北村の政治活動

 第60回(平成15年7月16日) 新世紀の安保を確立 若手の会が緊急声明

 北朝鮮の核・ミサイル脅威に対処し、新安保体制をどう確立するか――。私の活動拠点の1つである「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」(代表世話人・武見敬三参院議員)は6月23日、第6回総会を開き、@ 北朝鮮の核開発は断固容認しない A ミサイル防衛構想の実現を急ぐ B 集団的自衛権の政府解釈を見直す――など5項目の緊急声明をまとめ、発表した。同会は、1昨年の9・11米同時多発テロ後、社民、共産両党を除く超党派の若手・中堅が集まり、発足した。内訳は自民66、民主32、公明3、自由1、無所属1の計103人。世話人は、武見氏のほか石破茂防衛長官、米田健三内閣府副大臣、浜田靖一自民党国防部会長、前原誠司民主党安全保障担当、上田勇公明党議員ら計16人で、いずれも戦争を知らない戦後世代。かつての防衛予算獲得で動いた自民党国防族とは違って、新しい国際潮流の中で純粋に安保政策を構築しようと超党派で検討を続けている「新防衛族」とも呼ばれる存在だ。

 北朝鮮の脅威に対処

 緊急声明の前文を要約すると、「北朝鮮は先の日朝平壌宣言の合意事項を遵守しないばかりか、核査察の一方的拒否、核拡散防止条約からの脱退、ミサイル発射実験の実施に加えて核兵器開発の声明など再三、挑発的行為を繰り返し、わが国並びに北東アジア全体の平和と安全に極めて深刻な脅威となっている」と指摘したうえ、「北朝鮮保有の使用済み燃料棒8千本からは7〜8個ほどの核兵器用プルトニュウムが抽出可能で、既に1個から2個の核爆弾が製造されているという。わが国全土が射程内の弾道ミサイル(ノドン)を配備済みで、北朝鮮が核兵器をはじめ大量破壊兵器を保有することは、わが国民の生命と財産が常時、北朝鮮の軍事的脅威にさらされるわけで、断じて容認できない」と抗議。最後に「わが国はこれら軍事的脅威を抑止するため、ねばり強く外交努力を継続するとともに、あらゆる防衛上の対策を早急に講じるべきだ」と次の5項目を政府に強く要望している。

 ミサイル防衛など5項目

(1)北朝鮮の核開発は断じて容認せず、容認しようとするあらゆる提案を断固拒否する。

(2)米中朝の協議に一刻も早くわが国と韓国を参加させる枠組みを作る。

(3)直ちに導入可能な弾道ミサイル迎撃の装備を配備するとともに、米国と共同研究中の「ミサイル防衛構想」の実現を急ぐ。

(4)時代に応じた「専守防衛」の考え方を再構築するため、これまでの国会答弁で容認されているように、我が国への攻撃が切迫している場合等、必要最小限の「相手基地攻撃能力」を保有出来るようにする。

(5)「集団的自衛権」についてのこれまでの政府解釈を見直すことを前提に、いかなる場合に行使が可能かについての研究を開始する。

 超党派議員の合意は画期的

 東西冷戦時代のイデオロギー対立で与野党が激しい攻防を続けたことを思えば、民主党の「次の内閣=防衛相」である前原氏を含め、専門的な軍事知識を持った超党派の若手議員が、「ミサイル防衛構想」の実現、「相手基地攻撃能力」の保有、「集団的自衛権」の見直しなどを内容とする、上記の緊急声明に合意したことは画期的である。我々「若手議員の会」が前文で分析したように、北朝鮮は4月の米中朝協議で、「約8千本の使用済み燃料棒の再処理をほとんど終了した」と述べ、兵器級プルトニウムの量産体制に入り、核開発を着々と進めていることを示唆した。これを受けて米偵察機が、寧辺の再処理施設周辺の大気中で、核燃料棒再処理の際に放出する放射性ガスのクリプトン85を検出したと報告。核の脅威は日増しに強まっている。だが、北朝鮮は核開発に反対する日韓両国を含めた5国間協議を拒否し続けている。これにはロシアを含めた多国間協議に枠組みを広げることが何よりも望ましい。同時に「ミサイル防衛構想」は早期に実現しなければならない。

 ミサイルを「2層防衛」

 弾道ミサイル防衛には、大気圏外の上層(中間段階)で迎撃するイージス艦搭載のスタンダード・ミサイル(SM3)と、地上付近の下層(最終段階)で打ち落とす地対空誘導弾パトリオット・ミサイル(PAC3)を組み合わせる「2層防衛」が効果的だ。政府は04年度予算案にPAC3の導入費を計上する方針だが、導入済みのSM3を含む迎撃ミサイルの購入費に加え、イージス艦の改修、ミサイル探知衛星、追尾用レーダー、指揮・通信系統の整備などが必要で、導入予算は軽く2千億円を突破する。この膨大な費用をどう組むか、頭の痛い問題だ。米国はレーガン政権時代に「戦略防衛構想」(SDI)として弾道ミサイル防衛の研究に着手。93年発足のクリントン政権では、長距離弾道ミサイルから米本土を防衛する全米ミサイル防衛(NMD)と、海外の駐留米軍や同盟国を中距離弾道ミサイルから守る戦域ミサイル防衛(TMD)の2つの構想を研究・開発した。98年の日米安保協議委(2プラス2)はTMDの共同技術研究で基本合意し、翌年に日米両政府が合意文書を交換している。

 集団自衛権に抵触

 01年のブッシュ政権誕生後は、NMDとTDMをミサイル防衛(MD)に一本化し、開発・配備計画を加速化している。我々「若手議員の会」が(3)で米国と共同研究中の「ミサイル防衛構想」の実現を迫った背景には、以上のような要因がある。また、発射から着弾まで10分間程度のノドン・ミサイルは着弾時に秒速3キロ以上にもなる。石破防衛長官が国会で答弁したように、迎撃ミサイルの整備だけでなく(4)の「相手基地攻撃能力」も必要最小限に保有しなければ、我が国の安全は確保できない。さらに、ミサイルが日米両国のいずれを標的に発射されたかは瞬時に識別するのは困難。(5)の法制面では、米国に向けて発射された弾道ミサイルを我が国が攻撃すると、政府の解釈が認めていない「集団的自衛権」の行使に抵触する恐れが出てくる。「保有するが行使は出来ない」というのが政府の憲法解釈だが、こんな解釈は世界に通用するはずがなく見直しが必要だ。

 恒久法の整備を

 石破防衛長官は7月11日の記者会見で、「何かある度に(自衛隊派遣)の特措法を作るのは時間が掛かる」と述べ、国際協力のために自衛隊を海外に派遣する恒久法を整備する必要性を強調した。先に成立した有事3法制の修正協議の中で、住民避難や復旧・復興などの手続きを定める国民保護法制は、1年以内に整備することで与党と民主党の間で合意しているが、政府はこれに、米軍支援法制、捕虜の取り扱い法制、傷病者や捕虜への非人道的行為をした者への処罰法制など、積み残した有事法制を一括処理する恒久法案を次期通常国会に提出する方針を固めつつある。一方、自民党の憲法調査会(会長=葉梨信行元自治相)は安保に関する憲法改正要綱案を検討しているが、
@ 自衛隊に代わる「国防軍」の保有
A 個別的及び集団的自衛権の行使
B 国連中心の集団安保への積極的参加――などが柱となりそうだ。軍事犯罪は最高裁の下に新設する軍事裁判所が管轄する。また、有事の際の首相権限を強化し、首相が事前に国会の承認を得たうえ、「国家緊急事態」を宣言し、迅速で効率的な措置を国民に命令し、地方自治体を直接指揮することを定める考えだ。

 若手が防衛政策支援

 以上のように、政府・与党は新世紀の安全保障体制の確立に向け、着実に駒を進めているが、その中核となり、防衛政策を支援しているのが我が「若手議員の会」だ。テロ特措法改正案は今国会で、継続審議と決まったものの、総選挙含みの臨時国会で早期に成立を図るため、私の所属する衆院イラク復興支援特別委員会は、16日の委員会で約3時間の審議を行うなど、精力的な国会活動を続けている。イラク復興支援特措法案の修正協議は、民主党の反対に遭い実らなかったが、同党の「若手の会」参加者は30人以上も数えていることから、今後さらに超党派議員の輪は広がっていくものと期待される。若手中心に新保守派のコンセンサスを得て、歴史に残る安保体制を構築したい、と私は強く念願しているところだ。