北村の政治活動

 第66回(平成15年10月16日) HTBの再建目指す 観光振興に本腰を


 「千年の街づくりの夢」である大型テーマパーク――。ハウステンボス(HTB)は、近く支援企業の野村プリンシパル・ファイナンスと正式契約し、再建に乗り出す。2月末に会社更生法を申請して以来8ヶ月、地元佐世保では、取引業者に連鎖倒産が出ないかと心配されたが、ようやく当面の不安は解消された。再生のスタートを県民の皆様とともに心から喜びたい。しかし、同じく経営破綻した宮崎のシーガイアが悪戦苦闘しているように、テーマパークの前途は厳しい。デフレ不況や新型肺炎(SARS)の発生で、観光の客足はさらに遠ざかっている。HTBの再建にはイベントの充実、交通手段の改善、周辺地域の整備、国際PRなど総合的な施策の展開が必要になろう。政府は景気浮揚の一環として「観光立国」を宣言、小泉首相自ら今春の訪欧で「訪日旅行者の倍増キャンペーン」を展開した。今回は皆さんとHTBの再建、観光行政を考えてみたい。

 支援企業はNPF

 HTBの桃尾重明管財人は9月3日、支援企業に野村証券グループの投資会社、野村プリンシパル・ファイナンス(東京、NPF)を決めたと発表した。HTBは、オランダの街並みを再現した滞在型テーマパークで、92年3月に開業した。だが、初期投資の金利負担や客足の伸び悩みから2月26日、約2290億円の負債を抱えて会社更生法適用を申請、経営は破綻した。適用申請以降、支援の意思を表明した企業は14社を数えたが、最終的にはオリエンタルランド、リップルウッド・ホールディングス、ロッテグループ、NPFの4社が残った。桃尾管財人は1社に絞り込む選定作業で、「債権者の弁済額、運営能力、地元への配慮」を総合的に判断、「野村証券グループの規模、ネットワーク、組織力」などをキーポイントとしてNPFに白羽の矢を立てた。NPFは弁済額が最も高額で、支援内容は@現在の資本金を100%減資し、新たに110億円を注入、HTBを同社の子会社にするA設備投資は約百数十億円で国際会議場や温浴施設などを整備する――などで、総投資額は弁済額を加え、約3百億円を超えると見られている。

 千年の街の夢引き継ぐ

 支援企業がNPFに決まるまでには、数多くのドラマがあった。HTBのメーンバンクみずほ系のファンドは、東京ディズニーランドなどを健全運営するオリエンタルランドに運営させようとしたが、同社は隣接地に昨年新たに開業した東京ディズニーシーの経営を安定させることを理由に、早い段階で支援を見送った。早くから支援に意欲を見せた米投資会社のリップルウッド・ホールディングスは、ダイエー福岡事業の支援候補にも名乗りを上げており、既に買収した宮崎市のシーガイア、福岡、HTBの九州3ヶ所を結んだツアーを組み、国内外の集客を目指す方針だった。韓国でテーマパークを運営するロッテグループも、HTBを世界的なサーカス団の拠点とするユニークな構想を持ち、地元経済人に接触を続けていた。しかし、3企業はいずれも買収額の抑制を図ったため、結局は資金力、投資実績ともに豊富なNPFに落ち着いた。川端芳文NPF社長は「千年の街づくりの夢を引き継ぎ、上質なオンリーワン・リゾートとして再建。欧州をイメージした日本有数のリゾートとして必要な設備を加えたい」と抱負を述べている。

 県内外の団体が支援

 HTBの取引業者は約1650社で、このうち債権者は約1100社だったが、少額債権者などへの弁済で現在は約400社に減っているという。だが、残されたのは大口の債権者が多く、弁済は容易でない。HTBの年間入場者数は96年度の約380万人をピークに下がり、02年度は約280万人と約百万人も落ち込んだ。それにデフレ不況とSARS騒動が追い打ちをかけ、集客拠点地域の台湾、香港などからの来客が激減した。長崎県は会社更生法の適用申請以来、「10万人の県民がHTBに行こう」の県民運動を展開、福岡の市民有志で作る「ほっとけんばい福岡支援チーム」が動き出すなど、県内外の各種機関、団体が応援、支援活動は盛り上がった。入場者は前年の2割程度減少したものの、この支援活動で、「予想より落ち込みは少なかった」(桃尾管財人)という。HTBは依然長崎県内の観光客数の約9%を占め、テーマパークとしては九州最大規模の集客力だ。

 陶酔のイベントあるか

 米国生まれのテーマパークは、映画製作者のウォルト・ディズニーが55年、加州ロサンゼルス郊外にディズニーランドを開演した時から使い始めた。同ランドは「過去への郷愁と、未来を開く冒険心」をテーマに、建築様式からゴミ箱の形に至るまで、綿密な計画のもとに作られた。経済産業省は「入場料を取り、特定のテーマをもとに施設全体の環境づくりを行い、テーマに関連するアトラクションを有し、パレードやイベントなどのソフトを組み込み、空間全体を演出して娯楽を提供する事業所」と定義した。遊園地とは違う。その意味ではHTBも、清潔で歴史的なオランダの街並みを再現、ゴージャスなホテル群、自然を生かした壮大な空間など、テーマパークの施設面では合格だ。しかし、ロスのディズニーランドやフロリダ州のディズニーワールドのように、大人も子供も夢とロマンに陶酔できる毎日のアトラクションやパレード、シーズンを飾るイベントがあるのだろうか。

 魅力がリピーターの鍵

 滞在型リゾート地帯といいながら、南仏のカンヌやニース、お隣のモナコのように、長期バカンスを楽しめる施設がHTBにはあるのだろうか。地中海の明るい陽光と景観に加え、モナコなどにはカジノ(賭博場)や巨大なヨットハーバーがあって、欧州の避暑客を毎年惹き付けて離さない。HTBのリピート率は68%というが、日本や米国のディズニーランドには鍵となるリピーター(再訪者)が2、3度は訪れる。それだけ魅力があるわけだ。石原慎太郎都知事がカジノ解禁を唱えているが、一考を要する提言である。HTBの再建に限らず、観光行政は日本にとって喫緊の課題。政府内にも税財政や金融政策が手詰まりの中で、観光振興を景気回復の手がかりにしたいとの気運が高まっている。読売新聞は最近、観光の現状を解説し、識者の意見なども取り上げている。大要は次の通りだ。

 観光立国を宣伝

 【政府は6月10日発表の観光白書で、日本を訪れる外国人旅行者数を2010年に1千万人に倍増させる「観光立国」の戦略を打ち出した。小泉首相は今春、英国、スペイン、フランス、ドイツを訪問した際、各国首脳に「日本は今、外国人旅行者の倍増をキャンペーン中だ。是非訪ねてきて下さい」とお願いした。今年3月には「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を打ち出し、韓国、米国、香港、台湾、中国を重点5地域と定めて集客作戦を展開中だ。旅行ジャーナリストの招待や、海外のテレビスポットCMを流すなどメディア戦略も検討。ソウルに次いで米国でも観光客誘致委員会の設立を準備している。だが、キャンペーンは、イラク戦争や新型肺炎(SARS)の発生で出鼻をくじかれた格好。テロや紛争の不安に加え、SARS感染を避けるためアジア地域での旅行客は激減。香港、台湾、中国などから日本に向かう旅行者の足はパタリと止まってしまった】

観光客は3倍の“出超”

 【2002年に海外旅行した日本人は1652万人に対し、日本を訪れた外国旅行者は初めて5百万人を突破したものの、524万人に過ぎず、3倍以上の大幅“出超”だ。欧米から遠く離れ、言葉のハンディもあるが、フランスやスペインなど他の先進国はもちろん、アジア諸国に比べても、外国からの訪問客は極端に少ない。世界観光機関の統計(2001年)によると、外国人旅行者受け入れ数で、日本は世界第35位に甘んじている。フランス、スペイン、米国、イタリア、中国、英国、ロシア、メキシコ、カナダ、豪州の順で中国は堂々5位に入っている。政府の試算では来日客が8百万人に増加した場合、旅行業、ホテル、飲食店などで計2兆7千億円以上の経済波及効果があり、約15万6千人の雇用創出が見込めるという。2002年に日本人が海外で消費したお金と、外国人観光客が日本で落としたお金の差額に当たる国際旅行収支は3兆5651億円の赤字に上っている。この内外不均衡を是正すれば、赤字幅が縮小するばかりか、海外における日本理解が深まり、アジアの反日感情も和らぎ、安全保障上のプラスもあると見られる】

 一体性の審美的規制

 また、9月12日の同紙に環境デザイナーの漆原美代子さんが寄稿し、「政府の観光打開策は宣伝の強化やホテルの受け入れ態勢、入国管理の改善などに集中しているが、今の日本は外国人を癒し魅了するような国ではない。美しい遺産や取り巻く日本列島の大部分が極度に醜くなっている」と述べたうえ、「成田国際空港から都心を結ぶ高速道路には、欧州や高度成長以前の日本にあった心和む『農村風景』はなく、派手な野立て看板や集合住宅が建ち並び、外国人はその無機質な光景にたじろぐ」と嘆いている。そして市街地の上空を覆う電線と電柱、雑多な建物と夥しい彩色の看板、所狭しと並ぶ他国にはない自動販売機などを指摘、「美しい景観は自然、建築、道路、広場といった多様な要素が互いに補い、高め合う『一体性』を確保して初めて生まれる」と“審美的規制”を求めている。

 対中国の海路開設を

 さて、再びHTBに話を戻そう。外国人の頭の中には「日本の物価は高い」との意識がしみこんでいる。いくらゴージャスなホテルがあっても利用されなければ宝の持ち腐れだ。まんべんなく観光客にサービスを提供するには、ハネムーンなどの利用だけでなく、内外中高校生の修学旅行にも手軽に利用できる安宿や、アウトレット(郊外のスーパーマーケット)を周辺地域に併設し、安い食事や土産物を購入出来るようにしてはどうか。交通手段としては長崎―上海間の空路だけでなく、大連、北京、台湾、香港などの直行便を開設するほか、佐世保―上五島―壱岐・対馬―大連―胡蘆島などを結ぶ海路を開設すべきではないか。終戦直後は胡蘆島―佐世保間に7千トン級の引き揚げ船がピストン航行していたことを思えば、航空より安価な1万トン級の高速船を就航させ、アジアの観光客を運ぶのは簡単なことと思えるがいかがなものか。長崎新幹線の完成を急ぐことは言うまでのない。

 風車発電で自給自足

 オランダの景観にこだわるなら、山上や湾内にも風車を増設し、使用電力ぐらいは自給自足してもよい。リップル・ウッドが提案した、宮崎―福岡―長崎を結ぶ3地区ツアーやロッテが目論んだサーカス拠点のアイデアも頂く価値はあろう。一方、法制面ではビザ(査証)なし入国や外国語表示の案内板整備など、外国人が快適に滞在できる国内の環境整備が欠かせない。韓国、中国、香港、台湾からの旅行者の場合、短期的渡航でもビザが必要なため、旅行業者や航空会社、国交省が入国管理の緩和を求めている。このビザなし入国には違法滞在や不法就労を恐れる警察・法務当局の抵抗が根強い。外国人犯罪が急増している現状を見れば当然だが、何とか国内調整を進め、入国手続きを簡略化すべきだろう。このほか、観光施設整備に対する税財政優遇措置など、観光振興の課題は山ほどある。HTBの再スタートを機に、私は国政面で強力に諸施策をバックアップしていきたいと思う。