第363回(6月1日)GNPからGNC へ(7) 地元紙もマグロ養殖の観光特集
 先号では長崎市が竹本氏を観光大使に任命したことを取り上げたが、佐世保市もすかさず同市生まれの歌手 ・ 前川清さんを観光名誉大使に任命した。前川さんは 「佐世保の魅力を伝えるお手伝いができればよい」 と語っている。これらを報じたのは長崎新聞だが、同紙の4月13日11、12面はまさに観光特集の感。先号の 「魚肉練り製品支出額全国1位」 のほか ①五島 ・ 椛島でマグロ養殖 ②英 ・ 中 ・ 韓へ自動で翻訳 ③佐世保バーガーを気軽に ―― などの見出しで話題を取り上げていた。 ①は水産養殖などの金子産業 (長崎市 ・ 金田進社長) が五島市の二次離島、椛島沖に養殖クロマグロの新たな漁場を建設。他の県内5つの漁場で飼育する天然魚だけでなく、人工孵化させた養殖魚の育成を本格化させ、18年からの出荷を目指すという。東京 ・ 銀座のすし屋では近畿大が開発した養殖クロマグロが有名になっているが、一気に追い抜いて欲しいものだ。読売は12日夕刊で、三重県水産研究所が真珠養殖で有名な志摩半島南部で、伊勢海老の幼生を人工飼育して安定的な生産を試み、稚エビが岩礁で成長したことを確認したという。問題はプエルルスという幼生を稚エビに育てるにはムラサキガイ (2枚貝) や甲殻類など1匹当たり約1万円の餌代がかかるそうだ。

クール長崎を世界に売り込もう
 長崎県でもトラフグやヒラメは陸上で養殖が行われ、内水面養殖は海だけでなく陸上水槽で育てる時代に移りつつある。私は5月11日の衆院農水委で、養殖の重要性と養殖共済の対象拡大策や漁業災害補償法改正案などを質した。質疑応答の要旨は次回に掲載する。長崎新聞が報じた話題の ② は、長崎市のIT企業、ディーエスブランド (下山大祐社長) が、英、中、韓3ヶ国語で簡単にHP が作成できるシステムを開発。クルーズ船の相次ぐ寄港などで長崎でもインバウンド (訪日外国人) が増えているのを受け、中小企業や飲食店に導入し地元消費の拡大に繋げるという。 ③は佐世保バーガー店の紹介で、「ルート66」 のバーガーはベーコンや卵、ローストビーフ、チーズなど具沢山で低価格。15分程度の配達距離なら宅配もする ―― とPRしている。長崎の卓袱 (しっぽく) 料理は日本 ・ 中華 ・ オランダの粋を集めた 「わ ・ か ・ らん (和 ・ 華 ・ 蘭) 味覚だ」 と駄洒落を言う人がいる。カステラやザボン、駐留米軍が持ち込んだ巨大な佐世保バーガーなど色々な名物が生まれる背景には、それなりに食文化が成就する長い歴史があった。今後も長崎県はGNC (グロス ・ ナショナル ・ クール = 格好いい文化) の象徴としてCN (クール長崎) を世界に売り込み、観光 ・ 文化を地域振興の柱にしなければならない。

日本地域文化遺産に陶器と鎮守府
 文化庁は4月25日、地域の有形 ・ 無形の文化財で構成した 「ストーリー」 を認定する日本遺産に、長崎県が申請した3件のうち、「日本陶器のふるさと肥前 ~ 百花繚乱のやきもの散歩」 と 「鎮守府 横須賀 ・ 呉 ・ 佐世保 ・ 舞鶴」 の2件を認定した。平成28年度の申請は67件(42都府県219市町村)で認定は19件。本県 (長崎 ・ 諫早 ・ 大村市) の 「長崎街道シュガーロード ~ スイーツの旅」 は見送られた。またフランスの巨匠 ル ・ コルビュジエ が設計した東京 ・ 上野の国立西洋美術館が世界文化遺産に登録されることが5月17日に確実になった。地域文化遺産の 「日本陶器のふるさと」 は陶石、燃料 (山)、水 (川) など窯業の条件がそろう自然豊かな九州北西部の肥前で誕生した日本陶器は、全国に流通して暮らしに浸透、海外からも賞賛されている。その技術を受け継ぎ特色あるやきものが生み出される 「肥前」 (長崎県は佐世保、平戸両市と波佐見町) は、歴史と伝統が培った技と美、景観を五感で感じられる陶器のふるさと ―― と言うのがストーリー。「鎮守府」 は砲台や造船施設などが構成文化財。明治期の日本が近代国家として西欧列強と渡り合うために海防力の装備が急務だったため、国家プロジェクトとして天然の良港4つを選び軍港を築いた。静かな農漁村に人と先端技術を集積し、海軍の諸機関とともに水道、鉄道などのインフラを急速に整備、日本の近代化を推進した。百年を超えた今も現役で稼動する施設も多い。躍動した往時の姿を懐かしみ訪れる人々を惹きつけてやまない ―― というのがストーリーだ。

郷土の歴史や文化を外国人に発信
 日本遺産は、保護を目的としたユネスコの世界遺産とは違い、地域振興が狙い。「正宗が育んだ "伊達" な文化」 (宮城県) 「会津の三十三観音めぐり」 (福島県) 「大久保利通 ”最後の夢“ と開拓者の軌跡 郡山 ・ 猪苗代」 (同県) など東日本大震災の被災地からも選ばれた。日本遺産のスケールは世界遺産より小さいが、長崎県は両日本遺産を観光資源として整備、ふるさとの歴史と文化、すなわち CN (クール長崎) を世界に、売り出すチャンスである。それには郷土の歴史や文化財について外国人がわかるように説明することが何よりも肝心だ。東京の駅舎の表示は最近、外国人にも分かるように変更され、日光東照宮 (栃木県) でも宝物館の展示に英語解釈を追加し、外国語の発信に務めている。気懸りなのは世界遺産 「長崎の教会群」 の行方だ。今年度の国内推薦決定を得るには、6月に開催される 「予定の国文化審議会ヒアリング」 までに、国連教育科学文化機関 (ユネスコ) の諮問機関 ・ 国際記念物遺跡会議 (イコモス) の助言に沿った推薦書の見直しを迫られていることだ。助言では世界遺産としての顕著な普遍的価値 (OUV) の記述などは 「概ね適当」 の意見だが、構成資産については、「禁教期との関連性が証明しづらい日野江城跡、田平天主堂の2資産を除いても、顕著な普遍的価値の完全性の説明は可能」 の意見が大勢を占めたという。私は文化庁から進捗状況を聴取するなど、今年度の推薦決定に向けて大いに努力している。

熊本にふるさと納税急増10億円超
 ふるさと納税の功罪については先号のHPで色々取り上げたが、熊本県益城町 ・ 南阿蘇村など熊本地震の被災自治体を支援するふるさと納税による寄付が急増している。5万件近い申し込みがあり、総額で10億円を超えている。被災自治体の事務負担を軽減しようと、「代理受付」 を行う自治体も全国で20を超え、支援の輪が広がっている。被災地では返礼品として、特産の馬刺しや焼酎、メロンなどを送っているが、地震で調達には時間がかかる見通し。だが、寄付者の半数以上が返礼品の辞退を申し出ており、県税務課は感謝している。熊本地震の影響で宿泊予定のキャンセルが相次ぐ中、九州観光推進機構と長崎など九州7県、九州経済連合会などの経済4団体は合同で11日、観光地の復興支援や風評被害の解消など6項目を、菅義偉官房長官に要望した。要望書では、九州全体で8日までに70万件超の宿泊キャンセルが発生したとし、「夏休みに向け迅速かつ集中的な対策が必要」 と強調。熊本城など被災地の観光資源の復興、避難体制整備などを盛り込んだ。菅官房長官は要望書を受けた後、都内で講演し、「政府を挙げて大プロモーション活動を行いたい。被災自治体がプレミアム付き旅行券を発行した場合に政府が財政支援する」 などと表明した。

伝統と文化を尊ぶ自民党新理念 
 自民党政調はこのほど、7月参院選の公約に掲げる 「新理念」 をまとめた。 ①全ての人々の人格の尊厳と基本的人権を尊重する真の自由主義 ・ 民主主義 ②自国の安全は自ら守る気概と使命感を持ち、正義と秩序を基に世界平和を希求し実現 ③貧困 ・ 疾病 ・ 環境などの改善に貢献し、地球規模の共生を目指す ④政治は国民のものとの信念で、都市 ・ 地方の幅広い支持の上に立つ ―― など6項目を挙げたが、私が最も重視するのは、この中の 「わが党は先人たちが築き上げてきた日本の伝統と文化を尊び、これらを大切にし、発展を目指す政党である」 と言う項目だ。まさに伝統と 「格好いい文化 (GNC)」 の維持 ・ 発展と、農漁業のさらなる食文化の開発で、少子高齢化による人口減少や地方過疎化に対処し、雇用の創出、若者の地域定着を図ることが、衆院選挙制度を改革する以上に重要だろうと思う。 (GNC特集 完)