第364回(6月16日)漁船漁業、養殖共済などを質す 5月の衆院水産委
 先号までのGNC (グロス ・ ナショナル ・ クール = 格好いい文化) の7回特集では、「日本の伝統と文化」 の尊さを取り上げてきた。漁業も伝統文化だが、後継者不足で衰退期にあり、東北大震災、熊本地震で大打撃を受けた。私は5月11日の衆院水産委で質問に立ち、漁船損害等保障法及び漁業災害補償法改正案の目的を質した。改正法は会期末に成立した。長崎県は大変漁業が盛んで漁船漁業、養殖など多岐にわたっている。今般の改正で漁船保険及び漁業共済制度の見直しは大変関わり深い。漁業者、漁船員の減少や高齢化、漁業経営環境の悪化、加えて東日本大震災で甚大な被害を蒙り、わが国水産業を巡る情勢は一層厳しい。そこで、法改正で漁業者にどういうメリットがあるのか、使いやすい制度になるのかを質した。これに対し、佐藤一雄水産庁長官は 「両制度は先生のご案内どおり、漁業や漁船に生じた不慮の事故等による損害を填補する制度で、漁業再生産の確保及び漁業経営の安定の重要な役割を果たしてきた」 と前置きし、 ①大震災、大災害時の保険の充実 ・ 安定、意欲ある漁業者の経営安定を図るため、所要の法改正をした ②これにより漁業者のセーフティネットの充実が図られ、安心して漁業が出来るようになる ③未曾有の大災害が発生した場合でも保険金の支払いが可能となり、監査法人の報告書を踏まえつつ新組合の設立を設定し、全国組合の場合は約350億円になると試算している ―― などと答弁した。

5月11日に開かれた衆院農水委員会で私が質した質疑応答の要旨
北村誠吾 : 漁船損害等保障法及び漁業災害補償法改正案が4月6日の参院本会議で、全会一致で可決。平成29年4月から実施するとのことで関係団体でも組織統合が決議された。熊本、大分の震災に、九州は1つの気持ちで党派を超えて対策に取り組んでいるが、被災地の水産関係分野でも復興 ・ 復旧への勇気と意欲を掻き立てるためにも衆院での審議を促進し、成案を見ることを期待したい。私の地元長崎県も大変漁業が盛んで、漁船漁業、養殖など多岐に亙っており、今般の改正で漁船保険及び漁業共済制度の見直しは大変関わり深いものがある。法改正で漁業者にどういうメリットがあるのか、使いやすい制度になるのか。近年、漁業者、漁船員の減少や高齢化、漁業経営環境の悪化、加えて東日本大震災で甚大な被害を被っているし、わが国水産業を巡る情勢は一層厳しい。これまで漁船保険及び漁業共済制度は極めて重要な役割を果たしてきたが、法改正の意義、効果を伺いたい。 

佐藤一雄水産庁長官 : 両制度は先生のご案内どおり、漁業や漁船に生じた不慮の事故等による損害を填補する制度で、漁業再生産の確保及び漁業経営の安定の重要な役割を果たしてきた。他方、漁船損害等補償制度は東日本大災害の際、一部組合では準備金だけでは保険金全額の支払いが出来なかった教訓を活かし、南海トラフ地帯等に備える必要がある事情。また、漁業災害補償制度はタイ、ハマチといった養殖共済で地域漁業内の全員が加入しないと共済に加入出来ないという課題がある。こうしたことから、大震災、大災害時の保険の充実 ・ 安定、そして意欲ある漁業者の経営安定を図るため、所要の法改正をした。これにより漁業者のセーフティネットの充実が図られ、安心して漁業が出来るようになる。

北村 : 保険金の支払いに支障が出ないよう財政基盤を強化する目的で、現在、各地域ごとに漁船保険組合が設立されており、それぞれの地域で密着した形で漁船保険業務を行ってきた。これが全国に1つの規模の大きな組合になるということだが、統合一元化によって地域それぞれの実績に応じたきめ細かいサービスが行われなくなり、行き届かないことにならないかとの虞を持つが、どういった体制でその業務をきめ細かく行っていくつもりか。

佐藤長官 : 組織統合一元化においても、現在の各都道府県にある漁船保険組合については、統合された組合の支所として地域の漁業者の保険の引き受けを行うことを予定している。このため、例えば同一組織のもとで支所間の連携による自己査定の迅速化が図られるなど、これまで以上に地域の実情に応じたサービスを実施することが可能と考えている。

北村 : この改正案については、十分な保険金の支払い能力があることが設立認可の要件と聞いているが、いつ発生するか分からない南海トラフ地震等にも備えるということであれば、どのような考え方で設立認可の要件を定めようとしているのか。

佐藤長官 : 今回の改正は、組合の事業基盤を強化するもので、新組合の設立認可要件としては、東日本大震災級の大規模な事故が発生しても組合が確実に保険金の支払いが出来る資産の額を保有していることを基準にしている。この具体的な試算の額は、未曾有の大災害が発生した場合でも保険金の支払いが可能となるよう、監査法人の報告書を踏まえつつ設定することにし、具体的には、全国組合の場合は約350億円となるものと試算している。

北村 : 統合によってサービスが低下しないことは分かるが、自然災害はいつ発生するかわからない。災害に備えることは大変重要なことと再認識して事業を具体化して頂きたい。次に漁業共済制度について尋ねる。今回の改正で特定養殖共済の見直しを行うというが、漁業者はどういうことで困っているのか、特定養殖共済の見直しのメリットは何か。

佐藤長官 : ノリ、ホタテといった特定養殖共済では、地域漁協内で同じ特定養殖業を営むものの3分の2以上から共済の加入申し込みがあり、その後、地域漁港内の全員が加入した場合に、2分の1の特定補助の国庫補助を受けられることになっている。他方、近年では年金受給者等の漁業依存度の低い方がこの共済に加入しないといったことにより、加入を特に促進すべき漁業依存度の高い方が2分の1の国庫補助を得られないケースが増えてきている。このため、今般の改正で漁業依存度の低い方を除く地域漁協内の全員が共済に加入すれば2分の1の補助が受けられることとし、これにより漁業を主たる生活基盤とする漁業者が高率補助のメリットを享受できるようにした。

北村 : 今回の改正では、養殖共済の対称でなかった内水面養殖業を新たに対象とすると聞いている。先ずウナギ養殖業を対象にするようだが、ウナギ以外にもアユ、ニジマス、コイ、チョウザメ、などが陸上で、内水面の養殖に類するものとして今後盛んになると予想される。内水面養殖業の中には、海面でなく陸上の人工池でヒラメやトラフグあるいは磯のアワビやウニを陸上養殖するのではないかと思う。わが県でもトラフグやヒラメは陸上で養殖を行っている。ウナギ以外の内水面 ・ 陸上養殖の共済対象への追加はどうするのか。

佐藤長官 : 養殖共済への魚種の追加は、先ず、共済ニーズがあること、妥当な掛け金水準で保険設計が出来ること、損害の現地確認など漁協の協力体制が確保されており客観的な損害査定が出来ること、こういった要件を満たして保険設計が可能となったものから順次追加することにしている。今回追加予定のウナギは、まず近年、稚魚であるシラスウナギの高騰やその供給量の減少により、事故が起きた場合の経営への影響が非常に大きくなっており、共済創設の要望が特に強くなっている。ウナギの生産金額は約500億円と十分な保険母集団を確保できる水準で、妥当な掛金水準での保険設計が可能になっている。また、共済団体と養殖漁協との間で事務処理について協力体制が確保されることになったことから今回追加した。ウナギ以外の魚種についてはこれらの要件の、「いずれかを満たしていない」 ことからウナギのみの追加となったが、当然、今後これらの要件を満たした場合は順次、追加に向けた検討を行っていきたいと考えている。

北村 : 私は漁船保険及び共済がいかに漁業関係者にとって大事なものかを常に感じている立場から、質問よりも感謝の気持ちを述べてきた。今年、漁船員になる人が非常に少なくなって漁船漁業は大ピンチの状態だ。漁船漁業の海難事故の危険性等で老若問わず漁業従事者の確保に苦労している。漁船の不幸な事故が立て続けに起きた時期があった。遠洋まき網漁船が多数の乗組員を乗せたまま不幸にも高波で転覆、沈没。政府の真摯な取り組みで漁業保険の制度、仕組みを用いて捜索を行い、海底88㍍から台船を用いて引き上げ、行方不明者1人を除く全船員の捜索を完璧に行った。これまで漁船員が海難事故に遭遇した時は本人も家族も 「船を墓場として諦めざるを得ない」 伝統的な考え方があったが、それを保険の仕組みの有効活用、サルベージの技術進歩によって捜索が行われ、漁船乗組員も大事にされることが浜や遭難者家族でも分かった。漁師になろうという呼びかけに応じてくれる人たちも僅かながら増えてくると期待する。1日も早い法の成立をお願いしたい。 (了)