北村の政治活動

 第75回(平成16年4月1日) 国際船舶保安法案で質疑 国際テロ関連で急遽登板

 私は衆院安全保障委、武力攻撃対処特別委に属する立場から、安保・治安対策のベテランと評価されてか、光栄にも3月17日に担当外の衆院国土交通委員会に呼ばれ、「国際航海船舶等保安法案」(略称)の代行質疑を許された。同法案は、01年9・11の米国同時多発テロや02年のイエメン沖タンカー爆破事件などを受けて、船舶、港湾施設の保安を確保するため、新しく制定するもの。1974年に締結したSOLAS条約(海上での人命の安全のための国際条約)付属書が、国際海上運送システムの信頼性や安全性の確保を目的として、02年末に改正されたのに伴い、海事分野のテロ対策を重視して船舶と港湾の自己警備の強化を図った。法案内容は、国際航海に従事する500トン以上の貨客船とこれら船舶が利用する岸壁・停泊地に対し、国が保安(自己警備)計画の作成・実施と保安管理者の選任を指示。船舶には警報通報装置を、岸壁にはフェンス、照明などを設置させる。また、外国から入港する全ての船舶に対しては、事前通報を義務付け、必要に応じて追加情報の提供を要求したり、立ち入り検査を行う。立ち入り検査を拒否した場合は入港を禁止する。

 負担費用は普通交付税処理

 この国際航海船舶等保安法が成立すれば、海上汚染防止法、油濁損害補償法(いずれも長い法律名のため略称)と並び、国際海事三法が整うことになる。私は17日の国土交通委で冒頭の質問に立ち、国際テロ対策を実効あるものにするには、国が総力を挙げてとり組む必要があると強調、@国自ら港湾の情報収集、危険度の分析など保安対策を行うべきだA北朝鮮船舶の入港を止めることが出来るのかB港湾施設の維持・管理費用など地方の負担にどのような財政援助をするか――などと質した。これに対し、矢部哲同省政策統括官らは、「北朝鮮を含め入港する国際航海の船舶には厳正な立入検査などを行い、入港禁止等の規制を行うことができる」「港湾管理者の負担費用は平成16年度から普通交付税の基準財政需要額に算入、適切に財政措置を講じる」などと答えた。
3月17日の衆院国土交通委員会で、国土交通省幹部を相手の質疑応答要旨は次の通り。

 スペインは対岸の火事に非ず

 北村 国際テロ対策に関する法案が本国土交通委員会で審議されるに当たり、まずは先日、スペインで発生した鉄道の痛ましいテロの犠牲者に、心から哀悼の意を表したい。米国同時多発テロ以降、国際社会でテロに対する意識、取り組みが大きく変化していることはご承知の通りだが、このスペインテロ事件は、我が国も、もはや対岸の火事ではなく、差し迫った脅威として、テロ対策に真剣に取り組む必要性を改めて教えてくれた。
昨年の10月から11月に、アルカイダの関係者が、我が国をテロの標的の1つとして言及しており、もはや我が国でのテロ発生の可能性が低いとはいえない。それでもなお、安全と水はただという、例の国民意識が潜在的に残っているといえないだろうか。その意識の甘さと発想の転換を図る必要があるとの観点から、この法律は極めて大事だ。
周囲を海に囲まれた我が国、貿易量の70%を国際船舶の航路に頼り、なおまた、国内経済活動の維持が海上輸送・交通に大きく依存している現状を見るとき、さらに臨海部に重要な工業施設が多数立地している現状において、海事分野のテロ対策の重要性は極めて高い。このような中で、船舶と港湾の自己警備の強化を求める本法案が提出されたことは、極めて意義が高いと思う。しかし、個人や企業、あるいは地方の港湾管理者など各分野の方々が危機意識を高め、自己警備を強化するだけで国土は守れない。国際テロ対策を実効あるものにするには、同時に政府全体が総力を挙げて積極的に取り組む必要があると思う。
この認識に基づき第1番目に、今回の法案によって北朝鮮の船の入港を止めることができるのかできないのか。北朝鮮の船に対して新たに何が出来るのか尋ねたい。

 北朝鮮船含め入港規制行う

 矢部 哲政策統括官 この法律は大きく分けて2つの内容を含んでいる。1つが国際航海船舶とその船舶が利用する国際港湾に対して保安措置を義務づけるもの。もう1つが国際航海を行う船舶に対して入港規制を行うということだ。入港規制では、船舶に起因してほかの船舶や港湾施設に対して危険を発生させる恐れがある場合に入港禁止等の危険防止措置をとる。従って、たとえ北朝鮮の船であっても、この条約が定める一定の条件、すなわち条約証書を有する等、条約上義務づけられた要件を満たしている場合は、入港禁止には出来ない。ただし、北朝鮮の船舶を含め、本邦の港へ入港しようとする国際航海の船舶に対しては、先ほど申したように入港規制を行うことになっている。事前に船舶の保安情報を通報させ、保安措置の実施状況、危険の恐れの有無等を厳正に確認していく所存だ。さらに必要がある場合には洋上で立入検査を行い、これを拒否するような場合や立入検査の結果、不法に爆発物が持ち込まれているなど、ほかの船舶や港湾施設に危険を発生させる恐れがあって、かつほかに取るべき措置がないような場合には入港禁止等の措置が取れる。

 短く分かりやすい略称を

 北村 今の答弁は、この法律の運用の中で極めて大事な事柄になると思うので、実効あるものにするため、格段の努力と精緻な作業をしていただきたい。なお、この法律は、国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律案という比較的長い名称だが、これの運用に目を配るとき、この法律に親しみやすく、分かりやすい略称で国際船舶港湾保安法などという呼び方にしてはいかがか。役所で考えている略称は、国際航海船舶等保安法と漏れ聞くが、航海するのは船舶に決まっているのだから国際船舶でよい。そして、法律で目指すところは陸域、港湾域の保安に特に力を入れるということから、港湾を入れて呼び慣わし、その保安法とするのがよいのではないか。

 矢部統括官 御指摘通り私どもの略称には確かに港湾という名前が入っていない。先生御指摘のようなお考えもあろうかと思うので、呼び方を検討する上で参考にさせて頂きたい。


 北村 船舶や港湾の保安対策を強化する場合、国の役割はこの法律の中でどうなるか。自己警備として、船舶や港湾施設の保安対策の強化を求めることは重要なことだ。国際テロ対策であるならば、国によるテロ対策も強化すべきではないか。

 原発警備と水際防止の強化

 佐藤茂樹大臣政務官 先ほど来、北村委員は佐世保だということで、なるほどなと思ってご議論を聞かせて頂いた。(佐世保には)海上保安庁も、自衛隊基地も、米軍基地もあり、さらにはもう少し西の方に行くと対馬なんかの自衛隊基地から高精度の望遠鏡で朝鮮半島がくっきり見える。そういうところからの委員の色々な問題意識ではないかと拝聴した。
 答えは3点あるが、1つは御指摘通り、国際テロ防止のためには、本法案に基づく船舶所有者等による自己警備はもとより、国としても、国土交通大臣による保安レベルの設定をしっかりとやっている。さらに、海上保安庁による入港規制を行う等、国としても保安体制に万全の役割を果たせるようになっているのがこの法案の1つの大きなスキームであることを是非ご理解頂きたい。2点目は、この法案以外で国として今国際テロ対策としてやっていることを2つ挙げると、1つは国自らによるテロ防止対策の強化が重要であるとの認識から、特に海上からのテロの発生を防止するために我が国の国土、ほとんど海岸線に原子力発電所があるわけだが、海上保安庁により原発等の警備を強化している。
3点目に、国際テロの未然防止を図るためには、航空機や船舶を通じてヒトやモノが出入りする国際空港とか国際港湾の適切な管理等、しっかりと水際での取り締まりを強化していくことが極めて重要で、政府挙げて本年1月から、内閣官房を中心に、空港・港湾保安委員会の設置、また、空港・港湾危機管理官の設置といった体制整備にしっかりと取り組んでいるところだ。国土交通省としても、本法案に基づき、保安措置の義務づけあるいは入港船舶に関する規制を的確に実施するとともに、政府全体で取り組んでいる水際対策の強化、さらには海上保安庁による海上の治安確保に引き続き万全を期して参る所存だ。

 情報技術の積極的活用を

 北村 港湾は、島国である日本の窓口である。海上輸送が国の生命線だ。従って、港湾の保安対策の強化は、個々の港湾施設管理者の自己警備に任せるのでなく、国自らが港湾についての情報収集、危険度の分析を保安対策として行うべきだと考える。そして、多くの行政機関や事業者などが活動している港湾において保安対策を効率的、効果的に実施していくには、水際対策に関係する行政機関で、情報をリアルタイムに交換、共有出来る行政の情報ネットワークシステムを整備しなければいけない。また、港湾そのものの出入り口、ゲートでの貨物管理の自動化、物流の手続きなど、これらが円滑に進むように、いわゆるワンストップサービスで実現され、港湾が国際競争力を高めなければいけないこの時代に、官民がそれぞれ一体となって各分野で情報技術の活用を積極的に進めていくべきだと考えるが、国交省はどう取り組んでいくつもりか。

 保安情報の収集と共有が重要

 鬼頭平三港湾局長 それぞれの港湾施設を危害から守るためには、その管理者が自ら管理する施設について適切な保安措置を講ずるのが基本だが、保安対策の実効性を高めるには、個々の港湾施設管理者の保安措置に任せるだけではなくて、国も含め、関係者が連帯協力して取り組むことが大変重要であると考えている。その観点から港湾局は、港湾施設の管理者が保安規定を策定するに当たり、あらかじめその施設の脆弱性等についての評価を行い、港湾施設の管理者に的確な情報提供を行って必要な対策が講じられるようにしている。
また、海上保安庁との間での緊密な情報交換を行うなどにより、港湾施設の危険度などの情報を適時適切に管理者に提供して、所用の対策を講じている。さらに、水際対策の中では各港に設置される港湾保安委員会や危機管理官等の活動に協力して、国及び地方の関係機関との連携協力体制を整えている。以上の通り、港湾の保安対策には、港湾施設の管理者に任せるだけでなく、国としても必要な組織、体制を整えながら、情報収集や危険度の分析など、あらゆる課題について管理者と連携協力して港湾の保安対策に万全を期したいと考えている。さらに、水際対策では御指摘通り、関係する行政機関が大変多く、その緊密な連携と情報の共有が大変重要であると私どもも認識している。その観点から、政府全体で取り組む水際対策の中で、港湾保安委員会、港湾危機管理官等の活動に協力し、関係省庁と連携し、保安情報を迅速に伝達、共有して対応できる体制づくりを進めたいと考えている。港湾の保安対策を考える場合、物流の効率性への影響をいかに最小限に抑えるか。御指摘の国際競争力の点にも繋がってくるが、この点においては、物流における情報技術の活用が、港湾物流の効率化とともに保安水準を向上させる上でも大変有効であると認識している。このため、官民一体となって関係部局とともに取り組んでいる電子タグなどを活用したコンテナの管理・輸送システム、の検討や港湾物流情報プラットホームの構築など、情報技術を活用した物流セキュリティー強化と、これに連動した物流の効率化の実現に引き続き取り組んで参りたいと考えている。
<注 電子タグ=消費者が商品を何時、どこで買ったかをインターネットで検索できるICタグ(電子荷札)をいう。大きさは砂粒ほどで、内蔵された半導体に生産者の商品情報や消費者の購入情報を書き込むことが出来、事業者側はICタグから無線で送られてくる様々な情報をコンピューターで管理する仕組み。総務省はこのほど、情報管理の徹底を事業者側に求める「個人情報保護ガイドライン」の原案を固めた>

 経済活動の7割は港湾担う

 北村 今回の港湾施設の保安対策について、先の平成15年度の補正予算で、港湾施設・区域などのフェンスとか、諸々の施設について、必要な設備の整備については地方公共団体に補助することにしていたと思う。さらに今後、この法律の成立とともに必要となる維持費用、管理費用、それらの負担は地方財政に大変厳しく、(地方は)もう苦しい思いで新年度の予算編成に当たっている。国際テロ対策、国民の安全、国土の保全を考えるときには、国、地方が一体となって、こういう国際条約に基づく、また国の生命線に関わる港湾対策の法制は推進しなければならない。国民の経済活動、福利全般にわたる影響を持つ貿易・交易、先ほどから言うように、これらの7割あまりを担っているのが港湾だ。
入ってくる船、あるいは出る船、東京湾の入り口で仮に大型タンカーなどが事故を起こしたときに、どう波及し、どんなに大きな被害が出、経済活動も国民生活も大変な犠牲を強いられるかを考えると、この法律に期待するところは大きいわけだ。そういう大きな志の裏側にあって、日常的にこういう大事な仕事に従事するのは、やはり港湾管理者としての都道府県や市であるわけだ。地方の実情を考えるときに、国はそれらの点を十二分に配慮して、限られた目標の年次の手前できっちりと国際約束が果たせるように、そして経済活動あるいは国際交易に支障がないように十分な整備をし、運用を図るため、財政的な支援が必要と思うが、その点を説明頂きたい。

 埠頭は案設備に一定の助成

 鬼頭港湾局長 国際埠頭施設の保安対策については、今般の改正SOLAS条約が、国際海上運送システムの信頼性や安全性の確保を目的としたものだ。それが我が国の経済、国民生活にとっても極めて重要であることから、港湾管理者等が行う埠頭保安設備の設置に対して、国としても一定の助成を行うことにした。また、国際埠頭施設における保安措置の実施に当たっては、今申したイニシャルコストに加えて当該施設への出入りの管理であるとか、監視のための人の配置や保安設備の保守点検等に要する費用が必要になってくる。こういった港湾管理者が負担すべき費用についても、平成16年度から普通交付税の基準財政需要額に参入できるようにして適切に財政措置を講じて参ることとしている。

 効果発揮で不況脱出を

 北村 是非、この法案が速やかに可決成立をして、テロ対策といいつつも、これが効果を発揮し、国民生活あるいは不況脱出の1つの活路を見いだすことが出来ればという風に期待をして、質問を終える。