北村の政治活動

 (平成14年10月16日) 構造改革特区 規制緩和に官僚反発

 規制緩和で構造改革特区を推進――。政府は6月の閣議で「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」を決定、民間活力を最大限に引き出すため、「構造改革特区」を導入し、地域経済を活性化させる方針を打ち出した。特区を経済活性化策の柱と位置づける小泉首相は、自ら「構造改革特区推進本部」の本部長に就任、特区開設の申請受理・認可を内閣官房で一元的に実施する熱の入れ方だ。特区担当には鴻池祥肇防災相が任命された。これまで地方自治体や民間事業者から426件の具体的提案が出されている。長崎県も対馬の「しま交流人口拡大特区」「教育特区」など数件の構想を提出した。特区は特定地域で規制を集中的に撤廃・緩和し、効果を検証しながら全国に広げていくもの。地域の「自発性」「自助と自立の精神」に基づき、地方自治体が主体的に取り組むことが原則で、補助金や税制優遇など従来型の税・財政措置はなく、規制緩和が中心的施策。複数省庁の様々な規制に特例措置を設け、地域特性に応じた新規産業の創出などを目指している。

 1割強が教育特区

 8月末までに推進本部に寄せられた特区構想は、教育、医療、農業、IT(情報技術)新エネルギーなど10分野に及び、「ワインメーカーによるブドウ生産の直営」、「カジノによる町おこし」などユニークなものもある。この中では教育特区が圧倒的に多く、19都道府県の35自治体と民間団体が提案し、全体(426件)の1割強に相当する44件もあった。その内容は、幼稚園と小学校低学年の一貫教育や、地域特性を活かした「もの作り教育」、「林業学習」などさまざま。長崎県対馬の美津島町は、韓国と交流するため、小学校から韓国語の授業を行うことを提案している。これに対し文部科学省は、構想そのものには賛成するが、教育の機会均等の立場から全国一律の規制が崩れることに難色を示している。自治体から特に希望が多いのは、病院や学校経営への株式会社参入だが、文科省が「教育を営利の対象にすべきではない」と反発しているほか、厚生労働省もまた、医療水準の維持、施設基準などの点から反対している。

 規制緩和は1045件

 各種提案を実現するには、法律、政省令、通達など1045件の規制緩和・撤廃が必要。だが、関係省庁が9月下旬までに推進本部に「対応可能」と回答したのは1割弱にとどまった。中央官庁が既得権限にこだわり、一部業界団体が利権にしがみつこうと抵抗する旧態依然の体質は今も変わっていない。しかし、これが実現しないようでは地方分権も絵に描いた餅だ。どの地域を構造改革特区に指定するかは近く開催する第3回の推進本部会議で決まるが、「推進プログラム」の策定が難航している。しからば、構造改革特区とはいかなるものか。わが長崎県の「しま交流人口拡大特区」構想を例に挙げて紹介したい。

 韓国など国際交流

 対馬は、下県郡の厳原、美津島、豊玉の3町と上県郡の峰、上県、上対馬の3町が04年3月に合併して「対馬市」となる予定で、韓国などの国際交流と本土都市部との交流を拡大、一大観光基地に生まれ変わろうとしている。対馬の地域特性は、九州まで150キロ、韓国・釜山までわずか50キロにある国境の島だが、少子高齢化などで年々人口が減少するうえ、島の89%は山林に覆われ、壱岐対馬国定公園の面積は16%も占め、地域振興の有効な土地利用に支障を来している。半面、歴史的に関係が深い韓国とは、対馬アリラン祭、日韓フォーラムなど多彩なイベントで交流を深め、00年4月に韓国ー対馬間の定期国際航路を開設、昨年には約9千人の観光客が訪れるなど、韓国の海外リゾート地として脚光を浴びてきた。

 観光客のビザ免除

 そこで、国際・国内の「交流」を地域活性化のキーワードとして、交流人口の拡大と観光産業の振興を図ろうとするもので、来年度は全国で初めて高校生の離島留学制度をスタートさせる。ほかにも、都市部住民のUターン(故郷回帰)、Jターン(故郷以外へ)、Iターン(都会から地方へ)の受け入れ、ブルー(海・湖沼)ツーリズム、グリーン(山・農村)ツーリズムなどで都市との交流を促進しようとしている。それには各種の規制緩和が必要だ。まず、国際交流の拡大では

@ 韓国の観光客へのビザ(査証)免除と、外国人医師の就労ビザ認定の緩和(出入国管理・難民認定法)
A タックスフリーゾーン(無税地区)の設定(関税法)
B 国定公園内に設置するホテル、リゾート建設、道路拡幅など観光基盤施設整備に許可要件の緩和と土地利用の弾力化(自然公園法、都市計画法)――などがある。

 都市部と交流も拡大

 次に都市部との交流拡大では、
@ 都市住民のU・J・Iターンによる定住促進の環境を整備するため、就農、農業体験に必要な農地の権利移動に際しての面積要件の撤廃(農地法)
A 都市住民交流のブルー・グリーンツーリズム推進に必要な民宿など整備のための土地利用規制、施設要件の緩和(自然公園法、旅館業法施行令、建築基準法)
B 新アグリビジネスの展開で、酒類の製造免許取得に必要な1年間の製造見込み数量の緩和(酒税法)
C 離島ならではの教育推進のため、対馬の特色を活かしたカリキュラムの編成が出来る教育課程基準の緩和と廃校・余裕教室の転用(学校教育法施行規則、補助金適正化施行令)――など、ざっと取り上げただけでも関連法律、政省令は多岐にわたっている。

 自立の知恵と工夫

このように特区は、自立した地方が知恵と工夫を出し合い、互いに競争して地域経済の活力を引き出すもの。その評価を通じ、全国的な構造改革へ波及させる構想である。推進本部は、全構想のうち2百件程度の規制は現行法でも法解釈によって対応できると判断、来年度中に実現を目指す。その他の規制についても、調整がついたものは臨時国会に改正すべき関連法、政省令の緩和・撤廃のための関連法案を提出する方針だ。