北村からのメッセージ

 第109回(5月1日) 予定通り法案提出 補選勝利が追い風

 小泉首相は4月27日、自民党総務会の完全了承を取り付けないまま、郵政民営化関連6法案を閣議決定、予定通り同月内に国会へ提出しました。郵政民営化が争点とされた24日の衆院統一補選で自民党が全勝したことを追い風に、首相は連休明けから審議入りし、会期を大幅に延長してでも審議を促進、今国会で成立させる決意を固めています。“見切り発車”の結果、党との対立点が残されていますが、前回の日本郵政公社法と同様、法案審議の過程で党側の要求を入れて修正、あるいは国会答弁や付帯決議に要望を盛り込むことで成立させる方針です。しかし、今回は首相の強引な政治手法に反対派は強く反発、造反を口走る確信犯もいることから、すんなり成立するかどうか予断を許しません。仮に廃案となった場合、首相は「国民に信を問う」姿勢なので、“郵政解散”が現実味を帯びてきます。このように国会は緊迫の度合いを深めていますが、皆さんのご声援を受けて私は、大型連休中に十分英気を養い、5月政局を元気いっぱい乗り切りたいと思っています。

 26日閣議決定のシナリオ

 「党側に歩み寄って政府案をまとめた。もう十分に時間をかけた。法案修正はしない」――。首相は4月5日に党側に提示した政府案骨子について、記者団にこう語り、インドネシアのA・A会議(バンドン会議)に出発する前の20日にも全閣僚をメンバーとする「郵政民営化推進本部」会合を開き法案全文を公表、そのうえで政権発足4周年の26日に法案を閣議決定するシナリオを描いていました。しかし、党側の最終関門である総務会の懇談会では「郵政以上に外交など、重要な問題がある」などの慎重論が相次ぎ、久間章生総務会長は「24日の衆院統一補選前の党内了承は困難」との見通しを述べ、連日開いた郵政改革関係合同部会(園田博之座長)でも意見集約には至りませんでした。とくに、13日の郵政事業懇話会(会長=綿貫民輔前衆院議長)総会に衆参議員101人が集まり「民営化断固反対」を決議したことから反対派の勢いは増し、与謝野馨政調会長ら党執行部が目指した15日までの一任取り付けは、またも翌週へ先送りとなりました。

 資本など修正要求6項目

 このため、園田座長は、2時間半に及んだ15日の合同部会で、「長い間議論したが政治状況は切迫している。最大限譲れることと、最小限必要だというまとめの議論を18日(月)にしたい」と部会の締めくくりと、政府への要望取りまとめを提案。党執行部は18日午後の緊急5役会議で、政府に対する6項目の修正要求を決め、同日中の合同部会で一任取り付ける方針を確認しました。修正項目は、[貯金、保険のユニバーサル(全国均一)サービスの確保][経営の自由度][3年ごとの検証]などで、@郵貯・保険会社の代理店契約期間を10年超えて延長A地域、社会貢献基金を2兆円規模に上積みB持ち株・窓口・郵便各社と郵貯・保険会社の資本関係保持C新規業務の段階的拡大を的確に行うため民営化会社、経営委員会、民営化委員会、関係大臣の検討・準備作業の前倒しD郵便局設置状況と金融・保険全国均一サービスの状況を3年ごとに点検し、民営化委員会の勧告内容を国会へ報告Eスタート時の資本状況も民営化委にチェックさせ施策・実施状況の監視、政府への勧告、国会への報告は3年ごとの検証に準じて実施――を内容としています。

 一任にヤジと怒号の応酬

 与謝野氏は18日午後4時に開いた合同部会でこの要求項目を提示し、執行部への対応一任を求めましたが、反対派は「絶対に認めない。公社のまま改革すべきだ」「反対論をうやむやにしたまま、執行部が政府と合意すれば、我々は国会採決で必ず造反する」と強く反発、これに賛成派が「(反対なら)解散だ!」と叫ぶなどヤジと怒号の応酬が続き、合同部会は2度の休憩を挟み、19日午前3時まで11時間も紛糾。午前0時半過ぎにはハマコーこと浜田幸一元衆院議員が現れて許可なく着席、「内閣がやることが嫌なら党を出て行けっ」と怒鳴り散らすハプニングもありました。結局、同日午後再開された合同部会では午後9時前、与謝野氏が「党5役が全責任をもって交渉に当たる。私に一任してほしい」と再度要請、園田座長が「(政府と交渉し)最終結果か出たら皆さんに賛否を諮る」と述べ、合同部会の終了を宣言して閉会しました。首相も20日の「郵政民営化推進本部」での法案提示を取りやめ、衆院統一補選の結果が判明するまで党への刺激的な態度は慎みました。

 私の勝利は改革の推進力

 「バチカンでは新法王選出のコンクラーベが始まっているが、3分の2が支持しなければ決まらない。この場も同じぐらい(の採決)にまとめていただきたい」――。反対派の急先鋒、荒井広幸参院議員は合同部会でこう発言し執行部一任は無効と叫んでいましたが、21日の亀井派総会でも執行部批判ののろしを上げ、「小泉首相のいうコンクラーベ(根比べ)の煙は(法王の投票結果を知らせる)白や黒ではなく、真っ赤だ。これから戦場のようになる」と記者団に語ったり、全議員に政府案の欠陥を解説する「荒井メモ」を配ったり、最後まで抵抗しました。反対派は「執行部一任は交渉の一任であって、全権委任ではない」と揺さぶり続けました。以上がこの2週間にわたる大まかなドキュメントです。
こうした中で24日の統一補選は宮城2区、福岡2区ともに自民が快勝。とりわけ、首相が「批判勢力から自分を守る盾」と呼んできた山崎拓首相補佐官(元幹事長・前副総裁)が返り咲いたことは、首相にとって百万の味方を得たようなもの。山崎氏も「私の勝利は自公連立政権並びに、小泉構造改革の推進力になる」と胸を張りました。福岡では自民の支持基盤である特定郵便局関係者が郵政民営化に反発して民主党の平田正源候補を応援したため、公明党が山崎氏を全面支援。これが反対派にやや後ろめたさを感じさせています。

 政府・与党合意文書交わす

 統一選翌日の25日、自民党は5役会議で与謝野政調会長から当日までの折衝経過を聞いた後、政府側と最終調整に入りました。その結果、@郵貯銀行・郵便保険会社と郵便局会社の「安定的な代理店契約」は移行期間を超え長期とするのも妨げないA基金は1兆円の積み立て完了後も総額2兆円まで継続できるB移行期終了後は経営判断により株式持ち合いが可能。株式の連続的保有を妨げないC持ち株会社が郵貯銀行・郵便保険会社の株式を完全処分できなくても過料の対象としないD経営自由度の確保のため経営委員会(準備企画会社)を準備期間内の早い時期に設置し新規業務の選定と内容の検討を開始E民営化委員会は3年ごとに経営状況検証。結果は遅滞なく国会に報告――を骨子とする政府・与党合意文書を取りまとめ、細田博之官房長官、竹中平蔵郵政民営化担当相ら関係閣僚と党5役の間で交わしました。統一補選完勝の余韻が残るうちに一気に決定したものです。

 大幅譲歩で軟着陸

 首相は記者団に「法案は修正しないし、骨子は変わらない」と釈明しましたが、調整の焦点だった経営一体化策では、持ち株会社に17年3月末までの完全処分(売却)を義務づけていた貯金銀行・保険会社の株式について「連続的保有を妨げず、罰則規定も免れる」ことを明記、大幅に譲歩しています。首相の大幅譲歩には、最終決着を統一補選後に延ばし、その間に反対派のガス抜きをはかる一方、政府には最大の妥協を迫る――という参院の青木幹雄議員会長、片山虎之助幹事長コンビによる「軟着陸シナリオ」が功を奏しています。しかし、合意文書は、同日夕から断続的に開かれた合同会議で了承が得られず、反対派は「政府は瞬間的にも株を完全処分すると言うが、売った株をすぐ買い戻すなんて馬鹿げている。姑息なやり方だ」などと「連続的保有」を巡って再び紛糾。翌26日の深夜、怒号が渦巻く中で園田座長が「合意事項に従って法案の修正を前提に了承したい」と宣言。議論を打ち切りました。27日の総務会では採決時の造反を示唆する発言が相次ぎ 『党議拘束』 は持ち越しましたが、一応党の関門をクリアし、首相は4周年記念の26日を1日遅れて法案を閣議決定、国会に提出しました。

 チラつかせる郵政解散

 衆院に設置される特別委で連休明けから大車輪の審議に入リますが、「連続的保有」など玉虫色で決着した箇所が多いため、与党質問が長引き難航すると見られ、大幅な会期延長は必至の情勢です。委員長には園田氏が候補に上っていますが、修羅場を乗り切るために、首相の盟友・山崎氏を起用する可能性が強まっています。同法案の成立には、党側の要望を入れて法案修正もしくは国会答弁、付帯決議などで処理する方針ですが、野党よりも与党内に対決色が強いことから、夏まで徹底審議を続けても、最終局面で衆院44人、参院18人の与党造反者が出れば廃案となります。織田信長気取りの首相は4月1日、自公両党幹部と会食した際、「桶狭間も関が原の戦いも、その最中は両軍とも自分が勝つと思っていたもんだ。(次期総選挙)の結果は見物だよ。面白いのは、民主が1位、自民が2位、公明が3位で民主が過半数に届かない時だ」と郵政解散をチラつかせ、保守再編に言及したといいます。26日夜も「夏の陣、大変だよ。本丸攻めに全力を尽くす。抵抗勢力が立てこもっているからね」と記者団に語り、首相は統一補選勝利の波に乗って一層強気の政権運営に転じています。これ以上追い込まれれば伝家の宝刀を抜く覚悟は十分のようで、要注意です。