北村の政治活動

 (平成14年7月16日) 住基ネットに延期論 人事向け揺さぶりか

 延長国会は残り2週間足らずの終盤ながら、厄介な問題が浮上している。政府が8月5日に予定している住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)の稼働を3年間凍結する議員立法の動きが出てきたからだ。「国民共通番号制に反対する会」(桜井よし子代表)が呼びかけ人で、7月4日の会合には自民党の亀井静香・前政調会長や中川昭一・元農相ら江藤・亀井派の6人と無派閥の塩崎恭久衆院議員が民主党議員らとともに出席、超党派で議員立法の提案者になる文書に署名した。さらに同11日、衆院第2議員会館で開かれた集会には、自民党の16人を含む超党派の議員40人(代理出席も含む)が出席、賛同の輪を広げた。これには政争がらみの側面もあり、党の地方自治関係団体の副委員長を務める私としては無関心ではいられないところ。真剣に対応を考えたいと思っている。

 個人情報保護が前提

 凍結の理由は、個人情報保護法案が有事3法制案とともに今国会で流産する気配にあることに起因する。公明党は99年に住基ネット導入を定めた住民基本台帳改正法を審議した際、賛成する条件として、3年以内に個人のプライバシー保護に必要な個人情報保護法の制定を要求。これを受けて、小渕恵三首相(当時)は同年6月、「個人情報の保護措置を含めたシステムを速やかに整備することが(住基ネット稼働の)前提だ」と表明、個人情報保護とセットで運用することを公約した。このため、民主党など野党は「個人情報保護法制が整備されない限り、住基ネットは凍結すべきだ」と主張、警察官僚OBの亀井氏も「国民の情報が無防備な形でさらされる」と個人情報の流失に懸念を深めている。約60の地方議会も同様の趣旨で、稼働の延期を求める意見書を採択している。

 11桁番号で一元管理

 住基ネットは、市区町村が独自に管理している住民基本台帳を全国共通のコンピューター上のネットワークで結ぶ一元管理システム。全ての住民票に11桁のコード番号を付け、氏名、生年月日、性別、住所に限って国や自治体がアクセスできるようにする。電子政府・電子自治体の基盤となるシステムだ。これで年金、児童扶養手当の申請など93件の事務で順次、住民票を添付する必要がなくなる。本格稼動となる来年8月以降は、住民票の写しの交付が全国のどの市町村でも受けられる。引越しの際の転出手続きも簡素化される。また、政府が今国会に提案した電子政府・自治体関連3法案は、住基ネットを基盤に行政事務のオンライン処理を大幅に拡大するもの。住基ネット利用事務に171件が追加され、不動産登記、自動車登録などの際の住民票添付を省略し、パスポートの発給申請、確定申告などが自宅や会社のパソコンで可能になる。システムが稼動すれば、自治体の人件費などは500〜600億円のコスト削減になるとの試算もある。

 首相は予定通り実施

 このように住基ネットは行政事務の簡素・効率化を目指し、ますます拡大する傾向にあるが、防衛庁の情報公開請求者リスト問題などでプライバシー保護に国民の関心が集まり、住基ネットへの反対行動が急速に高まってきた。特に評論家の桜井女史は以前から“国民総背番号制”に強く反対しており、4日の会合当日も議員会館の各議員に自ら電話をかけ、「代理出席でもよいから議員立法の提案者になってほしい」と熱心に要請したほどだ。これに対し、小泉首相は「党内には色々な意見があるが、協力してもらえる」と住基ネットの8月稼働に自信を示し、8日の参院予算委員会でも予定通り稼動させる方針を改めて強調した。福田康夫官房長官も「個人情報(保護)も万全な対応措置を既に備えており、予定通り実施する」と強気な構えだ。自公保の与党3党も同日の国対委員長会談で、「この段階の延期は各自治体が混乱し、マイナス面が大きい」として8月5日稼動で一致した。

 個人情報流出防止を

 マスコミは、亀井氏らの動きを9月人事に向けた揺さぶりと報じているが、多くの自治体はシステム機器のリース契約をしており、延期すれば違約金を払わされるという。こうした点から、野中広務・元幹事長は11日、橋本派の会合後に「国民レベルの本格的な稼動は1年後の来年8月だから、それまでにメディア規制などで問題がある個人情報保護法案を手直しして通せばよい」と述べ、住基ネットは予定通り8月実施を容認している。党の大勢から見れば仮に3年間凍結法案が提出されても成立は難しいようだ。総務省は「行政をネットワークで結ぶのは時代の要請」とし、不正アクセスなどは最新の技術を駆使して防止する構えだが、自治体には力量の差があり、個人情報流出の不安を取り除くには全自治体のセキュリティー水準を高めることが肝要だろう。