北村の政治活動

 第77回(5月1日) 裁判員法案が成立へ 和製の陪審員制度

 自民党は、4月25日投開票の埼玉8区、広島5区、鹿児島5区の衆院統一補欠選挙で全勝し、小泉政権の4年目に花を添えた。補選は7月参院選の前哨戦と位置付け、年金改革、イラク復興支援を争点に戦われた。民主党は、小泉首相の「年金一元化発言」や日歯連事件、3閣僚の“うっかりミス”による国民年金保険料不払い問題などを格好の攻撃材料に、衆院厚生労働委で年金改革関連法案の審議をしばしば拒否、紛糾させた。だが、小泉首相が国際テロに毅然とした態度で臨み、イラク人質事件の人質5人全員を無事解放させたことが国民の支持を得、大勝した。私も広島の応援に駆けつけたが、補選が参院選への弾みになったと確信する。それにしても、公的年金を所管する社会保険庁の元長官が、日本歯科医師連盟(日歯連)の前会長から計330万円の賄賂をもらっていた日歯連事件は醜態だし、同庁の保険料徴収体制にも問題を残した。そこへいくと、私の属する衆院武力攻撃事態対処特別委は、有事関連7法案の審議が順調に進み、今国会での成立は間違いない。同特委では、7法案のうち国民保護法案の医薬品や土地・家屋の収用など基本的人権問題を巡って質疑が交わされている。7法案の審議経過は次回以降に回し、今回は国民が多大な関心を示す裁判員法案について解説したい。

 有罪か無罪か、量刑も

 衆院法務委は4月23日、国民が重大な刑事裁判の審理に参加する裁判員法案を可決、同日の衆院本会議を経て参院に送付した。成立すれば5年(09年)以内に施行される。裁判員法案は、幅広い国民参加によって、健全な社会常識を裁判に反映させ、司法への信頼を高めるのが狙い。「ギルティ(有罪)・オア・ノット ギルティ」「ハンギング(絞首刑)!」――。米国映画でよく見なれた陪審員制度の光景と同じく、20歳以上の有権者から無作為に抽出される裁判員は、殺人や危険運転致死など一定の重大事件を対象に、裁判官とともに「有罪か無罪か」や、有罪の場合の刑の重さを決める。70歳以上の高齢者や議会開会中の地方議員、学生のほか、育児・介護など「やむを得ない事由」(政令)があれば裁判員を辞退できる。裁判員には守秘義務が課せられ、職務終了後でも職務上知り得た秘密を漏らすと、懲役6月以下または罰金50万円以下に処される。原案は「1年以下の懲役または罰金」だったが、自民、公明、民主3党の一致で、懲役刑の長さを半分に修正した。

 3350人に1人の確率

 国民が参加しやすいよう「国は必要な環境の整備に務める」との規定も新設された。これは、子育て中や、介護が必要な家庭を抱えた国民が参加しやすいよう裁判所に託児施設を設けたり、近くの施設を紹介するよう求める意見や、会社員などの「裁判員休暇」を新設すべきだという声を踏まえて、政府の環境整備に関する努力義務規定が書き加えられた。刑事裁判の構成は原則として裁判官3人、裁判員6人。被告が起訴事実を認めている場合は裁判官1人、裁判員4人も可能。評決は合議体の過半数で決定。裁判官と裁判員の各1人以上の賛成が必要だ。衆院法務委での政府答弁によると、選ばれる人の確率は、裁判員6人のほか補充裁判員3人を選出するとの条件で、02年の対象事件数で計算した場合、2万5千人余。年間で3350人に1人の割合だ。国民の約70人に1人は、一生の間に1回、殺人など重大な刑事事件の裁判に加わることになる。

 辞退理由の政令は慎重に

 裁判にかかる日数は、公判前の整理手続きで証拠を出し、争点を絞る作業をするので、裁判が始まれば極めて迅速に行う。争いのない事件なら1日か2日、証人を要する事件で1週間程度。裁判の迅速化が期待できそうだ。裁判員になるのは国民の義務で、正当な理由なく出頭しないと最高10万円の過料を払わなければならない。だが、「人を裁くことは主義として出来ない」「死刑制度は絶対反対」という人もいる。このため、法案の閣議決定の直前になって与党内から「憲法で保障された思想・信条の自由に基づき、辞退できるように配慮する」ことが求められた。これに対し政府は「政令で設ける『やむを得ない事由』の1項目に考えているが、ただ単に、嫌だ、やりたくないと言う人は辞退理由に該当しない」と釘を刺し、「制度実施まで精力的に広報活動をし、国民の理解と関心を深めることに最大限度力をしたい」と委員会質疑で答えている。裁判員には1日当たり約1万円の日当と交通費が支給されるはずだが、自営業者の中には「7日も休めば店がつぶれる」という人もいるだろう。政令で定める『やむを得ない事由』は慎重に検討されなければなるまい。