北村からのメッセージ

 第110回(5月16日)郵政攻防は第2幕 夏まで緊迫政局

 郵政民営化関連法案が国会に提出され、連休明けから政府、自民党の攻防は第2幕に移りました。与党は、衆院に40人規模の特別委員会を設置し、20日に審議入りする方向で野党と調整中です。小泉首相は会期内成立を目指し審議を促進する構えですが、政府・自民党の合意文書には“玉虫色”決着の部分が多く、反対派は審議の過程で問題点を明らかにし、反対機運を盛り上げようとしています。修正を巡る駆け引きは激化し、大幅な会期延長は必至の情勢です。また、最終関門の党総務会が「党議拘束」を曖昧にしたまま法案提出を決めたため、終盤国会では公然と造反に走る議員も予想されます。法案否決の場合、首相が衆院解散に打って出る可能性は依然として強く、多くの波乱要因を残したまま、緊迫した政局は夏まで続きそうです。私は党の望む方向で決着するよう汗をかくつもりです。 

 百時間以上の長期審議

 野党は常設の総務委員会で処理すべきだとして特別委の設置に反対していますが、常設委だと週2日の定例日しかないため、自民党は百時間以上の審議時間になると想定し、連日、集中的に審議が進められる特別委の設置を19日の衆院本会議で議決、20日の本会議で法案の趣旨説明を行う日程を検討しています。特別委員長の候補には大島理森元文相、亀井善之前農水相、園田博之党郵政改革合同部会座長の他に、首相の盟友・山崎拓首相補佐官や福田康夫前官房長官の名まで取りざたされていますが、山崎氏は執行部の打診を断り、委員長は未だ決まっていません。読売は「波乱の第2幕へ」の企画記事の中で、今後の焦点は「自民党執行部が党内の反対派をどう抑え込むかだ。反対派も一様ではない。民営化そのものに反対、民営化はいいが同法案は反対、小泉首相の手法への感情的な反発――と様々だ」と分析、「執行部は法案修正や政省令、国会答弁などで政府に一層の譲歩を迫る一方で、法案の採決が近づけば『解散を含め、首相は何をやるか分からない』などと党内の危機感をあおることも辞さない構えだ」と、解説しています。恐らくそのような展開になるでしょう。

 郵政はポスト小泉の踏み絵

 「よくやってくれましたねえ。もっと時間がかかると思ったが、執行部全員、協力してくれた。一山超えたが、まだまだ法案審議がある。厳しい状況は続くと思う」――。首相は法案を閣議決定した後の4月27日、党幹部をねぎらうとともに、自らを戒めました。その3日後の外遊先、パキスタン・イスラマバード市内ホテルでの記者懇談では、国会審議の見通しについて「(法案を)出せば党議拘束がかかったも同然だ。審議が進むに連れ、国民の理解も深まる。(党内の)大方は既に賛成の方向で固まってきているのではないか」と語り、法案修正は行わず、会期内成立に全力を挙げる決意を示しました。同時に“ポスト小泉”については「小泉改革路線を促進してくれる人が望ましい。郵政民営化反対の人が国民の支持を得られるか疑問だ」と述べ、郵政が後継者の“踏み絵”になると示唆して反対派を強く牽制。そのうえで、「法案は否決にならないと思っているので解散は考えていない」と自信たっぷりに衆院解散を否定しました。この発言が反対派を刺激しています。

 ヒトラーの法案を葬る!

 「欠席者が出ればボーダーラインは下がり、46人の反対がなくても簡単に否決できる。衆院で法案を葬る!与党までがノーと判断したらそれに従うのが首相の立場だ。ヒトラーだって持たなかった権限があると勘違いしている。連立している公明党も解散に賛成しない」――。今や反対派の闘将・亀井静香元政調会長は、1日朝のフジテレビに出演し、法案の否決に意欲を示し、首相の解散強行は阻止できると宣言しました。亀井氏の読みはこうです。衆参両院の過半数は、4月26日に議員辞職を表明した民主党の今野東衆院議員を除くと、衆院239、参院121。自民、公明両党を併せた与党の議席は衆院284、参院138だから、公明党の全議員が賛成し、野党と無所属全員が反対に回れば、それぞれ衆院46人、参院18人の自民党議員の造反で否決出来るし、衆院で91人、参院で35人が欠席すればボーダーラインが下がり、これまた否決されることになります。4月13日の郵政事業懇話会(会長=綿貫民輔前衆院議長)総会に衆参議員101人が出席し、「民営化断固反対」決議をしたことを思えば、亀井氏の読みとソロバンは確かなようです。

 議運・国対委に多い反対派

 衆院議運委の川崎二郎委員長はかつて郵政政務次官を務めた郵政族の重鎮。与党筆頭理事の山口俊一氏も郵政事業懇話会の事務局長で、同懇話会がまとめた民営化の対案「日本郵政公社改革法案」の推進メンバー。いつでも対案を国会に提出する用意は出来ています。中川秀直国対委員長は首相の側近中の側近ですが、自民党国対委には議運委に劣らず反対派が多く、特別委の設置が遅れているのも、これが影響しているからでしょう。公明党の神崎武法代表は「法案が国会に提出された以上、与党として一致結束して成立させることが極めて大事だ。この問題を政局にしてはならない」と街頭演説で首相を擁護し、自民党の結束を求めました。さて、20日から本格論戦に入りそうですが、首相が最大の狙いとしている、肥大化した郵貯と簡保による「官製金融」を縮小し民間経済の活性化に繋げるという郵政改革に対し、反対派は、なぜ4分社化か、現行サービスは維持できるのか、過疎地の切り捨てにならないか――など、まず民営化の“そもそも論”から入って首相に明確な説明責任を求め、具体論では、玉虫色の決着部分を追及していく構えです。

 玉虫色の一体的経営

 玉虫色部分は、郵貯、保険との一体的経営、「社会・地域貢献基金」の在り方などです。政府は「経営リスクを遮断し金融不安の発生を防ぐため」として、法案では「持株会社が保有する貯金及び保険会社の株は2017年3月末までの移行期間中に全部処分(売却)する。政府保有の持株会社株は、出来る限り早期に3分の1超に減ずる」となっていますが、政府・与党の合意では、持ち株会社や郵便、窓口会社による貯金、保険株の「連続的保有を妨げない」とし、完全処分(売却)直後に持ち株会社が両会社の株を買い戻したり、各会社間で持ち合うことが自由になりました。議決権の確定前に買い戻し、株主総会時点では引き続き株主となる手法が検討されています。両社の株売却益の一部は過疎地の金融サービス維持などを目的に、法案では「持ち株会社は、『社会地域貢献基金』を設け、1兆円に達するまで積み立てる」となっていますが、これも政府・与党合意では最大2兆円に膨らんでいます。しかし、法案にはこれらの合意を担保する規定はありません。

 マスコミ支えに強気の運営

 首相がこれらの法案修正に否定的だったため、政府・与党合意は法案に反映されておらず、国会答弁で担保される部分も多くあります。党側はこれらの合意事項を一つひとつ取り上げて、法案を明確に修正するよう求める方針ですが、各マスコミは社説で@一体的経営では完全民営化とはいえないA株売却益は国債償還など国民全体のために使うのが本筋で、地域向けの補助金に化けるのは問題だB法案は民業圧迫となる要素が多い――などと激しく批判しています。首相はマスコミの論調を支えに強気の国会運営に乗り出していますが、答弁の内容次第では反対派が強く反発し、審議が紛糾することも当然予想されます。また、問題点を個別にクリアするだけでも審議は長時間を要するため、大幅延長しなければならず、国会は夏までの長丁場となり、波乱含みの展開になりそうです。