北村からのメッセージ


                    今井副大臣への平戸市の陳情風景


 第103回(2月1日) “郵政国会”開幕 妥協、延長、解散?

 通常国会は小泉首相の施政方針に対する衆参両院の代表質問を終え、衆院予算委を舞台に、北朝鮮制裁の是非、自衛隊のイラク派遣延長、年金改革、三位一体改革、政治とカネなど内外の課題を巡り与野党が激しい論戦に突入しました。その一方で、“郵政国会”の最大焦点である郵政民営化関連法案の3月提出に向けて、政府対自民党の大詰めの折衝が続いています。首相は施政方針演説で「郵政民営化が新しい日本の扉を開くものと確信し、その実現に全力を傾注する」と述べ、6月19日までの会期内に郵政民営化法案を成立させる決意を表明しました。しかし、政府と自民党の激しい綱引きから、民営化法案の提出は大幅に遅れると見られ、7月には東京都議選も予定されているため「会期延長は避けて継続審議とし、秋の臨時国会で成立を目指せばいい」との先送り論が党内に流れています。政府は郵政民営化法案を集中審議するため、政府提出法案を百本以内に絞りました。その中には自衛隊法と防衛庁設置法の両改正案など重要法案が含まれています。私は防衛庁長官政務官として、これらの立案と早期成立に全力を挙げたいと考えています。

 “男子の本懐”と自ら奮起

 「『公務員を減らせ』といいながら民営化に反対というのは、手足を縛って泳げというようなものだ」――。首相は施政方針演説で、“説明責任”が足りないとのマスコミ、野党の指摘を意識してか、約1万1千字の演説の1割を「改革の本丸」郵政民営化に割き、@国民から集めた350兆円もの膨大な資金を公から民に流し、効率的仕組みを作るA資金の“入り口”の郵貯、簡保と“出口”の特殊法人をつなぐ財政投融資制度を改革して「官から民へ」流れを変えるB郵政公社職員が民間人となり、従来免除された税金が支払われ、政府保有の株式が売却されれば財政再建にも貢献する――と噛み砕いて説明。最後には浜口雄幸・ライオン宰相の「男子の本懐」を引き合いに、民営化達成の決意を強調しました。軍縮や緊縮財政を断行した昭和初期の浜口首相は、東京駅で狙撃されて重傷を負いましたが、「男子の本懐」と語って主義を曲げなかったことで有名。首相は「『恐れず、ひるまず、とらわれず』の姿勢で改革を断行することは、まさに、私の『本懐』だ」と訴え、反対勢力との闘いを前に、自らの気持ちを奮い立たせました。

 「坐春風中」に北風吹くか

 さらに首相は、@平成19年4月に公社を民営化A持株会社の下に窓口サービス、郵便、郵貯、簡保の4機能ごとに事業会社を置く「4分社化」B郵便事業にユニバーサル(全国均一)サービスを義務づけC職員は国家公務員の身分を離れ民間人へD民業圧迫への監視組織を活用しながら段階的に業務拡大――など昨年9月に閣議決定した民営化の基本方針を詳しく説明。こうした高いハードルと決意を国民に示すことで、政府と自民党の協議に先制攻撃を加え、主導権を確保しようとしました。読売新聞によると、これには「アホらしくて聞いていられるか」と、郵政事業懇話会会長の綿貫民輔・前衆院議長が席を立って退場。堀内光雄・前総務会長が「首相はこれからの道のりに地雷を敷いた。党内は大変な状態になる」と前途多難を予言。参院での首相演説では拍手さえなく、議場から「机上の空論だ」と怒声が上がったそうです。首相は1月19日、日本記者クラブで講演した際にも、現在の心境を「坐春風中」と揮毫し、「厳しい批判や反対にあっても、心は春風でいたい」と改革断行の決意を表明していますが、2月は強い北風が吹き荒れそうです。

 奇跡に挑む小泉改革の強気

 政府VS与党の闘いの口火を切ったのは、1月17日に首相官邸で開かれた郵政民営化をテーマとした「官邸コンファレンス(会議)」です。竹中平蔵郵政民営化相の入れ智恵で開いた同会議は、関係閣僚、国内外の有識者ら約40人が集結し、民営化の必要性をアピールし、世論を盛り上げる応援団の討論会となりました。当日は阪神大震災から丸10年の日。現地の追悼式典には天皇、皇后両陛下がご臨席されるとあって、当然、首相の出席が検討されましたが、首相は同会議を優先し「与野党すべての政党が反対する郵政民営化は奇跡の実現だ。奇跡に挑むのが小泉改革」と挨拶、ここでも民営化実現に強い自信を示しました。会議には民営化の先輩であるドイツポストのクラウム・ツムウィンケル会長や奥田碩日本経団連会長、北城恪太郎経済同友会代表幹事、生田正治日本郵政公社総裁らが顔を揃え、「民営化が効率的で繁栄をもたらす」(ドイツポスト会長)などと支援しました。自民党本部で売り出した武部勤幹事長発案の「郵政紙芝居」(5千円)もよく売れています。

 出発点から火花散らす

 本番の「郵政改革に関する政府・与党協議会」は同19日に首相官邸で、細田博之官房長官、竹中郵政民営化相、麻生太郎総務相、谷垣禎一財務相、伊藤達也金融相の5閣僚ら、与党から自民、公明両党の幹事長、政調会長、参院会長ら14人が出席してスタートしました。初日は10分程度のセレモニーに終わりましたが、翌週26日からは官邸と党本部で交互に開く「ホームアンドアウエー」方式で、@郵便局の設置基準A郵貯、郵便保険(簡保)のサービス形態B職員の身分――などを巡って火花を散らしています。政府は3月中旬までに法案を提出する方針ですが、そもそもの論議の出発点である民営化の経営形態から双方の主張が食い違い、早期決着は難しい情勢にあります。首相が施政方針演説で示したように、政府は「4分社化」案を機軸に、「郵便事業のユニバーサル(全国均一)サービスを維持するが、郵便局の設置基準は別途検討する」など、昨年9月に閣議決定した基本方針を貫徹しようとしています。

 党は3事業一体を主張

 これに対し、自民党の大勢は民営化それ自体に反発し、郵政改革関係合同部会(園田博之座長)が昨年末に打ち出した「郵便、郵便貯金、郵政保険の3事業すべてにユニバーサル(全国均一)サービスを義務づけ、現行水準の郵便局数を維持すべきだ」との「3事業一体の民営化」を主張。政府が目下、これら要求にゼロ回答しているのを不満として、激しく衝突しています。職員の身分についても政府が「民営化と同時に国家公務員の身分を離れる」としているのに対し、党側は「民営化後も公的な使命を担う誇りが持てるよう配慮し、雇用の安定を確保する」とし、約2万4千7百郵便局の維持と約27万職員の安定雇用を強く求めています。こうした中で、片山虎之助参院幹事長(前総務相)は、20日に出版した著書「共存共栄の思想」で、独自の郵政改革案を発表しました。

 妥協の“虎(之助)の巻”

 それは、政府の基本方針にある「窓口ネットワーク会社」は新設せず、「郵便、郵貯、簡保の3事業にユニバーサルサービスの維持を義務づける」ことを柱に、経営形態では@3事業一体の公社のまま、民間と同じ税負担を課して公正な競争条件を確保するA窓口ネットワークと郵便事業は引き続き公社が行い、貯金と保険業務は民間会社に移し窓口金融業務は公社に委託。公社職員は国家公務員とするB窓口ネットワーク機能を有する持株会社の下に、郵便、貯金、保険の3事業会社を子会社として設立する――の3案を提示し、首相と自民党の対立回避の妥協材料を提供しました。3案の@とAは、党総務部会や郵政事業懇話会(会長=綿貫民輔前衆院議長)など郵政族議員が主張する「郵政公社を存続する」形の改革案、Bは武部勤幹事長らが“落とし所”に考えている「3分社化」案で、妥協案を生み出す“虎(之助)の巻”といえるものです。

 妥協策の模索続く

 政府、与党の協議では、「4分社化」を掲げる首相の方針を一挙に覆すのは難しく、双方が「名を捨て実を取る」形で歩み寄る妥協策の模索が続けられています。例えば、党側が求めている「現行水準の局数維持」について政府は、日本郵政公社法の施行規則にある「いずれの市町村にも1以上の郵便局を設置」との基準を明記する方針ですが、将来は3分の1に減らす市町村合併が進行すれば、全国の市町村数はわずか1千となり、逆説的には「2万4千7百郵便局は大幅、勝手に減らせる」との考えも成り立つわけです。このため、与謝野馨政調会長は「国民が使いやすい距離という基準が英国にはある」と地方講演で述べ、設置基準に距離の要素を盛り込むことで決着を図る考えを示しています。

 首相と郵政ドン会談で決着か

 郵貯、簡保のユニバーサルサービスについても、妙案が浮上しています。郵貯、簡保が主な収益源である特定郵便局は、過疎地を中心に統廃合に追い込まれるとの懸念が党側には強くあります。そこで、郵貯、郵便保険会社が窓口ネットワーク会社に支払う窓口業務の委託手数料の消費税を減免すれば業務委託がしやすくなり、実質的に全国均一サービスが継続されるのではないかと、政府内で密かに消費税減免案が検討されています。ただ、窓口会社は民間企業からも業務を受託するのに、郵政事業だけ特別扱いは出来ないと、財務省などが難色を示しており、実現できるかどうかは未知数です。このように政府、与党の協議機関では妥協策をめぐり調整が重ねられていますが、参院で法案通過のカギを握る青木幹雄参院議員会長は「改革は挙党態勢でないといけない」と首相にクギを刺し、最終的には首相と郵政ドンの綿貫郵政懇会長が会談し、決着することを進言しているようです。

 民営化花道論が台頭

 合意が成立しないまま政府が法案提出を強行したり、党内に不満を残したまま政府と党執行部が妥協すれば、議会制民主主義を否定するものとして、衆参両院の採決で多くの造反者が出るなど、波乱含みの展開になります。しかし、首相と与党が痛み分けで妥協すれば、首相が抵抗勢力に屈したとの印象は否めず、首相が力の源泉としてきた世論の支持が急速に薄れ、「ポスト小泉」の動きが加速されかねません。かといって、調整が長引けば法案提出も遅れ、国会の会期延長か、秋の臨時国会で決着を図るしかなさそうです。7月都議選を国政選挙並みに重視する公明党は、衆院で継続審議にして仕切り直しし、臨時国会で処理すべきだと主張しています。仮に成立を臨時国会に先送りしても、総裁の残り任期が1年間に狭まると、民営化花道論が台頭し、首相はレームダック(死に体)呼ばわりされ、妥協、国会先送りのいずれを取っても、首相にとっては喜べる結果ではありません。

 窮して変ずれば通ず

 首相は記者団に「直球も有ればフォークボール、カーブ、シュートもある。持ち球は結構あるんだよ」と余裕を見せていますが、協議が激突・決裂すれば首相は衆院解散カードを使って中央突破を図る“郵政解散・分裂選挙“の最悪事態を選択しそうです。妥協か、会期延長か、それとも国会解散か。首相の選択肢はこの3つに絞られますが、首相主導の政策決定に批判的な青木参院議員会長は1月25日の参院代表質問で、「我々党員は総裁選で郵政担当相を選んだのではなく総裁を選んだ。民営化では国家、国民、地域のため、共有する基本認識を持つため、同じ土俵で腹を割って議論してほしい」と厳しく注文をつけました。そうした中で、同氏は「混乱して得するのは民主党だけだ。どっちが勝った負けたの問題ではない」と首相が解散に踏み切る事態を憂慮しています。参院の動きを注視している中曽根康弘元首相は、「衆院で法案の大修正がなければ、参院でストップするだろう」、「変人は変身しつつある」などと講演やテレビ出演で予言しました。先の役員会で首相が民営化について「党内でよく話し合ってほしい。窮すれば通ず、だ」といったのに対し、久間章生総務会長は、すかさず、「窮して変ずれば通ず、ですよ」と応じました。中曽根、青木、久間氏だけでなく我々党員も、円満な決着が図られるよう、首相の“変身”に期待をかけているところです。