北村からのメッセージ

  第112回(6月16日)修正が民営化の焦点 風雲急の政局

 19日に会期が切れる国会は、17日の衆院本会議で55日間の会期延長を決め、郵政民営化関連法案を巡る最終決戦に突入します。24日に東京都議選が告示され、7月3日の投票日まで国会審議は事実上『休戦』になるため、小泉首相は告示日までに同法案が衆院を通過するよう自民党執行部にハッパをかけ、これに郵政事業懇話会(綿貫民輔会長)が7日、108人を集めて総会を開き反発しました。反対派が提出した日本郵政公社改革法案に民主党が相乗りするか、民主独自の法案を提出するかの工作も密かに行われています。武部勤幹事長らは反対派の説得には何らかの法案修正が不可避と判断、懸命に水面下で政府側と折衝を重ねていますが、青木幹雄参院議員会長らは、参院送付後の修正だと、衆院に差し戻して再審議となるため、衆院段階での修正決着を主張。公明党は修正の混乱が都議選へ影響を与えないよう、投票日後の衆院通過を望んでいます。この中で郵政民営化特別委の山崎拓筆頭理事は「廃案なら100%解散・総選挙だ」とテレビで語り、強行突破の脅しを掛けています。解散なら都議選の結果次第で、「石原慎太郎都知事が石原新党を作って総選挙に出馬し、ポスト小泉を伺う」との噂が流れ、政局は風雲急を告げています。

 答弁の整合性めぐり審議中断

 今国会3度目の審議拒否を続けていた民主、社民両党は、世論の批判を恐れて6月3日から復帰、本格的な論戦に入りました。自民党反対派の野田聖子元郵政相はまず、首相が愛知万博会場内への弁当持ち込みを認めるよう指示したことに触れ、「大変見習うべき姿勢を示した」と持ち上げながらも、返す刀で「郵便局がコンビニになることが利用者にとって幸せなのか」「なぜ公社のままではいけないのか」「民営化してどういう国になるか、理想が全く見えない」などと批判を浴びせました。野党は@民営化で郵便料金は安くなるかA国家公務員共済から厚生年金への移行に何年必要かB国際物流で利益は上がるか――などと質しました。6日の同特委では、野党が審議拒否の理由に挙げた中央省庁改革基本法33条の『民営化等の見直しは行わない』との条項の解釈について、野田、自見庄三郎氏ら過去の郵政相答弁との「整合性」を巡って民主党委員が竹中平蔵郵政民営化担当相を追及。竹中氏は「政策判断の変更」などと答えましたが、約1時間40分も審議が中断した挙げ句、竹中氏が答弁を撤回する1幕もありました。また、今度は全国特定郵便局長夫人会連合が14日、東京・日比谷公園に3千人を集めて反対アピールと国会デモを行い、反対派急先鋒の野田聖子議員らに請願しました。

 設置基準の法案明記など迫る

 水面下で進んでいる修正論議で党側は、@全国あまねくの利用を旨に、郵便局の設置基準を省令でなく法案に明記A3事業一体的経営のため「郵便窓口業務」だけでなく「貯金・保険の代理店業務」も明記B持株会社が保有する貯金・保険2社の全株式処分の義務規定を削除し「連続的保有」を明記3民営化進捗状況の検証・見直しは「国会報告」でなく「国会承認」に改定――などの修正内容を求めています。だが、首相は「考えていない。法案はベスト」と修正を否定、修正に応じる場合でもぎりぎりまで党内情勢を見極めて、出来る限り小幅修正にとどめたいと考えています。一方、『泣いて馬しょくを切る――気持ち』と、側近ナンバー1の濱渦武生副知事を更迭した石原都知事は、今や都政に失望し、解散・総選挙がある場合か、今秋に実施される衆院東京4区(石原氏の旧来地盤)の補選に出馬して国政に復帰、ポスト小泉争いに加わると見られています。石原新党構想は総選挙が近づく度に幾度か浮上していますが、反対派の謀将・亀井静香元政調会長が石原氏と親しいため、反対派造反(廃案)――解散・分裂総選挙――石原氏出馬――新党結成、の図式が想定され、その延長線上に政界再編があるのではないかとマスコミ間では囁かれています。

 T日3千万円は国家予算の稼ぎ

 ところで、国税庁が5月16日に発表した高額納税者番付では、『タワー投資顧問』会社の清原達郎運用部長(46)がトップに輝きました。約37億円の納税額から計算すると給与は百億円を超えるといいます。清原氏の1日の稼ぎはざっと3千万円弱。全国1律料金の郵便制度が確立した1973年(明治5年)の国家予算は3千万円。江戸時代の1両が1円換算だから現在の貨幣価値とは比較にならないとしても、明治の予算規模と1日の稼ぎが同額とは恐れ入ります。平均的サラリーマンの生涯賃金を約2億円とすれば、わずか1週間足らずで同額を稼ぎ出し、年間百億円の報酬なら、50年も寝て暮らせる驚異的、天文学的な報酬です。清原氏は主力の投資信託の運用責任者で、04年度は東証株価指数の上昇率が0・25%と低迷する中で資金を27・8%増やし、99年度当時の元本を6年間で6・4倍にした“すご腕”。この投資顧問会社運用部長は、結果を出せば多額の成功報酬が受け取れる制度を生かして稼ぎまくったようです。旧郵政省は情報革命をリード、IT分野を育成してきましたが、今回の高額納税者の上位100人にはITの起業家7人がランクされ、躍進が目立ちました。

 第2の清原目指す気概は歓迎

 高額納税者に刺激されたのか、日本郵政公社が10月から575局で始める投資信託の販売に備え、『証券外務員資格』の受験希望を全職員から募ったところ、公社予想の3万人を2倍も超えて、職員の4人に1人に当たる約6万人の応募が殺到したといいます。投信販売は公社が力を入れる新規事業の1つで、貯金と違って元本割れのリスクがあるため、販売には日本証券業協会の試験をパスすることが必要です。公社には既に約3700人の合格者がいますが、開始5年目に取扱い局を約1500局に増やす方針で、1人約3千円の初回受験料は公社が負担し、資格者を大幅に増やそうとしています。郵政民営化の攻防とは関係なく、職員が第2の清原部長を目指し、公社の「真っ向勝負」の気概に燃えて、やる気を出していることは大いに歓迎されるべきでしょう。