北村の政治活動

 第86回(9月16日) BSE全頭検査見直しへ 輸入再開に消費者反発

 BSE(牛海綿状脳症)の検査体制見直しを検討してきた内閣府の食品安全委員会は9日、「生後20ヶ月以下の感染牛を検査で見つけるのは困難」とする同委プリオン専門調査会(座長=吉川泰弘東大教授)の報告書を了承した。“食の番人”食品安全委がBSE の全頭検査緩和に事実上のゴーサインを出したことで、厚生労働、農林水産両省は今月中にも、検査対象から20ヶ月齢以下の牛を除外する検査見直し案をまとめる。これを受けて、米国産牛肉の輸入再開をめぐる日米協議は10月中にも再開される見通しとなった。11月に大統領選を控え、共和党支持基盤である畜産・食肉業界が、対日牛肉輸出の早期再開を求めていることから、ブッシュ大統領は今月21日に開く小泉首相との日米首脳会談でも、この問題を協議すると見られる。しかし、生後20ヶ月以下の牛を特定するには、米業者に牛の生産履歴を管理するための新たな費用負担を課すことになるし、日本の消費者団体は依然として牛肉の輸入再開に反発しているため、交渉は長引きそうだ。検査体制の緩和は、秋の臨時国会でも取り上げられそうなので、私もじっくり安全面を勉強したいと考えている。

 20ヶ月齢以下の検査除外

 食品安全委員会は、2003年8月にプリオン専門調査会を設置し,国内のBSE対策を検証、今年7月16日に報告書の原案(8月1日付の当ホームページ参照)をまとめた。しかし、検査限界となる牛の月例に言及しなかったことから、厚労、農水両省は具体的な見直し作業に入れず、日米交渉も遅れていた。このため、同調査会は報告書を修正、国内では生後21ヶ月の牛から感染が確認されている点を重視、検査対象を20ヶ月齢で線を引くことになった。報告書は当初、「20ヶ月齢以下の感染牛を現在の検査法で発見することは困難」としていたが、1部の委員から「20ヶ月と断定する科学的根拠がない」との疑問が示され、「過去の調査では生後20ヶ月以下の若い牛の感染は発見されなかった」と、事実関係を確認する表現に修正することで合意した。同月齢の牛を全頭検査から外すのは、現在の検査法では感染を検査できないためだ。20ヵ月齢以下の割合は年間の屠畜頭数約111万頭(2003年度)の12%である。

 特定危険部位除去も徹底

 食品安全委は、検出不能の若い牛の検査を止めても「人への危険は増えない」との結論を下したが、全頭検査を緩めることと併せ、脳や脊髄など特定危険除去の徹底、ピッシングと呼ばれる屠畜方法の廃止も提言している。これを受けて厚労省は屠畜場、農水省は飼料管理で一層の規制強化を進める考え。これにはBSE対策後退のイメージを避ける狙いがある。「消費者の理解を重視する」と繰り返し主張してきた両省は、同委が16、18日に東京と大阪で開く消費者との意見交換会(リスクコミュニケーション)を経て、月内に見直し案をまとめ、同委に諮問する。消費者団体は、検査緩和の先に日米協議での米国産牛肉の輸入再開の筋書きがぶら下がっていると見て早くも9日、日本生協連が緊急会見で検査緩和の対応を批判したほか、各団体が両省や同委に意見書を提出、全頭検査体制の維持を求めている。

 消費団体は全頭検査維持

 8月18日に開いた前回の意見交換会では、「BSEには分からないことがたくさんあり、当面は全頭検査が必要」(全国消費者団体連事務局長)、「輸入再開と絡めて、全頭検査をここで動かすべきでない」(主婦連代表)、「特定危険部位を除けば安全は確保される。効果のない検査に税金をかけるべきではない」(会社経営者)、「安全性を前提に米国と共存共栄を図るべきだ」(商社マン)など賛否両論に分かれた。消費者団体は、「これまでの意見交換会では、輸入再開を期待する食品関連業者や行政関係者ばかりが多く参加していて、食の安全を切実に求める消費者の声は反映されない」と不満を述べている。しかし、米国産輸入牛肉は、安価・安定的供給で、焼き肉、ステーキ、牛丼などの主要食材として幅広く利用されてきた。米国産に代わって豪州産などが増えているが、このところ値段が上昇気味だ。「国民食」と親しまれてきた牛丼は2月に消えたが、懐かしむ庶民も多い。

 米は24ヶ月以下に固執

 日米BSE協議は8月に予定した開催が延期されているが、近くJ・B・ペン農務次官が打ち合わせのため来日する。米政府は8月末、水面下で「検査の除外対象を現行の生後30ヵ月未満から24ヶ月以下まで縮小する」との歩みより案を提示している。その背景には@米国内で流通する牛肉の大部分は生後15−24ヶ月で処理されているA大統領選挙を控え、ブッシュ支持基盤の食肉業界が対日輸出の早期再開を強く求めているB対日禁輸が長期化すると豪州産などが日本市場を占拠し、米国牛肉が再入する余地がなくなるC日本が生後20ヶ月以下を検査対象から除外し、全頭検査の要求を取り下げることは大きな前進と評価――などの事情があるからだ。しかし、日本側が「20ヶ月は絶対に譲れない条件」と主張しているのに対し、米側は水面下で示した「24ヶ月以下」に固執、日本の基準に反対の意向を非公式に伝えてきたという。これには生後20ヶ月以下の牛を特定するには、生産履歴を証明する新たなシステムを導入する必要があり、膨大な費用がかさむからだ。

 完璧な食の安全策を

 日本のように5百万頭という小規模な飼育と違って、米国は1億頭を超す大規模飼育。これに生産履歴を証明するのは容易なことではない。米国は「20ヶ月の線引きには科学的根拠が薄い。米国産牛肉は既に肉骨粉の使用を禁止するなどの安全対策を講じている」などを理由に日本の新基準に反対している。このため、交渉再開には慎重な態度で臨んでおり、早期決着は難しいようだ。米産牛肉の輸入再開で、安い牛丼や焼き肉が手軽に食べられることは望ましいが、消費者団体が懸念するように、まず食の安全を取り戻すことが何よりも優先する。今年はサンマが豊漁という。牛や豚などの肉ばかりに頼らず、水産王国らしく、この秋は大いに魚を食べて体力をつけるべきだ。BSE騒動から早くも3年が経過したが、私は拙速な輸入再開を避けて、完璧な食の安全策を検討したいと考えている。