北村の政治活動

 第79回(6月1日) 三位一体改革の第2戦 参院選前に両省対立


「税源移譲が先だ」(総務省)、「いや地方歳出の大幅削減が先」(財務省)――。三位一体改革を巡る両省の攻防が激化するさなか、小泉首相は5月28日の経済財政諮問会議で、3兆円の税源移譲を盛り込むよう指示した。政府は6月3日の諮問会議で、「骨太の方針2004」をまとめ、翌4日に閣議決定する。三位一体の改革では、麻生太郎総務相が国から地方へ3兆円の税源移譲の先行実施を求める「麻生プラン」を4月26日の諮問会議に提出すれば、谷垣禎一財務相が直ちに「税源移譲の先行決定は不適当だ」と批判、その後も両省の応酬が続いていた。しかし、5月25日に全国知事会などが「地方財政危機突破総決起大会」を都内で開き、税源移譲を最優先で実現するよう訴えたため、麻生総務相が首相に直談判し、首相も参院選対策を意識して突如指示したものだ。自民党内には政調部会のほかに「地方税財政改革プロジェクトチーム」(座長・片山虎之助前総務相)と私が幹事役を務める「地方自治を憂える会」(会長・二階俊博衆院議員)があり、三位一体改革と取り組んでいるが、「片山PT」も「憂える会」も7月の参院選前に地方自治体の不安を解消しようと活発に動いている。憂える会は5月18日、税源移譲の規模明確化を求める決議をまとめ、麻生、谷垣両相と細田博之官房長官、竹中平蔵経済財政担当相に提出した。

 自治体に危機感募る

 三位一体の改革は@国から地方への補助金削減A国から地方への税源移譲B自治体の財政格差是正のため配分される地方交付税の圧縮――を一体に進めるもの。昨年の「骨太の方針」では、「06年度までの3年間で4兆円」の補助金削減方針が示され、初年度の04年度予算では1兆3百億円削減。地方交付税は赤字地方債財源分も合わせて2兆8623億円減らされた。その一方で、税源移譲は6558億円に止まった。このため、地方自治体は地方債増発や歳出削減で差額を埋め合わせたが危機感を募らせており、「骨太の方針」決定に照準を合わせ、5月25日には全国知事会など地方6団体が700人規模の集会を開き、税源移譲と交付税維持などを訴えた。麻生総務相が諮問会議で先手を打った背景には、04年度予算で税源移譲が空振りに終わったとの反省に立って、自治体の声が通りやすい参院選前に党や自治体と連携を深め、調整を本格化させる狙いがあったのだろう。

 総額3兆円の税源移譲

 「麻生プラン」は、@06年度末までの3年間に、総額3兆円の税源移譲を先行決定A国の所得税の税率引き下げと、現行5〜13%の個人住民税の税率を10%へ一本化し、財源対策を講じるB税源移譲額(3兆円)が補助金削減額を上回れば、地方から国に税源を逆移譲C地方交付税と地方税を合わせた一般財源総額を04年度と同水準に維持するD補助金見直しの重点は公共住宅など施設整備事業の廃止、義務教育費の国庫負担金のうち学校事務職員の給与費の一般財源化――など。このように麻生プランは自治体に配慮し、税源移譲優先の考えに立っている。これに対し、谷垣財務相は「歳入の枠を先に決めて歳出の見直しを制約する本末転倒の議論」と猛反発した。財政再建を重視する財務省は、国家公務員に比べて相対的に高い地方公務員給与の削減や、計画額と決算額で6兆円の乖離が生じている単独公共事業の圧縮など、「スリム化を合わせた財源移譲」を主張している。

 昨年同様に調整難航

 読売新聞も社説で「地方交付税の削減は、水膨れした地方財政のムダを減らした結果で、厳しい国の財政事情から見れば当然だ。税源移譲は、補助金削減を積み上げてから実施する計画のはずだ。04年度分の交付税削減などは自治体には確かに厳しい内容だったが、今ここで、一般財源総額の維持を認めることは、自治体に今後のコスト削減努力を放棄してもいい、ということに等しい」と自治体支援の麻生プランに厳しいコメントをしている。これは地方自治体間の格差を無視した論評だ。国税である所得税を減らし、地方税の住民税を増やす現行の政府案では、住民税が大きく、人口の多い自治体が有利になる。そこで、東京都には歳入を制限する案が浮上しているほど。逆に財政力の弱い自治体は税源移譲しても財源が潤わず交付税の機能を強化しないと再生できない。公共事業関係の補助金を地方に任せればスリム化が可能だし、交付税を減らし過ぎると保育所のように一般財源化しても改革が進まない。具体的な税源移譲額は年末の予算編成時に正式に決まるが、補助金改革では権限移譲を嫌う官庁の抵抗が予想され、昨年同様に年末まで調整は難航しそうだ。

 全体像の明確化等5項目

 以上のような状況を踏まえ、「地方自治を憂える会」は5月18日午後、党本部で会合を開き、二階会長と香山充弘総務事務次官の挨拶の後、「麻生プラン」について椎川忍総務省自治財政局財政課長から説明を聞いた。この後の協議では、「改革を進めるうえで大切なことは、地方の意見をよく聞いて、全体像を明確に定め、地方との信頼関係を維持することだ」「地方交付税が実質12%減となるなど、歳出削減のスピードの速さに地方団体から悲鳴が出ている」「地方が不安、疑問に思っていることに、今年の骨太方針で明確なメッセージを示すことが何より重要」などの意見が出された。このため骨太2004に盛り込むポイントとして@全体像の早期明確化A税源移譲の規模・方法等の先行決定B税源移譲に繋がる補助金改革C地方の歳出削減意欲を削がないよう、今年度と同程度の一般財源総額の確保D治安・地域再生等地域の緊急課題に対応する一般財源を上乗せして確保――の5項目の意見書と、「麻生プラン」支援の決議文をまとめ、4閣僚に提出した。

 地方自治を憂える会の決議文は次の通り。

 「三位一体の改革」は、平成16年度に第一歩を踏み出したが、その内容について、地方団体から、所得譲与税は画期的であり評価できるとしつつも、改革の全体像が不明確であるとの指摘や補助金の削減額に対する税源移譲の規模が小さすぎるとする意見、地方の自由度の拡大に繋がる補助金改革を行うべきとする意見など厳しい意見が出されている。
特に地方交付税等の改革については、交付税と臨時財政対策債の12%削減はあまりに大きすぎ、地方団体の歳出削減意欲をそいでしまうとの強い意見が出されている。
今後、「三位一体の改革」を進める上で一番大切なことは、改革の全体像、とりわけ税源移譲の具体的な規模や内容を早期に明確にし、地方との信頼関係を維持しながら進めることであり、地方から出されている意見に真摯に耳を傾け、地方が不安や疑問に思っていることに対し、明確な対応をとる必要がある。そして、地方の期待に応え、地方に支持される改革とするため、国庫補助負担金の改革、税源移譲、地方交付税の見直しを同時に一体的に進めるべきである。それがまさに、真の地方分権、地方の自立を図ることになり、今の我が国に望まれている地方の活力を回復する一番の近道となるものである。
これらのことを踏まえ、以上の内容を「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」に的確に反映させ、平成17年度の「三位一体の改革」として、確実に実行すべきである。
以上、「地方自治を憂える会」として決議する。    平成16年5月18日