北村の政治活動

 (平成14年8月1日) 予算と人事の季節  首相に新しい改革の旗

 通常国会が終了し、政界の関心は03年度の予算編成と内閣改造などの人事に移った。小泉首相が構造改革の“一里塚”とした郵政関連法案は、首相と自民党総務部会の双方がメンツの立つ形で成立、攻防は痛み分けに終わった。首相は同法成立で内閣支持率がやや回復したことを喜び、次の“本丸”である郵貯、簡保の民営化へ向け、意欲を燃やしている。首相直属の私的懇談会「郵政三事業の在り方を考える懇談会」(田中直毅座長)の中間報告と、第三者機関の「道路関係四公団民営化推進委員会」(委員長、今井敬・前経団連会長)の中間整理案がいずれも8月中にもまとまる段取り。だが、その過程では党の郵政、道路関係議員と再度激突する様相を深めており、首相と族議員のバトルは第2ラウンドに入る。

 “外堀”の次は“出城・砦”

 首相は郵便事業への全面民間参入を果たし、“外堀“を埋めた心境だろうが、財投資金を得て肥大化した特殊法人は、まさに“出城・砦”に見えよう。首相にとって郵政と道路公団の民営化は、構造改革の両翼だ。なぜなら、郵貯、簡保などを原資とした財政投融資計画は、02年度で26兆7千億円にも達している。首相は郵貯240兆円、簡保120兆円という巨大資金が、日本道路公団や住宅金融公庫などの特殊法人に流れ、採算性の悪い高速道路や本四架橋などの建設に使われていることを問題視し、改革しようとしている。

 人事で求心力回復

 一方、首相は来年度予算編成と並行して、9月末に任期が切れる自民党役員人事と併せ内閣改造を断行、予算と人事で一挙に求心力を回復したいと考えているようだ。さらに首相は、郵政公社の初代総裁人事を自ら選ぼうと、特殊法人の総裁、理事長人事を、正副官房長官による人事検討会議のチェック対象とすることも、7月9日に明らかにした。野党第一党の民主党も9月23日に党代表選を予定している。9月は人事の季節到来である。

 副大臣の部会長兼任

 「役員改選期になり、改造する場合は『この方針で行く』という旗を掲げて、役員はそれに協力する。反対してきた人も(入閣では)協力する形にする方がすっきりする」――。小泉首相は「中央公論」8月号のインタビューでこう述べ、改造人事では改革の新方針に賛同する議員だけを閣僚、党役員に起用する意向を明らかにした。また、各省庁の副大臣が党の部会長を兼任する制度の導入についても、「それはいい。具体的に検討する価値がある」と答えている。これは、党の政治制度改革本部が6月に、「副大臣は部会長と兼任、政調会長は『政策調整大臣』として入閣を認める」と、提言したのを受け入れた発言だ。

 政策決定一元化の主導権

 首相が賛同したのは、郵政関連法案を党の総務部会、総務会などの事前承認なしに国会提出した結果、最終的に郵政族議員らの意向を受けて政府案の一部修正を余儀なくされたことから、人事面で政策決定一元化の主導権を確保しようとするもの。しかし、副大臣と部会長の兼任は、中堅・若手議員にとってポストの減少を意味するし、政調会長や部会長が政府内に入っても法案作成に党の意向を反映できる保証はなく、党側は反発している。                           首相が掲げた新たな改革の旗は、6月下旬に閣議決定した「経済財政運営の基本方針2002」(骨太の方針―第2弾)の具体化だ。首相は「03年度中に実施する制度・政策改革の在り方」と「中期的な方向性」の2本柱で構成するよう求めた。

 7閣僚に政策の宿題

 7月19日の閣僚懇談会では、片山虎之助総務相ら7閣僚に「制度・政策改革案」の取りまとめを指示した。それには公共事業長期計画の抜本的見直しや総人件費の抑制、減反政策の見直しなど29件の検討項目を列挙している。首相は小泉内閣のシンボルである郵政民営化の突破口を開いた自信からか、指示の中では @ 官から民への観点に立った規制改革や民営化 A 国の関与を縮小し、地方の自立を促す B 成果主義に立った最適な政策手段の選択――を強調した。

 片山総務相への宿題は @ 地方歳出の見直し・地方財政計画の規模抑制 A 地方交付税の算定方式見直し B 総人件費の抑制――などだ。補助金削減と地方への税源移譲が持論である片山総務相は「国と地方の事務分担見直し」の指示を歓迎している。

 9長期計画は期限切れ

 しかし、15ある現行の長期計画のうち、道路、港湾、空港、海岸、下水道、廃棄物施設、都市公園等、急傾斜地、交通安全の9整備計画は02年度末に期限切れを迎える。それを縮小・廃止すれば、公共事業の族議員が反乱を起こしかねない。首相は今年度予算で「国債発行額は30兆円の枠内に止める」ことに固執したが、税収不足から来年度は公約に掲げるのが困難であると認識、公共事業など歳出削減を中心に財政改革案をまとめる腹だ。そこで、現閣僚に改革への「踏み絵」を迫って、省益を死守しがちな官僚をいかに統御出来るか閣僚の能力を測ろうとしている。同時に、各省官僚の応援部隊である党部会族がどれだけ小泉改革に協力するかを見定め、改革勢力結集の人事を断行する決意である。

 トタン屋根の熱い猫

既得権益構造にメスを入れようとする「新たな改革の旗」。これは、八月末に締め切る〇三年度の予算概算要求に盛り込まれるが、前号で触れた「骨太の方針―第二弾」が党側の反発にあって骨抜きにされたことを思えば、党側の要望は景気浮揚のデフレ対策であり、道路特定財源の一般財源化が絡む道路整備計画の見直しなど公共投資の削減は、党側の激しい抵抗を受けよう。歳出削減の対象は公共事業ばかりでなく、硬直的経費の福祉予算や教育、農業の補助金カットなどにも向けられている。衆院社会労働、農水委員会に所属し、党の地方自治関係団体副委員長を務める私にとってはいずれも重大な政策課題。じっくり取り組んでいきたい。首相は新たな改革で主導権の回復を図ろうとするが、役所と党内の抵抗勢力を敵に回しての第2ラウンドは厳しいだろう。下手をすれば首相は、“トタン屋根の熱い猫”を踊る羽目にもなりかねない。