北村の政治活動

 第50回(2月16日) 緊迫のイラク・北朝鮮 万全の国防体制を

 イラク、北朝鮮情勢は、2月に入ってますます緊迫の度を深めている。国連が昨秋から再開した査察は成果が上がらず、業を煮やした米国は5日、イラクの大量破壊兵器の隠蔽工作を立証する機密情報を、国連安全保障理事会に提示した。イラク政府は、これを米国のでっち上げだと反論しているが,米国の中央情報局(CIA)などが集めた機密情報では、査察チームの到着直前に貯蔵施設から化学兵器や弾道ミサイルが撤去されたことが歴然とした。しかし、米英が武力行使を決断するまでの時間は「数ヶ月でなく数週間」としているのに対し、仏、独、露、中などは査察の継続を主張している。こうして世界の耳目がイラクに集まっている最中、北朝鮮は米国に対し有利な交渉を進めようと、盛んに核カードを切り続けている。日本にとって最重要なのは北東アジアの安全保障だ。自民党の国防部会などで連日、対応策を協議しているが、03年度予算案が衆院を通過すれば、国会の主舞台は私の所属する衆院安全保障委員会に移る。大いに活躍したいと考えている。

 隠蔽工作の証拠開示

 パウエル米国務長官が5日の国連安保理事会・外相会議で開示した機密情報は、1月27日に国連監視検証査察委(UNMOVIC)のブリスク委員長と国際原子力機関(IAEA)のエルパラダイ事務局長が行った査察報告に対し、「イラクの組織的な隠蔽工作を裏付ける証拠」として公表。対イラク攻撃に慎重な国際世論と米国民の支持取り付けを狙ったものだ。パウエル長官は、イラク共和国防衛隊の准将と大佐の間で交わされた交信の傍受記録や軍事偵察衛星による写真の解析結果などを公開、イラクが安保理決議に対する「さらなる重大な違反」を積み重ねている状況を詳細に説明した。長官は「査察官が来る直前に兵器開発の証拠隠滅を試みた」「バグダッド近郊の椰子の木の中に生物兵器を搭載できるミサイルを隠した」「イラク軍が化学兵器貯蔵庫を隠蔽した」「イラクはアルカイダ関係者をかくまい、接触した」――などの証拠を提示し、イラクが査察への完全協力と平和裏の武装解除を義務づけた安保理決議1441(昨年11月採択)に重大な違反を犯していると決めつけている。

 短期決戦の態勢整う

 これに対し、イラクは「米国の典型的な特撮ショウで捏造だ。新味のないCIA報告の繰り返しで、漫画映画と何ら違いがない」と反論。仏、露、中の安保理事国や独は査察の継続を強く主張して、米英両国の武力行使には冷ややかな態度をとっている。ブリスク委員長とエルパラダイ事務局長は8、9の両日にバグダッドを訪問、米軍U2偵察機の上空査察などについてイラク側の容認を取り付けたが、ブリスク氏らはこのようなイラクの軟化姿勢では「なおも不十分」としており、生物・化学兵器開発疑惑に関する再調査について14日の安保理へ追加報告を行った。ブッシュ米大統領は「(隠蔽を続ける外交の)ゲームは終わった」と述べ、3月初旬にも短期決戦でイラク攻撃が出来るよう、横須賀の空母キティホークをペルシャ湾岸地域に派遣、湾岸戦争当時の6空母に次ぐ5空母を集結させ、トルコにも基地提供を確約させた。ところが、北大西洋条約機構(NATO)加盟19ヶ国に対し、米国が求めていた対イラク戦でのトルコ基地の軍事支援を巡り、仏、独、ベルギー3国が拒否通告をするなど、主戦波の米英と戦争回避派の仏独との対立が一層深まっている。従って、イラク攻撃を容認するための新たな安保決議が行われるかどうか微妙な情勢だ。

 北へも武力攻勢の姿勢

 一方、トーマス・ファーゴ米太平洋軍司令官はラムズフェルド国防長官に「米国がイラク情勢に目を奪われていると見て、北朝鮮が冒険的行動に出ないようにしたい」として、兵力数千人の在韓米軍の増員を要請した。米政府は既にハワイの空母カールビンソンを朝鮮半島近海へ派遣、B―1,B―52爆撃機、F―15E戦闘爆撃機、偵察機なども増強している。米国はイラクのフセイン政権打倒を最優先課題とし、北朝鮮問題は外交努力で解決しようとしてきたが、北朝鮮が核危機を先鋭化させてきているのに対し、当初は避けていた二正面作戦へ徐々に方向転換しつつあるわけだ。そこで、北朝鮮が使用済み核燃料棒の再処理など、核兵器製造、保有への“核カード”を切り続ければ、「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」(ブッシュ大統領)として武力行使に踏み切る姿勢を強めている。先号でも述べた通り、北朝鮮は昨年10月に核開発の実態を米国に暴露されると、イラクのようには隠さず、逆に開き直ってNPT脱退を宣言、国連の査察官を国外追放、ミサイル発射実験の再開宣言、使用済み核燃料棒を再処理施設へ移送(米偵察衛星で確認)――など核カードを繰り出し、経済支援を引き出す取引材料にしようとした。米国が対イラク戦に追われている間は北朝鮮攻撃がないと見ての瀬戸際外交の展開である。その間に青森で開かれた冬季アジア競技大会に参加するなど、微笑外交も見せるしたたかさだ。

 数百人の北朝鮮工作員

 その間にも北朝鮮に絡む事件が多発した。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の元幹部(72)が北朝鮮の不定期貨客船「万景峰92」号の船長を通じ、工作指令文書を受け取り、スパイ活動をしていた事件が警視庁の調べで明るみに出た。年間20回以上往復する同船は貨客・物資の輸送だけでなく、在日朝鮮人が経営する日本のパチンコ店、焼肉店などの不正送金に利用されている疑いが持たれている。日本国内には数百人もの北朝鮮工作員が潜入しているとみられ、まさにスパイ天国だ。警察当局も本格的に捜査に乗り出した。また、1月末には決死の逃避行を続けた末、帰国した“脱北日本人妻”が保護された。「地上の楽園」との甘い言葉に乗せられ、59年から84年にかけ、在日朝鮮人と結婚して北朝鮮に渡った日本人妻約1800人の中の1人だ。夫が監禁された後の44年間、トウモロコシの粉とジャガイモで飢えをしのいで子供を育てたという。日本のマスコミも5人の拉致事件報道以来、北朝鮮の独裁政権がもたらす国民の悲惨さを大きく取り上げている。

 “金王朝”は軍事優先

 読売新聞は1月末から「北朝鮮危機」を特集、虚飾の政権・金体制、現実味増す核武装、体制護持・闘争外交――など読み応えある6回シリーズを掲載した。その中では、「故・金日成主席が67年5月の朝鮮労働党中央委総会で権力を完全に握り、党の“唯一思想”(主体=チェチェ=思想)を打ち出した。唯一思想を武器に全社会の金日成主義化を進めたのが息子の金正日総書記で、ミサイルなど軍備増強を優先、金主席を賛美する巨大建造物建設に巨費を投じ、人々の生活を顧みることはなかった」とまず“金王朝”の原点を説いている。50年6月から53年7月までの朝鮮戦争では数百万人の死傷者を出したとされるが、金総書記は「軍こそ人民であり、国家であり、党である」との信念から、軍備増強に努め、朝鮮人民軍は陸海空合わせて総兵力117万。陸軍100万のうち約70万は軍事境界線から100キロ以内に集中配備されている。ほかに民兵組織の予備兵力が600万以上控え。これに対する韓国軍は総兵力69万、在韓米軍は3万7千だから、朝鮮半島の休戦状態は、恐怖の均衡によって保たれている、と読売は報じている。

 ミサイルで米基地破壊

 韓国がソウルの首都移転を真剣に検討したり、廬武鉉・新大統領が金大中政権の“太陽政策”の融和路線を継承しようとするのも、38度線を接して双方の兵力がにらみ合っているからだ。読売の記事で注目されるのは、金日成主席が60年代に「第二の(朝鮮)戦争で米国や日本の参戦を防ぐためには、日本国内の米軍基地を破壊できるミサイルが必要だ」と演説したことと、北朝鮮の特殊部隊が、10万という世界最大規模の兵力を有することの2点だ。ミサイルは日本全土を射程距離(1300キロ)とするノドンを百機配備しているというし、アラスカまで届くテポドンは既に98年8月に日本列島越しに発射実験済み。今回も実験を再開しかねない。「特殊部隊は、有事の際に韓国全土に浸透、軍事基地や通信施設の破壊、要人暗殺などを同時多発的に実行する。日本の米軍基地、原発などを破壊する可能性も指摘される。同時にコレラ菌や炭疸金、赤痢など13種類を保有しているという生物兵器をばらまきかねない」と読売は警告している。仮に北朝鮮が核武装を完了すれば北東アジアだけでなく、世界の安全と平和にとっても重大な脅威となる。北朝鮮の完全非核化と核搭載弾道ミサイルの排除は、日本の防衛にとって譲れない一線だ。

 敵地攻撃能力はない

 94年の核危機の際に、北朝鮮は「ソウルを火の海にしてやる」と脅し、6月にカーター元大統領が訪朝して核危機を打開した直後、金日成主席は「カーターは4時間(の交渉)で私に降伏した。我々がカネ、資材を出さずに彼らは発電所を建設してくれる」と米朝枠組合意の成果を喜んだという。火の海をもじって石破茂防衛庁長官は1月24日の衆院予算委員会で、「東京を火の海にしてやるとの表明があり、そのために(ミサイルに)燃料を注入し始めたり、準備を始めた場合、(武力攻撃の)着手ではないか」と述べ、北朝鮮が日本を攻撃するための燃料注入など準備があった場合、発射時でも自衛権を発動して北朝鮮のミサイル基地を攻撃することは可能との見解を表明した。ノドンは発射から着弾まで7、8分から数十分かかるため、当面はイージス艦などで迎撃体制を固めるが、3月に情報収集衛星を打ち上げ、監視することにしている。だが、北朝鮮のミサイル発射を事前に察知しても、自衛隊には発射基地を叩くための「敵地攻撃能力はない」(石破長官)のが現状だ。

 新ミサイル迎撃システム

 政府がまとめた「北朝鮮の弾道ミサイル発射事態対応方針」では、ミサイル発射の兆候、発射直後、事態拡大の3段階に分け、政府の取るべき具体措置を記しているが、

@ 米国の偵察衛星などでミサイルに燃料注入などの兆候が確認されれば国民に事実を公表し、北朝鮮に中止を申し入れる
A 発射後に、日本の領土・領海に着弾した場合は自衛隊を「災害派遣」の名目で緊急派遣、領空侵犯への警戒強化と制裁措置検討
B 2発目以降のミサイル発射など事態拡大が予想される場合は首相が自衛隊に防衛出動命令――など、手ぬるいものだ。
 そこで、政府は今年末までに見直す「防衛計画大綱」、「新中期防衛力整備計画」に、海上配備型のSMD、地対空誘導弾のPAC−3など米国が独自に開発した新ミサイル迎撃システムを導入しようと検討に入った。コーエン前米国防長官が1月に来日した際の朝食会では、自民党の元防衛長官が「米国はイラクを武装解除すると言いながら、大量破壊兵器を誇示する北朝鮮にはなぜ軟弱な姿勢で対応するのか」とかみついたが、自民党の国防部会や安保調査会の会合では最近、イラクよりも北朝鮮への対応が真剣に討議されている。

 経済制裁は断固実施

党の有志議員で作る「対北朝鮮外交カードを考える会」は、拉致関与疑惑の疑いがある船に対する「特定外国船舶入港禁止法案」(仮称)と、「貿易や送金を停止する外国為替及び外国貿易法(外為法)改正案」など、北朝鮮を想定した経済制裁措置の関連法案の骨子をまとめた。政府は拉致問題を北朝鮮の完全非核化などと包括的に処理する方針であり、そのためには経済制裁も断固実施しなければならないだろう。諸外国から“平和ボケ”といわれるほど平和慣れした日本だが、多少時間がかかっても北朝鮮の核・ミサイル脅威を取り除くことが何よりも優先する。私は日本国民の生命・財産を守るため、衆院安保委員会や党国防部会などを舞台に、全力を挙げて安保問題と取り組む覚悟である。