北村の政治活動

 第53回(平成15年4月1日) T イラク復興支援法で尽力 同盟国支援は責務
                     U 農業交渉第2次案も紛糾 延長戦に突入

 T イラク復興支援法で尽力 同盟国支援は責務

 「亡命か、武装解除(の戦争)か」――。2日間猶予の最後通告をした後、ブッシュ米大統領は3月20日、イラク戦争を開始した。「“貧者の核兵器”とされる大量破壊兵器を取り除き、イラク国民に民主主義の自由を与え、解放する“イラクの自由”」が米国の大義。フセイン・イラク大統領は「犯罪者ブッシュは人道に対する罪を犯した。イラクの文明と歴史の名にかけ侵略者と戦う“聖戦”」と徹底抗戦の決意でこれに応じた。緒戦では湾岸戦争に優る精密誘導兵器を駆使した米国が、圧倒的力を発揮した。だが、ハリネズミ的地下道要塞といわれるバグダットの市街戦では攻めあぐね、泥沼化しつつある。米英軍は4月の“砂嵐”を避けて砂漠を急行突破、首都を包囲したが、イラクの「共和国防衛隊」4万の精鋭が市民を「人民の盾」に殉教精神で応戦中だ。避難すれば、家・財産は没収、迫害されるから、市民は動けないという。4−5月にかけ、40〜50度の“猛暑”が訪れるが、生物化学兵器対応の防護服で着膨れした米英兵にとっては過酷な戦いだ。

 北の脅威に、当然の決断

 戦争が長期化すれば世界経済に深刻な影響を与え、対米の国際世論もさらに悪化する。とりわけデフレ不況の日本にとっては、原油価格の上昇、輸出の停滞などで景気回復にブレーキが掛かる。それにもまして、イラク戦争を機に国連など国際社会の枠組みは乱れ、国際政治は流動する。小泉首相は「日本の平和を守る同盟国を支援するのはわが国の責務」といち早く米国支援を宣言した。北朝鮮の核開発の脅威が高まる中では当然の決断だ。野党は「国連安保理の決議がないままの大義なき戦争が世界平和に及ぼす影響は計り知れない」などと、評論家じみた無責任な態度で首相を非難した。だが、北朝鮮がこの隙に“瀬戸際外交”を拡大し、日本周辺にノドン、テポドンの試射実験を仕掛けたらどうするのか。国民の生命、財産を守ることは政治の最大使命。私は衆院安全保障委の1員として有事法制関連3法案とイラク復興支援法案(仮称)の早期成立に全力を尽くしたいと思っている。

 精密兵器と情報戦

 イラク戦争は近代兵器戦に加え、情報戦の色合いを濃くしている。当初はトマホークなどピンポイント爆撃の精密誘導兵器3千発を48時間以内に撃ち込み、壊滅的打撃を与えた後に地上戦を展開、短期決戦で終了させるという筋書きだった。ところが、数百発の大規模空爆に移ったのは2日以降のこと。初日はフセイン大統領が潜伏したとの情報で限定戦が可能と考え、大統領宮殿や作戦指令系統など軍事施設にミサイル40発の先制攻撃をかけたが、送電施設やテレビ局は破壊しなかった。このため、バグダッド市民は灯火管制もなく、煌々と照らされる市街地のなかで精密誘導爆弾が正確に炸裂する様を見、キノコ雲の立ちこめる空爆の脅威をまざまざと目撃、国営のテレビ報道で確認もした。暗闇の防空壕に避難するよりも市民の衝撃は遙かに大きい。米国はイラク国民に“恐怖と衝撃”を与え、厭戦気分を煽る心理戦に出たわけだ。米国は特別仕立てのC―30型輸送機からAM、FM波を通じ「フセイン政権のために戦う価値はない」などと呼びかけ、イラク軍の戦意を喪失させる宣伝工作や「投降規定」を刷ったビラ数百万枚をばらまくなど、情報宣伝作戦を展開した。これはアフガニスタン作戦でも使った「空飛ぶ放送局」で、この影響を受けてか、イラク8千人の部隊を率いる南部の要衝・バスラの防衛軍指令官が投降した。

 圧制国民を自由に解放

 米国が当初の大空爆作戦を改め、先制攻撃の対象を大統領府など限定的な目標に絞ったのは、「悪いのは独裁者であり、その圧政に苦しむ国民を民主主義体制に解放し、自由にするのが戦争の目的である」との信念に基づくからだ。ブッシュ政権は01年9月11日の同時多発テロを「新たな戦争」と受け止めた。同時多発テロの犠牲者は、真珠湾攻撃の2300余人を超える約3千人だった。米国本土を初めて襲ったテロの恐怖。その背後にはアルカイダと密接なテロ支援国家・イラクがあり、サダム・フセイン大統領には大量破壊兵器の開発だけでなく、対イラン戦争の際、国内部族弾圧に生物兵器を使用した忌まわしい歴史がある。そのフセイン氏が国際テロリストに大量破壊兵器を提供し、再び米国を攻撃すれば一大事だ。しかも、フセイン大統領は12年間も国連安保理決議の査察を狡猾にくぐり抜けてきた。「イラクはイラン、北朝鮮と並ぶ“悪の枢軸”であり“ならず者国家”である。その独裁政権は断じて許さない」というのがブッシュ政権発足以来の信念だ。

 米に厳しい国際世論

 12年前の湾岸戦争では約30カ国が多国籍軍に参加、アラブ諸国までが支持を表明した。イラクが隣邦クエートを侵略したからだ。しかし、今回は40カ国が表面上は支持したというものの、米国と共に作戦に参加したのは英国など2カ国に過ぎず、欧州、アラブでは反戦デモが勢いを増している。フランス、ドイツ、ロシアなどが、米・英・スペインが提案した武装解除の安保理決議案に反対して査察継続を主張し、フセイン大統領が「シオニスト(イスラエル)が侵略者を駆り立てた。神は我々と共にある。邪悪な敵をアラブ諸国の人々と共に戦い勝利する」と、イラク戦争をイスラムのジハード(聖戦)とし、アラブ世界の団結を訴えたことが影響した。宗教戦争になってはイラク戦後の復興もままならない。国際世論対策としても、独裁者・フセイン政権の転覆に矛先を絞り、心理作戦、情報戦略を駆使して非戦闘員・国民の被害を最小限に食い止めざるを得なかったわけだ。その「苦渋の選択」(ブッシュ氏)に、日本は真っ先に支持を表明、米国に感謝された。

 同盟重視の首相決断

 小泉首相は開戦20日の深夜、衆参両院本会議で各党代表質問を受け、

@ 大量破壊兵器拡散の脅威はもはや放置できない
A 緊迫の度を増す北朝鮮情勢を踏まえ日米同盟を重視する必要がある
B アジア地域の平和と安定確保にも米国の役割は不可欠だ――と日米同盟堅持の姿勢を強調した。
 「米国は日本への攻撃を自国への攻撃と見なすと明言している唯一の国」と首相が言うように、日米同盟があったからこそ、日本の平和と繁栄が持続されてきた。北朝鮮の脅威に対処するためにも、イラク復興で主導的役割を果たすためにも首相決断は評価されよう。さて、政府は開戦直後、「イラク問題対処方針」を決定した。

@ 法人の安全確保
A 国内の警備体制強化
B ペルシャ湾運行の船舶安全確保
C 経済システムの安定化
D イラク流出難民への支援――の5項目のほか、「イラクの復興支援や人道支援」、「イラク周辺地域への支援」の2項目を盛っている。

 上五島の備蓄放出も

 警備強化では、イスラム過激派などの報復テロや北朝鮮の“暴発”事態を警戒し、出入国管理や通関手続きの厳格化と、空港での不審人物の入国や危険物の持ち込みを防止すると同時に、佐世保など在日米軍基地や原発の警備を強化した。既に基地には警察の特殊部隊を、原発にはセミ・マシンガンで武装した警官を配置している。経済システムの安定化では、中東諸国からの原油価格が急騰する場合は、関係諸国と連携しながら、国家備蓄を放出する。恩師、故・白浜仁吉先生が骨折って作った上五島(長崎)や、志布志(鹿児島)などの備蓄(約170日分)が活用されるわけだ。急激な円高など為替市場の動きには、市場介入を検討する方針だ。イラク難民支援は、国連平和維持活動(PKO)協力法に基づき、民間の医師、看護師、薬剤師らの医療チーム派遣や、自衛隊輸送機で毛布、テントなどの救援物資を運ぶ段取りだ。湾岸戦争では130億ドルもの巨額を拠出しながら、人的支援が出来なかったため、国際的には不評を買った。今回は財政逼迫の事情もあり、カネの支援はODA(政府開発援助)を活用した対イラク経済援助、避難民帰還支援のための国際機関やNGO(非営利組織)への資金拠出に止める考えだ。英国が提案したように、イラクの石油輸出代金を復興資金に充当すれば、巨額の資金提供は必要ないとの判断だ。

 有事、イラク復興で活躍

 問題なのは自衛隊による人の支援だ。イラクがペルシャ湾に機雷を撒く事態を想定し、自衛隊の掃海艇を派遣して機雷除去に当たるほか、イラク駐留多国籍軍への物資輸送、食糧・燃料補給、道路、施設など社会基盤の復旧・整備、医療チームの派遣、被災民への生活関連物資の輸送、大量破壊兵器処理――など復興、人道支援は盛り沢山。これらに自衛隊を活用しようとしても、後方支援を目的としたテロ対策特別措置法を拡大解釈するのは難しく、PKO協力法も、紛争当事者の停戦合意など「PKO参加5原則」を満たすには困難な要素が多い。自衛隊の新たな派遣にはどうしても「イラク復興支援法」を制定しなければならない。これは私の属する衆院安保委員会の領域である。政府は同法案提出の前提として、自衛隊派遣の根拠となる新たな国連安保理の決議が必要との立場だ。しかし、シラク仏大統領が国連決議による米英両国主導のイラク戦後統治を拒否している。

 仏露中はネオ・コン警戒

 戦後処理には復興、治安維持、政治形態の3大課題がつきまとうが、世界第2の産油国の石油利権が絡むだけに、イラクの石油開発で先行した仏、露、中国は、米英主体の占領統治に反発を強めている。とくに、米国では“一国主義”の新保守派である「ネオ・コン」(新・コンサバティブ)が台頭しつつあるとみて、米国が占領、治安を維持する間に傀儡政権を樹立しないかと強く警戒している。こうした国連の復興決議の推移と戦争の終結を見守りながら、我々は5月にも法案を成立させる必要がある。その前には、懸案の有事法制関連3法案の成立を図ることが喫緊の課題だ。有事法制とイラク復興支援法との整合性を保つことも重要な課題だ。党の安保調査会、国防部会などで念入りに法案を煮詰めるなど多忙を極めるが、安全保障は基地・佐世保を代表する私の専門分野である。政府が国益を守り、日米安保体制を堅持して国際協調の国連外交を推進するよう督励しつつ、法制定で大いに働きたいと思っている。

 

 U 農業交渉第2次案も紛糾 延長戦に突入

 世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(新ラウンド)をめぐる農業委員会非公式特別会合は、3月25日から31日までジュネーブで開催された。この問題は、同月1日付の私のホームページ『北村の政治活動』で詳報したので重複は避けるが、特別会合でもさしたる進展はなかった。ハービンソン農業交渉委議長は同会合で、農業の自由化ルールについての交渉大枠(モダリティー)の第2次案を提示したが、コメなどに対する関税の大幅な引き下げ案は第1次案と変わらず、各国も自己主張を繰り返すだけで実を結ばなかった。

 交渉ベースにならぬと日本

 日本代表の竹中美晴農林水産審議官、村上秀徳国際部長は、「主要な点で1次案と同じ内容であり、総体として受け入れられず、交渉のベースとはならない」と反対、@交渉進展には、実際に負担を負う輸入国の意見が十分に反映される必要があるA『品質ごとの柔軟性』、『改革の継続性』、『輸出入国間のバランス』の原則に基づき、非貿易的関心事項を適切に反映して初めて、包括的な合意が得られる――などと主張した。EU(欧州連合)やEUと同じ考えに立つ台湾などフレンズ諸国、中東欧諸国は「1次案同様、全体としてバランスを欠き、削減約束の“野心”の水準も高すぎ、交渉のベースとならない」と反論した。

 米、ケアンズは共同戦線

 これに対し、米国は「ドーハ閣僚宣言が求める(大幅な自由化の)“野心”からは不十分な内容」とし、上限関税率の設定や、すべての加盟国による大幅な関税引き下げなどを主張した。ケアンズ諸国は、「市場アクセス、国内支持、輸出競争の各分野ともに“野心”の水準が低すぎて全く不十分である。途上国発展のためには豊かな国の補助金を撤廃することこそ必要」と述べ、米国と共同戦線を張った。『途上国の発展』とは、

@ 自国消費の余剰を輸出し、外貨を獲得
A 国民所得を引き上げて、先進国化を図る
B 輸出向上の戦略は農産物――を意味する。その途上国の多くは、「輸出補助金に比べ、途上国の関税引き下げ率の“野心”の水準は高すぎる。先進国の補助金の大幅な削減がない限り、途上国は市場アクセスの約束には応じられない」などと主張した。このような応酬から、農業交渉は期限の3月末も決着がつかず、延長戦に突入した。