できるかどうか、最大の山場を迎えています。 
 各党が「中間選挙」と位置づける都議選の結果は、国政での郵政法案を世論がどう見ているかの目安箱。01年の前回は「小泉ブーム」の追い風で自民党は55人中53人が当選する大勝利を得ましたが、今回、仮に40議席を割り込む惨敗のケースなら、野党や法案反対勢力が勢いづき、国会は全面対決の場となります。それだけに武部勤幹事長ら執行部は、採決時の党議拘束を掛けたと主張、「造反者は総選挙で公認しない」と反対派を牽制しています。都議選で初めて競合しない選挙区での自民党候補13人を支持した公明党も、総選挙では「自民党公認以外は支援しない」と言明しました。波瀾万丈の夏の陣です。

 参院側=お盆前に成立を

 国会は55日間延長しましたが、決定するまで自民党内の調整は手間取りました。武部幹事長、中川秀直国対委員長ら衆院側幹部は、法案の修正や採決について、反対派を説得するにはなお時間が掛かると見て、8月末までの70日間延長を主張しました。これに対し、青木幹雄参院議員会長は「お盆休みに民営化反対の支持者から反発を受けると、議員は皆辛い立場になる」とし、片山虎之助幹事長や公明党の草川昭三議員会長ら参院側与党幹部と協議、「サミット前に衆院を通過すればお盆前に成立させられる」と50日の延長幅を唱え、綱引きが続きました。結局、中川委員長らは@郵政民営化特別委の採決は3日投票の都議選前後の7月前半を軸とするA衆院本会議での採決は6〜8日に英国で開催の主要国首脳会議(グレンイーグルズ・サミット)から首相が帰国した後でも構わないB参院での審議を3週間程度と見込み、1週間の余裕を持たせて8月13日までの55日間とする――ことに決めました。これは85年に補助金一括法などを処理した中曽根内閣と、99年に中央省庁改革関連法などを成立させた小渕内閣の各々57日間にほぼ見合います。

 「修正考えず」を繰り返す

 「必要にして不可欠な期間を考え、国対として(成立に)責任を持てる判断で55日にした」――。中川国対委員長はこう記者会見で述べましたが、慎重派の参院幹部の意見を尊重することで法案成立のゲタを預け、参院側にも責任分担を図ったといえるでしょう。執行部は反対派を納得させるためにも、法案条文の修正は不可欠と判断しましたが、参院側は衆院段階で必要な修正を行ったうえで、参院に送付するよう強く求めています。しかし、片山氏が「修正は政府・与党合意をしっかりした形にしないといけない」と会期延長前に訴えたのに対し、首相は「修正は考えていない」とこれまでの主張を繰り返し強調しました。この首相の態度には、「反対派もびっくりするような大修正が必要」(高村正彦元外相)、「無条件の会期延長ではない」(小里貞利元総務長官)、「修正案は部会、政審、総務会と党議決定を経るべきだ」(亀井静香元政調会長)と各派領袖が一斉に反発しました。

 設置基準など修正は3点

 このため、与謝野馨政調会長らは政府側と水面下の折衝を重ねて修正案をまとめ、同月28日の総務会に諮りました。内容は@窓口会社の業務範囲に銀行業、生命保険業の代理業務も例示A社会・地域貢献基金は1兆円を越えて、2兆円まで積み立て可B持ち株会社が貯金、保険会社株式を完全売却後に買い戻す場合に備え、議決権が連続的に行使できるよう新会社の定款で措置C民営化の進み具合について郵政民営化委員会が3年ごとに行う『検証』を『見直し』に変更――を骨子とし、国会答弁を要求するものとしては、@郵便局設置で、都市部も含め利便性に支障がないよう配慮するA完全民営化以前でも、政府が妥当と判断すれば、窓口会社が貯金、保険など他の民営化会社の株式を持つことができるB新会社の預け入れ限度額・保険金額に関する政令改正は、新会社の意見を十分聴く――の3点です。久間章生総務会長は「議論も出尽くしたようなので修正に賛成の方は」と挙手を求め、半数以上が挙手したことを確認しました。

 三味線上手な首相

 「結党以来やってこなかった多数決をやるのはおかしい」と高村氏、藤井孝男元運輸相ら5人が反対の挙手、亀井氏は採決そのものに反対して棄権。「合同部会に差し戻せ」「執行部解任だ」「議員総会を開け」などの怒号が飛び交いました。修正案は4月末の政府・与党合意の枠内にあり、しかもさらに明確にした内容であり、修正を再三否定してきた首相も受け入れられると執行部は判断しました。それでも与謝野氏らがその前日、首相官邸で要求した修正案に対し、首相は「法案修正の考えに同調できない」と突っぱねています。それが、総務会後は手のひらを返したように「いい知恵を出してくれた。よかった。後は任せた」と上機嫌だったそうです。記者団には「国会の常識でね。修正するといえば、出し直せと、といってくるんです」と、首相の修正拒否発言が国会戦略上のポーズだったことを解説したというから、総務会の猛者連中も三味線上手な首相に一杯食わされた形です。

 都会の局は減る可能性示唆

 これに先立つ特別委では「過疎地の郵便局の維持」について質疑が集中、政府は「あまねく全国で利用されることを旨として郵便局を設置し、詳細は省令で定める」との基本姿勢を繰り返し、省令で定める過疎地の局は過疎地域自立促進特別措置法と離島・半島・山村3振興法に該当する7220局が対象になることを明示しました。しかし、首相は「都会は減る可能性が強い。不利益を被る人もいるのは否定しない」と民主党議員に答え、都市部での局統廃合を経営効率化の“原資”に想定していることを明示しました。これには都市部を選挙基盤に都議選を戦っている友党の公明党もいささか慌てました。郵貯、簡保の全国一律サービスについても、竹中平蔵郵政民営化担当相は「4段階のセーフティネット(安全網)が確保されている」とし、@郵便局をしっかり全国に設置A窓口会社と金融2社は移行期間をカバーする長期の代理店契約を締結B移行後の代理店契約も妨げないC持ち株会社に積み立てる「社会・地域貢献基金」でサービスは維持――を挙げています。

 条文修正か、付帯決議か

 これに対しても反対派は「郵貯と保険が郵便局の必須サービスであることを文言で書き込み、貢献基金は政府・与党合意文書の『最大2兆円になるまで積み立て可能』と法案に明記せよ」と迫りました。さらに党側は株式の持ち合いについて、貯金、保険の金融2社株式の「完全処分(売却)義務」を法案から外すよう求めました。だが、貯金、保険の完全分離は郵政改革の根幹だけに、政府側は「信用商売の金融、銀行、保険という特殊な業務に国が関与してはならない」と答弁、全く譲る気配はありませんでした。従って、修正を法案条文上の修正とするか、付則や付帯決議、国会答弁だけで折り合うかなど、法的にどう担保されるかを巡って政府と調整が続けられ、難航の末、最終的に修正と国会答弁に振り分けて前記の修正案が6月28日にまとめられました。地方公聴会も同日、札幌市(過疎地)、新潟県上越市(被災地)、佐賀県唐津市(離島)の3カ所で開かれ、特別委での採決環境は整いました。

 延長の議決でも欠席者

 しかし、冒頭で懸念したように、3日投票の都議選の結果次第では国会運営が難しくなり、「首相がサミットへ出発する5日前に特別委で採決、本会議可決」は至難の業で、衆院通過は帰国直後になりそうです。郵政事業懇話会(綿貫民輔会長=前衆院議長)は6月7日、「法案を葬る(108回の)除夜の鐘」よろしく、衆院79人、参院29人の計108議員を集めて総会を開き、反対の気勢を上げました。綿貫会長は野呂田芳成元農水相、亀井元政調会長とともに会期延長を議決する衆院本会議を欠席しました。綿貫氏は体調が悪いことを欠席の理由に挙げましたが、法案採決時の予行演習と見る向きもあるようです。
 前号で触れたように衆院本会議で自民党から46人の造反者が出るか、91人の欠席者が出れば法案は否決・廃案となり、首相は100%解散・総選挙を選択します。武部幹事長は「造反すれば公認しない」と宣言、各派の“造反要注意”人物を各個撃破で説得する一方、総務会の多数決承認で、党議拘束は取りつけたとして一瀉千里に成立させようとしています。野党が対決色を強める中で反対派がどう動くか。まさに正念場を迎えています。