北村の政治活動

 第57回(平成15年6月1日) 決算でフグ養殖質す 基盤整備と医薬品開発を

 前回のホームページで詳報した通り、長崎県が4月22日、トラフグ養殖でホルマリンを使った業者に出荷中止を要請したことが、社会問題に発展してきた。私はその後、度々地元のフグ養殖現場に出向き、“浜の声”を聞いたが、現場には混乱と戸惑いがある。消費者に対してもいたずらに食の不安を煽る傾向が目立っている。魚類養殖の分野は、不振をかこつ水産業界にあって、緩やかでも伸びている部門。今国会では薬事法の改正など、食品安全性確保のための農水省関係法案が審議されている。そこで、私は5月19日、衆院決算第3分科会で質問に立ち、水産用医薬品の使用問題と魚類養殖の振興ついて農林水産、厚生労働両省に具体策を質した。丁度2年前に施行された水産基本法は、水産基本計画の中で「水産物の安定性確保と水産動植物の増養殖を推進」することが、柱であるからだ。

 規制を全漁種に拡大

私は
@ 薬事法の改正で水産用医薬品の規制はどう変わるか
A 現在承認のマリンサワーは使用方法が不徹底で効果が出ず、現場はホルマリン使用に帰る傾向がある
B 国は養殖基盤の整備と医薬品開発に力を入れるべきだ
C 中国、欧州、南米などからの輸入魚にも薬物が使用されていると聞くが、何らかの方策が必要ではないか――など問題点を細かく質した。

 これに対し、亀井善之農林水産相は「薬事法改正案が成立すればホルマリンを含め、未承認の水産用医薬品が使用禁止となり、使用者には罰則が科せられる。省令を改正し、規制の対象は現行の11漁種から全漁種に拡大する」と答弁。木下寛之水産庁長官も「改正を契機に国、県、関係団体を含め、漁業者に対し法改正の趣旨と医薬品の適正使用を徹底させていきたい」と答えた。

 第3分科会での質疑応答の要旨は次の通り。

 混乱、戸惑いの解消策は

 北村 魚類養殖業の振興について尋ねたい。政府は平成13年6月施行の水産基本法で、水産物の安定供給確保のための規定を設け、同14年3月には水産基本計画で、水産物の安定性確保と水産動植物の増養殖を推進していく総合的、計画的施策を構ずべきだと定めている。今国会でもその一環として、食品の安全性確保のための農林水産省関係の法案が示され、その中に薬事法の一部改正案が上程されている。特に今日は、報道等で表面化したホルマリンの使用に国民の関心が向けられている。昭和56年ごろからホルマリンを水産業、養殖関係で使用することについて、政府も国民や業界からの指摘によって、それぞれの時期に応じて色々な通達等を講じてきた。56年ごろの問題提起は、ウナギの養殖から始まったと聞いている。今日、養殖の現場では、色々の混乱、戸惑いがあり、消費者の方々にいたずらに不安を与えることがあるように感ぜられる。現在、水産用医薬品の使用は、薬事法に基づく動物用医薬品の使用の規制に関する省令による規制と、省令によらない水産用医薬品の取り扱いの定めがあると伺っているが、具体的にはどうなっているのか。

 未承認医薬品は行政指導

 木下寛之・水産庁長官 まず、動物用医薬品の使用の規制に関する省令に基づく水産関係の規制は、第1点が規制対策として、ブリ、マダイなど11魚種が規定されている。第2点は、医薬品ごとに、使用対象魚種、用法及び用量、使用禁止期間が定められている。使用者は本基準に違反して使用した場合には罰則が科される。一方、省令によらない水産用医薬品の取り扱いは、ホルマリンなどの未承認医薬品の使用禁止等について、水産庁通知により行政指導を行っている。その具体的内容を言うと、トラフグ養殖のホルマリン使用は、ホルマリンの安全性について問題が指摘される一方で、使用された魚介類への残留性が解明されていないことから、これまで、累次にわたる水産庁通知を出し、全国魚類防疫推進会議を初め、色々な会合の場で都道府県を指導する。また一方で、漁業者に対する巡回の指導、研修会の開催、水産用医薬品使用状況調査等を通じて徹底を図っている。

 北村 今回薬事法が改正されれば、現在の水産用医薬品の取り扱い規制は、具体的にどのようになるのか。

 適正使用の徹底に努める

 亀井善之・農林水産相 審議中の薬事法改正案が成立すれば、ホルマリンを含め、未承認の水産用医薬品の使用が禁止され、使用した者には罰則が科せられる。あわせて、今回の薬事法改正を契機に省令を改正し、規制の対象を現行のブリ、マダイなど11業種から、食用に供される全魚種に拡大する。農水省としては改正を通じて、水産用医薬品の適正使用の徹底に努めていきたい。

 マリンサワー使用で混乱

 北村 このことで現場では大変、色々努力すべきことが生じている。私は先々週から地元のフグ養殖場に出向いて、“浜の声”を聞かせてもらったが、具体的に聞くと、現在承認されているマリンサワーという、ホルマリンに代わる薬剤の研究がなされ、それが承認されていることだから、それの使用を徹底することで、先般来水産庁も関係の業界団体の皆さん方と一緒に努力していることは、十分現場でも承知してきた。しかしながら、悲しいかな、この認証、認定を受けた薬剤の使用効果について現場では戸惑い、あるいは本当に効果が出てこないという声を大変多く聞いた。先般、水産庁の技術関係の人々から聞いた事柄を参考に現場の方々と話してみると、使用方法等について当然、認証、認定を受けるに当たっては、対象魚種、用法、用量あるいは使用が望ましくない期間などがあるようだ。だから、折角、医薬品業界が関係団体や現場の声を聞きながら努力を重ねて認定を得た薬であるにもかかわらず、現場ではなかなかそれが効果を発揮しない。そういう戸惑いの中で、やはりホルマリンに帰るということが、悲しい、残念なことだが地域によってはあったようだ。現場に行ってつくづく感じたことは、その使い方、あるいは時期、量というものについて徹底し、官民挙げて努力し、効果的に薬を使用すべきだということだ。トラフグの養殖にマリンサワーを使う場合は、使用時間が5分ぐらいの短時間で“薬浴”ということでマリンサワーを海水に薄めて、それを仕切ったところにフグを入れて、風呂に入れる形でトラフグを漬けて引き出す。現場で聞いたことだが、説明してある使用時間よりも長く使ってみて、狭いところに沢山の稚魚や養殖のフグを入れるから、酸欠を起こして死んでしまう。真にお粗末なこともあって、マリンサワーは効かないということでホルマリンに手を出す事例もあるようだ。だから、今回の薬事法改正で、生産者によく、消費者にも安心し、安全な食品として養殖の水産物を提供する立場から、農水省と厚労省の1部も関係して法改正に臨むことは、大変適切なことであると私は認識している。

 先ほどの長官答弁にあったように、政府は長い間、法規制や罰則ではなく、色々な通達を発出して、現場の状況、生産者の立場、事情を勘案して対処してきたと私は考えている。水産業全般を見ると、漁場の締め出しに遭っている沖合遠洋漁業の不振の中で、養殖漁業は水産の生産量、金額、国民全体の魚類タンパク確保の面からも大いに期待されている。魚類養殖の部門は、緩やかであっても不振をかこつ水産業界にあって伸びている部分という認識があるので、ぜひ、魚類養殖を推進し、盛んにしていくうえからも今回の法改正が大きな流れに応えてくれることを期待している次第だ。

 現在、薬事法に基づいて承認されていない医薬品が、薬事法改正ですべて一律に規制されることになる。魚を生け簀の中に囲い込んで餌を与え、育て、大きくしていく養殖では、必ずフグであれ、ハマチ、タイ、ハタ類、カンパチ、シマアジであれ、寄生虫や病気、感染症が生じる。現場では絶えず医薬品なり、飼料、抗生物質の研究をしているが、これら養殖業界の苦労を軽減し、現場の混乱を避けるため、水産庁はどのように考えているのか。

 改正の趣旨を徹底

 木下長官 薬事法改正案が成立し次第、省令も改正したい。水産業の中で生産増大が期待される部門であり、改正を通じて養殖水産物の安全、安心を確保、また消費者の信頼を確保する観点からの改正である。国、県、関係団体を含め、改めて漁業者の皆さんに今回改正の趣旨を徹底させたいと考えている。養殖業者なり都道府県から色々な要望を承っており、現場での混乱が生じないよう、医薬品製造のメーカー、独立行政法人の水産総合センター、関係水産試験場との密接な連携を持ちながら、必要な医薬品開発の推進を図っていきたい。もとより医薬品を出来るだけ使わない漁場づくりを含めた、水産養殖全体の施策についても推進したい。

 医薬品開発に力を入れろ

 北村 医薬品を使わない魚類養殖の推進は非常に大事なことではないか。かねて、薬品を使うことで生産がダウンして養殖の漁種を変更したことも聞いている。医薬品類を出来るだけ減らし、海の自然な形で生産力を高める努力、研究を進めるべく、基盤整備の形で予算投入していると認識している。一方では、最小限必要な医薬品を開発するため、データを収集する関係団体や業界の協力や、医薬品を製造するメーカーに、例えば人間のガン治療薬研究のような研究開発を推進、奨励するための助成・補助の仕組みもあると認識している。やはり、浜の漁業者は生計を維持し、まさに命がけで魚を育てているのだから、ぜひとも養殖対象漁種の医薬品開発については、国が積極的に力を入れることを要望する。次に、薬事法改正で未承認医薬品の使用は禁止されるが、違反を承知で薬品を売る人の側はどのように規制するのか。

 未承認医薬品販売は抵触

 木下長官 薬事法50条の規定によると、医薬品の直接の容器なり被包に製造業者の氏名、住所、医薬品の名称、製造番号等、また52条の規定により、医薬品の添付文書等に医薬品の用法、用量等の記載が義務づけられている。さらに、55条第1項の規定では、これらの事項が記載されていない医薬品については、販売、授与、または販売、授与目的での貯蔵、陳列を禁止している。従って、一般論で言うと、薬事法に違反して使用すると知りながら、水産医薬品として記載すべき事項の記載のない未承認医薬品を販売すれば、先ほどの規定に抵触することになる。

 北村 法令に違反して使われることを知りながら毒物、劇物を取り扱う販売の業者、登録をしている方たちは今後どうなっていくか。

 毒物劇物の販売規制は困難

 鶴田康則・厚生労働省医薬担当審議官 毒物劇物取締法は、保健衛生上、毒性が強く、取り扱いに特に注意を要する化学物質、毒物、劇物、これらの事故の発生を防止するために、製造、販売、保管管理等についての必要な取り締まりを行うことを目的としている。毒物、劇物の用途を規制するものではない。従って、毒物劇物取締法に基づいて、医薬品目的で使用される毒物、劇物の販売を規制することは困難だが、販売の自粛について、都道府県等を通じて販売業者に対して指導して参りたい。

 中国でもホルマリン使用

 北村 その指導について、都道府県の中でも水産業部門と、劇物、毒物を扱う部署、部局は違っており、連携のまずさから色々なことが生じてきた事例を承知しているので、指導では都道府県内でも連携がきちんと取れるような形での指導を考えて頂きたい。

 中国においては、養殖のトラフグに対してホルマリンを使っていると聞いている。間違えていれば私の責任だが、仮に外国で養殖、ホルマリンを使って育てた魚を国内に輸入する時に、我々は今後少なくともトラフグに対してホルマリンを使わないことで、最近話題になった件においても、ホルマリンを使った履歴のある魚は世に出さない、出荷しないということで出荷停止の措置を講じ、今後それを処分していく方向で私どもは臨もうとしている。そういう中で、輸入魚はどういう対策が出来るのか。

 輸入時検査の対象外

 遠藤明・厚労省食品保健部長 養殖トラフグに寄生虫駆除の目的でホルマリンが使用されているという情報を得、平成9年に調査したところ、天然トラフグとホルマリンを使用した養殖トラフグの可食部のホルマリン濃度に差がないという結果が確認された。このため、養殖時のホルマリン使用と、それから製品というか、フグの可食部のホルマリン濃度の間に明確な関係が見られないということで、輸入時検査の対象項目とはしていないところだ。

 北村 答弁を素直に聞けば、中国から輸入した、ホルマリンを使ったトラフグが入ってきても,安全に問題があるからということで、ストップは出来ないということか。

 天然と比べ濃度に差がない

 遠藤部長 天然トラフグとホルマリンを使用した養殖トラフグの可食部のホルマリン濃度に差がないということが確認されているので、その限りにおいて特段安全性に問題があるとは考えていない。

 安全食品の供給体制整備を

 北村 今国会での食品の安全性確保法案、この中では、農林水産業で生産される食品の中で、どういう薬物、飼料、肥料を使うかについて、国の内外でどういう工程を経て作ってきたかということが、修正案の中で議論されたのではないか、と記憶している。やはり、生産者、消費者を守り、安全な食品を国が提供していく体制を作ることが非常に大事ではないかと思う。今、浜では、ホルマリンをもう使わない決意をして、1回でも使った履歴のあるトラフグは出荷を停止している。これには、しかるべく安全性が確保される形で処分しようという方向で進めようとしている。それには零細な養殖業に携わる人たちの大きな犠牲がある。だから、そういう中で中国から大量のトラフグが1昨年、去年あたり輸入されるようになり、大変トラフグが大衆化して、安いトラフグの料理が提供され、日本国内のトラフグ養殖業の生産者は値崩れについて非常に危機感を持っている。

 そういう中で、今のお話の「残留のホルマリン濃度が天然のトラフグと養殖トラフグで差異が見られない、食品に不適であるとはいえない、だから食べられる」ということで輸入を認める考え方は、法の改正において、輸出、輸入、国民への食品を提供するうえで基本的問題だ。中国に限らず、欧州、南米から輸入されている輸入魚にも色々な形で薬物が使用されている話は聞いている。であるから、トラフグの肉にホルマリンの残留が一定濃度以上検出されなかったから、危険とはいえないということで、そのまま輸入を認めざるをえないということはいかがなものか。ホルマリンだけの話になってしまったが、ホルマリンの発ガン性は昭和56年以来、論じられているわけだから、国内漁業者の経済的な困難性もあるが、今考えねばならないのは,国として根本的に何らかの方策を講じていく必要があるのではないか、ということだ。これを強く指摘して私の質問を終える。