第348号(10月16日)切れ目ない安保法制(25) 経済再生策と一体
 安全保障関連法が成立後、首相は 9月末の国連総会で国連平和維持活動 (PKO) に積極的参加を表明、10月 1日には防衛装備庁が発足するなど防衛体制の変革が着々と進行している。 政府は南スーダンの PKOに派遣している陸上自衛隊の武器使用基準を緩和し、来年 5月の部隊交代に合わせて任務に 「駆けつけ警護」 を追加する方針だ。 首相は 4月の訪米時にも 「私の外交 ・ 安保政策はアベノミクスと表裏一体」 と表明。 「経済を成長させGDPを増やす。それは財政基盤を強くし防衛費を増やすこともできる。 強い経済は安保政策の立て直しに不可欠だ」 と講演。昨年 4月の閣議決定した防衛装備移転 3原則で武器輸出を事実上解禁した。 野党は安保法制審議で、改正 PKO法や他国軍の後方支援などは他国の戦争に巻き込まれ自衛隊員の安全確保上問題があり、 専守防衛を定めた憲法に違反すると激しく反発、与党と憲法9条の 「神学論争」 を展開した。今回は PKOと後方支援を取り上げる。

PKOへの貢献拡大と訪米で講演
 首相は 9月 28日、ニューヨークの国連本部で開かれた PKOに関するハイレベル会合にオバマ米大統領とともに出席し、「新たな法制で、多様化する業務に対応できるよう (自衛隊の) 従事可能な業務が広がった。 PKOへの貢献を拡大していく」 と強調。インフラ整備に加え、現地司令部や国連本部への要員派遣、航空輸送支援を例示した。米国は会合前に貢献への強化策を各国に求めていたが、参加国から合計で約 4万人の新規要員派遣、ヘリコプター約 40機、15の工兵部隊の提供などが表明された。安保法制の成立により憲法で禁じられた 「他国の武力行使との一体化」の要件が緩和されたのに加え改正 PKO法は派遣自衛隊員の武器使用基準を見直し、武装勢力に襲われた遠方の非政府組織 (NGO) などを救助する 「駆けつけ警護」 や 「安全確保業務」 の任務が可能になり自衛隊が果たす国際貢献はさらに高まった。新法の下でも派遣先の国の同意や停戦合意など 「PKO参加の 5原則」 は守るとしている。 首相は自衛隊が持つ質の高い技術を伝えるため PKO教官を育成する訓練を東京で初めて国連と共催すると説明、PKOを通じた平和構築を主導する考えも示した。

重要事態で他国軍など後方支援
 後方支援も大きく変わった。 朝鮮半島、台湾海峡など日本周辺の有事で戦闘中の米軍を後方支援する 「周辺事態法」 は地理的制約を撤廃した上、米軍以外の他国軍も支援できる 「重要影響事態法」 に改正された。政府が存立危機事態に該当する新 3要件に基づき 「日本に重要な影響がある」 と判断すれば地球上の何処でも戦闘中の他国軍を支援でき、中国が一方的に岩礁埋め立てを進める南シナ海で武力紛争が起きた場合でも、支援することが出来るようになった。 この法とは別に 「国際社会の平和と安定」 のために戦闘中の他国軍を支援する新法が 「国際平和支援法」 だ。これまでは特別支援法をその都度制定しインド洋での海上自衛隊による給油活動などを行ってきたが、新法制定で他国軍への後方支援が随時可能になった。 自衛隊派遣には例外なく国会の事前承認が必要だが、重要影響事態法は 「緊急の必要がある」 場合は事後承認が可能だ。両法に共通するのが後方支援の活動地域と支援内容の拡大。従来は活動地域について、あらかじめ 「非戦闘地域を指定して自衛隊を派遣」 してきたが、今後は 「現に戦闘行為が行われている現場」 以外であれば活動が可能になった。両法は弾薬の提供や戦闘準備中の軍艦、戦闘機などへの洋上、空中の給油も可能になる。

国会の歯止め骨抜きになると野党
 弾薬について政府は 「火薬類を使用した消耗品」 と説明したが、野党は 「その定義に当てはめれば、ミサイル、核兵器、劣化ウラン弾、クラスター爆弾も弾薬に含まれる」 と追及。中谷元防衛相は 「ミサイルの提供などは想定していない」 と答えたが、提供の可否を示す分類は同法にない。野党は 「攻撃と兵站機能は一体だ。他国軍支援を広げる自衛隊は憲法違反の 『他国軍の武力行使と一体』 で敵国の格好の標的になる」 と反対した。また、新法はこれまで自分や周囲にいる人が襲われた時しか使えなかった 「自己保存」 (正当防衛) の武器使用基準が 「任務遂行」 のためにも使えるよう緩和された。 これも野党は後方支援の活動地域と支援メニューの拡大で自衛隊が攻撃されるリスクが格段に高まると批判。 緊急事態の事後承認について 「国会の事前チェックが機能しなくなり、歯止めが骨抜きになる」 と反対した。 それはともかく、防衛省の防衛装備庁〈渡辺秀明長官〉が 10月 1日に発足した。

防衛装備品の海外移転は国家戦略
 同庁は武器の輸出や他国との共同開発などを一元的に担う同省の外局。 政府は武器輸出の促進が、防衛産業の基盤強化や経済成長に役立つと説明、財界は歓迎している。政府は昨年 4月に武器輸出を原則禁じていた武器輸出 3原則を撤廃、防衛装備移転 3原則を閣議決定し、武器輸出解禁に踏み切った。 それ以降、米国以外でも豪州の次期潜水艦の共同開発の受注競争に参加。 英、仏両国とも武器の共同開発などを推進する方針で合意している。 同庁はハイテク化する防衛装備品の取得や開発に関する機能を統合し、1,800人体制で始動、5兆円近い防衛予算の約 3分の 1の事業を担う。 武器の開発段階からの技術協力が進めば、自衛隊は集団的自衛権の行使や他国軍への弾薬提供などの後方支援を行う際の技術的な障壁を低くすることが出来る。 経団連も 「防衛装備品の海外移転を国家戦略として進めるべきだ」 と要望してきた。 防衛はそれこそ 「切れ目ない安全保障」 であるため、私が衆院安保委員長就任から始めたこの 25回シリーズは、安保関連法の成立でひとまず完了し、今後は随時単発で報告することにしたい。 (完)