北村からのメッセージ

 第107回(4月1日) 郵政大詰めの攻防 激しい駆け引き

 05年度予算が3月23日に成立したことで、郵政民営化関連法案を巡る攻防は大詰めを迎えています。政府は4月中旬までを法案提出の最終期限とし、郵便局設置基準の維持や、郵貯・簡保の全国均一サービスの義務づけなど、自民党要求に沿った妥協案を示してきました。しかし、党側は納得せず、郵貯銀行、郵便保険会社を完全民営化する時期に「見直し条項」を設けるよう嵩上げの要求をしました。政府と与党の駆け引きは激しさを増すばかりです。双方とも「郵政を政局にしたくない」心理では共通していますが、崖っ淵まで走らせた車から飛び降りるチキンレース(命懸けの度胸試し)をいつまでも続けていたら、間に合わず自民崩壊の崖下に転落しないとも限りません。解散・総選挙か、それとも内閣総辞職か。崖下には野党の喜ぶ三角波が立っています。ここ2週間がまさに正念場。後顧の憂いを残さぬよう、私は地域に密着した郵政改革を実現するため頑張るつもりです。

 凍結恐れて局網義務化案

 政府は3月中旬の法案提出は断念したものの、法制化を加速させようと、郵政民営化準備室が同14日から各省庁との間で、実質的な法案の条文化作業を開始しました。これが党側を刺激し、翌15日の党郵政改革合同部会では、「条文化で民営化を既成事実化するなら、大問題だ」「我慢の限界を超えている。竹中平蔵民営化担当相を呼べ」と不満が爆発、園田博之座長が「党側の主張に沿った回答が17日の協議で示されなければ、しばらく協議を凍結することも考えねばならない」と警告しました。これを恐れて政府は3月17日、自民党との郵政民営化検討委員会で、過疎地対策として全国的な郵便局網の維持を法律で義務づける考えを明示。細田博之官房長官は「郵便局があまねく全国で利用できることは大変重要だ。これを法律上しっかり手当したい」と述べ、具体的な文言は今後法的に詰めることを確約しました。これまで政府は、「住民の利便性が確保されるような郵便局の配置に努める」などの「努力義務規定」にとどめる姿勢を取り続けてきました。

 膠着状態脱却の動き

 だが、衆参両院で最低6週間は必要とされる審議日程を考えれば、6月19日の会期内に法案成立を目指すには4月中旬の提出がギリギリ。政府はやむなく譲歩し、党側の義務づけ要求を受け入れたたわけです。省令で定める設置基準の対象拡大では山村振興法、過疎地域自立促進特別措置法などを参考にする考えです。政府は郵便局の全国的な設置を法律で義務づけるほか、郵貯と簡保の全国一律サービスの維持についても、民営化金融会社の株の売却益や配当の一部による「地域・社会貢献基金」で、関連費用を補てんする方針を既に提示。基本方針で示した民営化本来の目的に反するようなギリギリの案を示し、「切れるカードは使い切った」(政府関係者)との態度です。党側も片山虎之助参院幹事長が「物事をまとめていくべき時期にきつつある」と前向きに受け止め、青木幹雄参院議員会長も批判派の多い参院グループの調整に乗り出すなど、膠着状態を脱する動きがちらほら見えてきました。首相も3月28日の役員会で「今週が大きな山場。困難は承知だが、努力して欲しい」と重ねて3月内の決着を指示しました。

 民営化時期見直し要求

 しかし、政府と党側要求の間には依然として大きな隔たりがあり、反対派議員が「民営化阻止」の旗を降ろすには至っていません。与謝野馨政調会長らは、3月19日の関係閣僚・党役員協議で、郵貯銀行と郵便保険会社の全株式を売却する2017年の完全民営化の時期について、「2007年4月の民営化開始から3〜5年後に経済、社会情勢を踏まえて検証する」などの見直し条項を設けるよう要求しています。要求には小泉首相の党総裁任期が06年9月に切れるため、「後継総裁が3〜5年後に完全民営化すべきかどうかの最終判断をすれば良い」との反対派が望む留保条件をつける狙いが隠されています。これには当然、竹中郵政民営化相が、完全民営化の先送りに繋がりかねないと難色を示しましたが、2007年4月の民営化開始の時期については、郵政公社の分社化に伴うコンピューターシステム構築などが間に合わない場合、数ヶ月間程度の延期を可能にする「危機管理規定」を置くことで大筋合意しました。

 決着見通しは霧の中

 これは生田正治郵政公社総裁が、短期間内でのシステム構築にはトラブル発生などの不安があるとして、開始時期を延期するよう求めていたことに配慮したものです。また、政府の郵政民営化推進本部の下に有識者5人による「郵政民営化監視委員会」を設置し、3年ごとに株式の売却や新規事業への参入など、民営化の進捗状況を点検することでも一致しました。同委員会は国家行政組織法8条に基づくもので、首相や所属閣僚への勧告権限を持ち、任期は3年の予定です。このほか、持株会社が、完全民営化後に郵貯銀行と郵便保険会社の株を買い戻し、株式を継続保有することで3事業の一体性を維持する案も浮上しています。このように政府、自民党の協議はかなり歩み寄り、協議の焦点は経営形態などに移っていますが、首相は一体性維持の骨抜き案に反対で「基本方針に基づいてやるだけ」と4分社化にこだわっています。一方、反対派には依然、「なぜ民営化か。公社形態のままが望ましい」との“そもそも論”が残っていて、決着の見通しはなおも五里霧中です。

 公社職員を1万人削減

 郵政公社は3月16日、07年4月の民営化までに職員1万人を削減する荒療治を柱に2カ年計画の「アクションプラン・フェーズ2」を発表しました。計画終了時(07年3月末)の郵貯と簡保の資金量合計は、05年3月末比6%減の312兆4千億円となりますが、人件費や調達費を削減して自己資本(株式運用益を除く)を2年間で1兆6千億円増やすことにしています。職員は1万百人削減して25万2千人(公社設立時に比べ2万9千人減)に縮小。郵便物の追跡システムや郵便局窓口の現金処理の機械化などに3千億円を投資するなど、民営化後の競争を強く意識しています。生田総裁は「ゆうパックのリニューアル、ローソンでの引き受け開始をテコに、過去最高の引き受け個数だった昭和45(70)年度の1億8千万個超えを目指す」と意気込み、成果主義で高卒のノンキャリアを初めて理事に登用しました。これが公社職員を励まし、計画達成の意欲を燃え上がらせています。反対派がいうように、公社のまま改革した方が組織は活性化されそうです。

 残り2週間はまさに戦場

 気になるのは綿貫民輔前衆院議長が主宰する勉強会が増え続けていることです。民営化反対から反小泉までの混成部隊ですが、亀井静香元政調会長、古賀誠元幹事長、平沼赳夫前経産相、高村正彦元外相らポスト小泉を伺う顔ぶれが多数参加。昨年末の1回目は8人、2回目は18人だったのが先月末の3回目は59人、4回目の15日は衆院62人、参院12人の計74人参加と鰻登りに増加しています。法案は衆院で45人、参院では18人が反対に回ればいずれの場合も否決されます。党内の造反で最大公約の民営化が実現できなければ内閣は総辞職、それを回避するには解散総選挙しかありません。首相は解散と同義語の「常在戦場」を口にしたり、首相側近が、反対派の1本釣りを狙って“鼻先ににんじん”の「法案成立後の内閣改造」論をまき散らすなど、首相周辺からは、硬軟両様の仕掛けが繰り出されています。駆け引きのチキンレースを程々に終わらせないと、なりゆき次第では瓢箪から駒が飛び出します。残る2週間はまさに戦場、緊張の日々が続きます。