北村からのメッセージ

 第104回(2月16日) 京都議定書が発効 環境税導入必至

 今世紀末には北極の氷が融解し白熊、アザラシが絶滅する――。地球の温暖化は、2酸化炭素(CO2)などが太陽熱の反射を阻害して温室化する現象です。そのCO2排出を抑制し、温暖化に歯止めをかける京都議定書が2月16日に発効しました。議定書は国ごとに温室効果ガスの削減目標を数値で定め、日本には1990年比で6%削減するよう義務づけています。しかし、ロシアの批准が遅れるなどで発効が7年以上もたついている間に、日本の温室効果ガスの排出量は逆に約8%も増えており目標達成は不可能になっています。しかも、最大排出国の米国が議定書から離脱、排出量2位の中国、5位のインドなどには削減義務がないなど矛盾が多く、早くも「ポスト京都議定書」が検討されています。日本は産業界の反対で環境税の導入を見送りましたが、06年度は本格的な論議が必要ですし、省エネとともに風力、水力、太陽光、バイオマス(生物起源エネルギー)などの発電や燃料電池など無公害の代替エネルギー開発、CO2を吸収する森林保全などエコロジー(生態系環境)行政を促進しなければなりません。私は環境政策でも貢献したいと念じています。

 産業革命から異常気象

 「地球が悲鳴を上げている」、「CO2カットのコージェネレーション(熱電供給)時代」といった省エネのテレビCMが最近目立っています。3月に開幕する愛知万博は、地球温暖化防止や自然再生が最大テーマの「愛・地球博」です。宇宙でおそらく唯一生物が生き、美しい自然に恵まれた地球は、温室効果ガスに汚染されて気候が激変、予期せぬ大災害が連発しています。台風などの多発に次いで昨年末のスマトラ沖大津波は、モルディブのフラー島,タイのプーケット島を一呑みにし、インドネシアの低地バンダアチェやインド、スリランカ、ソマリアなどインド洋沿岸の施設を粉砕しました。大気のCO2濃度は、19世紀前半の産業革命までほぼ一定していましたが、石炭、石油など化石燃料の消費増大とCO2を吸収する森林の大量伐採などで、CO2が飛躍的に増え、世界の気温は過去100年で0・6度、日本では約1度上がりました。温暖化にはCO2のほか、フロン類やメタンなども関与しており、温暖化の影響は、03年に約1万5千人の年寄りが死亡したフランスの猛暑や冷夏、集中豪雨の頻発など、1980年代以降は異常気象の形で現れています。

 21世末に海面急上昇

 国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)第3次レポートは、このまま対策を怠っていると、21世紀末までに平均気温が1・4度から5・8度上昇し、海面は最大88センチ上昇すると予測、熱波や干ばつ、洪水の増加、生態系の崩壊など、膨大な被害が出ると報告しました。報告では気温が上昇する1世紀後の地球について、@海水の熱膨張や氷河が融けて海面が急上昇、南極の氷が融けるとさらに海面が上昇A絶滅危機種の生物は益々絶滅に近づくBマラリアなど熱帯性伝染病の発生範囲が拡大C内陸部では乾燥・砂漠化、熱帯地域では台風、ハリケーン、サイクロンの低気圧が猛威を振るい、洪水、高潮の被害増加D病害虫の増加で穀物生産が大幅に減少し世界的な食糧難を招く――としています。仮に2080年代までに海面が40〜50センチ上昇した場合を想定しても、現存する日本の砂浜の7割が侵食され、毎年高潮被害を受ける人口は世界で7千5百万〜2億人も増加するといわれています。島嶼出身の私としては見逃せない深刻な問題です。

 年間に35兆円の損害

 熱帯、亜熱帯のカリブ海やポリネシアに浮かぶ島々の多くは水没し、水の都・ベニスの景観は損なわれ、日本最南端の沖ノ鳥島も海底下に沈み、貴重な領土を失います。島嶼国は経済的に貧しく、観光立国で外貨を獲得してきましたが、その重要な観光資源を失うようでは生きられません。国連環境計画(UNEP)が2001年2月に発表した報告では、2050年に2酸化炭素の濃度が2倍になると、繰り返される異常気象や海面上昇による土地の喪失、漁業や農業への悪影響、水不足などで年間3千億ドル(約35兆円)以上の損害が出ると予想しました。地球温暖化によって、北大西洋などの海洋の大規模な循環が変わり、グリーンランドや南極の氷床が崩壊し、シベリアなどの永久凍土や沿岸の堆積物からCO2など大量の温室効果ガスが放出され、予測できない急激な変化をもたらす危険性があります。世界自然保護基金(WWF)は先月末、「温暖化が進めば今世紀末までに北極全体の氷が融解し、北極熊(白熊)やアザラシ、セイウチなどが絶滅、ツンドラの1部が森林に覆われる」と警告しました。鮭・鱒・蟹など北洋水産資源も激減するでしょう。

 3つの京都メカニズム

 京都議定書の発効は、気候変動枠組み条約の採択から13年、97年の京都での議定書採択から7年以上を経ています。発効で法的拘束力が生じ、日本を含む批准128カ国には議定書を履行する義務が生じました。京都議定書はCO2、メタン、フロンなど6種類の温室効果ガスの排出量を、第1約束期間の08〜12年の5年間に、先進国全体で90年レベルよりも5・2%削減することを定めています。具体的には欧州連合(EU)が8%減、日本が6%減など、国や地域ごとに削減量は異なっています。議定書には「京都メカニズム」と称し、@排出が増え過ぎた国が他の国の余った排出枠を買うことが出来る「排出量取引」A先進国同士で削減事業を共同で行う「共同実施」B先進国と途上国が共同で行う「クリーン開発メカニズム(CDM)」――の3つの仕組みを設けています。2000年のCO2排出量は約230億トンですが、その24・4%を排出する米国や豪州、リヒテンシュタイン、モナコの先進4カ国が京都議定書を批准しない方針を表明しています。

 目標達成には14%削減

 このように議定書を離脱する国が多かったり、BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)と最近もてはやされている新興国――とりわけ中国は、石油消費量が日本を追い抜いて米国に次ぐ世界2位に達していながら、途上国の範疇に属して削減義務がないなど、国によって削減目標の達成に難易差があることから、日本では産業界を中心に強い不満があります。ドイツは旧東独の効率の悪い発電所やエネルギー消費構造を改善することで削減目標を達成できそうだし、英国は石炭から天然ガスへの転換で削減目標をクリアできる見通しです。電気の85%を原子力で賄っているフランスと、ソ連崩壊後の経済混乱でCO2の排出が大幅に減ったロシアは、先進国でも削減目標ゼロと決まっています。減った分の排出枠をロシアは、日本やEUに売って利益を得ることが出来ます。そこへいくと、日本は90年比で6%減らす義務が生じているうえ、02年度の排出量は90年比で7・6%も増加しており、目標達成には約14%の削減が必要です。これには東電の一連のトラブル隠しで原発の運転が停止し、CO2排出量が多い火力発電に依存した影響が出ています。

 商社、電力が排出量取引

 経産省は今月2日、鉄鋼、電力など11業種の削減目標達成は難しく、「さらなる努力が必要」との調査結果をまとめました。後7年間で14%も削減するには従来の温暖化対策では解決できません。日本の90年の排出量はCO2換算で12億3千7百万トン。これを08年以降、平均で年間11億6千2百万トンに減らす必要があります。EUは1月から域内の排出量取引制度をスタートさせました。1万2千超の事務所に排出枠を割り当て、超過した場合は1トン当たり40ユーロ(約5千5百円)の罰金を科して、積極的な売買を促しています。日本政府も、住友商事が昨年9月に申請した、インドのメーカーが大気中に放出しているフロンガスを分解処理することで排出量5百万トンを獲得するCDM事業など、15件のプロジェクトを承認済みです。三菱商事、三井物産、豊田通商、東電、関電、中部電、電源開発など大手商社、電力会社が排出量取引を活発化させています。

 財界反対で環境税見送り

 環境省は排出抑制策として昨秋、石油、石炭など化石燃料を対象に、炭素1トン当たり2千4百円(ガソリン1リットル当たり約1・5円)を徴収、年間4千9百億円の税収を見込む環境税構想を発表しました。これを各家庭で見ると、電気やガスの使用、車の運転など1世帯当たりの平均炭素排出量は1・376トンで、年間約3千円の税負担となります。同省は税収の約7割、3千4百億円を温室効果ガス削減の環境対策に活用。ハイブリット車や太陽光発電への補助のほか、省エネ家電への買い換え、高効率給湯器の普及などを進めることで、温室効果ガスの4%削減に繋がると想定しました。だが、「課税が重いと企業経営に悪影響が出る」、「費用対効果がはっきりしない」、「素材型産業の空洞化に繋がる」などと産業界の反対に遭ったうえ、ガソリン(揮発油)税などエネルギー関連税との調整や、抑制効果を見定める必要性が指摘され、05年度の導入は見送られました。

 逆に化石燃料争奪が加熱

 しかし、経済躍進中の中国、インドの石油消費の急増や投機筋の先物買いが暗躍して中東の原油価格が高騰。世界各国はリビアやナイジェリア(南西アフリカ)の油田、カナダのオイルサンド、サハリン(ロシア)沖の天然ガスなど新たな石油資源の開発に躍起となっています。特に中国は東シナ海の春暁ガス田開発や沖ノ鳥島周辺の海底資源調査などで日本の排他的経済水域(EEZ)に繰り返し侵入、我が国の安全を脅かしています。1バレル30ドル台で安定していた原油価格は50ドル以上に高騰、ガソリンが値上がりしていますが、ガソリンの消費量はそれほど落ち込んでいません。むしろ、将来の枯渇を見通して化石燃料の争奪合戦が世界で加熱、CO2は増える一方です。中長期的に見ると、ガソリンの高値が続けば、燃費のいい車やハイブリット車に買い換える動きも出て来ようし、メーカーも燃費効率のよい、CO2排出量の少ない車の開発に力を注ぐことになるでしょう。

 代替エネ開発と植林活動

 第1次オイルショックを機に、世界に先駆けて省エネ技術開発を進めてきた日本です。これまでの成功体験をもとに、削減コストがかさむ2酸化炭素撲滅のため、環境税の税収を開発補助金など環境対策に活用することが肝要でしょう。さらには、今はやりの電気と熱の両方を利用して省エネを図る「コージェネレーション」、発電機の排ガスから植物の栄養源・CO2を回収し、温室に注入し発電の余熱で植物を育てる“3恩恵”の「トリジェネレーション」の開発助成に税収を充てるなど、環境税の導入を本格的に論議する時がきたと私は感じています。日本ではNPO法人が“市民風車”を設置するなど風力発電が盛んになってきましたが、太陽光、水力、波力、地熱、バイオマスの発電、燃料電池など排ガスを出さない代替エネルギーの開発・普及が望まれます。14世紀に大流行したペストは、病原菌を媒介するネズミを食べる狐が森林の大量伐採で減ったことが原因といわれています。東アフリカ・ケニアのワンガリー・マータイ女史(環境副大臣)は植樹活動団体「グリーンベルト運動」を起こして昨年のノーベル平和賞に輝いた「緑の闘士」です。私は自民党のベテラン農水議員として、CO2吸収の植林活動にも力を注ぎたいと思っています。