第361回(5月1日)GNP からGNC へ(5) 軍艦島の産業革命遺産も進捗
 世界文化遺産に決まった富士山は登山者だけでなく美保の松原が内外の観光客で賑わい、群馬県の富岡製糸場は全国からの見学者が絶えない。富岡に次いで世界文化遺産に指定された 「明治日本の産業革命遺産」(長崎県など8県11市)は2018年が開始年だが、構成施設である長崎市の端島炭鉱 「軍艦島」 にも大勢の観光客が詰め掛け始めている。同史跡は、世界文化遺産の軍艦島と高島北渓井坑跡に、中ノ島炭坑跡を加えた3地区。長崎新聞によると、長崎市の専門家委員会は3月下旬、軍艦島などからなる同市の国史跡 「高島炭鉱跡」 について、今後概ね30年間の補修、施設整備などの在り方や優先順位を定める、整備活用計画をまとめた。軍艦に見える景観の維持に必要な建物など5棟の倒壊 ・ 劣化防止などに30年かけて優先的に取り組むもの。産業革命遺産の登録認定証伝達式は3月30日に都内であり、石破茂地方総生担当相から田上富久長崎市長ら関係自治体首長に認定証の複製が授与された。伝達式で石破氏は 「喜びも新たに、皆さんと共に保存継承に微力を尽くしたい」 と挨拶。田上市長は 「構成資産の中でも、軍艦島の保存管理は非常に大きなテーマ。市内、県内のほかの (歴史文化) 資産、あるいは構成資産同士の連携もしっかり図っていきたい」と記者団に語った。

護岸遺構や生産施設遺構を補強
軍艦島では世界文化遺産の本質的価値を構成する護岸遺構や生産施設遺構の補強、保存措置を実施。護岸は第1段階 (1~10年目)で補修、第2段階 (11~20年目) で本格的な補強を完了。生産施設遺構が見える見学通路 (約100㍍) は第2段階で島の東側に新設する。生産施設は第3段階 (21~30年目) まで順次取り組む。市の専門家委員会で細部を修正した上、4月中に最終案として市に提出し、近く正式に策定される。4月13日の長崎新聞は、軍艦島の風景を収めた写真展を5月3日からロンドンの大学内ギャラリーで展示すると報じた。田上長崎市長を表敬訪問した写真家のホール真紀子さん (51) は福岡県出身で現在は英国在住。昨年7月に端島出身の男性と軍艦島を歩き、端島小中学校跡などをモノクロ写真で撮影した26作品と、長崎大から借りた島内の建物の模型などを展示するという。ホールさんは 「廃墟のイメージを押し出すのではなく、端島出身者の子供時代の思い出が詰まったタイムカプセルとして撮った。(英国の) 若者がどう感じるか楽しみ」 と話し、田上氏は 「インターネット以外で発信する機会はないのでありがたい」 と感謝した。

新幹線と在来線 「リレー方式」 採用
ユネスコの世界文化遺産への推薦が2月に取り下げられた 「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」 について長崎、熊本両県は3月末、禁教期に焦点を当てた新しい推薦書の素案をまとめた。今夏の文化審議会までに改訂し、国内推薦候補に選ばれた上で2018年登録を目指す。長崎教会群が世界文化遺産に登録される2年後には、三菱重工の長崎造船所で建造中の豪華客船 「アイーダ ・ プリマ」 (12万5千㌧、18階構造) が完成する。国交省は博多と長崎を結ぶ九州新幹線長崎ルートについて、新幹線と在来線特急を乗り継ぐ 「リレー 方式」 を採用して2020年度に開業する方向で長崎 ・ 佐賀県の地元自治体と調整に入っている。長崎ルートは、線路幅が異なる新幹線と在来線の両方を、車両の幅を変えて走れるフリーゲートトレイン (FGT) の採用を前提としてきたが、開発の遅れから22年度開業時のFGTは1~2編成しか実用化できない見通しとなっていた。量産するFGTの実用化は25年度以降にずれ込むため、22年度から当面はリレー方式を採用する方向になったが、この方式の導入には武雄温泉駅で在来線との乗換えをスムーズにする対面式ホームの整備が必要で、数十億円の追加費用が見込まれる。建設費用は国と長崎 ・ 佐賀両県が分担する仕組みとなる。

五島列島はカトリックの新メッカ
 九州新幹線を運行するJR九州も2月24日の自民党検討委員会で 「利便性を考慮して円滑な乗り換えを実現すべきだ」 として事実上リレー方式の導入を認めた。22年まではまだ数年あるので、この間にFGT方式を推進し、我が故郷の良さを十二分に知って頂くとともに、陸 ・ 海 ・ 空路を整備し、世界の巡礼者を満載。長崎、佐世保、五島列島をアジア唯一のカトリック巡礼団の新たな聖地にすることが望ましい。「観光を一大産業にしよう」 (舛添要一知事) と東京都も観光専門家、経営者、音楽、芸能、照明デザイナーなど有識者会議を立ち上げ、「都観光産業振興アクションプログラム (仮称) 」 を来年度に策定するという。都は2020年の東京五輪を見据え、外国観光客をターゲットに船の観光に本腰を入れている。水上バスの運行情報を複数言語で表示するポータルサイトを開設し、羽田空港から五輪会場が集中する臨海部への新たな航路を設け、中央区の築地市場跡地に船着場を設置する。都内には羽田空港やお台場、浅草などを結ぶ13コースの定期航路があり、1日約60便の下町クルーズが人気を集めている。各自治体の外人観光客の争奪戦は一層激しくなりそうだ。 (以下次号)