第360回(4月16日)GNPからGNCへ(4) 訪日客6千万、消費15兆円
 「観光は GDP (国内総生産) 600兆円に向けた成長エンジン。観光先進国への新たな国づくりに万全の対策を講じていく」 ―― 首相は 3月 30日に開いた 「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」 で、2020年に開催の東京五輪で外国人旅行客を 15年の約 2倍となる年間 4,000万人に引き上げ、買い物などの消費額を 2倍超の 8兆円に増やす目標を打ち出した。政府は 20年までに訪日客を年間 2,000万人に増やす目標を掲げていたが、それを倍増、さらに 30年には訪日客 6,000万人、消費額 15兆円とフランス並みの観光大国を目指す。行動計画は先号で一部を紹介したが、全体では ①中国、フィリピン、ベトナム、インド、ロシア 5カ国を 「潜在力の大きい市場」 と位置づけビザ (査証) の発給条件緩和 ②大都市圏に集中する訪日客を地方に誘導するため 20年までに免税店を 2万点に拡大 ③文化財を核とする観光拠点を 200カ所整備 ④ 5カ所の国立公園で自然や温泉を活用した体験ツアーや宿泊施設の充実 ⑤地方空港に格安航空 (LCC) などを誘致し、海外からのネット予約を可能にする ⑥宿泊施設不足が深刻な大都市圏では民泊を普及 ―― などの施策を公表している。  

壱岐 ・ 対馬 ・ 五島観光に力入れる
 米国のブラックフライデー (黒字の金曜日) も前号で取り上げたが、米国の小売業はクリスマスを含む年末商戦で年間売上高の 2割を占め、一定の消費喚起効果があるとされる。日本では欧米のお株を奪って、バレンタインデーのチョコレート贈与が若者の間で素早く定着したが、ブラックフライデーも一気に普及するかもしれない。こうした中、長崎県はGNC (グロス ・ ナショナル ・ クール = 格好いい文化) を先取りして、漁業の生産、開発、加工、販売など地場産業の 6次化に努め、壱岐 ・ 平戸 ・ 九十九島巡り 3日間 ( 4回食事つき約 4万円)、壱岐 ・ 対馬 ・ 五島列島巡り 4日間 (温泉ホテル宿泊 17~20万円) を地元観光業と阪急交通社が共同企画するなどの誘客にも力を入れている。JRも集客には一段と力を注いでいる。2013年 10 月から運行が始まったJR九州の 「ななつ星 in 九州」 ( 7両編成、定員 30人) は最高額 85万円ながら、いまだに抽選倍率 (16年 4 ~ 9月出発分) は 26倍という高い人気だ。

JRは17年春から豪華寝台列車
 これに福岡 ― 長崎間の新幹線が開通すれば、九州周遊の観光ルートはさらに拡大される。 JR東日本と JR西日本はこれにあやかり国内だけでなく外国の富裕層もターゲットに、17年春から豪華寝台列車を運行させる。読売によると、豪華寝台列車には様々な工夫を凝らし数日間かけて観光地を巡る。JR東日本の 「トランスイート 四季島」 ( 10両編成) は上野発着の 1泊 2日 ~ 3泊 4日の 3コースを設定、17ある客室 (定員 34人) は全室スイートルームで最高級の客室にはヒノキ風呂と掘り炬燵も備え、途中下車を楽しみながら日光や函館などを径由し、東北エリアを周遊する。列車の先頭と最後尾にある展望エリアでは大パノラマが楽しめ、日本人初のミシュラン 1つ星に輝いたフランス料理のシェフが料理を監修する。料金は 1人 60万円以上を想定しているという。 3月 26日に開業した北海道新幹線 (東京 ― 新函館北斗) の 「はやぶさ」 ( 731席) 一番列車の指定券は売り出しと同時に完売した。

地方誘客に全国7周遊ルート設置
 「美しい日本をホテルが走る」 がコンセプトの JR西日本の 「トワイライトエクスプレス 瑞風」 ( 10両編成、定員 30人) は、昨年 3月に引退した大阪 ― 札幌間の寝台特急をさらに豪華にし、沿線の食材を盛り込んだ料理が振る舞われる。大阪、京都 ― 下関間の山陽または山陰側を走り、倉敷や世界遺産の厳島神社に立ち寄ったり、瀬戸内海でのクルージングや地引網体験を楽しむなど 5ルートがある。観光庁 (田村明比古長官) も地方への誘客を重視し、全国に 7つの周遊ルートを設けている。羽田空港の米国線を巡る日米航空交渉は 2月 18日、昼間時間帯 (午前 6時 ~ 午後 11時) に 1日 10枠の発着枠を新設することでようやく合意した。10月にも実施する。羽田発着の米国線は深夜 ・ 早朝の 8枠から 6減の 2枠に減らすため計 12枠となり、発着枠は日米各 6枠と分け合う。日本の 6枠は全日空と日航に配分するが、経営破たんした日航が公的支援を受けた経緯を重視し全日空が多く使えるようにする方針。

米国線の10枠新設はドル箱路線
 昼間の米国線を巡っては、成田をアジアの拠点とする米デルタ航空が強く反対していたが、昼間に羽田から中国や欧州線が出来て人気が集まり合意の機運が高まった。米国からの訪日客は 15年に 100万人を超えており、石井啓一国交相は 「首都圏だけでなく国内線への乗り継ぎも含めた日米間のビジネス、観光需要に的確に対応できる」 と、ドル箱路線に期待をかけている。ただ都心部に近いことから、発着時の騒音対策が重要になり、国交省は、航空会社がボーイング787 やエアバスA350 のような騒音の小さい機種を優先的に使うように促す狙いから、2020年の東京五輪までに、騒音の小さい航空機の着陸料を安くする制度を導入する方針を固めた。 (以下次号)