第350回(11月16日) 切れ目ない安保法制(27)                                      5月交代から任務追加 日米 「同盟調整メカニズム」 設置
 安全保障関連法は 10月 30日に公付され、来年 3月末までに施行される。政府は防衛省内の 「安全保障法制整備委員会」 (委員長 : 中谷元 防衛相)で、集団的自衛権を行使して海外で武力行使をする際や、国連平和維持活動 (PKO) での武器使用基準の緩和など新たに加わる自衛隊の活動拡大に対応できるよう、隊員の任務遂行の基準的なルールである部隊行動基準 (ROE) の見直しを始めた。南スーダンでの国連 PKO活動に派遣している自衛隊 350人の任務に、離れた場所にいる文民要員を警護する、「駆け付け警護」 を追加する方針で、早ければ来年 5月の交代要員で派遣される陸自北部方面隊 (札幌) から任務追加を検討している。また、日米両政府は 3日、4月に再改定した日米防衛協力指針 (ガイドライン) に明記された常設の協議機関となる 「同盟調整メカニズム」 を設置し、運用を開始した。このように政府は新法制の下で着々と防衛体制を整備している。今回はそれを紹介しよう。

武器携行の駆け付け警護は危険大
 アフリカのスーダンから南部 10州が分離し 2011年 7月に建国された南スーダンは、人口 1130万人で原油の確認埋蔵量は 35億バレルに達し、アフリカで 6番目の豊富さ。平和の定着と発展のため国連南スーダン派遣団 (UNMISS) が設立され、日本は 11年から施設部隊等を順次派遣。首都ジュバの国連施設内で、防壁工事や道路補修、避難民への医療活動などに当たっている。しかし、都市と農村の生活格差や汚職、インフレに不満を持つ反政府勢力が現政権と対立し、13年に事実上の内戦に陥り数万人が死亡、約 200万人が難民となり、他国の PKO 隊員が殺害されるなど、首都も含め極めて危険な状態だ。中谷 防衛相は 「施行に向け、具体的な検討、準備をしていく」 と強調し ①安全に配慮した周到な準備 ②情報収集 ③関係部署との調整 ―― の 3点を指示した。日本はこれまで給水や医療、職業訓練など国づくりに貢献し現地で信頼されてきたが、正当防衛以外の武器使用を禁じられてきた自衛隊が、今後、危険な状態に置かれた民間人や他国軍を武器携行して 「駆け付けつけ警護」 に当たれば、逆に地域住民の恨みを買いかねず、リスクは増大しそうだ。

離島の水陸機動団は 3千人規模
 防衛省は尖閣諸島への領海侵入を繰り返す中国への抑止力を強めるため、武装漁民の上陸 ・ 占拠など、日本の主権が脅かされかねない 「グレーゾーン事態」 へ対処するため、17年度末までに離島への上陸 ・ 奪還作戦を展開する陸自の 「水陸機動団」 を発足させる。日米の陸上部隊の運用を統括する共同の司令部を在日米陸軍司令部があるキャンプ座間 (神奈川県) に設置、数十人規模の陸自隊員を常駐させ、日米陸上部隊の一体運用を行う。離島防衛の任務は現在、約 700人の西部方面普通科連隊(長崎県佐世保市)が担っているが、水陸機動団は同連隊を母体とし、発足時点で 2千人弱、将来は 3千人規模に増やす考え。水陸機動団の隊員育成を担う 「水陸機動教育隊」 (仮称) を 16年度末に設け、約 90人規模で、ゴムボートやヘリコプターで離島に上陸し、制圧訓練を行う。18年度までに計 52両を調達する水陸両用車の操作技術なども訓練し、離島防衛の専門家を育てる方針だ。

同盟調整メカニズムは 3つ設定
 4日の拡大東南ア諸国連合 (ASEAN) の国防相会議に出席のためマレーシアを訪問した中谷防衛相は 3日、クアランプール近郊のホテルでカーター米国防長官と会談、中国が実効支配を強める南シナ海を念頭に、沿岸国フィリピンとの 3カ国の防衛協力を強化する考えで一致するとともに、両者は 「同盟調整メカニズムは新ガイドラインの実効性確保に重要な第1歩」 と評価し、新機関の運用開始で合意した。新機関は自衛隊と米軍を平時から一体運用するため安全保障、外交部門など中枢で構成する日米の局長級による 「同盟調整グループ」 、自衛隊と米軍の幹部同士の 「共同運用調整所」 、陸海空の各部隊、各軍レベルの 「調整所」 ―― の 3つを設ける。旧ガイドラインの協議対象は、日本への武力攻撃や周辺事態の発生時に限定していたが、今年 4月の再改定を受け、協議対象は有事だけでなく平時にも広がり、地域も地球規模に拡大する。仮に 「日米が同盟として対処する必要がある」 とされれば、中国が実効支配しようとする南シナ海や過激派組織 「イスラム国」 (IS) が勢力を拡大する中東などでも、自衛隊の運用が求められる可能性が強まってきた。 (以下次号)