北村からのメッセージ

 第102回(1月16日) 指揮・命令を一元化 省昇格法案も


 昨年12月26日にインドネシア・スマトラ島西方沖で起きた大津波は、死者・行方不明約18万人を超える史上稀な大惨事となりました。「アジアの一員として資金、人的貢献、知見で最大限の支援を実施する」という1月4日の小泉首相の指示を受け、防衛庁は陸海空3自衛隊約1000人を直ちに被災地へ派遣しました。これには輸送活動や任務の調整など3自衛隊の指揮・命令系統を一元化する「統合運用」を事実上初めて実施しています。お陰で私は新春早々防衛庁首脳会議に出席したほか、8日は陸自習志野駐屯地(千葉県)で行われた第1空挺団の初降下訓練を視察、12日は佐世保市の陸自相浦駐屯地、13日には海自佐世保総監部も相次いで視察するなど、とんぼ返りで多忙な正月の公務と政務の日程をこなしました。地元の佐世保基地視察は県議時代から度々行い馴れていますが、制服こそ着ないまでも、“4つ星”の「政務官旗」をなびかせての“お国入り”には、いささか緊張を覚えました。放浪の天才画家・山下清氏は「兵隊の位だと、どれだけ偉い?」と聞くのが口癖だったそうですが、ちなみに防衛庁長官政務官の位は昔の元帥だそうです。

 公明も「省」昇格を容認

 佐世保基地の視察では、被災地救援に14日出港する護衛艦「くらま」を激励した他イラク支援活動から帰国途中のインド洋で急遽、遺体収容などに従事した補給艦「はまな」の乗組員から、悲惨極まりない大津波の模様を聞きました。さて、いよいよ通常国会は21日に開幕、6月19日まで150日間の長丁場となりますが、政府・与党は防衛庁を省に昇格させる「防衛省設置法案」を提出する方向で調整に入りました。郵政民営化関連法案と並ぶ重要法案ですが、政務官の立場から法案作りに大いに貢献したいと考えております。自民党の「防衛庁を『省』にする国会議員の会」(会長・瓦力元防衛長官=衆院、関谷勝嗣元建設相=参院)は既に昨年末、議員立法で法案を通常国会に提出し、成立を目指すことを決議しています。民主党にも「国防省昇格を目指す議員懇談会」がありますが、昇格法案に慎重姿勢を示していた公明党が提出を容認する方向に傾いてきたため、関谷会長らは与党内調整を進めるとともに、野党の協力も得たいとしています。防衛庁が省に昇格すれば、閣議案件を独自に提案できるほか、独自の予算要求や省令の制定が可能になり、国の根幹である安全保障や危機管理体制が強化されます。

 法案提出方法は流動的

 同法案は、防衛庁設置法を基本的に踏襲するうえ、防衛長官の呼称を「防衛相」とするなどの細かい内容が盛り込まれますが、一部には行政機関の在り方を決める法案なので、内閣提出法案とする方がベターだとの意見もあり、提出方法はなお流動的要素があります。
省への昇格は、武力攻撃事態法や国民保護法など有事関連法が相次ぎ制定されて、防衛庁を中心に危機管理体制を整える必要性が高まったこと、イラク派遣やインドネシア・スマトラ島沖大津波などの復興支援で自衛隊の即応性をもった幅広い活動が求められている実績から、主要国と同様の国防組織体制を整えることは当然です。国民は自衛隊員の献身的な復旧活動を高く評価しており、昇格に異論はないと判断されます。遅きに失した感は否めませんが、野党が歩み寄りを見せた好機を捕らえ、同法案を一気に成立させなければなりません。

 過去最大の陸海空千人派遣

 小泉首相は6日にジャカルタで開かれたインド洋大津波の被災国支援緊急支援会議で、@被災国や国際機関に計5億ドル(約520億円)の無償資金を供与A輸送、医療・防疫対策で自衛隊を含む国際緊急援助隊を派遣B国際的な津波早期警報システムを各国と協力して構築――の包括的な支援策を表明しました。防衛庁はこれに先立つ4日、大野功統防衛長官が国際緊急援助隊派遣法に基づき、陸海空3自衛隊に派遣準備命令を発令、空自小牧基地(愛知県)のC130輸送機、海自呉基地(広島県)の大型輸送艦「くにさき」などを続々派遣しました。派遣規模は、@陸自の輸送ヘリ5機と医療チーム(約200人)A海自の輸送艦、護衛艦、補給艦の計3隻(約600人)B空自のC130輸送機2機(約80人)――で、国連平和維持活動(PKO)を含めた過去の国際協力の中では最大の約1000人派遣となりました。

 沖停泊の「くにさき」が宿舎

 物資輸送はC130がタイ・ウタバオ基地を拠点に、スマトラ島東海岸のメダンまで水、食糧、各国の援助物資などを運んだ後、陸自のCH47大型輸送ヘリ3機とCH60多用途ヘリ2機が西海岸の被災地に届けています。また、海自輸送艦を同島北部沖に停泊させ、陸自ヘリの発着基地や隊員が寝泊まりするホテルシップ(宿泊艦)に活用しています。島北部のバンダアチェなど被災地の消毒や被災者治療をする陸自の防疫・医療部隊は、武器を持たずに活動していますが、現地が反政府ゲリラの拠点であるため、沖合停泊の「くにさき」を宿舎にし、ホーバークラフト型揚陸艦「LCAC」で被災地を往復しています。自衛隊の国際緊急援助活動は、1998年のハリケーンに襲われた中南米ホンジュラスに派遣して以来5回目。食住や移動などで自己完結能力があり、機動性に富む軍事組織の復興支援は被災地で大いに感謝されています。国連主導ですが、アジア太平洋の大きな枠組みの中で自衛隊が多国間の安全保障体制の構築に参加することは極めて意義深いことです。

 統合運用の成果上がる

 防衛庁は自衛隊法改正を経て、来年3月に新設する「統合幕僚監部」に3自衛隊の運用部門を併合する統合運用体制に移行する予定ですが、そのテストケースとして今回の派遣では、輸送活動や任務の調整、燃料補給・機体整備などを陸海空一体で実施することで迅速・効率的な支援を行いました。ウタバオ司令部では、自衛隊の窓口を一本化して各国軍や関係国との輸送調整や情報収集を行ったうえ、陸海空の輸送部隊、輸送艦に指示を出しています。これにより陸海空3自衛隊の指揮・命令系統を一元化する「統合運用」の成果は確実に上がりました。自衛隊の活動状況を視察した大野防衛長官は10日夜、帰路のシンガポールでの記者懇談で、「自衛隊の国際平和協力活動を『付随的任務』から『本来任務』に格上げするための自衛隊法改正案は、どんなことがあっても次期国会で必ずやりたいと」語りました。「本来任務」化は、新「防衛計画の大綱」にも盛られていますが、インド洋での多国間の連携や3自衛隊一体となった救援活動は、「本来任務」への法制化を実現するうえで、大いに役立ちました。

 緊急事態基本法案も提出

 一方、政府は多国籍軍による紛争処理や災害復興など、国際平和活動への自衛隊の協力をより可能にするため、国連平和維持活動(PKO)協力法やテロ特措法、イラク特措法といった個別の特措法ではなく、任務遂行に武器使用の緩和を含めた、自衛隊海外派遣の恒久的な法律を制定しようと検討に入っております。また、自衛隊の「統合運用」ばかりでなく、大規模テロや大災害などに対処し、内閣で情報を一元的に分析・評価する組織として閣僚級の「統合情報会議」と、専門家からなる「統合情報本部」を新設する「緊急事態基本法案」も自民、公明、民主の3党で協議し成案を得て、通常国会で成立を目指すことになりました。危機管理対応の面から、同法案の条文作りで防衛庁の果たす役割は大きく、防衛政務官の仕事は益々多忙になりそうですが、精一杯、頑張りたいと思っています。