北村からのメッセージ

 第100回(12月16日) 中国原潜が領海侵犯 防衛大綱に中国・北鮮の新脅威

 本号が今年の最終回ですが、お陰様で国会議員に初当選して以来、私のホームページも4年半で100回を数えました。皆様のご支援のたまものと感謝致しております。HPは毎月1日と16日の月2回更新、「1.北村からのメッセージ」で私の政治信条など、「2.北村の政治活動」では政治の取り組みや国会質疑などを報告して参りました。今年2月からは、バックナンバーで初回以降、毎号を随時に検索できるようにし、その都度訪問者(アクセス)数を表示するなど紙面を刷新しましたが、10ヶ月間で1万5千回以上、1日平均50回のアクセスがあり、皆様との良好なコミュニケーションが図られていると、大変喜んでおります。ご意見や読後のご感想があれば、どしどしメールして下さることをお願い申しあげます。さて、今年も残りわずか。政府はこのほど、新たな「防衛計画の大綱(防衛大綱=10年間)」と約1兆円減額の次期中期防衛力整備計画(次期防=05−09年度)を策定し、イラク派遣自衛隊の期間1年延長を決めました。私は防衛庁長官政務官として、次期防初年度の防衛予算編成に全力を挙げています。

 周辺に不透明・不確実要素

 新防衛大綱は、8月16日付のHPで詳しく紹介した通り、首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長=荒木浩・東電顧問)の9月答申をもとに、@テロや弾道ミサイルなど「新たな脅威」に対処A日米安保体制下の日米役割分担Bイラク支援の自衛隊活動に法的地位――などを中心に、従来の大綱を見直しています。特に先の中国原潜による日本の領海侵犯や北朝鮮の核武装、弾道ミサイルの整備などを、日本周辺地域の不透明・不確実な要素として、中国と北朝鮮を名指しして明記しています。まず【安全保障環境】では「大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散、国際テロ組織等の活動を含む新たな脅威への対応が、今日の国際社会にとって差し迫った課題」であるとし、「わが国周辺には、朝鮮半島や台湾海峡を巡る問題など不透明・不確実な要素が残されている。北朝鮮の軍事的な動きは、地域の安全保障における重大な不安定要因であるとともに、中国海・空軍の近代化や海洋での活動範囲の拡大などの動向には注目していく必要がある」と記述しました。これまでは旧ソ連を名指したものの、中国、北朝鮮を明記したのは今回が初めてです。

 国際平和協力活動を重視

 次に【安保基本方針の日米安保体制】では「情報交換、各種の運用協力、弾道ミサイル防衛における協力、装備・技術交流等を促進」とし、【防衛力の在り方】では「即応性や機動性を備えた部隊を編成、新たな脅威や多様な事態に実効的に対応。冷戦型の従来の対機甲戦、対潜戦、対航空侵攻を重視した整備構成を転換・削減するが、基盤的な部分を確保し弾道ミサイル防衛体制を整備する。国際平和協力活動に適切に取り組む体制や、自衛隊の任務における適切な位置づけを含め、所要の体制を整える」としています。最後に予算編成などに当たっての【留意事項】として「格段に厳しさを増す財政事情を勘案し、一層の効率化、合理化、経費の抑制を図る。5年後には、その時点における安全保障環境、技術水準の動向等を勘案し、修正する」と結んでいます。政府は12月10日の閣議で、新防衛大綱と次期防を正式に決定しました。最大の焦点とされた陸上自衛隊の編成定数は、現大綱から5千人減の15万5千人(常備自衛官14万8千人、即応予備自衛官7千人)とし、新大綱と並行して策定を進めてきた次期防の総額は現中期防より9240億円少ない24兆2360億円としました。武器輸出3原則の見直しは、公明党の反対もあって、輸出解禁はミサイル防衛(MD)に限定。大綱には盛り込まず、官房長官談話にとどめました。
  
 1兆円削減は初のケース

 新大綱の策定では、財務省が厳しい財政事情の中で、ミサイル防衛システムの導入に伴う費用をまかなうため、従来型防衛費の削減を強く主張し、当初は陸自定数を4万人減の12万人(うち常備11万人)とする大幅削減案を提案。これに対し、防衛庁は新大綱が目指す「多機能、弾力的、実効性」のある防衛力を整備するには、少なくとも現状規模を維持する16万2千人(うち常備15万2千人)が必要と譲らず、調整が難航していました。結局、ミサイルや大規模テロなど新たな脅威への対処やイラク復興支援活動など従来の枠組み以外の国際協力任務が増えたことから、財務省は人員削減案を断念する代わりに次期防予算総額約1兆円の大幅削減を勝ち取り、陸自定数では妥協しました。次期防総額がマイナスになったのは初めてのケースです。主要装備では、敵戦闘機の迎撃と陸上や海上の目標を攻撃する能力を併せ持つ、F4後継としての多目的新型戦闘機を7機導入します。

 自民内にも派遣延長慎重論

 【防衛力の在り方】で取り上げた通り、政府は、12月14日で期限切れとなった自衛隊のイラク・サマワ地区での復興支援活動を継続するため、大野功統防衛庁長官や武部勤自民党幹事長らが現地を視察したうえ、野党の反対を押し切って派遣期間をさらに1年間延長しました。再選を果たしたブッシュ米大統領が、イラク中部のスンニ派三角地帯のテロ組織拠点・ファルージャ地区へ総攻撃をかけたことから、戦線は逆に“モグラ叩き”のようにイラク全土に拡大。政府が「非戦等地域」と認定して自衛隊を派遣したサマワ地区にもロケット弾など8発が宿営地に被弾したうえ、同地区の治安を担当していたオランダ軍が来年3月には撤退するため、野党ばかりでなく自民党実力者の多くも派遣延長に慎重論を唱えていました。しかし、政府は「国連平和維持活動やイラク復興支援など自衛隊活動の法的地位確立」を重視し、@自衛隊の給水活動などはサマワ地区住民に深く感謝されているAイラク暫定政府の来年1月末の国民議会選挙を前に撤収すれば、これまでの支援活動が“元の木阿弥”になるB自動浄水施設など政府開発援助(ODA)に段階的に切り替えていくまで駐留すべきだ――などを理由に、派遣延長を決定しました。派遣自衛隊諸君の労苦に深謝し、平安に援助任務が遂行できるよう祈念します。

 謝罪なく靖国参拝に抗議

 ところで、中国海軍の原子力潜水艦が11月10日午前5時40分ごろ、沖縄県宮古列島の多良間島周辺の日本領海を潜航し、約2時間にわたって領海約12海里(22キロ)を侵犯、午前8時前、東シナ海の公海に抜けました。町村信孝外相は同12日、程永華中国公使を呼び、「国家主権の侵害は極めて遺憾」と抗議し、謝罪を要求しましたが、中国側は「事実を調査中」と態度を保留、数日経って「遺憾」の意を表明したものの、謝罪はなく、厳格な報道統制を敷いて中国国内ではほとんど伝えませんでした。同月20、21日にチリ・サンティアゴで開かれた太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせた日中外相会談で、中国側は遺憾の意を表明しましたが、直後の日中首脳会談で胡錦濤国家主席は原潜問題に直接触れず、東シナ海のガス田開発と合わせ、「日中間の諸懸案は、大局的見地に立って、解決していきたい」と述べるにとどまっています。小泉首相が「中国のメンツに配慮」(外務省幹部)し、領海侵犯事件の再発防止を求めただけで、抗議も謝罪も要求しなかったからですが、胡主席は逆に「日中両国の政治交渉停滞の原因は、日本指導者の靖国神社参拝にある」と断言し、首相に靖国参拝の中止を厳しく求めました。

 首相、ODA見直しで逆襲

 中国の温家宝首相も同月30日、ラオス・ビエンチャンで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の際に開いた日中首脳会談で、「歴史に鑑み、将来の発展を期そう。問題を適切に処理して頂きたい」と、重ねて首相の靖国参拝の中止を求めました。これには、対中協調姿勢を演じてきた首相も反発し、「心ならずも戦争で倒れた人々への慰霊の気持ちからで、不戦の誓いを新たにするものだ」と持論を説明したうえ、中国への政府開発援助に関し、「中国が将来、援助する側に回って頂ければと期待している。大局的に今後のODAのあり方を考えていきたい」と、やんわり“中国のODA卒業”見直しを示唆し、逆襲しました。安倍晋三幹事長代理は「中国覇権主義の現れだ」と講演で述べましたが、参議院が同月10日、軍事力増強を理由に対中円借款の廃止・縮減を求める調査報告書をまとめるなど、中国の高圧的態度には政界はもとより国民の間でも不信感が高まっています。

 海洋資源めぐる日中摩擦

 読売新聞の編集手帳は侵犯事件発生時に、@中国向け円借款は昨年度967億円だが、日本の援助に資金繰りを助けられ、毎年2けた台ペースで軍事費を増やしているA日本にすればカネは出ていく、軍事的な脅威は増すで、お人よしの援助を見直す(参院の)動きは遅きに失したが当然B中国原潜の日本領海侵犯は「おかげさまで領海侵犯ができるほど軍事力が整いました」とお礼参りにきたようにも見えないが、迷惑な話――と痛烈に批判しています。昨年の日中貿易総額は1324億ドル(前年比30・4%増)で、高景気を持続する中国にとって日本は最大の貿易相手国。日本の対中投資額(契約ベース)も前年度比65%増えています。半世紀を経過した日本ODA資金のやり繰りで、中国は軍事力増強ばかりか、発展途上国に資金援助しているというから、日本の「お人よしも極まれり」といったところでしょう。中国原潜の日本領海侵犯には、2つの大きな問題点があります。1つは、東シナ海の日本が主張する排他的経済水域(EEZ)の境界線近くで、中国が進める春暁ガス田開発など海洋資源の権益をめぐり、日中間の摩擦が深まっていることです。

 危機管理態勢が不十分

 もう1つは中国の海洋戦略が北東アジアの緊張を高めているのに、中国原潜に対する「海上警備行動」の発令を出すまでに数時間を要したなど、わが国の危機管理態勢が十分でなかったことです。マスコミは「海上自衛隊が中国原潜の領海侵犯を確認し、海上警備行動の発令まで3時間も要した。発令は中国原潜が領海を離れた後だった。首相官邸と防衛庁との情報の伝達や処理、判断などに問題はなかったか」と批判。与党首脳・幹部への連絡が大幅に遅れたことについても、自民党内では「中国への過剰な配慮があったのではないか」との不満が高まりました。しかし、海上自衛隊の警戒態勢は万全でした。5日には鹿児島県の種子島南東の海上で、中国の潜水艦救難艦などの活動を確認、8日午後に米国から「国籍不明の原潜がいる」との衛星情報が寄せられ、海自のP3C哨戒機が9日未明に琉球諸島南方の太平洋で原潜を発見。原潜が発する「音紋」などから中国の「漢型」原潜と判断して24時間体制で追尾し、「警戒監視」を続けました。

 ソノブイ投下で浮上期待?

 P3Cは10日午前5時半過ぎから、領海内に入った原潜に対しアクティブ・ソノブイを400本(約2億円)近く投下しました。これは相手が発する音を探知するパッシブ・ソノブイと違って、自ら音を発するため、相手の原潜は自分が発見されているのが分かるので、海上警備行動が発令されていない段階では、相手に事実上の警告を与えるぎりぎりの措置だったわけです。海上自衛隊は領海侵犯を確認した時点で、海上警備行動の発令の必要性を防衛庁内局に進言したといいます。しかし、小泉首相に発令の承認が求められたのは、午前8時過ぎで、中国原潜はそのまま領海を潜航して公海に逃げ切った後でした。9日未明から原潜を追尾しながら、何故侵犯直前に発令できなかったか。防衛庁内局と内閣官房との間で、情報の伝達や分析、発令の法的な検討などに手間取ったとの説のほか、アクティブ・ソノブイの投下を受けている間に、原潜が海上へ浮上し国籍を示す旗を掲揚することに期待をかけて、発令を躊躇したのではないかとの、穿った見方すらあります。

 米を牽制、日本の警備探る

 「海洋強国」を国家戦略とする中国は今年に入り、沖の鳥島周辺を海洋調査して「あれは島でなく岩だ」といちゃもんをつけるなど、調査海域を当初の沿岸から東シナ海、西太平洋へと拡大しています。この海域は、グアム島から台湾への通り道。台湾有事の際に海上封鎖をするため、潜水艦を太平洋に展開し、米国の空母や原潜の航行を牽制する狙いがあるようです。国連海洋法条約では、潜水艦が他国領海を潜航して通過することは認められず、国際ルールでは浮上して国旗を掲げなければなりません。それを、長時間潜航したまま通過できたのは、浅い日本領海域の海底地形を既に熟知している証左であり、日本海自がどのような反応を示すか、日本の警備状況を探る目的があったからだと思います。読売の社説によると、中国の海上戦力は、艦艇約740隻のうち潜水艦が約70隻で、最近は潜水艦の増力に力を注ぎ、静粛性に富んだ潜水艦をロシアから導入するなど近代化に努めているようです。こうした中国海軍の動きに、日本は警戒を怠ってはなりません。

 閣議経ずに防衛出動

 11月20日に訪米した大野防衛庁長官は、同行記者との懇談で、迎撃ミサイルを迅速に発射するため、閣議などを経ずに首相の判断で短時間に「防衛出動」を発令する自衛隊法改正案などを次期通常国会に提出する意向を表明しました。政府は1996年暮れ、領海内を潜航する国籍不明の潜水艦に迅速に対応するため、閣議決定を経ずに、首相の判断で「海上警備行動」が発令出来るよう、手続きを簡素化していました。にも拘わらず、99年3月に日本海で発生した北朝鮮工作船事件では、工作船の領海発見から海上警備行動の発令まで約18時間を要し、その後警告射撃などを加えたものの、足の速い工作船に逃げられる失態を演じました。今回の中国原潜侵犯事件でも初動の対応が遅れて発令がもたつき、危機管理上の問題を残しています。北朝鮮の弾道ミサイルの場合、発射から10分以内に日本に着弾するので、その脅威は中国原潜の領海侵犯の比ではありません。

 早急に防衛省の実現を

 大野長官の発言は、防衛庁が緊急事態に素早く対応するため、閣議や安全保障会議で縛られている防衛出動の決定を省略し、首相の判断で直ちに発令できるよう自衛隊法や武力攻撃事態法を改正するものです。政府関係者の一部は、今回の中国原潜事件を「情報が防衛庁内の担当部署や首相官邸の一部にとどまり、対応の指針もなく、双方が協力した行動がとれなかった」と分析、迅速な発令のマニュアル作成を目指しているようです。だが、政府内の連携が悪くて情報の伝達や分析、判断などに時間がかかるようなら、屋上屋を重ねる内閣府の機構からいち早く独立し、電光石火、日本の陸・海・空領域の防衛と警備任務に当たれるよう防衛省に昇格すべきです。省昇格の悲願は環境省に先を越されましたが、今年は自衛隊設立50周年の記念すべき年。私は自衛隊の士気を高め、文民統制を堅持しつつ組織を効率的に運用するため、省昇格を年来主張してきましたが、今後も大いに公務、政務を問わず、声高に提唱したいと思っています。