北村の政治活動

 第98回(3月16日) 基地の共同使用を促進 2プラス2で合意


 政府は在日米軍の再編に伴い、基地周辺自治体の負担軽減を図るため、米軍、自衛隊基地の「共同使用」を促進する方針だ。これは、ワシントンで2月19日に開かれた外務・防衛担当閣僚による日米安保協議委員会(2プラス2)の合意に基づくもので、この夏にも具体案を取りまとめる。合意した「共通戦略目標」には、朝鮮半島や台湾海峡などアジア地域に依然、不安定要因があるとの共通認識があり、「日米防衛協力の強化」では、自衛隊と米軍の役割分担の見直しや、在日米軍基地の再編が重要視された。共同使用には、既に米軍の管理下で自衛隊が基地を利用している米軍三沢基地(青森県三沢市)などの方式のほか、米軍基地の管理権を日本に返上する方法がある。自衛隊と米軍が同じ場所で活動することで、情報や通信などの共有・共用化を進め、有事の際の共同対処能力が向上できるうえ、基地の施設・装備の共用化や基地要員の削減など、自治体に限らず日米双方の負担軽減にも役立つ。共同使用は安保条約の極東条項とも絡み厄介だが、私は防衛庁長官政務官として各基地の実態を精査するとともに、地元調整に一役買いたいと考えている。

 米軍変革・再編の一環

 在日米軍の再編は、ブッシュ政権が01年の9・11米同時テロを踏まえ、取り組んでいる世界規模の米軍変革・再編(トランスフォーメーション)の一環だ。米国防総省は同時テロ直後、連邦議会に「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)を提出。その中で、テロ攻撃など新たな脅威への対処が急務と指摘。大規模紛争を前提とした冷戦直後の戦力構築を改め、より機動的で柔軟な軍への変革に着手する必要性を強調している。これを踏まえ、ブッシュ大統領は03年11月の声明から、大量破壊兵器の開発を進めるイラク、北朝鮮など「ならず者国家」やテロなどの新たな脅威に対処するため、在外米軍の再編について同盟国や友好国と本格的な交渉を開始。さらに、04年8月にはアジアや欧州の在外米軍を今後10年間に6−7万人削減する具体的な再編計画を発表した。海外駐留の米軍兵力は、欧州、アジアそれぞれ約10万人で、米韓両国は04年10月在韓米軍約3万7千人のうち1万2千5百人を、08年までに3段階に分けて削減することで合意している。

 「不安定の弧」への対応

 欧州では、ドイツの再編が中心で、欧州での陸上戦を想定した重装備の部隊を米本土に帰還させるよう調整を進めている。米国が再編で重視しているのは、北東アジアから中東に至る「不安定の弧」への対応だ。ここには朝鮮半島や台湾海峡など、地域紛争の火種となりうる地域が多く含まれている。従って、在韓兵力の規模縮小の場合でも、新しい武器システムなどを導入することで、在韓米軍の朝鮮半島防衛には支障が出ないようにする方針だ。アジア地域では、北朝鮮の核保有宣言はもとより中国の軍事力増大、テロや大量破壊兵器の拡散といった不安定要因が広がっている。とりわけ、中国は海空軍の軍備増強や近代化に加え、東シナ海での天然ガス田開発や海洋調査船の派遣、原潜による日本領海侵犯など海洋活動を拡大している。このため、2プラス2の日米共同声明では、こうした朝鮮半島の緊張や台湾海峡問題を念頭に、アジア太平洋地域の安全保障環境について「不透明性・不確実性」が継続していることを確認。自衛隊と米軍の役割分担の見直しと、在日米軍再編の指針となる「共通戦略目標」などで合意した。

 米陸軍第一司令部が座間移転

 防衛庁の今年最大のテーマは「米軍再編と基地の見直し」だろう。これには在日米軍の基地使用を「日本と“極東”の安全に寄与する目的に限る」という安保条約第6条の極東条項が絡んでいて、国会で論議を呼ぶ要素となる。それだけに大野功統防衛庁長官は慎重で、新春(1月14日)の日本記者クラブでの昼食会では「交渉ごとなので口にチャックを…」「しばらくの間は説明ご勘弁を」と口が重かったそうだ。だが、長官はイラク・サマワ、インド洋大津波被災国訪問、2プラス2出席と外交の場数を踏んでこられた。その関連報道などで、これまでの日米協議で浮上している主な在日米軍再編案が浮き彫りにされてきている。その第一が、太平洋全域をカバーする米ワシントン州の陸軍第一軍団司令部をキャンプ座間(神奈川県)に移転させる案だ。これは司令部の管轄範囲を「不安定の弧」の中東まで広げたいという米国の意図の表れとも見えるが、同時に米国の日本重視は明確になり、日米同盟の抑止力は一段と高まるだろう。

 極東条項は改定せず

 読売新聞によると、座間への司令部移転は、当初予定した要員約6百人規模のワシントン州の第一軍団司令部よりも小規模になる可能性が強く、UNXと称する多様で柔軟な機能を持つ新司令部にするという。新司令部は広範な地域の作戦計画を立てるが、実際の作戦行動の指揮は前線の「統合戦闘部隊」司令官が担うため、日本に置く陸軍司令部が直接、中東の紛争などを指揮することはないと見られる。大野長官は9日の参院予算委で、司令部受け入れについて、「安保条約や関連取り決め等の枠内で対処し、それ以外のことであればお断りすることもある」と述べ、極東条項などの安保改定は行わない姿勢を強調した。このほかの在日米軍再編では、横田基地などがある。横田基地(東京都立川・福生市)には、在日米軍と第5空軍の両司令部と空輸航空団の実働部隊があるが、第5空軍司令部をグアムの第13空軍司令部に機能統合し、在日米軍司令部をキャンプ座間に移転。厚木基地(神奈川県大和市)の空母キティフォーク艦載機の拠点基地を岩国基地(広島県岩国市)の海兵航空群へ移転。普天間海兵隊(沖縄県宜野湾市)の県外(または国外)移転などの案も検討されている。

 まずは座間移転の環境整備

 比較的騒音被害の少ない岩国基地へ厚木の艦載機基地を移すことは厚木の基地負担軽減に繋がるし、座間へのUNX移転は司令部だけで戦闘部隊を伴わないため、移転用の新たな住宅建設は必要でなく、基地負担の大幅増とはならない。このため、政府はまず神奈川県内の基地周辺自治体に働きかけ、座間への司令部受け入れの環境整備を進める方針だ。在日米軍の再編がらみで、上述のように難航している在沖縄・米海兵隊普天間飛行場の辺野古沖(同県名護市)への移転計画に見直し論が起きるなど、かえって沖縄をはじめ実力部隊が駐留する基地の整理、移設、縮小は進展する兆しがうっすらと見えてきている。 

 横田の軍民共用化も高まる

 米軍、自衛隊基地の「共同使用」は、既にマスコミが取り上げているが、目下、航空自衛隊航空総隊司令部(東京都府中市)の米軍横田基地への移転や、自衛隊那覇基地(沖縄県那覇市)の空自を米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)へ移転する案が浮んでいる。注目されるのは、横田基地の米軍両司令部移転で民間機乗り入れの「軍民共用化」の可能性が高まっていることだ。99年の都知事選でこれを公約に掲げた石原慎太郎都知事は「既に羽田も成田も発着枠は満杯だ。首都圏という経済と人の集積地に滑走路が少なすぎる。羽田の一部を横田に移し、主要な国内線を飛ばしたい」と述べている。

 6月の米提案に日本難色

 2プラス2協議で、ラムズフェルド米国防長官は「(自衛隊と米軍の)総合運用性は、双方の防衛能力の向上に繋がる」と述べ、基地の共同使用を含めた自衛隊と米軍の役割分担の議論を集中的に行う必要性を指摘した。大野長官も横田基地の「軍民共用」を意識してか、「負担の軽減は、基地の面積だけでなく、騒音や危険性というものもある」と慎重論を述べながらも、基地の共同使用や米軍と自衛隊の共同運用、演習を促進する考えを示した。これにより、米軍基地の移転・再配置の議論は加速されるが、ラムズフェルド長官は米軍基地再編案のとりまとめの時期について6月を提案。これに対し、日本側は「地元調整もあり困難だ」と答え、数カ月以内に具体案をまとめることを確認した。共同使用の促進は、前述の通り、日米協力を深めることによる抑止力の維持と、基地周辺自治体の負担軽減の両立を目指すもので、情報・通信などの技術的な相互運用性の向上が前提となる。

 米国納税者の負担も軽減

 私は公職の立場から、進展中の日米協議に踏み込んだ私見表明は差し控えたいが、読売新聞が一連の動きをうまく解説しているので以下に引用させてもらう。
「この検討を進めていけば、自衛隊と米軍が、日本有事や周辺事態に加え、テロや弾道ミサイルといった『新たな脅威』に共同で対処する能力の向上が期待できる。さらに、日本側の期待には、米国が握っている基地管理権の日本への返上がある。『基地住民の占領イメージを和らげる』(外務省幹部)心理的効果だけでなく、米側の管理要員の本土への引き上げなどで経費削減につながる可能性があるからだ。ラムズフェルド長官は協議で、『米国納税者の負担軽減を図りたい』と述べ、管理権返上後の管理要員の引き上げには、前向きな方針を示したという。日米の役割分担を巡っては、自衛隊が米側にどこまで協力できるかも課題」――まさに核心を突いた記事である。

 ガイドライン改定含む

 97年に策定した日米防衛協力の指針(ガイドライン)を受けた法整備によって、日本有事や周辺事態の際に、自衛隊が米軍に輸送協力などの後方支援を行ったり、米軍の民間空港・港湾使用を認めることが可能となった。ただ、自治体との調整方法など、協力の具体案について議論は進んでいない。現在は認められない平時の輸送協力についても、米輸送機の削減やこれに伴う騒音の減少などにつながる可能性があり、日米双方から実現を求める声が上がっている。今後の再編協議で、ガイドラインの改定も含め、こうした役割分担の見直し議論が進んでいくことになりそうだ。私も役割分担の見直しでは、地元の調整などで大いに尽力したいと思っている。
一方、2プラス2協議では中国への対応について、町村外相が『軍事費の一層の透明性の向上を促すことが重要だ』と指摘し、ライス米国務長官も『中国は6カ国協議やテロとの闘いで役割を果たしているが、軍事力や国内の人権問題については注視する必要がある』と応じ、共同声明では地域的な共通戦略目標として『中国が軍事分野における透明性を高めるよう促す』ことを盛り込んでいる。    共同声明要旨は次の通り。

 SACOの着実な実施も

 【これまでの日米協力の成果】=日米同盟の重要性を確認=@アフガニスタン、イラク、津波災害支援、大量破壊兵器拡散阻止構想(PSI)での日米協力を評価A弾道ミサイル防衛の日米協力を前進させる【日米の共通戦略目標】=安全保障環境を確認=(テロ、大量破壊兵器などの新たな脅威、アジア太平洋地域の不透明性・不確実性の継続と新たな脅威の発生)@北朝鮮の6カ国協議への速やか、かつ無条件での復帰、全ての核計画の完全な廃棄を要求A戦略目標を確認<地域>朝鮮半島の平和的統一、北朝鮮に関連する諸問題の平和的解決。中国の責任ある建設的役割を歓迎し、協力関係を発展。台湾海峡を巡る問題の平和的解決<世界>国際平和協力活動における協力。大量破壊兵器不拡散。テロ防止・根絶。日本の常任理事国入りなど国連安全保障理事会の実効性向上【今後の日米の安全保障・防衛協力の強化】=多様な課題に実効的に対応するため自衛隊と米軍の役割・任務・能力の検討を継続=@在日米軍の兵力構成見直しに関する協議を強化。抑止力の維持と地元の負担軽減への関与を確認A沖縄施設・区域特別行動委員会(SACO)最終報告の着実な実施の重要性を協調B在日米軍駐留経費の日本側負担に関する現行特別協定終了後の措置の協議を開始