北村の政治活動

 (平成13年3月1日) 輸入野菜の急増 農政の国家戦略構築を

 寒波到来で各地の野菜が不足し、高騰した。それを補うかのように輸入野菜が急増している。大都市のスーパー、コンビになどでは韓国、中国、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシア産の野菜が店頭にあふれている。東南ア、北東アジア産野菜の洪水的な輸入で、首都圏、近畿圏はもとより東北、九州、四国などの生産農家は大きな被害を受けている。

 このため、農林水産省は輸入量の最も多い中国、韓国と二国間協議に入った。韓国とは2月5日に事務レベル協議を行い、『円満な貿易関係を形成するよう両国で努力する』との認識で一致、松岡利勝農水副大臣が同24日にソウルで韓国の担当相と会い、@事務レベル協議の継続A農業団体等民間同士の協議の場を持つB両国の需給見通しに基づき生産指導C急激な変化には相互に連絡――などで合意した。

 中国とは同月20日に北京で事務レベル協議を開催、日本側は『中国からの農林水産物輸入が近年急増、国内価格が低下し農水業に大きな打撃を与えている』と述べ、ネギ、生椎茸、畳表(イ草)の3品目についてセーフガード(緊急輸入制限措置)発動の調査を進めていることを伝えた。
 
 これに対し中国側は、『日本農業を取り巻く情勢の変化、安価な食品を求める日本消費者の要求、日本企業による開発輸入なども中国輸出増の要因になっている』と反論。両国は@政府間協議の継続A輸出入業者の実態把握と民間関係者の意見交換・交流の促進B需給見通しに基づく生産指導C相手国に対し輸入量、市場価格、生産動向等の情報提供――などで合意した。

 アジアからの野菜輸入は、1997年にタイのバーツが暴落した東南アジアの経済危機を契機に急増した。96年に320万トンの輸入でしかなかった韓国のミニトマトなどトマトは、98年に4126トン、2000年には13,003万トンと飛躍的に急増、カラフルなピーマンの別種、パプリカは韓国産が圧倒的に日本の市場を支配しており、宮崎県西都市の農家が“青いダイヤ”と意気込んでいたピーマン栽培に打撃を与えている。

 中国からはニンニク、生姜、ネギ、椎茸が主流。ニンニク(芽を含む)の輸入量は94年の1万トンが98年に26,717トン、2000年には29,225トンとこれまたわずか5年間に3倍近くも増えている。ネギは98年の17,742トンが2000年には42,385トンと倍以上だが、ほとんどが中国産。「深谷ネギ」の産地、埼玉県深谷市や千葉県長生郡などは安値の中国ネギに対抗値下げして経営が苦しい。一村一品運動の目玉、大分県の椎茸農家も厳しい。

 アスパラ、オクラはタイ産が市場を席捲している。いずれの野菜にも日本語のラベルが張ってあり、規格が統一され、品質管理が行き届いている。何故ならこれら農産物は、日系商社が種苗、農機具、技術を持ち込み、委託生産している開発輸入であるからだ。

 野菜の輸入増加は、発展途上国の人件費が安いことに加え、野菜保冷専用の航空機コンテナが普及し飛行機の輸送が拡大したことなどによる。アジアの経済危機以来、各国は野菜の消費だけで4兆円規模といわれる巨大消費地日本をターゲットに、供給源としての農業の再構築に取り組んでいる。とくに力を入れているのが韓国の金大中大統領とマレーシアのマハテール首相だ。IT(情報技術)革命と同様に農業政策を積極的に推進している。

 韓国キョンサン南道にはハウス栽培用の輸出団地がある。韓国政府は5万ヘクタールの同団地形成に50%の補助金を投入、国家プロジェクトとして野菜農家を育成している。金大中大統領は『野菜生産をビジネスとして捉え、農業を企業家とする』とゲキを飛ばし、日本の需要を一手に引受け供給態勢を整えつつある。東京の大田市場にも調査団を派遣、ミニトマトの皮の厚さ、甘味、サイズなど日本人の嗜好を徹底的に調べ、輸出している。

 韓国のハウス栽培はトマトばかりかイチゴにも力を入れており、ハウスではIT技術を積極的に導入、人手に頼らず温度調整、肥料の配合、水の散布などを実施している。また、東京・渋谷に巨大広告塔を設置、「韓国野菜を食べましょう」とPRにこれ努めている。

 野菜だけでなく、マンゴ、パパイア、アボガドなど熱帯、亜熱帯の果物が東南ア、豪州、メキシコなどから大量に輸入され、日本人の食卓を飾っている。食料以外にも安価なタオル、衣服類が中国、韓国などから輸入され、繊維産業に打撃を与えている。近隣諸国は地理的条件から、日本を生活必需品売り込みの草刈り場として輸出にドライブをかけている。

 こうした日本市場を標的にした近隣諸国のすさまじい輸出攻勢に、千葉、埼玉、群馬、神奈川の首都近郊をはじめ岩手、大分、宮崎、熊本など全国各地の野菜・果物生産農家は悲鳴を上げている。野菜の品種が多いだけに、かつての日米オレンジ戦争よりも事態は深刻だ。

 事態を重視した農林水産省は、ミニトマトなどを緊急監視対象品目に指定し警戒するとともに、ネギ、生椎茸、イ草についてJA全農、農業者、輸入業者、消費者など6528ヶ所に調査票を送り、セーフガードの調査を進めている。

 セーフガードはWTO(世界貿易機関)で認められた公式ルールで、生産者保護の立場から短期間に限って発動するのは当然の権利だ。しかし、規制緩和が叫ばれている今日、新たな規制である緊急輸入制限措置のバリアを設けることは時代に逆行する。規制措置はやむをえない場合の最小限にとどめ、むしろ、開発輸入の是非を絡めて論議すべき問題であろう。

 前述したように、20日の対中折衝で、中国側は『日本企業による開発輸入も要因』と、一方的な貿易制限措置に反駁しているが、日本で多年にわたり開発した種苗のノウハウ,農業技術が商社の手で海外に流出してよいものだろうか。農業の改革には、IT化など構造改善、経営規模の拡大、バイオ農作物の振興に力を注ぎ、世界の産地相手の競争社会で勝ち抜くことが先決であろう。 

 日本の農政は、どちらかというと弱者救済、“守り”の面が強かった。減反政策にしても後ろ向きで、縮小再生産の結果、国産米価格は1トン23万円台を推移、国際流通価格(1トン当たり2万円)の10倍以上になっている。減反政策で取り組んだハウス栽培が、またも近隣諸国に敗れたとあっては日本農業の立つ瀬はない。

 89年の参院選は、リクルート疑惑、消費税導入に加え、牛肉・オレンジ自由化というマイナス要因が重なり自民党は大敗したが、最近の各社世論調査をみても、これまで自民党の中核とされた農林漁業者、高齢者層の支持者が軒並み自民を離れつつある。農政に不安を感じているからだろう。

 今こそ、農漁民の信頼を取り戻し、国際的視野に立った農水行政の国家戦略を構築しなければ、明日の農水産業はない。私は衆院農林水産委員会に所属した機会に、農業構造の改革、近代化に向けて大いに論陣を張り、“攻め”の農水政策を立案したいと考えている。