北村の政治活動

 第52回(平成15年3月16日) HTB再生で呼びかけ 縦割り行政をなくせ


 ハウステンボス(HTB)では4月20日まで、チューリップ祭を開催中。多種多彩な100万本の花々が研を競い、春を呼んでいる。なのに、HTBは2月26日、会社更生法の適用を申請した。営業は継続しているが、宮崎のシーガイアと同様経営が破綻したからだ。96年度には425万人の集客を記録した九州を代表する大型リゾート施設の破綻。背景には、デフレ不況で客足が遠のいたことや、不良債権処理の強化を迫られる金融機関の事情などがある。小泉首相は今国会の施政方針演説で観光立国を目指す考えを明らかにしたが、外国人客の訪問は少なく、バブル崩壊後の地方テーマパークは受難の時代を迎えている。自然・環境との共生を目指すHTBは、九十九島と並ぶわが選挙区佐世保市の観光の目玉。観光の振興は喫緊の課題だ。私は3月7日、同僚の長崎県選出国会議員に呼びかけ、衆院第2議員会館に金子原二郎長崎県知事らを招いて意見交換会を開いた。政府にも働きかけ、早急に支援策の具体化に汗をかく覚悟である。

 10万人の県民運動

 意見交換会の席上、金子知事は会社更生法の適用申請後の経過と支援策を詳しく説明、その中で
@ 東京、大阪、福岡などの県人会へ支援を要請するとともに「10万人の県民がハウステンボスに行こう!」の県民運動を展開、長崎、佐世保両市で決起大会開催
A 国内外に観光宣伝隊の派遣と内外のマスメディアを活用して、従来通り営業を継続中であることを周知・宣伝、イベントの開催
B 県や商工団体に中小企業相談窓口を設置し、低利の「HTB関連緊急支援資金」(仮称)の創設――などを挙げ、開会中の県議会に5千万円の補正予算を追加提案する考えを明らかにした。HTBの鶴田修一・保全管理室長(前取締役)の説明によると、債務総額は、金融2029億円、預託金146億円、リース17億円、その他97億円で合計2289億円。26日の臨時取締役会で「会社更正手続き」を決議し長崎地裁佐世保支部に申し立て、その後東京地裁に移送された。保全管理人は敏腕の桃尾重明弁護士だ。

 償却前利益は黒字

 HTBが会社更正手続きを選んだ理由は、全施設を一体として今後の展開を図るためと、強力な支援企業が現れれば、経営主体をそっくり移し換えることが可能になるからだ。そこで、更正手続き後も、パーク、ホテルを含め全施設は通常通り営業を継続。取引先の理解を得て仕入れも正常に運営されている。2月26日からの客数は3月4日現在、7日間累計で前年比130%と堅調、3月以降の予約キャンセルも数件と落ち着いている。昨秋の収益は見込みより20億円の減少だが、年15億円の利息支払いがあるためで、償却前利益は12億円の黒字とされる。このように、償却前利益が出せるようになっていることは、大きな負債の重荷が解消できるような新スポンサーが見出せれば、HTBの再生は可能といえよう。HTBは全国区の知名度があり、福岡市民の有志52人が「ハウステンボス応援視察団」を繰り出したり、島原半島観光連盟の旅館女将60人が支援に来場するなど、短期間に激励視察団の来訪や、全国からの激励メール、手紙も数百通届いている。

 最盛時は425万人記録

 HTBの前身「長崎オランダ村」が開園したのは20年前の1983年。「自然・環境との共生」のテーマパークで92年に再出発したHTBは、96年度には425万1千3百人の集客を記録した。しかし、デフレ不況で国内観光客が目減りし、加えてアジアからの観光客が北海道や関東、関西などに奪われだすと、入場客は毎年10〜20万人単位で減少、01年度は355万2千人まで落ち込んだ。これにはユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ=大阪市、01年3月開業)、東京ディズニーシー(TDS=千葉県浦安市、同年9月開業)の登場が追い打ちをかけ、業績が悪化した。01年度の売上高は約320億円で、ピーク時の96年度約496億円の6割強にまで縮小した。これに2千億円超の投資が重圧となり、「芸能人はお断り」などと鳴り物入りで売り出した億ションの高級分譲住宅地も販売不振で、資金面を圧迫した。決定的なのは「オランダ村」当時から主力銀行として資金面で支えてきた旧日本興業銀行(現在はみずほグループ)の関与形態だ。

 不良債権処理の影響

 SSKや西肥バスの主力銀行でもある旧興銀は、これまでにHTBの計530億円の債務放棄に応じたほか、2代に渡って社長を送り込み、再建を全面的に後押ししてきた。しかし、政府が不良債権処理の方針を打ち出した昨年以降、みずほグループも今年3月期の不良債権処理損失を約1兆円上積みし、1兆9500億円の税引き後赤字に修正。巨額の赤字で自己資本不足に陥るのを防ぐため、2兆3千億円の増資に踏み切った。そうなると、テーマパーク事業といえども“聖域”には出来ず、追加的な金融支援を継続するより、新たな支援企業(スポンサー)を探すためにも、法的整理した方がよいと銀行側は判断したようだ。HTBに、長崎県と佐世保市は1.9%ずつ出資している。そこで「県と市が50億円ずつ、スポンサーが100億円出資すれば運営会社が楽になる」との案などもあったというが、適正な入場料の決定など色々な問題があるため、県は出資は見送り、内外への周知・宣伝など観光対策を充実させることにしたという。

 自動車メーカーなどが支援

 会社更生法の下で、HTBの再建が順調に進むかどうかはスポンサー次第だが、HTBは魅力ある企業なので、自動車や通信メーカーなど日本の大手企業を含め、内外から相当数の支援申し入れがあるという。全施設の一体的運営を前提条件に、みずほグループを窓口に複数企業との折衝を深めているが、支援企業の利益を考慮すれば、ある程度の施設閉鎖や縮小などの減量経営はやむを得ないようだ。リストラの場合は、パートを含め1700人の従業員の雇用問題が生じるし、公有水面(運河)の固定資産税の減免問題も地方行政の一環として浮上する。佐世保市にとって固定資産税の減少は痛い。アウトレット・モール(郊外の量販店売場)の整備なども課題になり、県・市の対応は忙しくなろう。

 長崎新聞によると、HTBは工業用埋立地を整備し、ヘドロを除去し、土壌改良した土地に約50種、40万本の苗木を植栽したため、初期投資2千億円超のうち600億円は土地改良や森林、運河、海水淡水化プラントなどの環境整備に充ててきた。この初期投資が経営に重く圧し掛かっているが、資源循環型のパークが功を奏し、絶滅種の蝶「コムラサキ」やハヤブサの生育も確認でき、超スピードで生態系が回復しているという。

 エコと調和の森の家

 ハウステンボスはオランダ語で『森の家』の意だが、「エコロジー(環境)とエコノミー(経済)の調和」を目指す長期滞在型の森の家。渇水期には海水淡水化と排水の再利用で80〜85%の用水を自給した。生ごみはすべてコンポスト(堆肥)化して近郊町村に提供、そこで採れたジャガイモやアスパラガスは5つのホテルレストランで調理するなど、1つの街で資源を循環し完結させている。全国の小・中学校のエコ教育や、修学旅行、海外からの環境ツアーにはもってこい。残念なことは、都市圏から離れていて、集客力が弱いことだ。

 「観光の振興には政府を挙げて取り組む。現在、日本からの海外旅行者が年間約1600万人を超えているのに対し、日本を訪れる外国人旅行者は約500万人にとどまる。2010年にこれを倍増させることを目標とする」――。小泉首相は施政方針演説で観光倍増論を高らかにぶち挙げた。その直後のHTB の経営破たんである。世界でも優れた伝統文化を持ち、豊かな自然に恵まれた平和大国の日本に、なぜ外国人の観光客が少ないのか。

 首相の観光構造改革

 近隣の韓国や中国復帰後の香港などは、国際線の中核となるハブ空港を建設して、外人観光客の誘致に躍起となり、韓国の金大中・元大統領は自ら海外向けテレビCMに出演し、韓国のよさをアピールするほどの熱の入れようだ。そこへいくと日本は、観光政策に力を注ぐ国土交通省(旧建設・運輸省)、国立・国定公園の保全を第一に考える環境省、ビザ発給の外務省、外国人犯罪の激増に頭を痛め、治安維持を使命とする法務省・警察庁などの縄張り意識が強く、縦割り行政の弊害が起きている。小泉首相は『観光立国懇談会』を発足させ、初会合の席上「眠っている観光資源を国際交流、経済再生、地域の活性化につなげる」と大見得を切ったが、観光構造改革の柱は21世紀の環境保全である。『自然・環境と共生する地域密着型』のテーマパークを再生するには、県を挙げての年間入場会員(モーレンクラブ)の勧誘も重要だが、何よりも観光の縦割り行政をなくし、リピーター(再訪問者)が気軽に足を運べる施設を作り、飽きないイベントを提供することである。当面、私はHTBの再建に向け、地元と国政の両面で大いに活動したいと思っている。

 意見交換会での金子知事の挨拶要旨と支援措置の概要は次の通り。

 「HTB支援資金」を創設

1.北村先生から「本県の観光や地域経済に大きな影響を与えるHTBが、会社更生法の手続きを開始するという緊急事態に、地元の国会議員として何か役に立てないか」というありがたいお話があり、この意見交換会が実現できた。

2.2月26日に県は緊急対策本部を設置、金融や観光などの支援策の検討を開始。同日昼、みずほコーポレート銀行の山内常務から事情説明があり、「引き続き、資金支援、人的支援、事業再建への最大限の協力を継続していく。事業の円滑な再生のため早急に優良なスポンサーが見つかるよう保全管理人に協力していきたい」と表明。私からは、風評の被害が出ないよう、一刻も早い魅力ある更正計画の策定と、速やかな事業の再生、テナント業者への支援対策で最大限の支援・協力をお願いした。

3.とくに重要な点は、HTBが更正手続き申立後も通常の営業を行って賑わっていることだ。そして、県民皆がHTBを支えている情報を全国へ発信することと、テナント業者や納入業者などへの影響を最小限に食い止める支援措置が必要なことだ。

4.支援措置は、知事と副知事が手分けして東京や九州の近県をPRに歴訪するほか東京、大阪、福岡の県人会へ支援要請。県職員に「モーレンクラブ」の加入やHTBの利用促進メールを発信し『10万人の県民がハウステンボスに行こう!』県民運動を実施する。資産保全措置で売掛債権の回収が困難な中小企業者に運転資金を低利で融資する『ハウステンボス関連緊急支援資金』を創設、5千万円の補正予算を組む。