北村の政治活動

 第45回(平成14年12月1日) 有明海特措法案可決 自然浄化力など質す

 衆院農林水産委員会は11月12日、「有明海及び八代海再生特別措置法案」を一部修正のうえ、与党3党と自由、社民両党の賛成多数で可決。同案は同14日に衆院本会議を通過、同22日の参院本会議で可決成立した。民主党が国営諫早湾干拓事業の中止や中・長期開門調査の実施を盛り込んだ対案は否決された。同法案は、漁業振興と環境改善を一体的に進めることで、有明、八代両海域の再生を図るのが狙い。海底の堆積物の除去や覆砂など漁場整備に関する補助率をかさ上げする一方、関係市町村の下水道整備や合併処理浄化槽の普及を促進する。漁場整備では、関係各県の財政力に応じ、補助率を現行の50%から最高55%に引き上げる。本年度は国による約20億円の財政支援が予定されている。

 吉次諫早市長ら4参考人

 同委員会は採決に先立ち同7日、中村充・福井県立大名誉教授、森文義・元長崎県小長井町漁協組合長理事、吉次邦夫・諫早市長、宮入興一・愛知大経済学部教授の4氏を参考人に招き意見を聴取した。この後、私がトップバッターの質問に立ち、

@ 有明海全体での自然浄化力を高める具体策
A 諫早湾干拓事業が地域住民に与えた効果と評価
B 漁業、農業従事者が有明海特措法にかける期待――などを質した。意見聴取には、来日中のタジキスタン共和国上下両院議員団が傍聴した。各15分間の意見開陳で “海の生物”環境工学の権威である中村教授は「有明海の特徴は、潮汐、干満差、干潟の大きさがいずれも日本一。年間10センチ近い干潟が発達してきたが、海の自然浄化力を超えると著しい障害が出る」とし、貧酸素水塊が発生しやすいところには特殊な工法が必要であると強調した。

 環境悪化で漁民廃業

 次に森氏は、「環境の悪化で諫早湾の漁民は廃業状態に近い」と窮状を訴え、吉次諫早市長は、有明海や諫早湾の地形的特質、過去の災害、干拓事業の経過、漁業不審の実態などを市政担当の立場から総合的に説明、特措法の早期制定を要望した。最後に民主党が推薦した宮入教授は「有明海異変は単にノリ凶作問題に尽きるものではなく、宝の海は20年以上も前から徐々に変質してきた」と数字を挙げて説明、異変に追い打ちを掛けたのが諫早湾干拓であるとし、干拓事業の中止または中長期の開門調査を実施するよう求めた。

 県計画で諸施策実施

 有明海特措法の成立後は、国が定める基本方針に沿って、宮崎を除く九州6県が地域の実情に応じた「県計画」を策定、漁業振興、水質保全、干潟の浄化機能の維持・向上、下水道や浄化槽整備、港湾や森林整備などの諸施策を実施する。有明、八代両海域に流れ込む汚染物質の総量を削減する措置や、潮流と両海域の環境との関係を調査した結果を評価する「評価委員会」も環境省に設置される。ノリの酸処理剤使用に対しては「環境保全について適切な配慮をしなければならない」としているが、同法は施行から5年以内に総合的な調査を踏まえ、必要な見直しを行う。

 11月7日の衆院農水委員会での参考人意見聴取に対する私の質疑内容は次の通り。

 北村 中村参考人は、自然の浄化力を高めるための投資が極めて少ないとのご発言だった。具体的な方策として、貧酸素水塊の発生しやすい海域に、密度流作澪工あるいは湧昇流工という工法を挙げたが、どういう工法か。自然浄化力の具体策をいま少し聞きたい。

 中村充・福井県立大名誉教授 普通干潟には澪があって作澪の形で行われている。それに対し、深い海中では表層流ではなくて下の方に密度の重い層がある。密度流というのは上層の水と下層の水との間にある重さの違いによって発生する重力を利用するわけだ。湧昇流工というのは水産庁で開発されつつあるが、流速が必要なのでどこでもというわけにはいかない。それから、潮汐の往復運動で上げ潮と下げ潮の流れの履歴を変える工法もある。

 北村 具体的に出来ることから自然浄化力を高め、有明海全体を眺めて再生を図っていくというこの法律に期待する発言であったかと思い、大変心強く思う。森参考人のご発言もこの法律の成立を喜んでいるようにお聞きした。しかも、諫早湾干拓事業が中止でなく、進められる中で、水の流れを止めない、諫早に注ぐ数多くの河川の機能、役割を大事に認識して、それをうまく調整して諫早湾干拓事業を推進し、さらに漁業の回復を図る。そして、漁民の生活は今後漁民自身の本来の営みによって成り立つ。あるいは自立して漁業の操業によって稼がれる働きによって自らの生計を立てていくことが出来る。そういう諫早湾干拓事業になることを望む。そのためにこの法律が成立することを望む――という風に聞いたが、そう理解してよいか。

 森文義・元小長井町漁協組合長理事 多少は皮肉が入っている。水の流れというのは、ごく自然の姿に戻す形がない限り、人間が作澪で澪を作っても本来の有明海の潮流、潮汐に合った海底の地形がある。本明川の流れに沿った、干潟の機能を活かしたものでない限り、カネを湯水のごとく使う事業になりかねない。だから、私が事業を継続してほしいというのは、半分以上は皮肉で言っているわけだ。諫早湾の堤防が出来たことにどうだという話をはさむ余地はない。確かにお金が必要だから法案が出来たことは率直に喜ぶ。
 しかし、基本的には、堤防ある限り有明海はこのまま死んでいく海。このままでは有明海に限らず橘湾まで死んでいく。漁業者が毎朝、船で出ている姿が諫早湾では見えない。のりは栽培で、農耕みたいなものだが、海底には有明海にしかいない貝類が沢山湧き出るぐらいの量があった。諫早湾が主因じゃないというけれども、熊本の新港、大牟田の埋め立て、筑後川の大堰などが多少の影響を与え、新港によって日本一のアサリの産地は熊本からなくなり、名古屋、千葉までの種苗を賄っていた柳川地区のアサリの稚貝はなくなった。
 海を守らなければならない、海の恩恵を受ける人間が海を汚す酸を使っていることに対し、私は貝類業者としてひどい憤りを持っている。自然保護団体であるべき漁業者が自ら薬品を使う。ノリに限らずフグ、タイなどにも当てはまる。日本の漁業は養殖漁業がほとんどで本当の狩猟民族みたいな漁業そのものはすごく廃れている。諫早湾、橘湾、八代海には2年ぐらいの間に立派な港が出来ているが、3−5年もロープで港に繋がれている漁船がどれだけ増えたかを知っていただきたい。
 本明川の流れなくして有明なしということを、多くの川をつぶした大堰であることを。有明漁民は絶滅危惧種と認識してほしい。

 北村 確かに漁民の方々の苦渋は大変だと私も見聞している。森元組合長は若いときから漁協を経営、組合員と共に行動され、大変ご苦労があったと思い、心からねぎらいたい。

 次に、干拓事業は効果がないとの意見を述べる者もいるが、吉次市長には住民を代表して干拓事業をどのように評価し、どのような効果があったかを答えていただきたい。

 吉次邦夫・諫早市長 平成11年7月の大雨、9月の台風では一時的に河川の水位が高くなるので樋門を締めて内水を湛水。調整池の中はマイナス1メータを保っているので流下がずっと早く、直ちに1日ぐらいで湛水はなくなった。これが従来だと1日2回満潮が参るので、どうしても湛水の流下が出来ず、5日も1週間もかかった。そういうことで、潮受け堤防により背後地の水処理が非常にスムーズになった。本当に地域住民は助かっている。

 北村 農業者が減少し、高齢化が進む中で、場所によっては耕作放棄地が増えるなどで、これ以上農地あるいは干拓などをやる必要があるかという意見がある。諫早地域は長崎県でも農業が盛んで、島原半島を含めて長崎県下でも極めて有数の農業地帯。干拓地に対する農業の入植者、あるいは増反のために干拓地を役立てたいとか、そういう傾向を市長はどのように把握しているか。

 吉次市長 長崎県は急峻な段々畑が多く、平坦な農地は諫早平野のみといっても過言ではない。諫早、島原半島は大変農業意欲が高いわけで、この干拓地が出来上がると、意欲ある人、あるいは農業法人、企業の方からもある程度問い合わせがあると聞いており、おそらく入植、増反ということで、十分地域の農業のために役立つであろうと考えている。

 北村 宮入参考人のご発言は、有明海全体を再生していくために、基本的に非常に大切なことであると私は思う。私どもは参考人がおっしゃる方向に着実に一歩進めることで、この法案を提案したが、参考人はこの法案を見て、そのように見受けられないのだろうか。

 宮入興一・愛知大経済学部教授 有明海を、八代海を再生するということなら、やはり根本から直すことが重要。有明海はちょっと風邪を引いた程度ではなく、相当重篤な患者だといってよい。重篤である以上、有明海再生法の形であるなら、基本的に一番重要なところだから、肝心かなめのところが実はないのではないか。局所的、部分的な対症療法であるわけで、私とすれば、その点が法案から到底読み取れなかった。