北村の政治活動

 第43回(平成14年11月1日) 日朝正常化交渉再開 守備範囲広い安保委

 日本と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の国交正常化交渉が10月29,30の両日、マレーシアの首都クアラルンプールで開かれた。9月17日の「日朝平壌宣言」を受けて2年ぶりの交渉再開だ。日本側の最優先課題は

@ 拉致被害者の早期永住帰国と真相究明

A 核・ミサイル開発など安全保障――だが、世界的規模でテロ行為が多発しているなかで、工作船・麻薬密輸の再発防止、よど号容疑者の引き渡しなど、日本の安全を巡る懸案は多い。これらを片付けたうえで、植民地支配に絡む「過去の清算」、「補償」に代わる経済協力の実施、過去の日朝貿易での北朝鮮側の債務返済、在日朝鮮人の法的地位向上――などの課題と政府は取り組むが、早くも北朝鮮は初日の交渉で「拉致問題は解決済み。核開発は米国との協議事項」と主張するなど交渉は前途遼遠だ。衆院安全保障委に復帰した私は、日朝交渉を北東アジアの安全保障の観点から見守ると同時に、米国がイラク攻撃に踏み切った場合の「テロ対策特別措置法」の扱いをどうするか。守備範囲は広いと考えている。

 支援で世論沸騰

 「私は夢を見ているようです。人々の心、山、川、谷、みな温かく美しく見えます。空も、土地も、木も私にささやく。『お帰りなさい!』」――。故郷・佐渡へ向かう新幹線のなかで綴ったという曽我ひとみさんの帰郷挨拶だ。何と感動的な言葉か。帰国時の羽田では、硬い表情の「とっても会いたかったです」の1言が第1声だった。それが盛大な歓迎を受け、懐かしい景色に触れるうちに24年の心の澱は消え、故郷を思う心情がほとばしり出たのだろう。早速、メロディを付けた神奈川の作曲家が現れた。日本の世論も被害者支援で沸騰した。日朝両外務省は当初、生存者5人とその家族が往来を重ねるなかで、永住帰国の環境を整えていくことで合意していたが、世論に押された日本政府は5人の滞在期間を延長して正常化交渉に入った。これに対し、北朝鮮側は29日の交渉で「日本は5人をいったん北朝鮮に戻すという約束を破った。金正日総書記が拉致を認めて謝罪した以上、大筋で解決した問題だ」と述べ、最大の狙いである経済協力問題に焦点を移そうとしている。

 原状回復が筋

 北朝鮮は、拉致事件があたかも両国関係の全てであるかのように取り上げられていることに強い不満を示してきた。「植民地時代を通じて、日本が行った残虐行為、従軍慰安婦、労働者の強制連行などは我々の拉致問題とは比較にならない」というのが北朝鮮側の言い分だ。にもかかわらず、拉致問題で日本側の要求を受け入れてきた背景には、この問題を早急に片付け、経済協力を柱とする日本の「過去の清算」を解決したいとの願望がある。といっても、国家テロの犯罪が明らかになった以上、即刻、原状回復し賠償するのが筋というもの。営利誘拐犯でも犯行が知れた場合は人質を一刻も早く解放し、裁判での情状酌量を求めるのが犯罪者心理だ。5人の家族そろっての日本永住問題は何よりも優先する。国会では、拉致事件をかつて“捏造”と主張し、朝鮮労働党と友党関係にあった社民(旧社会)党や「北朝鮮は地上の楽園」と昔、赤旗に取り上げた共産党に批判が集まった。

 核装備ノドンの脅威

 拉致問題にもまして重要なのは核開発問題だ。小泉首相は10月26,27の両日、メキシコのロスカボスで開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で北朝鮮の非核化を強く訴え、「北朝鮮に核開発計画の放棄を求める首脳声明」を採択することに成功した。同地で開いた日米韓首脳会議では、「核開発計画を迅速かつ検討可能な方法で撤廃し、全ての国際合意を完全に順守する」ことを北朝鮮に求める共同宣言を発表。江沢民国家主席との日中首脳会談でも北朝鮮の核開発放棄で一致している。日本は北朝鮮が核開発を中止する姿勢を明確にしない場合は、日朝正常化交渉を中断する方針。日朝交渉再開で新設する日朝安全保障会議は11月中にも初会合を開く。北朝鮮の核兵器やミサイル開発は、日本にとって米国以上に身近な脅威だ。仮定の話だが、日本を射程距離に置いたノドンを100基配備したという北朝鮮が、核装備したノドンを国会・霞が関や軍事基地に1発でも撃ち込んだらどうなるか。平和ボケの日本はパニック状態に陥るだろう。鹿児島沖から引き揚げた工作船には対戦車ロケット砲も積んであったという。これは日本海岸部の原発施設を破壊する目的があったと推察される。工作船による麻薬運搬も頻繁に行われていた。

 見返り求め瀬戸際外交

 北朝鮮はクリントン政権当時の「米朝枠組み合意」に沿って、核開発を凍結する見返りに朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)の事業を継続してきた。同機構は、米朝合意に基づき日米韓や欧州連合(EU)が出資し、北朝鮮での軽水炉建設や、完成までの間、年間50万トンの重油を供給している。日本の出資は約380億円にも達している。それが、パキスタンから輸入したとされる製造施設で、核弾頭に使える濃縮ウランの開発計画を進めていることが判明した。核開発だけでなく、プルトニウムや高濃縮ウランなど核分裂物資を第3国に売却する計画もあるようだ。北朝鮮は、自ら緊張状態を作り出しては、一部譲歩する姿勢を見せ、見返りを引き出す“瀬戸際外交”を繰り返してきた。背信行為は常套手段で、枠組み合意の維持には「米国の敵視政策撤回と不可信条約の締結が条件だ」と言い出している。29日の日朝交渉でも核開発計画の即時撤廃には応じなかった。結局、拉致・核開発問題ともに、11月末に開く次回の安全保障協議で交渉を継続することになった。

 イラク攻撃とテロ特措法

 まさにブッシュ米大統領が言う“ならず者国家”、“悪の枢軸”であり、“死の商人”である。北朝鮮に核開発を断念させるには、日米韓3国だけでなく、国境を隣接する中国、ロシアの協力が不可欠だ。外交当事者は「拉致問題解決と核開発の阻止なくして、経済協力はありえない」ことを肝に銘じて交渉に当たってほしい。また、米国がイラクに先制攻撃をかけた場合、日本がどう対応するかも大きな問題だ。昨年の同時多発テロの際は、テロ対策特別措置法をスピード成立させ、米軍の後方支援のため、戦時では初めて自衛隊の海外派遣に踏み切った。しかし、同法は同時多発テロ対応に限った特措法であり、イラク攻撃支援に適用するのは困難だ。まして米軍への直接的な支援は憲法が禁ずる集団的自衛権の行使にあたり、アフガンのテロ掃討作戦時のように佐世保基地から給油艦を派遣することは難しい。特措法は時限立法でもあり、一時はイラク対応の新たな特措法を作る動きもあったが、未だ党内意見はまとまっていない。私は衆院安保委に復帰した機会に日朝正常化交渉、イラク対応、有事関連3法案審議に重大な関心を払い、建設的な意見を述べたいと思っている。