北村からのメッセージ

 第105回(3月1日) 郵政攻防第2Rへ 条件闘争やや進展

 05年度予算案が衆院を通過する見通しで、政治の焦点は郵政民営化攻防の第2ラウンドへ移りました。政府は自民党に歩み寄った郵政民営化関連法案の概要(大綱)を一部の省庁に非公式に示し、党執行部も「第2の国鉄にしないために」“予防医学”の見地から、政府案に沿って決着を図ろうと懸命に説得を続けています。しかし、「なぜ民営化なのか」の“そもそも論”に立つ党内反対派は、逆に「郵政公社改革法案」を3月中に策定する方針で対立はさらに深まっています。民営化法案を今国会で成立させるには遅くとも5月連休前の4月中に提出しなければならず、調整は容易でありません。国会の大幅延長論に加え、またぞろ「郵政解散」が首相周辺から囁かれ、3月政局も穏やかではなさそうです。予算の年度内成立が確実になり、衆院では予算関連法案の審議に入りますが、私は防衛庁長官政務官として、弾道ミサイル迎撃の手続きを早める自衛隊法改正案など、防衛関連法案の成立に向け全力を挙げています。どうぞご支援下さい。

 党は4項目で条件闘争

 政府の民営化基本方針は、政府が全株式を保有する持ち株会社の下に郵便貯金、郵便保険、窓口ネットワーク、郵便事業の4会社と、公社承継法人に日本郵政公社を、「4分社・1法人化」するものです。郵政民営化を巡る政府、自民党の折衝は一口でいうと、早期決着への環境整備を急ぐ党執行部、首相出身母体の森派など推進派、民営化の軟着陸を目指す青木幹雄参院議員会長ら中間派、民営化よりも公社改革を優先する郵政事業懇話会の綿貫民輔会長ら強硬な反対派が入り乱れて、竹中平蔵郵政民営化相ら政府と攻防を続けています。これを時系列的に見ると、国会開幕以降、「郵政改革に関する政府・自民党検討委員会」が2月中に首相官邸小ホールで5回開催され、激しい応酬を繰り広げてきました。この間、自民党は「郵政公社発足後間もないのに郵政改革の意義・必要性について国民に明確な説明責任がない」とし、@現行郵便局の設置基準の維持A郵便だけでなく郵貯・簡保のユニバーサル(全国均一)サービスの義務付けB第3、4種郵便や日まわりサービスなど社会・地域貢献サービスの提供継続C郵便局ネットワークの活用と地域住民の利便性向上――を強く要求、条件闘争を展開しました。

 作業チームが譲歩引き出す

 同10日からは、政府・自民党の作業チームである郵政民営化実務者協議会が発足、詰めの折衝に入りました。与謝野馨政調会長は、同協議会の調整役に郵政改革関係合同部会の園田博之座長を、メンバーには旧大蔵官僚で実務能力に長けた宮沢洋一、後藤茂之両衆院議員、陣内孝雄、田村公平、山崎力の各参院議員の計6人をあてました。参院側の3人は、参院の青木議員会長、片山虎之助幹事長に人選を依頼しました。3人とも郵政族議員の牙城・旧橋本派に属し、民営化に反対あるいは慎重派です。この作業グループは上記の4要求を中心に政府側からサービス内容や機能面で多くの譲歩を引き出し、一定の成果を収めました。その折衝を踏まえ、政府の郵政民営化準備室は2月18日、郵政民営化関連法案の概要(案)をまとめ官邸や金融庁にこっそり提示、それを読売がスクープしました。

 準備室が法案大綱

 その骨子は【準備期】@郵政民営化準備本部の下に監視組織の郵政民営化委員会を設置(06年7月)A持ち株会社(日本郵政株式会社)を設立B日本郵政株式会社が郵便貯金銀行、郵便保険会社となる子会社を設立【移行期(07年4月以降)】@郵貯銀行、郵便保険会社に銀行業、保険業の免許を付与(みなし免許)A銀行業の見なし免許付与の際に、移行期間中に安定的な代理店契約があることを条件とするB日本郵政株式会社は、郵貯銀行及び郵便保険会社の株式の全部を2017年3月末までに処分する義務を負う【最終的な民営化後(遅くとも2017年4月)】郵貯銀行は銀行法、郵便保険会社は保険業法などの金融関係法令に基づき業務を行う――などです。個々の法案では[日本郵政株式会社法案]@政府は株式保有割合を3分の1に近づける義務を負うA地域・社会貢献基金を設ける[郵便事業株式会社法案]@ユニバーサルサービス義務の対象は郵便のみで小包は除外A3種、4種郵便物等のサービスのうち必要なものを提供B特別送達等で公正性、信用性を維持するため「郵便士制度」を設ける[郵便局(窓口ネットワーク)株式会社法案]郵便局の設置は、地域住民の利便確保に努める努力義務を課し、省令で設置基準を策定する[独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案]郵貯・簡保の既契約を引き継ぎ、既契約を履行[整備法案]=略――となっています。

 地域住民の利便確保義務

 ところが、この概要は、監督官庁の総務省や国債管理政策を行う財務省の事務方にも説明がなかったため、霞ヶ関のルールを無視したものと両省が反発し、党からも批判されています。ともあれ、関連法案の概要には、郵便局の設置基準に地域住民の利便性確保を盛り込んだり、裁判書類の特別送達を行う郵便事業会社の社員に公正性、信用性を担保するため「郵便士制度」を創設してプライドを持たせたり、民営化後の国の関与を減らすため、日本郵政会社の政府保有株式割合を3分の1に近づけるよう義務づけています。さらに、金融のユニバーサルサービスを維持するため、移行期間の2017年までは郵貯銀行に対し、免許付与条件として窓口ネットワーク会社(郵便局)との「安定的な代理店契約」を課し、移行後は郵貯銀行株の売却益などをもとに郵政会社内に「地域・社会貢献基金」を設け、地域の要望に応じて金融サービスが継続されるよう支援するなど、多くの点で党側の主張に歩み寄っています。とりわけ、政府が過疎地の郵便局網について、現行水準維持の設置基準を「省令で担保」することや、郵貯・簡保の全国均一サービスを維持する「基金」に加え、集配業務に「郵便士制度」を創設するなど、かなりの妥協を示したため、党執行部も評価を下し、首相の信念である「4分社化」の了承はやむを得ないとの態度です。

 予防学的民営化必要論

 「郵便、郵貯、簡保とも先細りになる。その前に民営化の手段を利用して手当する考え方もある。第2の国鉄にしてはいけない」――。まとめ役の与謝野政調会長が同13日、箱根の講演で“予防医学”的に民営化必要論を述べたことは、反対派を刺激しました。久間章生総務会長も「郵政公社は今は黒字かもしれないが、10年、20年先には大変なことになる」と、民営化準備室が同17日にまとめた『公社経営はジリ貧に向かう』との参考資料をもとに与謝野氏と同じ歩調で講演しました。党3役は揃って懸命に党内説得に乗り出しています。参考資料は@郵便はEメールなどの普及で郵便物数が毎年2−3%減少A郵貯は金融商品の多様化などで残高減少B簡保は少子高齢化を背景に契約数が減少――などでジリ貧化をたどり、公社形態では経営改善に限界があると指摘しています。一方、執行部に近い森派議員らは法案採決での多数派工作の準備を進めており、同派の坂本剛二、山本拓両衆院議員は民営化推進の議連設立に向け、全議員に趣意書を配りました。山本氏は2月早々、高市早苗前衆院議員と結婚したばかりの熟年カップルです。

 “そもそも論”固執の反対派

 これに対し、反対派は「何度聞いても、なぜ民営化が必要なのか政府の説明ではわからない」と、依然“そもそも論”にこだわり、「公社を改革すればよい」と反発を強めています。とくに準備室の法案概要(大綱)には、特定郵便局長の身分保障で党が要求した総務相任命の「公務嘱託制度」などがないため、同18日の党総務会では亀井静香元政調会長が「言うことを聞かない小泉首相に党3役はまなじりを決して、国民や党の声をきっちり伝えてほしい」とハッパをかけ、亀井派の総会でも「健康体の公社に外科手術をしようとしている」と怒りをぶちまけました。亀井氏らは「郵貯、簡保の300兆円にハゲタカファンドが目を光らせている。竹中氏はこの資金を外資に売り飛ばそうとしている。ライブドア問題も根っこは同じだ」と批判しています。反対派の旗頭である郵政事業懇話会の綿貫会長(前衆院議長)は、「公社スタート1年なのに、なぜ民営化なのか」と憤り、郵政公社のままで郵政改革を推進する「郵政公社改革法案」を3月中に提案する方針です。川崎二郎衆院議運委員長、小坂憲次、山口俊一両国対副委員長ら郵政関係議員らが議員立法の策定に入りました。同23日に都内で開いた、綿貫氏が主宰する「議会制民主主義に関する勉強会」には、亀井氏や堀内光雄前総務会長ら橋本、亀井、堀内各派を中心に約60人が出席し、民営化反対の気勢を上げており、反対勢力は一向に軟化しそうもありません。

 結婚パーティで応酬

 「(貴女の)親代わりの綿貫先生から郵政民営化で先走らないようおしかりを受けるかもしれないが、ご容赦ください。結婚生活は1に我慢、2に辛抱、3,4がなくて5に忍耐。私も今、政治の世界でそれを経験している」――。小泉首相は同17日夜、小渕優子衆院議員の結婚祝賀パーティで挨拶したのに対し、綿貫氏は、「将来、野田聖子・元郵政相が首相になれば、小渕氏が官房長官になる」と持ち上げたうえ、「小泉さんも賞味期限があるから、そんなに長くはやらないだろうが、そろそろ女性の内閣ができることを期待している」と切り返しました。党内では『首相と綿貫氏による頂上会談』で決着するシナリオが取り沙汰され、官邸サイドも期待をかけているようですが、結婚パーティの応酬を見る限り会談実現の気配はなく、あるなら終戦合意のシャンシャン手打ち式ぐらいでしょう。党内調整はさらに時間が掛かりそうです。小泉首相は3月中の法案提出を断念、「党総務会の了承を得て法案を提出したい」と、今のところ殊勝な気持ちを記者団に語っています。

 今は解散否定だが先は闇

 その一方で、首相は「今国会で必ず成立させる。継続審議のつもりはない。継続は廃案と同じだ。廃案は、小泉内閣への不信任であり、退任要求の倒閣運動と受け止めるのが自然だ」と、会期内成立への不退転の決意を表明。衆院解散・総選挙の可能性については、「そういう事態は“今”想定していない」とも記者会見で述べました。だが、政界の1寸先は闇。権力者が現時点での解散を否定するのは常套手段で、いつ伝家の宝刀(解散権)を抜いてもおかしくない緊迫した状況が続いています。こうした政治状況に目配りしながら、私は元気いっぱい国会で活躍しているところです。