北村の政治活動

 (平成14年7月1日) 有事3法案断念 佐世保市長が問題点指摘


 小泉首相は6月26日、カナダ西部の保養地カナナスキスで開かれたサミット(主要国首脳会議)で日本の経済活性化策を発表、政策協調を訴えた。しかし、米国景気の先行き不透明感からドルが急落、世界同時株安の懸念が強まるなど、サミットは大きな成果が見られなかった。首相がサミットでぶち上げた「骨太の方針−第2弾」の第2次デフレ対策も、自民党との調整が完璧だったとは言えず評判が悪い。堀内光雄総務会長が「これでは不十分。.第3次デフレ対策が必要」と述べているほどだ。42日間の国会延長で7月末まで与野党の攻防が続くが、重要法案で成立したのは道路公団民営化推進委設置法1本だけ。

 青木氏の意向通り延長

 政治部記者は「道路公団民営化委員の人選を首相がごり押ししたため守旧派が怒り、折角衆院を通過した健保法改正案も、郵政4法案も難航が予想される。漂流国会だ」と物騒な卦を立てている。会期延長を決めた6月17日の与党党首会談では、小泉首相が最優先とする健康保険法改正案と郵政関連4法案に加え、有事関連3法案と個人情報保護法案の全重要「4大法案」の成立に全力を上げることを確認した。だが、衆院武力攻撃事態対処特別委が防衛庁の情報公開請求者リスト問題で紛糾したのを受けて、青木幹雄・参院自民党幹事長が「有事法制と個人情報保護法案の成立は極めて困難。.常識的に判断すべきだ」と述べ、両法案の継続審議はやむなしの態度を表明。このため、51日間の延長を主張する小泉首相、福田康夫官房長官、山崎拓幹事長と青木氏らの間で激しい綱引きが演じられた。

 攻撃事態の定義で紛糾

 防衛庁がリスト問題で組織ぐるみの隠蔽体質を見せたり、福田官房長官が非核3原則の見直しを示唆するような発言をしたとあっては、有事法制の審議どころではない。結局、参院の運営を取り仕切る青木氏の意向通り、42日間の延長に落ち着いた。青木氏が7月末の国会閉幕に固執した理由について、マスコミは一斉に「9月にも予定される内閣改造・党役員人事をめぐる主導権争いがあり、青木氏が存在感を誇示した」と報じたが、有事法制は多くの問題を抱えていてすんなり成立できないことも事実だ。特別委は冒頭から「実際に武力攻撃が発生した事態」と武力攻撃が「予測される事態」、「恐れがある事態」など攻撃事態の定義と対応を巡って紛糾、政府の統一見解が出されてようやく審議入りした。

 タイムラグ理解し難い

 同法案では,被災者救済や被害復旧など国民生活に関して定める国民保護法制などについて、有事関連法案が成立、施行後2年以内に整備することになっている。この点については、私も出席した長崎県・佐世保市で開催の同特別委地方公聴会で、光武顕佐世保市長が「関係法制の整備にタイムラグがあるのは理解しがたい」と疑義を唱えた。光武市長が言うように「国民の安全確保策が後回し」になるようでは国民も納得できないだろう。地方公聴会は仙台市や不審船問題が起きそうな鳥取、新潟の日本海側都市でも開かれたが、自民党推薦の片山善博鳥取県知事は「手足を縛られたまま(自治体が)責任だけ背負わされるのは耐え難い。この法制には大きな欠陥がある」と苦言を呈した。光武市長と同じく、法案が自治体の協力を「責務」とする一方、国民保護法制を先送りした点を批判したもの。

 父親の三ツ矢研究に意欲

 首相や山崎幹事長サイドは、統一地方選挙がある来春の次期通常国会での法案審議は難しいと見て、民主党との修正協議を経て、今秋の臨時国会で成立させる新たなシナリオも探り始めているようだ。しかし、マスコミの一部は「首相の父親の故・純也氏が防衛庁長官当時に始めた三ツ矢研究が有事法制のルーツだったことから、父思いの首相は成立に意欲を燃やしているのだろう。.警察や消防など関係省庁の意見も聞かず防衛庁単独でまとめたから、他省庁は法案に冷ややかだ」と解説している。そのせいか、法案は旧ソ連を仮想敵国として北海道への侵攻を阻止する三ツ矢研究の域を出ず、多発テロ、不審船などの来襲に備える法制ではない。東シナ海で沈没した不審船の引き揚げでは携帯式地対空ミサイルまで見つかっている。それらの点を考えれば、有事を多角的に捉え、拙速よりもじっくり法案を練り直し、臨時国会以降に修正案を再提案する方が望ましいと私は考えている。

 6月7日に佐世保市で開かれた衆院武力攻撃事態特別委の地方公聴会で述べた光武顕佐世保市長の発言要旨は次の通り。

 1..国の根幹に関わる有事3法案の成立を望む。基本的には賛成だ。戦後、国の安全確保策をいかにすべきかとの実りある論議が行われたとは言い難い。”羹に懲りて膾を吹く”の悪弊に陥り議論しないで来た。わが国土が直接攻撃される事態は幸いなかったが、政治的、外交的努力にもかかわらず武力侵攻が万一行われる事態に対して、国民の身体、財産を守るための法整備は、いかなる国も常に用意されねばならない。でなければ混乱と無秩序の世界が現出する。往時の超法規的有事の施策を思うと、真におぞましき感情を禁じえない。

 2.初の米原潜,原子力空母の寄港など、戦前戦後を通じて佐世保の町は、今日まで一貫して国の防衛政策の最前線を担ってきた。基地との共存共生という佐世保市制の基本的スタンスは、多くの市民の理解と協力を得て今日に至っている。市民の生命財産を守ることを本来、職務の根幹とする市長として、法案の論議を注視してきたが、全体として不備な点もあり、隔靴掻痒的な説明しかなされていない。まず、武力攻撃事態対処法案の第5条、第7条、それに密接する第8条には、地方公共団体の責務、役割、国民の協力について総論だけが述べられており、具体的事項は、同法第23条で2年以内を目標に関係法を整備することになっている。

 3.法制整備が成就するまでの間に、万が一の事態が発生した場合、今回の法律案と関係法制の整備にタイムラグがあるのは理解し難い。国防の要諦とも言うべき国民の安全確保策が後回し、将来のことと先送りされていることは、残念ながら憂慮の念をぬぐえない。自治体の長として、住民に深く関わる事柄は最優先事項であり、関連法制の整備は喫緊の課題だ。その整備が終了するまで基本法である対処法案の施行は、待つべきであろう。