北村の政治活動

 第90回(11月16日) 来春に米牛肉輸入再開 二重基準に批判も

 米国産牛肉は、10月末の日米局長級協議の結果、来春以降に輸入が再開される見通しとなった。米側が共和党の支持基盤である畜産業界を意識して、11月2日の米大統領選前に決着させようと、@月齢20ヶ月以下の牛肉に米政府が月齢を証明するA特定危険部位を全て除去する――ことに基本的に合意したからである。米国が「牛肉輸出照明プログラム」を作成、プログラムは来年7月をメドに両国で検証するなど、細部を詰める作業が残されているが、これで日米間に突き刺さったトゲは一応除去されることになった。しかし、今後3年間は事実上の全頭検査が続く国産牛肉と、検査をしていない米国産牛肉が併存する「2重基準」が生じて消費者を惑わし、国内では批判が高まりそうだ。また、米国が新設する「牛肉輸出照明プログラム」は高級肉が主流となって、安い牛丼の復活には繋がらないとの見方がある。私は衆院農水委理事として多年、BSE(牛海綿状脳症)問題と取り組んできた。目下、防衛庁長官政務官で公務多忙の身だが、消費者の不安と牛肉の消費低迷を同時解消するため、農政の面でも一層頑張らなければならないと思っている。

 日米双方が非科学的と非難

 昨年末に、BSEが米国で初めて発症して以来、日本は米国産牛肉の輸入を禁止し、解禁の条件として、日本並みの全頭検査を強く要求していた。食品に関する安全基準は、国産品と輸入品は同一の「内外無差別」が原則だからだ。しかし、全頭検査は国際的に見て、過剰な措置であるとの意見が国内でも強まり、内閣府の食品安全委員会が見直しを進めてきた。その結果、9月16日の北村ホームページ「BSE全頭検査見直し」で詳しく説明した通り、食品安全委は20ヶ月以下の牛に対する検査を、免除しても構わないとの報告書をまとめた。米国産牛肉についても、この基準が適用されるのは当然である。だが、米側は、牛の正確な月齢確認が難しい牧場が多いため、10月21日からの日米協議では、「米国産牛は十分な対策を行っており安全。日本の全頭検査は非科学的だ」とし、30ヶ月以下を除外するよう求め、「肉質でも十分に月齢は特定できる」とし、肉質や骨格を月齢判定の基準にするよう繰り返し主張した。これに対し日本側は「米国の主張こそ科学的な根拠が薄い」と反論し、「これ以上絶対に日本の基準を変えることは出来ない」と譲らなかった。

 20ヶ月以下に米政府証明

 大統領選では、畜産農家が多いコロラド州などが激戦区とされた。従って、米側は外交成果を積み上げようと早期決着を目指し、表向きは突っ張りながらも、内心では日本の新基準に応じる姿勢を非公式には示していた。そこで、日本側の決意が固いと見るや、同23日には突然歩み寄り、焦点とされた生後20ヶ月以下の牛の月齢確認について、「米国内の畜産業者が提出する証明書を、米政府がチェックし、保証する」ことと、「BSE原因の異常プリオンが集中的に蓄積する脳や脊髄などの危険部位は、対日輸出分について全て取り除く」の2点で、基本的に合意したわけだ。日米の合意には「詳細については専門家や実務担当者による検討作業が必要である」との条件がついた。日米両国は、専門家による検討チームを作成、具体的な履歴の証明方法や、信頼性のある農場や食肉処理場の特定などの協議を進めている。そのうえ、年内にも輸入再開で正式合意し、輸入条件を食品安全委に諮問。答申を得て来年4月にも新BSE対策を施行し、輸入を再開する段取りだ。

 国内承認手続きで難航予想

 しかし、輸出再開には多くの障壁がある。米国の農場でどのように生育記録を管理しているかや、米政府が記録の正確さをいかに検証するかなど、具体策の詰めはこれからだ。このほか、日本は、あくまでも「安心・安全」を求める消費者の反発を恐れて、全ての牛に対するBSE検査の継続を望む国内の自治体に対しては、検査費用を全額助成する経過措置を3年間行うことにした。これには、大半の自治体が継続を希望すると見られる。このため、全頭検査の国産牛肉と、「月齢20ヶ月以下の無検査米国産牛肉」が日本市場に混在し、「二重基準」が発生することになる。二重基準の牛肉が市場に出回れば、より安心感のある「全頭検査」の国産牛肉が消費者に喜ばれ、米側は「米国産牛肉が競争上不利な扱いを受ける」と反対する恐れも出てくる。また、米政府が履歴を照明できる牛は全米の一割程度で、当面は高級な牛肉が中心になると見られるし、「若い月齢の肉だけを使用したらコスト高だ」という声も外食産業内にはある。従って、安価な肉を使う牛丼の復活は望み薄のようだ。このように、輸入再開で合意はしたものの、日米双方ともにクリアすべき壁は厚く、国内の承認手続きなどでは、なおも難航が予想される。