北村の政治活動

 第54回(平成15年4月16日) 世界水フォーラム閉幕 民営化とダムに理解

 水は文明の母である。世界3大文明の1つ、古代メソポタミアはチグリス、ユーフラテス河の流域で育まれた。その地でイラク戦争が勃発したが、その直前の3月16日から8日間、京都を中心に「第3回世界水フォーラム」が開かれた。会合では飲料水の確保を巡り、水の民営化とダム建設の是非を中心に討議されたが、最終23日の閣僚級会議では、「上水道整備などの資金調達で官民連携の促進」の提唱と、水道事業の民営化やダム建設に理解を示す閣僚宣言を採択した。6月のサミットは世界的に著名な飲料水ボトルの製造元・エビアン(フランス)で開催、水問題も討議される。水道が破壊されたイラクでは市民が水と食糧を求め悲痛な叫びを上げた。安全な飲料水を得られない人は世界で12億人。非衛生な水による下痢で年間2百万人もの子供たちが死亡しており戦争に劣らず悲惨だ。水は平時、戦時を問わず貴重な生命の源。「鉄砲水被害の長崎」が選挙区の私は、「おいしい水」推進議員連盟(会長橋本龍太郎元首相)」の1員として水問題と取り組んでいる。

 淡水化、汚水処理で貢献

 世界水フォーラムは、水不足や水災害、水質汚染など世界の水問題を討議する場として、ユネスコや世界銀行などをメンバーとする世界水会議(WWC=本部・仏マルセイユ)が提唱。97年の第1回(モロッコ・マラケシュ)、00年の第2回(オランダ・ハーグ)に次いで、第3回(運営委会長・橋本元首相)は京都、大阪、滋賀の3会場に内外の専門家や企業、NGO(民間活動団体)の環境団体員ら約1万人が参加して開かれた。今回は「水施設への資金調達」や「賢明な水統治」を中心に、水と気候変動、母性保護、貧困、ダム、農業と食糧、都市洪水、医療、教育など260にも上る幅広いテーマが論議された。この結果は閣僚宣言に盛り込まれ、国や機関から計4百以上の具体的な行動計画が示された。水分野の政府開発援助(ODA)世界一の日本は、議長国として、海水の淡水化や汚水処理の技術移転、人工衛星による洪水予測の情報提供などを提示した。

 食糧輸入『仮想水』約3倍

 「地球は青かった」――。宇宙飛行士第1号のガガーリン少佐(旧ソ連)は、水の惑星・地球の印象を世界にこう伝えた。読売新聞もフォーラムに先立ち、次のような興味深い水問題の特集を出している。要旨は「地球上には約14億立方キロ・メートルの水があるが、97・5%は海水。残る2・5%が塩分のない淡水で、その約70%が北極や南極の氷、約30%の大部分が地下水だ。人間が飲んだり、農・工業に利用できる河川や湖沼の水は、地球にある水の0・01%に過ぎない。<略>1950年からの45年間で、世界の人口は2・2倍になり、水の使用量は2・6倍に増えた。00年の世界人口約60億人は20年には80億人になり、ますます水が必要になる。<略>安全な水が飲めない人は世界に12億人もいて、日本の10倍もの人が水に困っている。<略>日本はコメ以外の多くの食糧を外国から輸入するが、98年の麦や大豆などの輸入量は4,393トンで、それだけの作物を作るには439億トンの水が必要。同年に日本で飲み水やトイレに使った生活用水は164億トンだから、その2・7倍の「仮想水」を食糧輸入で使った形になる」――。

 世紀半ばに70億人水不足

 また、水フォーラム閉幕後の同紙社説では、「途上国の病気の8割は汚水が原因で、子供が8秒に1人死んでいる。今世紀半ばまでに60カ国の70億人が水不足に直面し、21世紀の紛争は水が原因になる。昨年、南アフリカの環境開発サミットで、2015年までに衛生的な水を受けられない人を半減させると合意したが、目標達成には、安全な水の供給施設を毎年、1億人分ずつ整備しなければならない。現在の倍以上、年間1千八百億ドルの投入が必要。民間資金の活用が不可欠だが、一部の多国籍企業が水道事業を独占し、料金が高騰した事例も報告された。公的関与のシステムを確立し、貧困層が水を確保できるようにしなければならない」と述べた。「食糧の6割を輸入に頼り、輸入農産物に消費される水の量(仮想水量)は日本が使う生活用水の約3倍に匹敵する」以上、貢献は当然と社説は主張したわけだ。

 千差万別の水道料金

 日本で水道、電気、ガス、バスなどは、地方自治体が経営する地方公営企業が主力。だが水道料金は、山梨県河口湖周辺の町のように水源に近く大がかりな浄水施設が必要でない市町村は安く、宮城県南郷町のようにダムから水を買うため、ダムの建設費用が基本料金に含まれて料金が高い市町村とでは、10倍近くもばらつきがある。しかも、市町村合併した所では、水道供給事業者が異なるため、地域によって旧料金が持続され、同市内でも料金格差が生じている。読売によると、例えば87年に4町村が合併した茨城県つくば市は、人口19万5千人に対し1つの上水道事業者のほか、100の簡易水道事業者が別々に水道を供給しており、水道料金もサービスも千差万別だという。こうした状況から、事業者の統合、広域化を進め、管理の一体化による効率化や経費削減を行い、水道事業の安定を維持しようと、水道民営化の機運が生まれてきた。それが昨年4月の水道法改正だ。

 仏独が水道ビジネスリード

 水の民営化は世界規模で90年代半ばから活発化し、国家財政の逼迫に悩む英国では、サッチャー政権時代に上下水道が民営化された。途上国では、フィリピン、アルゼンチンなどが世銀の支援を条件として民営化が導入されている。日本でも改正水道法の施行を契機に、市町村合併と連動しながら、広島県三次市や群馬県太田市などが民営化に踏み切っている。一昨年に改正された水道法は、厚生労働相か府県知事の認可が必要だった水道事業者の統合や給水区域の拡張、給水量の増加などについて、届け出だけで済むように簡素化し、公営水道の管理業務を民間企業にも委託でき、料金設定などは国や都道府県の認可を受けた事業者が担うことになった。日本の上水道事業市場は3兆円規模と見込まれる。水道ビジネスで世界をリードしているのは、19世紀から伝統があるフランスで、世界一、二位を争うビベンディ、オンデオの2社とドイツ1社の3社が世界の水の民営化市場で77%を占めている。アジアの上下水道施設の整備に日本はODAで計1兆円援助したが、完成後にはほとんどが仏、英の企業に経営・運営権を独占されてしまった。

 民営化で価格高騰、水質悪化

 それだけに、シラク仏大統領はフォーラムに熱を入れ、開会式に出席の予定だったが、イラク戦争で取りやめた。民営化の背景には
@ 発展途上国の水問題解決には、公的資金だけでは不十分
A 民間資本と受益者負担を頼りに民間企業に事業運営を任せれば、効率化、低価格化が期待できる――などが挙げられる。だが、途上国の市民団体の間では、「民間企業が地域の水道事業を独占し、価格の高騰や水質とサービスの悪化が起きている」との批判が強まっている。南米ボリビアでは民営化による水道料金値上げに反対した住民デモで、学生リーダーが射殺された。日本でも大手商社と仏の水資本が『丸紅ビベンディ・グループ』を設立、水道事業の包括委託で売り込みをかけているが、前記の三次、太田両市でも参入できたのは国内企業だけ。地方公共団体は“水覇権”を狙う多国籍企業の進出に抵抗している。こうした状況から、京都の閣僚宣言は民営化に理解を示しつつも、料金値上げなど負担増に繋がらないよう『貧困層の利益保護』を強調している。

 水のODA見直し要求

 もう1つはダムの問題。読売によると、世界には約4万5千基のダムがあり、その4分の3は中国、米国、インド、日本、スペインの5カ国に設置され、新規建設はアジアの途上国に集中している。しかし、「世界ダム委員会」は00年の報告書で、「ダム建設が世界各地で水生生物などの環境破壊と、4千万人から8千万人の強制移住という人的被害を与えた」と指摘している。ダムや浄水場などの建設に偏った日本のODA援助にも見直しを求める声が強い。そこで、閣僚宣言は、ダムについて環境面などの配慮を求めながらも、「再生可能エネルギーとして水力発電の役割を認識する」、「貯水池のような構造物を含む包括的な対策が必要」として事実上、建設を容認した。フォーラムの開催中にも、イラク戦の長期化で米英軍が水不足に悩んだり、イラク南部では上水道が破壊されて住民が渇水に苦しんだ。閉会式で橋本運営委会長はイラク戦争に触れ「イラクの安全が確認された段階で現地に専門家を派遣し、水フォーラムでの情報やノウハウを提供したい」と挨拶した。イラクの復興には水道、電気、ガスなど社会インフラの整備が何よりも優先する。私が衆院安全保障委で取り組むイラク復興支援法案(仮称)の制定では、万全の対策を講じたいと思う。