北村の政治活動

 (平成13年4月1日) 集団自衛権の行使 “論憲”で徹底的検討を

 日米首脳会談で合意された日米同盟の強化路線の背景には、「日米*成熟したパートナーシップに向けて」の報告書があることは前ぺージで触れた。だが、重要ポイントは、集団自衛権の容認を日本に迫っている部分だ。報告書は「日本での集団的自衛権の禁止は同盟協力を進める上での制約。これを解除すれば、緊密、効果的な安保協力が可能となるが、これは日本人のみが行い得る決定である」と、遠慮がちに集団自衛権の行使を求めている。

 知日派16人が執筆

 報告書はアーミテージ、ウオルフオウイッツ両氏のほか、国家安全保障会議のアジア上級部長になったトーケル・パターソン氏(前レイセオン・ジャパン社長で日本留学の経験者)、ケント・ハリントン氏(元CIA上級分析官)、ジェームズ・ケリー氏(パシフィック・フォーラムCSIS理事長)ら日本問題専門家16人が執筆陣に加わっている。

 6要素を超党派提案

 「米国の世界的な安保戦略上、日米同盟は中心的なもの。日本は第二次世界大戦以来の大きな変革の途上にあり、同盟関係を維持し、一層高めていく鍵は、こうした変革を踏まえて日米二国間関係を形作っていくことだ」と報告書は強調し、21世紀の持続的な同盟関係の基盤となる課題について6つの要素を超党派でまとめて提案、集団的自衛権の行使、ミサイル防衛協力の範囲拡大、情報の提供などを前向きに検討するよう求めている。

 自衛艦は傍観か

 『日本海で日米艦船が訓練中に、もし、自衛艦が敵から攻撃されれば米艦は直ちに応戦してくれる。だが、米艦が先に攻撃された場合、自衛艦は傍観するだけだ。自分が攻撃されずに同盟国を助けるのは集団自衛権の行使となるからだ。こんな非常識な話がまかり通れば「それでも同盟国か」と米国世論は怒るだろう』――。知日派の報告書に対し、元駐タイ大使の岡崎久彦・博報堂特別顧問は読売新聞で、こう指摘した。

 待つうちに被爆

 岡崎氏はミサイル防衛協力についても『北朝鮮のミサイルはハワイ、グアムの米軍基地向けでも日本列島上を通る。日本領空なら領空侵犯で打ち落とせるが、弾道弾は大気圏外を通るし、米国領域向けだと、これを撃ち落とすと集団自衛権の行使となる。テポドンが日本向けだと、第三段階ロケットの点火かどうかを待つうちに日本が被爆する』と述べ、武力行使が数分間を争うミサイル防衛の難しさを解説。『同盟国を見殺しにしないためにも、集団自衛権行使の腹を固める時期がきている』と主張している。
 
 国連憲章で容認

 集団的自衛権は、戦争放棄の憲法第九条1項に「武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と書かれたことが否定の論拠とされてきた。しかし、第九条2項の「陸海空軍その他の戦力は保持しない。国の交戦権は認めない」の条文にもかかわらず自衛隊(セルフデフェンス・アーミィ)を保有しているように、集団的自衛権は国連憲章で認められ、安保条約も憲法手続きを遵守して結ばれている。

 第九条の見直し

 集団的自衛権は元来海外派兵、つまりは外国領域での武力行使に対する歯止めとして議論されてきた経緯から、歴代の内閣法制局は「権利はあるが、それを行使するには色々制約がある」といったあいまいな苦しい答弁を繰り返してきた。だが、ミサイル防衛というアジア情勢の変化を見れば、第九条全体の根本的見直しが必要だろう。

 “論憲”の舞台整う

 衆参両院には憲法調査会が設置され、“論憲”の舞台が整った。自民党主流派の一部が「平和主義を堅持しつつ、集団的自衛権および国連などが行う集団的安保のために軍隊の派遣を可能にする」との案を提示して党内ハト派、タカ派の論議を呼び、自由党は「個別的自衛権や集団的自衛権だけで平和を守ることは不可能」として国連による集団安全保障の整備を唱え、民主党は党首自らが改憲を言明し、党内護憲派との間に軋轢が生じている。

 有事法制の検討

 これとは別に、森首相は施政方針演説で有事法制の検討に着手する意欲を表明、日米会談でも米大統領に伝えた。今国会の前半はデフレ克服の経済問題に終始したが、後半は日米同盟関係を軸とした安保、憲法問題が大きな論議を呼びそうだ。佐世保の基地を抱える長崎4区の代表として、私は安保に重大な関心を持ち続けているが、自民党の国会対策委員として“論憲”の舞台設営はもとより、衆院で所属する委員会の農林水産、労働福祉問題などに限らず、今後も防衛問題に鋭意取り組み、大いに発言していきたいと思っている。

 アーミテージ氏ら知日派の報告書概要 (4月1日)

 【米国と日本*成熟したパートナーシップに向けての前進】の概要は次の通り。

 [序]

 世界の53%の人口、世界経済の25%を有するアジアは、米国の繁栄にとり死活的な地域。朝鮮半島、台湾海峡では瞬く間に米国を巻き込む大規模な紛争が起きる可能性があり、インド亜大陸も主要な紛争地となる可能性がある。世界第4の人口を抱えるインドネシアでは騒乱が長引き東南アジアの安定を脅かしている。将来有望で潜在的に危険でもある安全保障環境下において、日米二国間関係は以前に増して重要である。
米国の世界的な安全保障戦略上、日米同盟は中心的なものである。日本は第二次世界大戦以来の大きな変革の途上にあるが、米国にとり、同盟関係を維持し、これを一層高めていく鍵は二国間関係をこうした変革の結果を踏まえた形に形作っていくことにある。


 我々は日米関係に重要な6つの要素を検討し21世紀の持続的な同盟関係の基盤となる課題を超党派で策定した。

 @. 冷戦終結後の漂流

 冷戦終結以降、日米同盟関係は両国が直面する真の脅威や潜在的リスクにもかかわらず焦点と結合力を失い漂流した。朝鮮半島危機や沖縄の少女暴行事件を契機に日米同盟関係の再確認作業が開始され、日米安保共同宣言、新たな日米防衛協力のための指針、SACO最終報告、BMD共同技術研究などの結実に見られるように日米双方とも軌道修正を行った。その後、両国間の戦略的対話は行われず、仔細な口論、乏しい政策調整に立ち戻り、米国は自己刷新できない日本への関心を失い、日本は『米国は傲慢で自らの考えが他国のニーズに合わないことを理解していない』と見るようになっている。
アジアにおける米国の関心が中国に向けられ、日米両国政府がともに日米安保の再活性化に対する中国の敵対姿勢の懸念から96年の日米安保共同宣言の積極的な実施を追及せず、唯一、対北朝鮮政策の文脈での副産物として積極的な日米安保対話が行われたのである。今や日米同盟関係を、改善し、再活性化し、再び焦点を当てることに改めて関心を払うべき時がやってきたのである。

 A 安全保障

 アジアに極めて深い利害関係を持つ日米両国は、21世紀の両国関係について共通の認識とアプローチを策定することは喫緊の課題。アジアでの紛争の可能性は、目に見える形の日米防衛関係によって劇的に低下している。米国は日本による施設・区域の使用で、太平洋から湾岸地域に至る安全保障環境に影響を及ぼすことが可能である。
「新たな日米防衛協力のための指針」は共同防衛計画の基盤となっているが、これは太平洋を超える同盟関係において、日本の役割を拡大するための終着点(ceiling)ではなく出発点(floor)となるべきである。また、冷戦終結後の地域情勢が抱える不確実性により、二国間の防衛計画に対するいっそうダイナミックなアプローチが必要となっている。
日本による集団自衛権の禁止は、同盟協力を進める上での制約となっている。これの解除により、より緊密かつ効率的な安保協力が可能となろう。これは日本人のみが行いうる決定である。米国は、これまでも安保政策を形作る日本の国内的決定を尊重してきており、今後も尊重すべきである。しかしながら米国は、日本が進んで一層大きな貢献をし、より平等な同盟のパートナーとなることを歓迎する旨を明らかにしたい。
我々は米英間の特別な関係が、日米同盟関係の1つのモデルになると考える。そのアレンジメントには次の要素が必要だ。

 <防衛コミットメントの再確認>
 米国は日本、及び尖閣諸島を含む日本の施政権化にある地域の防衛に対するコミットメントを再確認すべきである。
 <危機管理法案の成立を含め、「新日米防衛協力指針」を鋭意実施>
 <米の三軍全てと日本側カウンターパートとの揺るぎなき協力>
両国は施設の共同使用拡大と訓練活動の統合に努力し、81年合意の米軍、自衛隊間の「役割と役務」を見直して更新すべきだ。日米双方とも従来パターンの追従ではなく、現実に沿った訓練を重視すべきだ。両国は積年の潜在的脅威と同様に、国際的なテロや国境を超える犯罪活動など新たな挑戦に対し、相互支援、協力する方法を規定すべきだ。
 <平和維持、人道的救援任務への全面的参加>
日本は平和維持活動に従事する他国に負担をかけないよう92年に自ら貸した制約を解除する必要がある。
 <多機能生、機動性、柔軟性、多様性、生存生の特徴を持つ兵力構成を発展>
武力攻勢の変更は、一連の協議と対話を通じて行い、相互の合意可能なものであるべきだ。米国は、日本における戦力プレゼンスを再構築するために技術上の変化、地理的な進展を考慮すべきだ。我々は米軍の能力が維持される限り、日本における米国の軍事的足跡を減少させるよう努力すべきだ。これには、米軍基地の継続的な統合と96年のSACO合意の迅速な実施が含まれる。
<米国防衛技術の日本への優先的移転>
最先端の軍事・軍民両用技術に関する双方向の流れを拡大させるため、米国の国防産業に対し、日本企業との間に戦略的同盟関係を築くよう奨励すべきだ。
<日米ミサイル防衛協力の範囲拡大>
我々が日本に役割拡大を提起することで、両国内で健全な議論が行われよう。米国の政府、議会関係者は、日本の政策の全てが米国と同一にはならないことを認識しなければならないだろう。今やバードンシェアリングを軍事力の分担へと発展させる時期だ。

 [沖縄]
 在日米軍の大半(75%)が駐留している沖縄は、東シナ海と太平洋が交差し、朝鮮半島、台湾、南シナ海から約1時間の飛行距離にある点が重大である。嘉手納空軍基地は、米国の兵力投入面で決定的に重要な拠点であると同時に、日本の防衛にも緊要だ。
第三海兵機動展開部隊は、非戦闘員の待避から侵略を撃退する大規模展開も可能とする最精鋭の先頭部隊としての活動に至るまで、迅速に対処できる自己完結型の統合前方展開部隊である。

 しかし、米軍の過度な集中は、日本に対し明白な負担になっている。米軍海兵隊は激しい作戦・運用頻度や比較的若い年齢構成のため、沖縄県での米軍プレゼンスの変更を求める日本世論の特別な関心を引いてきた。
 海兵隊側もよき隣人たらんと努力をしてきたが、基地周辺の過密化で徐々に制約が大きくなり、即応性や訓練に影響が出てきた。統計上、米軍人の不法行為件数は激減しているが、現在の政治状況下で、現に発生する極めて不幸な事件に対する関心は急激に拡大している。

 96年のSACO合意は、沖縄米軍基地の整理・統合・縮小を求めた。日米両国は普天間飛行場を含め約5,000ヘクタール、11施設の米国資産縮小に繋がる合意事項の実施を完了しなければならない。SACO合意にはアジア太平洋地域全体への多様化という4つ目の重要な目標があって然るべきだった。軍事的観点からは、米軍はこの地域で広範囲かつ柔軟なアクセスを持つことが重要だ

 しかし、政治的観点からは、我々のプレゼンスを信頼性あるものにするため、沖縄県民の負担を軽減することが不可欠である。兵力構成での米国の検討は、SACO合意にとどまるものであってはならない。海兵隊のために、地域全体にまたがる広範、柔軟な展開と訓練の選択肢を検討すべきだ。

 (政治、情報、経済関係、外交の4項目は略)

 [結論]
 ペルー提督の黒船以来、日米関係は良かれ悪しかれ日本とアジアの歴史を形成してきた。新世紀を迎え、グローバリゼーションと冷戦終結後の安全保障環境のダイナミズムは日米両国に新しく複雑な挑戦を突きつけている。日米両国が個別に、あるいは同盟のパートナーとしてどう対応するかが、新しい世紀の可能性と同様に、アジア太平洋地域の安全と安定を決定するものである。