第365回(7月1日) 鯨フォーラムの話題(上) 長崎に根付く鯨食文化
 「全国鯨フォーラム2016東京」が5月31日、国会横の憲政記念館で開かれた。日本捕鯨協会と捕鯨を守る全国自治体連絡協議会の主催、日本鯨類研究所と共同船舶の共済だが、私は自民党の捕鯨議連 (会長 ・ 鈴木俊一元環境相) の事務局長として、調査捕鯨の継続、水産資源の維持 ・ 管理などの政策推進を支援しており、同会合にも出席した。第1回フォーラムは2002年3月に山口県長門市で開催されて以来今年で15回を数えた。長崎県は第2回の03年5月に生月町、第7回の08年5月に新上五島町、第13回の14年11月に長崎市で計3回開かれてきた。今回は森下丈二 IWC (国際捕鯨委) 政府代表の基調講演の後、関係自治体首長ら7人によるパネルディスカッションが行われ、 ①捕鯨の伝統と鯨食文化を次世代に継承するのは我々の使命 ②学校給食への鯨肉供給をさらに拡充 ―― など6項目の東京宣言を採択した。長崎県のパネリストは坪井泰助 ・ 新上五島町議が務め、「わが町の有川湾を見下ろす鯨見山の山頂には鯨の供養塔が建っている。先人達が築き上げたフロンティア精神と歴史や食文化を継承し商業捕鯨再開に向けて情報を発信し続けたい」 と講演した。長崎市も鯨料理のレシピ ・ 祭り ・ 工芸品など 「長崎に根付く鯨文化」 を特集し大いにPRしている。

ホエール (鯨) を三唱し気勢上げる
 南極海での日本の調査捕鯨はオランダ ・ ハーグの国際司法裁判所 (IWC) が14年3月末、中止の判決を下したため、日本か受け入れて同年の南極海調査は取りやめ、小型捕鯨船4隻によるミンク鯨の沿岸調査捕鯨を行った。日本は1987年、同海域で調査捕鯨を始めたが、捕鯨に反対する豪州が2010年に中止を求めて提訴した。判決に反対する衆参両院の農水委は調査捕鯨の継続を求めた決議を全会一致で可決。自民党捕鯨議連は北西大平洋での調査捕鯨を認めるよう政府に申し入れ、政府は北西太平洋海域での調査捕鯨を半減させて継続、南極海は15年度に再開することを決めた。また、超党派捕鯨議連も ICJ判決に抗議し、憲政記念館で抗議集会を開き、野党代表が 「国際捕鯨取締条約からの脱退」 を唱えるなど決起集会の様相を呈した。この集会で自民党捕鯨議連の鈴木会長は 「捕鯨は残酷だというが、近隣国 (中韓両国) には犬を食べる国がある。(ICJに提訴した) 豪州ではカンガルーを食べ、臓物をドッグフードにして売っている」 とぶちあげ、「 ホエール(鯨) !」 を三唱し気勢を上げた。

全て完食する鯨食は古来の食文化
 頭から尻尾まで全て頂く鯨食は日本古来の食文化だ。南極海での日本の調査捕鯨の合法性が争われた裁判は、反捕鯨団体 「シー ・ シェパード」 の妨害船が母港としている豪州が 「調査捕鯨の実態は鯨肉を売って利益を得る商業捕鯨だ」 と提訴したのに対し、日本は国際捕鯨取締条約が認める 「科学的研究であり鯨の分布や増減など実態を調査する必要がある」 と反論してきた。2年前のHPにも書いたが ICJ判決は、日本がクロミンク鯨の年間捕獲枠を第1期の最大440頭から第2期への移行期に850頭前後へと倍増しながら、100頭ぐらいしか捕っておらず研究目的は満たされていないし、鯨を殺さずに調査する方法も検討されていないと指摘。 ①科学的研究のための捕鯨を認める国際捕鯨取締条約8条1項に違反する ②南極海での日本の調査捕鯨は商業捕鯨の一時停止 (モラトリアム) に違反する ③日本政府は今後、現在の計画に基づく南極海での調査捕鯨の許可を出してはならない ―― が骨子。

鯨を殺さず行う目視調査を拡充
 敗訴した日本は反捕鯨国の再提訴を避けるため、ICJ判決の指摘を踏まえ、北西太平洋の調査捕鯨は ①沿岸調査でミンク鯨の捕獲頭数を120頭から100頭程度に減らす ②沖合い調査でミンク鯨とマッコウクジラの捕獲を中止する ③沖合い調査でニタリ鯨の捕獲を50頭から20頭程度に、イワシ鯨を100頭から90頭程度に減らす ―― 方針を決め、南極海は14年度を 「鯨を捕獲せず目視による調査」 とした。15年度以降は両海域の調査について新たな計画を策定し、15年5月の IWC科学委員会 (SC) に提出して実施に移すことを決めた。新計画によると、捕獲数は従来計画の年850頭前後(最大935頭)から、約6割減の年333頭に削減。このほか皮膚を採取してDNAを分析したり、鯨の餌であるオキアミの資源量を調べるという、鯨を殺さずに行う目視調査を拡充した。計画策定では海外の研究者にも意見を求め、国際世論に配慮した。しかし、IWC科学委は同年6月、「捕獲数の妥当性が立証されていない」 と指摘、反捕鯨団体も 「実質的な商業捕鯨だ」 と批判、環境NGO 「グリーンピース ・ ジャパン」 など16団体は調査捕鯨中止を求める共同声明を発表した。

追い込み漁のイルカは水族館禁止
 そればかりか、国際組織の世界動物園水族館協会 (WAZA) は、和歌山県太地町で行われているイルカの追い込み漁が残酷であるとし、捕獲されたイルカを水族館が入手するのを禁じた。日本動物園水族館協会 (JAZA) は、WAZAに留まって海外と鯨以外の希少動物を貸し借りするルートを温存するか。それとも縁を切って追い込み漁で捕らえたイルカの入手を続けるか ―― の岐路に立たされたが、「繁殖で今の頭数を維持するには10億円以上かかる」 などの理由で結局は残留を決めた。 だが、イルカショーが子供の人気を集める JAZA加盟34施設の合計頭数は約450頭だ。地元の太地町立くじらの博物館はJAZAに退会届を提出。一部の水族館も、太地町の追い込み漁に頼り、JAZAから脱退する騒動が持ち上がった。米国では1972年施行の海洋哺乳類保護法で、野生イルカの捕獲や輸入を規制。欧州連合 (EU) も94年から野生イルカの捕獲や商取引は原則禁止だ。芸を覚える頭の良いイルカも鯨類だが、反捕鯨国や環境NGO団体など動きは思わぬ方へ波紋を広げている。 (以下次号)