北村からのメッセージ

 北村からのメッセージ第101回(1月元旦) 激変・凶変の酉年 郵政解散含み緊迫

 明けましておめでとうございます。皆様にはすばらしい新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。百年前の元旦は旅順陥落。3月は奉天会戦の大勝。5月は佐世保基地から出陣した東郷平八郎大将(後の元帥)率いる連合艦隊が日本海海戦でバルチック艦隊を撃破し、日露戦争の勝利に沸きました。そして、60年前の8月15日は、逆に第二次世界大戦に敗れた終戦記念日。酉年は1945年の敗戦を含め、伊藤博文元首相の暗殺(ハルピン駅=1909年)、原敬元首相の暗殺(東京駅=1921年)と激変、凶変が多い年です。今年は通常国会で郵政民営化法案が成立するか。首相が局面打開に「郵政解散」の伝家の宝刀を抜くか。それとも、1月末のイラク暫定政府国民議会選挙ができないほどイラク情勢が悪化して小泉政権が大きく揺らぐか。内外ともに多難で激動が予想されます。激務についているイラク派遣の自衛隊員諸君が平安に任務を遂行することを祈っております。通常国会は1月21日に開幕しますが、実質増税となる定率減税の半減、年金改革、三位一体改革、自衛隊のイラク派遣1年延長など、内外の重要課題を巡って与野党が激しい攻防を続けると予想されます。その合間を縫って私は、在日米軍基地の再編問題など防衛庁長官政務官としての公務も多忙となりそうです。本年も倍旧のご鞭撻をお願い申し上げます。 

 4年連続の緊縮予算

 「いい予算に仕上がった。一般歳出は実質のみならず、名目(実額)でも前年度以下になった。公共事業も防衛もマイナス。着実に構造改革が進んでいる」――。小泉首相は予算の出来映えを手放しで評価しました。谷垣禎一財務相も@一般歳出の3年ぶり減A国債の新規発行額の4年ぶり減B財政の健全度を示すプライマリーバランス(基礎的財政支出)の赤字の2年連続縮小――の3つが改善できた、と喜んでいます。05年度予算案の一般会計総額は04年度当初予算比0・1%増の82兆1829億円と微増ですが、政策経費に使う一般歳出は0・7%減の47兆2829億円と3年ぶりに減り、新規国債発行額も34兆3900億円と4年ぶりに前年度を約2兆円下回るなど、4年連続の緊縮型予算となりました。歳入では、景気回復の持続を前提に税収を04年度当初予算から2兆円増える44兆円と見込んだため、国債発行額が減額出来たわけです。

 国民1人606万円の借金

 しかし、国と地方を合わせた借金は、05年度末で国内総生産(GDP)の1・5倍の774兆円に達し、国民1人当たり606万円の借金を背負う形になります。社会保障費は初めて20兆円の大台に乗りました。高齢化社会で今後も社会保障費は高い伸び率が予想されます。少子高齢化の進展は、年金改革の阻害要因となる一方、地方の過疎化を助長して地域格差を拡大、国と地方の税財政を見直す三位一体の改革にも影響を及ぼしています。郵政民営化の前哨戦となった三位一体の改革は、第99回のホームページで詳報しましたが、折衝は昨年末の予算編成まで大もめに揉めました。全国知事会(会長=梶原拓岐阜県知事)など地方6団体が、税源移譲の見返りにまとめた総額3・2兆円の補助金削減案に対し、関係省庁は自民党の族議員をバックに猛然と反発したからです。マスコミは「自治体、政治家、官僚の“三位バラバラ”改革」と揶揄しましたが、3者の折衝では私も及ばずながら一役果たしました。日経の12月17日朝刊は次のように伝えています。

 昨年度と同額に1役果たす

 主見出し=「自民・自治体 交付税で連携」 小見出し=「補助金削減での対立一転」
本文=【自民党と地方自治体が来年度予算での地方交付税確保に向け、足並みをそろえて財務省に「圧力」をかけている。今年度は交付税削減の影響で予算編成に支障を来たした自治体が続出したため、自民党も自治体も16兆9千億円の現状維持を防衛ラインとした。補助金削減では対立した両者が今度は連携し公明党も巻き込んで「与党・地方連合」の構図である。「予算編成終盤になっても財務省は交付税の大幅削減を目指している。断じて許せない」。16日、自民党の有志議員でつくる「地方自治を憂える会」(二階俊博会長)の北村誠吾氏らが細田博之官房長官に申し入れた。「私の地元の島根も財政窮乏県だ。地方が落ち込まないよう、財務省と総務省が折衝している」と細田長官は応じた。「昨年は所得譲与税の形で税源移譲を勝ち取り、安心したところを財務省にやられた。そうはさせない」。自民党幹部は気勢をあげる。(後略)】――。事務局長の私が中心人物のように日経には書かれ、いささか面映いことですが、同16日に武部勤幹事長ら党三役、麻生太郎総務相、谷垣財務相らにも申し入れた「憂える会」の要請が功を奏し、三位一体改革の焦点だった地方交付税交付金は実質的に昨年度と同額を勝ち取り、地方自治体からは大変喜ばれました。

 正月酒と関係修復に酔う

 戦後27人の首相のうち、4回目の正月酒を飲めたのは、吉田茂、池田勇人、佐藤栄作、中曽根康弘の4氏だけですが、その仲間入りを果たしたラッキーな小泉首相は、自画自賛の「いい予算」を仕上げて、「我が世の春」を謳歌していることでしょう。首相は自民党の森喜朗前首相、青木幹雄参院議員会長がタカラジェンヌの扇千景参院議長と観劇に行くことを聞きつけ同行を希望、暮れの12月11日に宝塚歌劇団の星組公演を楽しんだ後、夕食を共にしました。小泉政権を支えてきた森、青木両氏ですが、昨年9月の内閣改造・党役員人事で首相が挙党体制に配慮を見せず、三位一体改革でも独走したことに不快感を示し、ギクシャクした関係が続いていました。このため首相は、郵政民営化問題が大詰めを迎える前に、観劇を口実にほぼ3ヶ月ぶりに関係修復を図ったものです。だが、この手打式は効き目があるかどうか。自民党は暮れの12月21日の総務会で「郵政改革の方針」(別ページの第93回「北村の政治活動」で詳報します)を了承しましたが、政府の「基本方針」との隔たりが大きく、年明けから始まる調整の難しさを際立たせています。

 郵政で解散権チラつかす

 小泉首相や竹中平蔵郵政民営化相は政府の基本方針通りに民営化を進める強気の姿勢を崩していませんが、党の方針は「民営化反対、3事業一体の堅持という意見が多数ある中で議論を重ねてきた」と明記し、郵便、郵貯、郵便保険、窓口サービスの4事業ごとに分社化するとした政府の基本方針を、党が了承したわけではないとの立場を示しています。「(落選議員は)早く解散してもらいたいだろうな。私は12回選挙をやったが、好きで選挙をやっているわけでない。解散させないでくれよ」――。首相は昨年秋、臨時国会終了後に武部幹事長らと会食した際、解散権をチラつかせて郵政民営化の支援を訴えました。神崎武法公明党代表も「郵政民営化法案が成立しなければ、首相は解散に踏み切る腹がある。その時自民党は壊れる。自民党内に、それでも抵抗し政権を倒す度胸があるのか」と講演しました。同氏は、公明の支援がなければ自民は敗北することを言外に匂わせ、首相を支援したわけです。

ハプニング解散も
武部幹事長はこれらの発言を受けて昨年末、「郵政民営化の問題を含めて、私は解散を恐れていない。場合によっては(小泉首相は)解散権を発動すべきだ。国民のために自民党が潰れた方がいいというなら、その覚悟で臨まなければならない」と講演で語り、民営化反対派を牽制しました。これには、青木氏が「幹事長が解散の話なんかしちゃいかん」と一喝。武部氏の出身派閥である山崎派からも「幼稚な発言。思想弾圧だ」と辛らつな幹事長批判が飛び出しました。亀井静香元政調会長も「解散風を吹かせれば羊はおとなしくなると思っているが、羊はバカではない。永田町に牙がある羊はそういないが、入れ歯でもいい。運命を甘受するわけにはいかない」と首相や党執行部を批判。民主党の岡田克也代表までが便乗し「郵政で解散したら自民党自身が壊れてしまう。武部発言は党内引き締めにもなっていない」と言及するなど、年末は季節外れの解散風が吹きました。通常国会では内政の三位一体、年金、郵政の諸改革、政治とカネ問題。外交防衛の自衛隊派遣1年延長、在日米軍再編、北朝鮮と拉致、日中打開――などの課題が山積しています。難しい国会運営に加え、三月の法案提出に向けた首相と自民党の郵政民営化を巡る調整が難航すれば、ハプニング好きな首相のこと。伝家の宝刀(解散権)を抜くことも当然予想されます。私は常在戦場で心を引き締めているところです。

 東シナ海に高まる緊張

 ところで、日露戦争の勝利から百年。東郷大将とともに出陣した秋山真之・連合艦隊参謀(後の海軍中将)とその兄で日本騎兵隊の父とされた秋山好古大佐(後の陸軍大将)の兄弟は、司馬遼太郎氏が「坂の上の雲」で世に知らしめた日露戦争の英雄。正岡子規とも親交がありました。百年間に日本は文明開化、富国強兵の軍事大国路線を突っ走り、歴史観で問題にされているように日露戦争に勝利し、日韓併合、台湾・旧満州の植民地支配を進めました。そして、長崎の原爆投下で敗戦を迎え、全てを失い、民主主義の平和国家で再出発しました。わずか一世紀の間にロシアと中国で革命が起きましたが、冷戦の崩壊でソ連邦は解体し、中国は開放経済で高度成長を遂げ、二十一世紀はBRIC(ブラジル・ロシア・インド・中国)の時代と呼ばれています。東シナ海では中国が海底ガス田の発掘に着手、中国原潜が日本領海を侵犯し、明治時代とは違った新たな緊張が高まっています。

 還暦迎える戦後世代

 大正生まれの“おしん政治家”故・竹下登元首相は「大正、昭和一桁は明治と昭和世代の繋ぎ役」が口癖のようでした。その大正も明治と同様「遠くなりにけり」で、昭和一桁は今や古希から米寿の世代に達し、私を含め戦後生まれの二桁の団塊世代は今年から還暦に達し始め、定年退職期を迎えています。寒村・漁村だった佐世保も東郷元帥が軍港を築いてから大きく発展しましたが、元寇襲来の昔から国土防衛の拠点であることは変わらず、ますます基地の重要性は高まっています。1昨年、長崎から最後の炭鉱が消えたように、エネルギーは百年間に石炭から石油に、さらに無公害の燃料電池開発へと目まぐるしく変わろうとし、生活様式や価値観は大きく変わって、平均寿命は倍増しました。しかし、物質文明が豊かになった半面、教育と伝統文化は荒廃、予想もつかない残忍、凶悪犯罪が多発しています。われわれ政治家も「温故知新」、「脚下照顧」の精神で百年間の移ろいをよく吟味し、郷土の新たな発展と国家の安全・繁栄を目指し、21世紀へ強く羽ばたかねばならないと念じています。年頭に当たり皆様のさらなるご声援を期待いたしております。