北村の政治活動

 (平成14年6月16日) 平成の税制改革 シャウプ以来の抜本改正


 小泉首相は6月7日の経済財政諮問会議(議長・小泉首相)と臨時閣僚懇談会の席上、税制、地方行財政、社会保障制度、歳出、経済活性化戦略の5分野に関する経済運営の改革方針を指示した。さらに、同13日の諮問会議では、政策減税や構造改革特区、金融システム強化策の3分野について早期に実現するよう関係閣僚に指示した。諮問会議は税制、経済活性化戦略、歳出改革、来年度予算編成方針を一体化した骨太第2弾を21日にまとめ、主要先進国会議(カナナスキス・サミット)出発前の25日に閣議決定する。税制改革では、地方への税源移譲、企業活動活性化のため法人課税の実行税率引き下げ、赤字法人へも課税する外形標準課税の導入、「広い負担」を前提に、所得税の配偶者特別控除など各種控除を縮小・簡素化――を柱に方向が示された。このため、自民党内では大きな議論を呼んでいる。党の地方自治関係団体副委員長として、私の活動分野も広がってきた。

 地方の行財政改革も

 首相は外形標準課税の導入などを税制改革の目玉にしたが、地方行財政改革では、地方交付税の大幅縮小、補助金の削減・税源移譲を軸に、06年度までに実現する方針。政府税制調査会(首相の諮問機関)の石弘光会長に対しては、配偶者特別控除などの簡素・集約化、法人課税の実行税率引き下げなどのほか、@研究開発減税・投資減税A消費税の免税点制度の見直しB相続税最高税率の引き下げと生前譲与の円滑化――などについて03年度改正へ向け方針の策定を指示している。3月以降の経済財政諮問会議では、経済活力重視の奥田碩日本経団連会長ら民間議員と財政再建貫徹の塩川正十郎財務相らの間で主導権争いが目立っていたが、首相の指示でようやく、税制改革は動き出したといえるだろう。

 広く、薄く、簡素

 諮問会議の民間議員4人が5月21日にまとめた「平成の税制改革」は、改革の理念に@シャウプ勧告以来の包括的、抜本的な改革A広く、薄く、簡素な税制Bグローバル化の中で日本経済の競争力強化に向けた大胆な改革C全ての人が参画し負担し合う公正な社会を作るD国・地方の歳出をさらに徹底的に見直し、税負担に報いる小さな政府を実現――の5項目を掲げ、経済の活力を最重視し、財政収支を中期的に改善、地方行財政制度の改革と一体となって行うことを改革の視点に挙げた。改革の進め方は、(イ)開始年度を原則03年度とし、「改革と展望」の期間内の06年度に完了(ロ)財源は原則として国債に依存しない(ハ)10年度を目途にプライマリーバランスを回復する――と謳っている。

 研究開発投資にも減税

 具体的には@“広く薄く簡素”の観点から、所得税・住民税・法人税の課税負担構造を本格的に見直し、法 人課税は雇用機会の創出に繋げるA研究開発投資やIT(情報技術)投資を促進B金融資産課税の簡素・一元化C有効活用を促す土地税制D配偶者控除等の人的控除を整理E相続と生前贈与の選択に歪みを与えない税制F寄付やNPO(非営利組織)法人、公益法人の税制見直しG公的年金など社会保障制度の抜本的見直しH地方歳出の徹底した見直し、地方への補助金を大胆に整理I地方交付税制度を根本から検討し、地方税を充実Jサラリーマンの申告を拡大K消費税の益税を解消しインボイス(税額記載伝票)方式導入――など、まさにシャウプ勧告以来の抜本的な改革を挙げている。

 5兆5千億円移譲

 この具体策に呼応して、片山総務相は同日の諮問会議で、国税と地方税の比率を、現行の「6対4」から「1対1」に改めるよう求めた。国税の所得税から3兆円余を地方税の個人住民税に移す一方、消費税率5%のうち、都道府県が課税している地方消費税を現行の1%から2%に拡大することで約2兆5千億円、計5兆5千億円分を国から地方へ移譲する案だ。ただ、地方に税源を移譲すると、その分、地方交付税が減額されるため、前段階として、原資には各省ひも付きの補助金(国庫支出金)から同額を削減して賄う考え。来年度予算編成の前哨戦でパンチを繰り出した形だが、財務省との激しい綱引きになろう。

 民間と政府税調の対立

 もともと経済財政諮問会議の中では、経済活力派の奥田経団連会長(トヨタ自動車会長)、本間正明阪大教授ら民間議員4人に平沼赳夫産業経済相、これに対して財政再建派の塩川財務相、片山総務相、石弘光政府税調会長らが反発を続けてきた。民間議員の念頭には、80年代に所得税の最高税率引き下げや投資減税などを先行し経済活性化に成功したレーガン米大統領、サッチャー英首相の税制改革がある。自民党内にも景気対策として減税先行を支持する声が強い。これに対し、財政悪化を懸念する財務省や減税のつまみ食いを恐れる政府税調は、減税と将来の増税策をセットとする“公平・中立・簡素”の税制を主張してきた。この主張に沿って、財界が要望する法人課税の実行税率引き下げは、外形標準課税の導入を同時にセットすることにした。所得税も、税率引き下げと併せて配偶者特別、特定扶養、給与所得など各種控除制度の廃止・縮小など、実質増税も含め検討している。

 外形標準課税は悲願

 都道府県税である法人事業税を企業の収益に影響されない外形標準課税に切り替えれば、従業員規模などで課税額が決まるため、地方自治体の税収は安定する。同税の導入はバブル崩壊で地方の財政危機が深刻化して以来、総務省(旧自治省)の悲願とされてきた。しかし、財務体質の弱い中小企業には大打撃を与える。「赤字の中小企業に税金がかかり、儲かっているトヨタ自動車の税額が減るのはおかしい」と党税調のベテランはいう。首相の“優勝劣敗”の改革志向を批判しているわけだ。与党内には景気対策として住宅取得資金の譲与税非課税枠を550万円から2000万円に拡大するなど、第2次デフレ対策を早急にまとめ、今年度内に実施すべきだとの声が高まっている。

 地方の負担増チェック

 こうした要望に対し、小泉首相は「財源なくして減税なし」「財源は原則として国債に依存しない」と財務省の“税制中立”の立場を取り、13日の政策懇談会でも、@企業の研究開発減税と投資減税、A贈与・相続税の軽減措置―の項目は、03年の通常国会で法改正し、1月にさかのぼって実施するが、ほかの“年度内減税”には難色を示している。細川政権当時の「国民福祉税」構想の失敗がクスリになっているからだろう。いずれにしても地方分権の時代に、首相が国の関与縮小と地方権限の拡大を目指し、地方への税源移譲の道筋をつけた意義は大きい。税源移譲の改革案は1年以内に策定するというが、私は地方交付税や国の補助金の削減が地方の負担増にならないよう、厳しく立案過程をチェックしていきたいと考えている。