北村の政治活動

 83回(8月1日) 再開近い米産牛肉輸入 科学的見解で歩み寄る

 牛丼の吉野家など外食産業が打撃を受けていた米国産牛肉の輸入禁止問題は、8月中にも好転する見通しである。内閣府の食品安全委員会プリオン専門調査会が全頭検査の基準緩和を検討、米政府も日本向け輸出用牛肉に「安全性を認証」する方針を決めるなど、双方に歩み寄りが見られたからだ。BSE(牛海面状脳症)問題を議論してきた日米両国専門家の作業部会は7月22日、科学的な見解で一致する報告書をまとめた。8月下旬の局長級協議で輸入再開の結論を出す。日本政府内では農水省が消費者の反発を恐れて全頭検査を強く主張してきたのに対し、厚生労働省は厳しい国内対策を見直し、日米協議で打開する方法を模索してきた。その日米協議の結果、年齢の若い牛に限っては、検査なしで輸入再開の道が開ける可能性が出てきた。サラリーマン層には安い牛丼が消えた不満は大きいが、食の安全の面からは用心にこしたことはない。検査しなくても良い若い牛を何ヵ月齢未満とするかなどの基準は未定だが、近く自民党内や国会で論議する際には、衆院農水委理事として国民の健康を第1義に検討、消費者が納得出来る結論を得たいと考えている。

 特定危険部位削除の証明

 日米作業部会の報告書によると、BSE感染の有無を確認するために食肉処理される牛を対象に日本で行っている全頭検査は、「若い牛については、現在の検査方法では(BSEの病原体と見られる)異常プリオンの検出はありそうにない」として検査の限界を指摘した。同時に、異常プリオンが蓄積されている脳や脊髄などの特定危険部位に牛肉が汚染されていないことを、「米政府が証明できると提案」したことも盛り込まれた。これは米民間食肉処理業者が求めていたもので、米国産牛肉の輸入再開の切り札となるし、日本国内の基準が緩和されれば、年齢の若い牛に限って検査なしで輸入再開の道が開けてくる。異常プリオンの蓄積量が少ない若い牛の場合、検査は有効ではないとされ、欧州連合(EU)では30ヶ月齢以上の牛を対象に検査を行っている。EUの基準に沿えば、米国では20ヶ月齢までに大部分の牛が食肉処理されていることから、輸入上の問題は生じてこない。

 肝腎な月齢判断避ける

 内閣府の食品安全委プリオン専門調査会(座長=吉川泰弘東大教授)が7月16日に公表した報告書原案でも、EUと同様に「若い牛の検査の限界」をはっきり認め、そのうえで、検査に引っかからないような若い牛を検査対象から外しても、脳や脊髄などの危険部位を除去していれば、その肉を食べた人の健康に影響はないと報告している。従って、米国側が若い牛を中心に輸出し、安全性確保に不可欠な危険部位の除去と、肉の汚染防止について、「日本の要求水準を満たしている」との認証を与えるならば、消費者の納得も得られそうだ。しかし、同報告書原案は、検査しなくても良い若い牛が何ヶ月齢未満なのか――という肝腎な判断を避けている。読売新聞によると、英国での実験では、牛に異常プリオンを与えてから32ヶ月後に脳で感染が確認され、日本の全頭検査では、21ヶ月、23ヶ月という若い牛の感染も見つかっているという。

 秋口まで2,3回議論

 そこで、報告書原案も「BSE感染牛が潜伏期間のどの時期から発見することが可能となり、それが何ヵ月齢の牛に相当するのか、現在の知見では明らかでない」としており、吉川座長は「政治的な動きからは独立して、秋口まで後2,3回は議論する」と慎重だ。また、外食産業の中には、「若い月齢の肉だけを使用したらコスト高で、安い牛丼はサービスできない」との声もある。こうした中で農水省は7月27日、食料・農業・農村政策審議会の消費・安全分科会を開き、消費・安全局の1年の取り組みについて消費者や識者の意見を聞いた。日米協議に関する情報提供について、有識者委員は「全頭検査の科学性を議論するよりも米国のBSE対策が不十分なことの方が問題だ。その方の情報が埋もれている」と指摘。消費者委員は、「米国が牛の月齢を正確に特定できるかどうかは疑問である」とし、牛肉の安全性を認証できるとする米国に不信感を示した。また、「米国にやり込められたという印象を国民に与えないためには、国が安全性に関する情報をきちんと伝えなくてはならない」との発言があるなど、政府の十分な説明責任を求める声が相次いだという。これらの点から、仮に若い牛を対象に、検査なしで牛肉輸入再開の方向を決めるとしても、実現までには、なおかなりの曲折がありそうだ。