北村の政治活動

  第67回(平成15年12月1日) HTB再建の課題=下 観光立国の戦略
 
 陶酔のイベントあるか

 米国生まれのテーマパークは、映画製作者のウォルト・ディズニーが55年、加州ロサンゼルス郊外にディズニーランドを開園した時から使い始めた。同ランドは「過去への郷愁と、未来を開く冒険心」をテーマに、建築様式からゴミ箱の形に至るまで、綿密な計画のもとに作られた。経済産業省は「入場料を取り、特定のテーマをもとに施設全体の環境づくりを行い、テーマに関連するアトラクションを有し、パレードやイベントなどのソフトを組み込み、空間全体を演出して娯楽を提供する事業所」と定義した。遊園地とは違う。その意味ではHTBも、清潔で歴史的なオランダの街並みを再現、ゴージャスなホテル群、自然を生かした壮大な空間など、テーマパークの施設面では合格だ。しかし、ロスのディズニーランドやフロリダ州のディズニーワールドのように、大人も子供も夢とロマンに陶酔できる毎日のアトラクションやパレード、シーズンを飾るイベントが足りているだろうか。

 魅力がリピーターの鍵

 滞在型リゾート地帯といいながら、南仏のカンヌやニース、お隣のモナコのように、長期バカンスを楽しめる施設や「しかけ」がHTBにはあるのだろうか。地中海の明るい陽光と景観に加え、モナコなどにはカジノ(賭博場)や巨大なヨットハーバーがあって、欧州の避暑客を毎年惹き付けて離さない。HTBのリピート率は68%というが、日本や米国のディズニーランドには鍵となるリピーター(再訪者)が2、3度は訪れる。それだけ魅力があるわけだ。石原慎太郎都知事がカジノ解禁を唱えているが、一考を要する提言である。HTBの再建に限らず、観光行政は日本にとって喫緊の課題。政府内にも税財政や金融政策が手詰まりの中で、観光振興を景気回復の端緒にしたいとの気運が高まっている。政府は総選挙後に開いた経済財政諮問会議や地方再生本部で「観光立国」の施策を推進することを決め、小泉首相は特別国会で「地方の埋もれた観光資源を開発したい」と述べた。読売新聞は最近、観光の現状を解説し、識者の意見なども取り上げている。大要は次の通りだ。

 旅行者倍増のPR

 【政府は6月10日発表の観光白書で、日本を訪れる外国人旅行者数を2010年に1千万人に倍増させる「観光立国」の戦略を打ち出した。小泉首相は今春、英国、スペイン、フランス、ドイツを訪問した際、各国首脳に「日本は今、外国人旅行者の倍増をキャンペーン中だ。是非訪ねてきて下さい」とお願いした。今年3月には「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を打ち出し、韓国、米国、香港、台湾、中国を重点5地域と定めて集客作戦を展開中だ。旅行ジャーナリストの招待や、海外のテレビスポットCMを流すなどメディア戦略も検討。ソウルに次いで米国でも観光客誘致委員会の設立を準備している。だが、キャンペーンは、イラク戦争や新型肺炎(SARS)の発生で出鼻をくじかれた格好。テロや紛争の不安に加え、SARS感染を避けるためアジア地域での旅行客は激減。香港、台湾、中国などから日本に向かう旅行者の足はパタリと止まってしまった】

 観光客は3倍の”出超”

 【2002年に海外旅行した日本人は1652万人に対し、日本を訪れた外国旅行者は初めて5百万人を突破したものの、524万人に過ぎず、3倍以上の大幅"出超"だ。欧米から遠く離れ、言葉のハンディもあるが、フランスやスペインなど他の先進国はもちろん、アジア諸国に比べても、外国からの訪問客は極端に少ない。世界観光機関の統計(2001年)によると、外国人旅行者受け入れ数で、日本は世界第35位に甘んじている。フランス、スペイン、米国、イタリア、中国、英国、ロシア、メキシコ、カナダ、豪州の順で中国は堂々5位に入っている。政府の試算では来日客が8百万人に増加した場合、旅行業、ホテル、飲食店などで計2兆7千億円以上の経済波及効果があり、約15万6千人の雇用創出が見込めるという。2002年に日本人が海外で消費したお金と、外国人観光客が日本で落としたお金の差額に当たる国際旅行収支は3兆5651億円の赤字に上っている。この内外不均衡を是正すれば、赤字幅が縮小するばかりか、海外における日本理解が深まり、アジアの反日感情も和らぎ、安全保障上のプラスもあると見られる】

 一体性の審美的規制

 また、9月12日の同紙に環境デザイナーの漆原美代子さんが寄稿し、「政府の観光打開策は宣伝の強化やホテルの受け入れ態勢、入国管理の改善などに集中しているが、今の日本は外国人を癒し魅了するような国ではない。美しい遺産や取り巻く日本列島の大部分が極度に醜くなっている」と述べたうえ、「成田国際空港から都心を結ぶ高速道路には、欧州や高度成長以前の日本にあった心和む『農村風景』はなく、派手な野立て看板や集合住宅が建ち並び、外国人はその無機質な光景にたじろぐ」と嘆いている。そして市街地の上空を覆う電線と電柱、雑多な建物と夥しい彩色の看板、所狭しと並ぶ他国にはない自動販売機などを指摘、「美しい景観は自然、建築、道路、広場といった多様な要素が互いに補い、高め合う『一体性』を確保して初めて生まれる」と"審美的規制"を求めている。

 対中国の海路開設を

 さて、再びHTBに話を戻そう。外国人の頭の中には「日本の物価は高い」との意識がしみこんでいる。いくらゴージャスなホテルがあっても利用されなければ宝の持ち腐れだ。まんべんなく観光客にサービスを提供するには、ハネムーンなどの利用だけでなく、内外中高校生の修学旅行にも手軽に利用できる安宿や、アウトレット(郊外のスーパーマーケット)を周辺地域に併設し、安い食事や土産物を購入出来るようにしてはどうか。交通手段としては長崎―上海間の空路だけでなく、大連、北京、台湾、香港などの直行便を開設するほか、佐世保―上五島―壱岐・対馬―大連―胡蘆島などを結ぶ海路を開設すべきではないか。終戦直後は胡蘆島―佐世保間に7千トン級の引き揚げ船がピストン航行していたことを思えば、航空より安価な1万トン級の高速船を就航させ、アジアの観光客を運ぶのは簡単なことと思えるがいかがなものか。長崎新幹線の完成を急ぐことは言うまでのない。

 風車発電で自給自足

 オランダの景観にこだわるなら、山上や湾内にも風車を増設し、使用電力ぐらいは自給自足してもよい。リップル・ウッドが提案した、宮崎―福岡―長崎を結ぶ3地区ツアーやロッテが目論んだサーカス拠点のアイデアも頂く価値はあろう。一方、法制面ではビザ(査証)なし入国や外国語表示の案内板整備など、外国人が快適に滞在できる国内の環境整備が欠かせない。韓国、中国、香港、台湾からの旅行者の場合、短期的渡航でもビザが必要なため、旅行業者や航空会社、国交省が入国管理の緩和を求めている。このビザなし入国には違法滞在や不法就労を恐れる警察・法務当局の抵抗が根強い。外国人犯罪が急増している現状を見れば当然だが、何とか国内調整を進め、入国手続きを簡略化すべきだろう。このほか、観光施設整備に対する税財政優遇措置など、観光振興の課題は山ほどある。HTBの再スタートを機に、私は国政面で強力に諸施策をバックアップしていきたいと思う。