北村の政治活動

 第63回(平成15年9月1日) サハリン・韓国を視察 極東のガス・原油開発

 「ロシアからアジア諸国に大規模エネルギーを供給」――。ロシア・サハリン北東沖合の大陸棚には、天然ガスで約7億トン(LNG換算)、石油で約30億バレルの埋蔵量が確認されている。この眠った資源を掘削しようと、日・米・露・印の各社が参加した2つのプロジェクトがようやく動き出した。小泉首相は5月末に訪露した際、プーチン大統領との会談で原油パイプラインの建設について、日露が共同作業を進めることで合意した。東電のトラブル隠しで多くの原子力発電が稼働を停止したため、今夏の都市部での電力供給は悪化し、脱原発の機運が高まった。火力発電にもCO2削減の強い要請があり、排気に硫黄酸化物を出さないLNGに期待が集まっている。私が所属する「気体エネルギー議連」(鳩山邦夫会長)は8月31日から9月5日までサハリン、韓国に視察団を派遣した。残念だが私は日程の都合で3日以降の韓国だけを訪問、仁川のLNG施設などを視察する。

 気体と液化ガスをパイプで

 読売新聞などによると、2大プロジェクトの概要は以下の通りだ。「サハリン1」は、海底に敷設するパイプラインを使って、天然ガスを気体のまま運ぶ。当初は漁業補償費などが膨らむが、長期的には販売価格が安くなる。一方の「サハリン2」は、約600−800キロのガス田からパイプラインで天然ガスを運び、摂氏マイナス162度の低温で液化してタンカーに積み、日本で再び気体に戻す。価格は割高だが、日本以外に韓国、中国、台湾など近隣諸国に輸出できるメリットがある。両プロジェクトは共倒れを避けるため、共存共栄の別個方式を選んだ。「サハリン1」は、伊藤忠商事、丸紅などが出資する「サハリン石油ガス開発」(SODECO)、米エクソンモービルが中心となり、ロシアとインドの石油開発会社が権益を保有する。まず、46億ドル(約5500億円)を投じて6月中旬から原油生産のための掘削工事に着手した。

 日量25万バレル生産

 SODECOはこの投資額のうち、権益保有率と同じく3割(1650億円)を分担する。今夏中に積み出し港となるロシア本土への海底パイプライン着工に踏み切る。2005年には商業生産を開始、日量25万バレルの原油を生産し、主に日本向けに販売する。「サハリン1」のオドブト、チャイウォ、アルクトン・ダキの3鉱区には、原油と天然ガスがほぼ同じ割合で埋蔵されており、原油の可採埋蔵量は23億バレル、天然ガスは4850億立方メートルもある。原油、天然ガスの生産・販売が軌道に乗れば、08年にも日本初の海底パイプラインによる天然ガスの移送と生産・販売を目指す。これらの総開発費用は120億ドル(約1兆4千4百億円)と見込まれている。原油生産の日量25万バレルといえば、中東オマーンからの輸入量に匹敵し、日本での消費量の16分の1をカバーする。原油の中東依存率は01年で88%と高く、イラクなど動乱の中東の危険性を考えれば、エネルギーの安全保障上からも、サハリン原油の重要度は増してくる。

 生産基地建設も受注

 「サハリン2」は、英蘭系メジャー(国際石油資本)のロイヤル・ダッチシェルと三井物産、三菱商事が出資する事業会社のサハリン・エナージー・インベストメントがLNGを生産する。サハリン南端のプリゴロドノエ地区に年産能力480万トンのLNG生産設備2基、10万立方メートルのLNG出荷用タンク2基を備えた生産基地(敷地約200ヘクタール)を建設する。総開発費用は100億ドル(約1兆2千億円)。生産基地建設事業は、千代田化工建設と東洋エンジニアリングが約3千億円で受注した。プラント商談では過去最高で世界市場の約1割にあたる960万トンの生産能力を持つ最大級のLNG輸出拠点を08年までに完成させる。東京ガスは5月中旬、「07年以降、サハリン南部基地からLNGガスを購入し、自社の輸送船で運び、首都圏の3つの基地に備蓄したうえで供給する」と発表した。07年度に6万5千トンを購入、2014年度には供給量の14%にあたる110万トンをサハリン産に切り替える。東電、中電なども購入する計画だ。

 硫黄少ないLNG発電

 「サハリン2」の鉱区も「サハリン1」と同様、資源は豊富で、ビルトン・アストフスコ、ルンスコエの2鉱区には、原油7・5億バレル、天然ガス5千億立方メートルが埋蔵されている。「サハリン1」の3鉱区を合わせると、冒頭に示したように、「原油約30億バレル、液化・圧縮できる天然ガスはLNG換算で約7億トン」と、膨大な量になる。日本のLNG輸入はインドネシア、マレーシアが全体の半分を占め、カタールなどの中東地域でも2割に達するなど地域的な偏りが大きい。このため、日本に近いサハリン鉱区の開発事業は旧ソ連時代の72年から始まったが、ソ連崩壊や日本の景気低迷などで本格的な開発が遅れていた。しかし、国際エネルギー機関(IEA)が79年、CO2などを多量に排出する石油火力発電所の新設を禁止した結果、硫黄酸化物(SOx)を出さないLNGが評価され、LNG火力発電が拡大。01年度は日本の発電量の27%を占め、原子力の35%に次ぐ存在になった。――以上は読売などが伝えたサハリン開発のあら筋である。

 経済で日露交渉の突破口

 日露平和条約の交渉は、北方領土問題で行き詰まっているが、財界には「経済交流の拡大で突破口を開くべきだ」との期待感がある。とくに東シベリアの石油・天然ガスを運ぶパイプライン建設は、ナホトカルートと中国・大慶ルートが競合し、ロシア政府は決定を先送りしている。小泉首相は5月のサンクトペテルブルク会談で、ナホトカの原油パイプライン構想について、「共同作業が実現すれば意義深い。平和条約締結の目標に向けて、様々な分野での交流拡大が重要だ」と意欲を表明。プーチン大統領は「中国ルートはより早く、より安く出来るとの議論もあるが、未開発の資源も開発してアジア・太平洋を通じて世界の広い市場に送ることが重要だ」と答え、ナホトカルートに前向きな姿勢を示し、両国の専門家による検討を急ぐことで合意した。両国首脳の呼吸も合ってきたといえる。

 進んだ韓国のパイプライン

 こうした状況のもとに、「気体エネルギー議連」の視察団は、サハリンの石油・ガス開発状況について州政府代表と意見を交換し、基地の予定地を視察。韓国・ソウルではガス導入の背景や産業体制、パイプライン敷設の方法などを韓国大統領府で意見聴取、仁川のLNG基地の視察を予定している。私は真に残念ながら、日程の都合で韓国しか訪問できないが、国内幹線パイプライン整備では、日本より遙かに進んでいるといわれる韓国の実態をよく調査して帰りたいと考えている。大陸棚の資源は、サハリン沖だけに限らない。日本列島の1・7倍にあたる新たな大陸棚(65万平方メートル)は、石油、マンガンや石油に代わる次世代資源と期待されるメタンハイドレート(メタン水化物)などの宝庫だ。沿岸国の大陸棚延長を審査する「国連大陸棚限界委員会」への申請は09年5月が期限であることから、中国などが海底調査活動を活発化させている。わが選挙区・長崎を含む九州沿岸は、中国、韓国と接しており、将来のエネルギー資源開発を左右する新大陸棚の決定は、漁業の経済水域確定と同様に極めて重要で、私は多大の関心を寄せている。

 新大陸棚開発に取り組む

 政府は自民党の要請を受けて8月末、海底資源の採掘権などを拡大するため、大陸棚調査の対処方針「大陸棚確定に向けた今後の基本的な考え方」をまとめた。それによると、「大陸棚を探査し、天然資源を開発する主権的権利を確保する」狙いから、07年中に調査完了を念頭に、04年から第1段階の調査を開始し、効率的な調査態勢やコスト削減策を検討したうえ、05年度から第2段階の調査を行う方針を決めた。第1段階は海保が精密な海底地形調査を実施、地殻構造探査は海上保安庁と文部科学省が担当、資源エネルギー庁が基盤岩採取のボーリングを行う。04年度予算では海保が54億円、資源エネ庁と文科省が各25億円、計104億円の概算要求をしている。メタン水化物や希少金属が豊富に埋蔵する大陸棚の開発は、「気体エネルギー議連」にとっても大きな課題だが、私の専門分野である安全保障も絡む問題だけに、私は今後、真剣に取り組みたいと考えている。

 気体エネルギー議連視察団の主な日程は次の通り。

8月31日 10時羽田発(日航513便)、千歳空港でサハリン航空152便に乗り換え、16時20分ユジノサハリンスク着。

9月1日  午前、サハリン州知事と同州石油ガスコンプレクス局長を表敬訪問。午後、サハリン大陸棚石油・天然ガス資源開発「サハリン1」事務所訪問。

同月2日  午前、「サハリン2」事務所訪問。午後、車でコルサコフ市(樺太時代の大泊)のLNG積み出し基地視察。(以上の3日間はユジノサハリンスク泊)

同月3日  13時ユジノサハリンスク発(サハリン航空111便)、14時ソウル着。

同月4日  午前、韓国大統領府訪問、羅鐘一・安全保障担当大統領補佐官、林博士と政策問題で会談。午後は技術面視察で、韓国産業資源部(MOCIA)と韓国ガス公社を訪問。(以上はソウルに2泊)

同月5日  午前、仁川空港近くのLNG基地を視察。15時ソウル発〔日航964便〕 17時25分成田着で帰国。