第368回(8月16日)ウナギの話(2) マグロ、秋刀魚、鮭も資源保護
 天然ウナギは水中の大きな石やコンクリートブロック、葦の隙間に潜んで生長するため、かつては河川の上流や水田、ため池にも広く分布していた。それが、水門や護岸工事などで通り道を塞がれ、棲家がなくなった。水産研究教育機構は水産総合研究センター当時の2010年、天然資源に頼らない世界で始めての完全養殖に成功した。これは人工孵化して育てた親ウナギから孫世代を誕生させたもの。現在は1000リットルの特殊な大型水槽で飼育し、量産化に向けて試行錯誤を続けている。今年の土用の丑の日には、絶滅が心配されるウナギの代替品として、近畿大学が昨年、開発に成功した鯰(なまず)の半身蒲焼が、コンビニ・イオンの全国系列121店で飛ぶように売れたそうだ。独自に配合した餌を使い、脂が乗り、地下水で育てて鯰の臭みを抑え、ウナギの風味に近づけた鯰をウナギ同様に香ばしく焼き上げ、価格も1パック約2,000円のウナギより500円程度も安く売って注目された。近畿大学はマグロの養殖も軌道に乗せているが、鹿児島県内の養鰻業者が同大の協力を得て、鯰蒲焼の商品化を進めている。今回はマグロ、秋刀魚の資源保護についても検討してみよう。

クロマグロ漁低水準なら規制発動
 政府は8月29日から9月2日まで福岡市で開く中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の小委員会に、北太平洋海域のクロマグロの資源保護に向けて、漁獲できる生後1年未満のクロマグロの量が3年続けて低水準の場合、「緊急の漁獲規制を発動する条件」とすることを提案する方針だ。高級寿司のネタとして人気がある太平洋クロマグロは大半が日本で消費されているため、政府は資源管理を徹底する姿勢を強調する。水産庁の調べだと、1992年と93年の漁獲量は、2年連続450万匹程度と歴史的平均値の約1千300万匹と比べ非常に低い水準。2016年の最新の資源評価では、14年の親魚の資源量は約1万7千トンで、歴史的最低値の84年の約1万1千トン付近に留まっている。政府はこうした水準が3年続くような事態になれば、資源回復に悪影響をもたらすと見て、92、93両年の450万匹程度を規制発動の目安にしたい考えだ。WCPFCは昨年、資源枯渇の恐れがあるという緊急事態に迅速に対応するため、緊急規制ルールを事前に作成することで合意。具体的な規制内容や発動条件は今年決めることになっている。小委員会には資源保護を強調する米国なども参加し、日本の提案よりも規制を発動しやすい条件を話し合う可能性もあり、一定期間の禁猟や漁獲量の大幅削減などが議論されると見られる。WCPFCは15年から30キロ未満の小型魚の漁獲量を02~04年平均の半分に減らす規制を始めている。

中・韓は冷凍設備漁船で秋刀魚乱獲
 一方、秋の味覚、秋刀魚も中国や台湾による北太平洋の公海での漁獲量が急増するばかりで、日本漁船の漁獲量が減少、秋刀魚も小振りになって価格が高騰した。秋刀魚の漁獲量も昨年は過去40年で最低だった。水揚げ量は12万トン前後で、10万トンを下回った1976年以降で最低。5年連続1位の北海道根室市の花咲港は前年同期比26%減の約4万5千㌧で、北海道全体では40%減の約6万2千トン。岩手県の大船渡港は約1万4千トン、宮城県の気仙沼港は約1万2千トンでいずれも半分ほど、千葉県銚子港は約6千トンで68%減。東京新聞によると、国立研究開発法人水産総合研究センターの東北区水産研究所が調べた不漁の背景は ①北太平洋の資源量が少なかった ②魚の南下の遅れ ③日本近海に群れが集まらなかった ④公海で操業する大型船が港との往復に時間を割かれ操業日数が減った ―― などが考えられるという。そればかりではない。沿岸部を除いて鯉や川マスなど川魚を主に食べてきた中国の国民が、高度成長で富裕層が増えたのに伴い、陸地部でも海産物を好んで食べるようになったからだ。中国や韓国の漁船は冷凍施設を完備した大型船で北太平洋の公海に出没して、乱獲した秋刀魚を冷凍処理までして持ち帰っているという。

農水6次産業化目指す流通経路改善
 日本は品薄のため10キロ当たりの平均単価は前年比で約1.5~3倍に高騰。水揚げ金額は北海道で8%増の約148億円、全国は3%減の約248億円でほぼ横ばいだったという。七輪を持ち出し、「男一人ありて寂しく秋刀魚を焼く」という秋の風情もなくなり、さびしい限り。水産業には色々の問題が露呈している。1つは東北大震災による海洋汚染を警戒し、韓国、台湾など近隣国が東北産海産物の輸入禁止を続けていることだ。このため、震災前の漁獲量が復活した宮城産のホヤは最大のお得意先だった韓国には売れず、何十万トンも冷凍庫に保存されたままで価格は低下し、いずれは廃棄処分される運命にある。もう1つは輸入鮭の価格が高騰していること。日本で市販される鮭は南米チリからの輸入が大半だが、現地での鮭の養殖が不調で輸入量が減ったのが原因という。実は、恩師の白濱仁吉先生が郵政大臣当時の昭和54年(1979年)、先生の友人がチリで鮭養殖を指導、南米で養殖が盛んになった経緯がある。政府が農水産業の6次産業化を目指すなら、流通経路改善やウナギや秋刀魚、マグロ、ホヤなど海産物の価格を維持する方策を真剣に考察しなければならないだろう。(完)