北村の政治活動

 第93回(1月元旦) 郵政民営化で大詰めの攻防 首相との妥協あるか

 政府と自民党が綱引きを演じている郵政民営化法案づくりは、3月の法案提出を前に最大の攻防に入った。首相が、持ち株会社の下に郵便、郵貯、郵便保険、窓口ネットワークを置く「4分社化」の基本方針を貫徹しようとするのに対し、自民党内には民営化反対の声が渦巻き、政府の基本方針に激しく対立している。武部勤幹事長は郵便と窓口を合併する「3分社化」を調整の”落としどころ“としたい考えだが、幹事長の不用意な「解散発言」などもあって反発が強く、決着は容易ではない。党の総務会は昨年末、独自案の「郵政改革の方針」をようやく了承したが、政府の基本方針との隔たりが大きく、妥協点を見出すのは極めて難しい。首相は、2年連続で1月外遊を見送り、郵政民営化キャラバンを全国20地域に派遣する一方、反対勢力を解散発言で威したり、協力呼びかけのレター作戦に出るなど硬軟自由の作戦だ。正面突破か、話し合いによる和睦か。政府と党の年明けの調整は、天下分け目の時を迎えている。決裂した場合は”瓢箪からこま”で、「郵政解散」が現実味を帯びてきそうだ。これまでの経過を探り、調整の行方を占ってみよう。

 3分社化匂わす論点整理

 自民党の郵政改革関係合同部会(園田博之座長)は暮れの12月1日、郵便、郵貯、保険の三事業一体による民営化を柱とした「論点整理」を提示、独自案作りに入った。論点整理は「本体事業を持たず、収入を他の事業会社の委託に頼る窓口会社というビジネスモデルは成り立たない」と指摘。窓口会社と郵便を一体化し、郵貯、簡保の「3分社化」とする方向をにじませた。しかし、額賀福志郎前政調会長時代の郵政事業政策特命委員会が昨年9月に公表した論点整理に比べれば、民営化を前提に中身を詰める姿勢を打ち出したため、部会では「民営化容認の姿勢である」として、民営化反対論が噴き上がった。特に首相と一心同体で民営化を推進する武部幹事長に対する風当たりは強く、同氏の持論である「3分社化」案はもとより、郵政改革のイメージ説明のため広告会社に作らせた紙芝居についても党内の反発は強く、反対派急先鋒の荒井広幸参院議員は「武部氏は民営化を紙芝居でPRするというが、猿芝居だ」と噛みつき、紙芝居も国民に浸透できないままだ。

 「反小泉連合」活発に動く

 郵政族議員の集まり・郵政事業懇話会(会長=綿貫民輔前衆院議長)は同月3日、120議員(代理含め187人)が都内ホテルで総会を開き、現公社存続の改革法案策定を決議、政府に宣戦布告した。このあと党総務部会も「郵政民営化を行う必要性は見い出せない」として@郵便局ネットワークの堅持A郵政公社の自立性向上B三事業一体の堅持――を前提に“郵政三位一体”の改革を求める意見書を与謝野馨政調会長に提出した。一方、地方議会の六割超が「反対」または「慎重」の意見書を総務省に提出した。「反小泉連合」を模索する綿貫前衆院議長、亀井静香元政調会長、堀内光雄前総務会長、加藤紘一元幹事長、武藤嘉文元外相、野呂田芳成元防衛庁長官、野田毅元自治相ら七氏が開いた11月初旬の会合では、「首相の独裁的な手法は許せない」「解散・総選挙になっても、恐れてはいけない」などの過激発言が相次いだ。この会合は政策勉強会の形で、多少メンバーを差し替えて12月にも開かれた。全国特定郵便局長会も党内情勢には重大な関心を抱いており、長崎県中部特定郵便局長会の羽田冨美次会長(佐々町松瀬特定郵便局長)ら幹部から、私のところへ絶えず問い合わせがきている。全国2万4750郵便局の不安は極めて大きい。

 双方配慮案にも反対意見

 こうした中で党の郵政改革関係合同部会は12月16日、郵政改革の方針案を取りまとめた。方針案は、現行の郵便局網の維持を義務づけることを強調したうえ、@郵便、金融、保険の3サービスへの全国均一サービス提供の義務づけA経営の自由度拡大による収益力・競争力を強化B事業の将来性について十分検証――などを求めた。その一方、政府の基本方針で郵便、郵貯、郵便保険(簡保)、窓口ネットワークの「4分社化」とした、経営形態には一切言及を避けた。これは党内に根強い民営化反対論と、政府側の双方に配慮した案だった。それでも同日の全体会議では「民営化を前提にした方針でないことをこの場で確認して欲しい」など反対意見が続出、園田座長は「これは第一歩だ。政府との交渉では民営化反対の声も背景にして臨む」と述べ、議論を納めた。“郵政花道論“に立つ園田博之座長にしてみれば、「花道はできた。『もうそろそろお辞めになった方がいい』というために郵政のまとめ役引き受けた」はずだったが、とんだ荷厄介な部会運営になっている。

 民営化容認を排除

 結局、翌17日の総会では、「郵便局の配置に現行水準の維持を義務付ける」など前日の合意に加え、「『民営化反対、郵政公社のままで改革すればいい、3事業一体の堅持』との意見が多数ある中で議論を重ねた」との文言を明記して民営化容認の姿勢を排除し、郵政事業懇話会や党総務部など民営化反対派の意向を踏まえた内容に変えた。さらに「政府の対応ぶりを見極めつつ、党としての最終的判断を行う」として、法案対応に留保をつける姿勢を明確にした。さて、いよいよ年明けの決戦場である。「通常国会で小泉内閣の命運が懸かるような難局に遭遇するかもしれない。党内で賛成が多数いるとは思えない」と中曽根元首相は予言するが、強硬姿勢を採り続ける首相、竹中担当相ら民営化推進派と、自民党反対派が全面対決すれば、衆院解散や自民党分裂に発展する可能性は多分にある。

 調整者が小泉後継に浮上

 新防衛大綱の決定やイラク派遣自衛隊の1年延期などは、本来なら国会で大論争を呼ぶ安保問題だが、国民の怒りは拉致家族にでたらめな遺骨を寄越した北朝鮮や原潜で領海を侵犯する中国へ向かい、依然、内閣支持率は急落していない。そうした世論の支持もあり、4分社化にこだわる首相は、3分社化に不快感を示しているが、三位一体の改革では、地方六団体に「地方案」を作らせ、細田博之官房長官や与謝野政調会長に調整を委ねる新手の政治手法を見せた。首相は抵抗勢力との対立図式を演出し、国民の喝采を浴びる手法はもはや取れなくなったと判断、道路公団改革や三位一体改革では玉虫色の大枠や法案大綱をまず設定し矛先をかわすなど、多少は柔軟路線に転じているように見える。自民党側は大詰めの折衝で、基本方針を骨抜きにするような「名を捨て、実を取る」条件闘争を編み出せるかどうか。今後の調整過程でポイントを稼ぎ、郵政問題をうまく決着させる実力者が出れば、ポスト小泉の後継者に浮上することは間違いなさそうだ。