北村の政治活動

 第97回(3月1日) 自衛隊法改正案提出 ミサイル迎撃へ即応体制

 政府は日本に向け発射された弾道ミサイルを迎撃するための自衛隊法改正案を今国会に提出した。北朝鮮は核兵器製造を宣言したが、核装備の弾道ミサイルを発射すれば、日本に着弾するまで10分しかない。現行法に基づき安全保障会議を開き、閣議決定するとの防衛出動発令の手順を踏んでいたのでは手遅れになる。このため、発射の時点で防衛長官が首相の承認を得て、部隊に迎撃を命ずるのが改正案の主な内容だ。政府はまた、ミサイル防衛(MD)システムが配備されるまで、航空自衛隊に配備されている地対空誘導弾パトリオット・ミサイル2(PAC2改良型)で迎撃する方針を固めた。改正案にはミサイル迎撃命令があった場合の国会報告を盛り込み文民統制を確保したが、ハワイ、グアムなど米国を標的とした弾道ミサイルでも、日本領空でミサイルの推進部分などが落下する可能性があるため迎撃できるとした。この点、国会審議では集団的自衛権との関連で論議を呼ぶものと予想されるが、防衛庁長官政務官としては一刻も早く成立するよう努力したい。

 発射の兆候に2規定新設

 政府が2月15日に提出した自衛隊法改正案は、弾道ミサイルなどを迎撃ミサイルで破壊する根拠規定として、交戦状態である防衛出動のほかに、相手国に日本攻撃の意図が明確でない場合の2類型を想定。@弾道ミサイル発射の兆候があり、我が国に飛来するおそれがある場合には、防衛長官の上申をもとに、首相が迎撃権限を長官に与え、発射されれば現場指揮官が迎撃するA兆候が掴めない緊急時でも、首相の承認を得る時間がない場合に対処できるよう、あらためて首相の承認を得なくても、防衛長官があらかじめ定める「緊急対処要領」に従い期間を定めて迎撃命令を出し、現場指揮官の判断で迎撃することが出来る――との2つの規定を新設した。迎撃ミサイルを発射した場合には、その結果を「速やかに国会に報告しなければならない」という、公明党の要望に沿った文民統制の項目も入れられた。このほか、同改正案には、2月1日のホームページで紹介したように、陸海空3自衛隊の指揮・命令系統を一元化し「統合運用」体制に移行する、統合幕僚監部の新設なども盛り込まれている。

 “その他”にも個別自衛権

 大野功統防衛長官は閣議決定の2月15日、記者会見で「兆候がある場合以外はすべて(2項で)カバーしていきたい。365日、24時間(迎撃できる)というのが本来の仕事だ」と述べ、ミサイル発射の兆候がなくても、迎撃命令を部隊に発しておく考えを明らかにした。改正案で注目される点は、迎撃要件を「弾道ミサイルとその他が、日本に飛来するおそれがあり、落下による被害を防止するため」と規定、“その他”には、ミサイル部品を含むとしたことだ。これによってハワイ、グアムなど米国領土を狙った弾道ミサイルでも、日本領空でミサイルの推進部分などが分離、落下して被害が生じる可能性があれば、個別的自衛権に基づきミサイル本体を迎撃できることになる。これまで防衛庁は、@ミサイルは上昇段階で着弾地点が予測できるA北朝鮮から米国本土を狙った場合、ミサイルは日本上空を通過しない――との理由から、日本に飛来する弾道ミサイル以外を迎撃することは、集団的自衛権に抵触すると説明してきた。

 日米一体でMD開発

 政府が「集団的自衛権を保有するが行使は出来ない」との憲法解釈を取ってきた以上、防衛庁はその解釈を逸脱することは出来なかった。しかし、日本は米国と通信機能や情報を共有しつつ、ミサイル防衛(MD)の共同システムを日米一体となって開発してきた。それが集団的自衛権の行使を禁じたままでは、効果的な運用は望めない。そこで、個別的自衛権の“その他”の規定を設けることで迎撃を可能とし、集団的自衛権の行使に風穴を開けたわけである。北朝鮮外務省は2月10日、米ブッシュ政権が北朝鮮への「敵視政策」を変えず、日本もこれに追随しているとして、「核問題に関する6カ国協議を無期限中断する」との声明を発表。同時に、「我々は自衛のために核兵器を製造した。今後も核兵器庫を増やすための対策を講じる」と“自衛手段”としての核保有を初めて公式に表明した。声明は協議不参加について「会議の結果を期待できる十分な条件と雰囲気がもたらされたと認められる時まで」という条件付きの参加中断だ。ところが、金正日総書記は同21日、「条件が成熟したなら、いつでも協議のテーブルに着くだろう」と、米側の「誠意」を条件に復帰の用意があるとの柔軟な態度を、訪朝した中国共産党幹部に示した。

 北朝鮮が発射実験再開か

 これは、全面拒否すれば舞台は国連安保理に移り、中・露が核問題では拒否権発動をせず、制裁を受けることが現実化すると読んだからだ。“条件付き”を強調することで、国連提訴を避ける作戦に出たもので「瀬戸際外交」といえる。6カ国協議で融和的だった中・露・韓3国には意図的に一切言及しないで、得意の「離間策」も取っている。米中央情報局(CIA)はこれまで、北朝鮮が1,2個のプルトニウム型核爆弾を保有している可能性を指摘していたが、ゴスCIA長官はすかさず同16日、「北朝鮮はテポドン2号など、長距離ミサイルを含むミサイルの発射実験をいつでも再開する恐れがある」との年次報告書「情報機関のグローバルな朝鮮」を上院情報特別委員会に提出した。北朝鮮は1998年からミサイル発射を凍結しているが、報告書ではテポドン2号の運搬能力を「核兵器規模の搭載量で米国まで到達できる。サリン、ペスト菌などの化学・生物兵器も保有している」と分析。核開発の現状では「パキスタンのカーン博士の支援で手に入れたウラン濃縮能力を、引き続き追求している」とし、国際テロ組織の動向については、アル・カーイダか別の集団が、化学・生物・放射性兵器、あるいは核兵器を使おうと試みるのは時間の問題かもしれない」とショッキングな報告をしている。

 当面はPAC2で迎撃

 北朝鮮の核兵器製造宣言、CIA報告などで弾道ミサイル飛来の緊張は一段と高まったが、政府は自衛隊法改正案が成立しても、ミサイル防衛(MD)配備まで実際には迎撃体制が整わないため、当面は航空自衛隊に配備されている地対空誘導弾パトリオット・ミサイル2(PAC2改良型)で迎撃する、現有装備での対応策をまとめた。改正法案で首相があらかじめ承認しておく緊急対処要領などにも、この迎撃措置を明記する方向で調整している。PAC2は、航空機や射程300キロ程度の短距離弾道ミサイルを撃墜するためのミサイルで、1991年の湾岸戦争の際にイスラエルがイラクからのスカッド・ミサイル迎撃に使用し成果を上げた。射程が千キロを超えるノドンやテポドンのような長距離弾道ミサイルに対応できるかどうかは不明だが、政府は極東の緊張感が高まる中で被害を最小化するため、当面の措置としてPAC2で迎撃することにしたものだ。

 SM3将来型も開発段階へ

 政府のMDシステム整備構想では、地上発射型のパトリオット・ミサイル(PAC3)は06年度末から、海上発射型のイージス艦搭載ミサイル(SM3=直径34センチ型)は07年度から配備を始める。政府は北朝鮮のノドン、テポドン発射実験を機に、1999年度から海上配備型MD部品の日米共同技術研究を開始、近く生産段階へ移行する。米国防総省は、日米両国が共同開発を進めている新たな海上発射型迎撃ミサイル(SM3「将来型」=直径53センチ型)についても、07会計年度(06年10月―07年9月)で予算措置を講じる方針だ。同ミサイルは、@発射直後A大気圏外B着地直前――の3段階のうち、大気圏外で相手の発射した弾道ミサイルを捕らえる。日本は既にSM3の購入を決めているため、我が国内では、研究投資が無駄になるとの懸念も出されているが、直径の大きなミサイルの導入で、ミサイル防衛網の能力向上が期待されるとして、開発段階へ移行することになった。

 MD構築に1兆円の巨費

 米国から導入するMDは、イージス艦で撃ち漏らした場合、地上のPAC3で撃墜する2段階方式。イージス艦搭載のレーダーや地上配備のレーダーで弾道ミサイル発射をキャッチし、発射角度や速度から着弾地点を予測。データ分析後に防衛庁に瞬時に送信し、指示を受け迎撃ミサイルを発射する仕組み。だが、秒速数キロの高速で飛来する弾道を直撃して破壊するのは、鉄砲玉をピストルで撃ち落とすよりも難しく、迎撃の条件は厳しい。米国は02年から03年にかけて、SM3発射試験で5回に4回は迎撃に成功したと公表したが、「迎撃しやすい条件の設定だった」と指摘されているように、信頼性に対する疑問は多い。また、PAC3の迎撃エリアは数十キロ四方に限られていて、日本海にイージス艦2隻を配備しても日本全域をカバーできないのではないかとの不安もある。MDシステムの構築には総額1兆円の巨費が投じられる。3月は確定申告のシーズンだが、納税者・国民にとって最大の関心事は、生命・財産の防衛である。自衛隊法改正案の審議では、集団的自衛権、文民統制などの問題で白熱した論議を呼ぶと予想されるが、国民のMDシステムに対する国民の期待は大きい。私は同法案の早期成立と効率的運用に力を注ぐ考えだ。