第359回(4月1日)GNP からGNC へ(3) 観光立国は地方創生に大効果
 「国と地方の双方に有意義となり、地方創生に大きな効果をもたらす」 ―― 観光立国を唱える首相は 3 月 22日の 「まち ・ ひと ・ しごと創生本部」 で文化庁を数年内に京都へ移転させると決めた後、こう胸を張った。30日の 「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」 (議長 ・ 安倍首相) では中国、インド、フィリピン、ベトナム、ロシアの 5 カ国から訪れる観光客にビザ (査証) の発給条件を緩和するなどの規制緩和策や、東京、京都、大阪など大都市圏に集中する訪日客を地方に誘導するため、免税店を 20年までに 2 万店に拡大する方針を打ち出した。プランには東京 ・ 元赤坂の迎賓館などの一般公開のほか、国立公園での自然や温泉を活用した体験ツアー、宿泊施設の充実も盛り込んでいる。各省庁も地方創生の一環として色々な施策を打ち出している。農水省は訪日外人客が果物や野菜のお土産を買い易くし、手ぶらで観光を楽しめることを目指し検疫手続きの簡素化を進めているが、来年度からはクルーズ船で立ち寄る観光客も対象にモデル事業を拡大する方針だ。旅行業者やデパートなどで作る一般社団法人 「ジャパンショッピングツーリズム協会」 (JSTO) が、農水省の委託を受けて昨年 7 ~ 10月に北海道で実施、同 12月から福岡でも始まった。

業者が農産物の検疫手続き代行
 外人客がイチゴ、メロンなど観光農園などで購入する農産物を旅行業者が検疫手続きを代行し農産物は出国直前の空港で受け取れる仕組み。これまで外人客は空港や植物防疫所で 15 ~ 30 分の検疫を受け、証明書を貰う必要があったが、その手間が省け歓迎されている。先号の HP で報じた通り、農水省は環太平洋経済連携協定 (TPP) 参加国を念頭に昨年末、北海道の夕張メロンや兵庫県の 「神戸ビーフ」 「但馬牛」 など農水産物や食品 7 産品を 「地理的表示保護制度 (GI)」 に登録。高い品質の生産技術や地域との深い結びつきの 「お墨付き」 を与え、販売を増加する。同省が発表した 2015年の農林水産物、食品の輸出額は前年比 21.8%増の 7452億円と、 3 年連続で過去最高を更新した。国際的な和食ブームに伴い、アジアを中心に日本産の食材の人気が高いからだ。13年に和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたこともあり、同省は 「ヘルシーで高品質な日本産食材への評価が高まった」 と言う。しかし、和食人気が好調な割には、輸出額は世界に比べ依然として少額だ。

検定教科書に 「おもてなし」 精神
 文部科学省の検定に合格した新高校教科書では、文英堂が 「Omotenashi」 と題して外国人観光客の関心事や 「おもてなし」 の精神などを紹介。家庭では、和食を詳しく説明する教科書が増えた。もちろん、現代社会や政治・経済の教科書には、「集団的自衛権の行使」 や沖縄県 ・ 尖閣諸島と島根県 ・ 竹島が 「わが国固有の領土」、「従軍慰安婦」、「南京殺戮の犠牲者数」 などの問題の解説記事が多く登場したが、2020年開催の東京五輪 ・ パラリンピックに向け、観光客増加に対処し日本文化の理解、発信を促す記事が目立っている。一方、国交省は成田空港と関西国際空港で、訪日外国人を対象に、入国手続きに掛かる時間を短縮する 「ファーストレーン」 を 3 月 28日に設けた。これはロンドンのヒースロー空港など欧米や中国の主な空港で導入されている。日本では成田などで保安検査の優先レーンがあるが、一般の入国審査では設けられていなかった。

成田 ・ 関空に 「ファーストレーン」
 読売によると、ファーストクラスに乗るような富裕層や経営者らも入国審査で優遇されることはなく、アジアからの訪日客などの急増で関空では入国審査に 30分以上待つことも多く、苦情が増えていた。ファーストレーンは成田第 1 、第 2 ターミナルのそれぞれ 4 カ所、関空第 1 ターミナルに 4 カ所設置。成田は 1 便につき 5 人、関空はファースト、ビジネスクラス利用者を対象に航空会社が事前にクーポンを配り、入国審査場では職員がクーポンを確認した上で専用レーンに誘導する。これとは別に、参加者が 3 百人以上の国際会議を主催する国際機関 ・ 団体が空港に申請すれば、参加者にクーポンが配られる。経団連 (榊原定征会長) は 3 月 10日、国内外の観光客が増える春節や秋の行楽期に、デパートやスーパーなどで一斉セールを行う考えを示した。これは米国で 「ブラックフライデー (黒字の金曜)」 と呼ばれ、毎年 11月の感謝祭翌日に多くの小売店で一斉セールを行っているのに着目したもの。英国や中国でも似たような取り組みが始まっており、消費喚起に繋がっている。榊原会長は同 10日、石原伸晃経済再生相と会談し、「米国では国を挙げて大セールをして消費が非常に盛り上がっている。日本でもそういうことをやろう」 と呼びかけた。
(以下次号)