北村の政治活動

 第85回(9月1日) 在外米軍6−7万人削減 選挙対策で再編加速

 ブッシュ米大統領は8月16日、オハイオ州の退役軍人集会で演説し、在外米軍を今後10年間で6万―7万人削減する米軍再編計画を発表した。軍人の家族や軍関連職員計10万人も米本土へ引き揚げることになる。ブッシュ氏は11月の大統領選を意識して、「兵士の家族のため」を強調、不要な在外基地の閉鎖は「納税者のお金を節約することにもなる」と訴えた。これで欧州と東アジアで維持されてきた米軍の各「10万人体制」に終止符が打たれ、冷戦終結後最大規模の米軍再編が一段と加速される。私は先号で在日米軍基地の再編に触れたが、日本との協議が十分に煮詰まっていない中で、アジア地域の米軍再配置構想が走り出すと、米軍駐留を国防の基礎としてきた日本、韓国、ドイツなどにとっては、極めて大きな影響を受けることになる。我が国の安保政策に携わる私としては、じっくり問題点を検討して、最善の基地対策を構築しなければならないと考えている。


 21世紀型の国防体制

 「世界は大きく変わった。我々の体制もそれに合わせて変える必要がある。在外兵力の多くを米本国に引き揚げることで国内のテロ行為にも迅速に対処でき、最も進んだテクノロジーと機動力で柔軟な軍事力の展開が可能になる」――。ブッシュ大統領はこう演説し、旧ソ連の脅威を前提に配置してきた大規模駐留を止め、米本土を足場に世界各地のテロなどの危機に迅速に対応する21世紀型の国防体制実現に意欲を注いでいることを説明した。
米マスコミの報道によると、削減の3分の2は欧州分で、ドイツ駐留の陸軍第1機甲師団、第1歩兵師団が米本国に引き揚げ、ドイツ駐留米軍の1部がポーランドなどに移転する可能性が検討されている。在韓米軍は2005年までに1万2千5百人を削減する計画が既に発表されている。在日米軍再編論は、昨年11月にラムズフェルド国防長官の来日で高まったが、@朝鮮半島から南アジア、中東に至る「不安定の弧」を守る安全保障の“要”A地元住民の負担軽減を念頭に在日米軍基地の削減・移転――の2本柱からなっている。


在日米軍基地の再編構想

 日米協議で11月ごろまでに方向性を出すが、@の具体案は、環太平洋地域での緊急事態に際し、主戦力となる米陸軍第1軍団の司令部を、米ワシントン州の基地からキャンプ座間(神奈川)に移す。また、グアムの米第13空軍司令部を横田(東京)の米第5空軍司令部に統合。これによって第5空軍は、朝鮮半島から中国、インド洋までの広大な空域を統制する。これで、米海軍第7艦隊の母港である横須賀(神奈川)を含め、米軍がアジア太平洋、中東地域に前方展開する陸・海・空軍全ての司令部が日本に終結することになる。Aの在日米軍基地移転は、沖縄に駐留する米海兵隊の約3千人削減を打ち出したほか、この海兵隊のうち砲兵ら約2千6百人を、キャンプ富士(静岡)など本州に分散移転する。米空軍の艦載機部隊を厚木(神奈川)から岩国(山口)に移し、騒音被害が大きい夜間離着陸訓練(NLP)の1部を、現在、沖合1キロに建設中の新岩国基地で実施する方針。


 「不安定の弧」守る戦略拠点

 このように米国は世界規模で在外米軍の変革・再編を進めており、在日米軍の実態は、「極東における平和と安全の維持に寄与するため――」(安保条約6条)の建前から離れ、「世界の平和と安定に寄与する日米同盟」へと、大きく変化しつつある。在日米軍再編構想の発表時に読売は「テロやミサイルという『新たな脅威』に、機動的に対処する戦略に基づくものだ。司令部機能の強化は日本がその戦略拠点となることを意味する」と社説で報じた。また、在外米軍削減計画の発表時の社説では、「01年9月の米同時テロ後、ブッシュ政権は、国際テロや大量破壊兵器の拡散を新たな脅威と位置づけ、安全保障戦略の見直しを進めている。<略>在日米軍が削減される可能性もあるが、力の空白や抑止力の低下があってはなるまい。東アジアには、朝鮮半島や台湾海峡など、紛争の火種となる地域が少なくない。力の空白が生じては、地域の安定が損なわれる」と警告した。


 世界平和貢献の日米同盟

 全く同感である。自衛隊はこれまで北海道に多く駐屯し、旧ソ連を“仮想敵国”として訓練を積んできたが、冷戦構造の崩壊と旧ソ連の消滅で旧来の脅威は去り、核兵器の開発を進め、日本を射程に入れたミサイルを配備する北朝鮮が最大の脅威になってきた。軍事大国化を目指す中国の出方も不気味である。こうした「不安定の弧」に向けて、テロや地域紛争の際、ブッシュ大統領がいう「最も進んだテクノロジー」(高度の軍事技術)を活用し、強力な戦力を瞬時、機動的に展開することが重要だ。沖縄に駐留する米海兵隊3千人の削減・本土再配置に止まらず約4万人の在日米軍が削減される事態もあろう。だが、司令部機能の日本移転・統合は、「不安定の弧」の有事の際に機敏に対処すためには最良の方策といえる。日米軍事同盟が国際社会の安定に貢献してこそ、初めて日本の繁栄がある。日米安保戦略の調和と協力は是非とも必要だ。この秋に本格化する防衛大綱見直しと年内にまとめる新中期防衛力整備計画の策定では、こうした要素を念頭に取り組む所存である。