北村の政治活動

 (平成14年6月1日) 郵政4法案の審議開始 高飛車な首相に反発


小泉首相が「構造改革の本丸」と位置づける、郵政関連法案の審議が5月21日から始まった。自民党の郵政事業懇話会会長で、郵政族に大きな影響力を持つ野中広務元幹事長が今国会での成立に理解を示したのもつかの間、首相が衆院本会議で「法案は郵政3事業民営化の一里塚」と強調したため、自民党は再び硬化、今国会での成立は不透明になってきた。首相は重要法案の会期内成立を目指し「妥協はしない」と不退転の決意を表明、衆院解散をちらつかせながら、“抵抗勢力”を“協力勢力”に導いてみせると豪語してきた。

 大勢は会期延長反対

 衆院有事法制特別委員会でも、有事関連法案の公聴会日程を野党欠席のまま議決させる強気の姿勢を見せたが、野党が全ての審議を拒否する戦術に出、重要法案の審議は軒並み遅れた。党執行部は50日間程度、国会会期を延長して郵政、健保、有事、個人情報保護の「4大法案」に加え、政治倫理関連法案や「5増5減」の公選法改正案も処理したい考え。だが、「衆院を解散するならOK」と条件付き賛成の民主党を除いて野党は延長に反対。与党内でも反対意見が強い。自民党では「不祥事続きの国会は仕切り直して人事を刷新、臨時国会で懸案を処理すべきだ」との意見が大勢を占めている。景気はようやく“底入れ宣言”で株価も回復しつつあるが、仮に首相が解散権を行使しようとしても「構造改革が足踏み状態では、総選挙で参院選のような大勝は期待できない」との見方がもっぱらだ。

 終盤国会で一波乱

 首相は小泉改革のシンボルである郵政改革の道筋を付けようと懸命だが、郵政関連法案は自民党の了承抜きで政府が提出したいきさつがある。当然、党側の修正要求も強まり、終盤国会では一波乱ありそうだ。私も若い時から故・白浜仁吉郵政相に師事し、全国津々浦々の郵便局の役割を高く評価してきた。郵政には重大な関心を持っている。党内論議には積極的に参加し、法案の成否を見守っていきたい。前号で紹介した通り、全国特定郵便局長会(全特)の支援を受ける党総務部会は「民間はユニバーサルサービス(全国集配、均一料金)が出来ず、クリームスキミング(いいとこ取り)になる。公社もリストラ必至で地域格差が拡大する」と反発、閣議前の党手続きである法案の事前承認を拒否していた。

 野中氏が柔軟路線

 ところが郵政族のドン、野中元幹事長は5月18日、金沢市で開かれた全特の総会懇親会で挨拶し、「来年4月に日本郵政公社が円滑にスタートすることを考えれば、この国会で郵政関連4法案を成立させておかなければならない」と明言、一時は今国会成立の流れが急速に高まった。この背景には、「法案に反対すれば首相は伝家の宝刀(解散権)を抜きかねない。解散だと1、2回生を多く抱える橋本派は苦労する。それより協力して国会終了後の内閣改造・党役員人事で最大派閥の処遇改善を図った方が得策」との読みがあったし、「民間で最有力候補のヤマト運輸が参入見送りを発表した以上、信書便法案を通しても民間参入の実害はないとの判断が働いた」とマスコミは解説する。首相協力への柔軟路線に踏み切った野中氏は、党総務部会の荒井広幸部会長ら反対強固派を熱心に説得したという。

 法案は民営化の一里塚

 そうした野中氏の苦労を知ってか知らずか小泉首相は得意満面。21日の衆院本会議で「郵政4法案は郵政3事業民営化の一里塚。さらには特殊法人、財政投融資制度を含めた抜本的な改革につなげていきたい。民間が必ず参入できるよう片山総務相に指示してある」とブチ上げた。こうした高飛車な首相に野中氏が激怒、「折角まとめようと努力しても(首相が)自分で壊すなら責任を持てない。もう汗はかきたくない。物事は独裁者(1人)が決められるものではない」とカンカン。早速、麻生太郎政調会長と会談し@郵政公社の国庫納付規定A信書の定義B郵政公社の出資規定――の3点について、修正要求することで一致した。法案修正に応じない場合は、当初の作戦に立ち返り、与党質問を繰り出すなど慎重審議に時間を掛け、健保法改正案と並んで継続審議に持ち込むことも考えている。

 総務相の許可制度

 前号でも概要には触れたが、郵政関連法案は、信書便法案、日本郵政公社法案、信書便法施行整備法案、日本郵政公社法施行法案の4法案。国民生活に密着な法案なので、国会に提案された郵政関連法案の骨子を点検してみよう。信書便法案は、信書送達事業を総務相の許可制度として「一般」と「特定」の2種類に分け、許可事業者は信書送達を禁止する郵便法の適用を除外し、信書の検閲禁止と秘密保護の遵守――を大原則としている。この下に許可基準を設け、一般信書便事業(全国サービス)は、@長さ40センチ以下、幅30センチ以下、厚さ3センチ以下かつ重量250グラム以下の信書便物を原則3日以内に送達A省令で定める基準に適合する信書便差し出し箱(ポスト)の設置、その他の随時かつ簡易に差し出せる引き受け方法の確保B週6日以上の配達日C料金は全国均一D重量25グラム以下の料金は80円以下――としている。

 独立採算性の3事業

 特定信書便事業は、@長さ、幅、厚さの合計が90センチ超、または重量が4キログラム超の信書便物を送達A3時間以内に送達B料金が千円超――のいずれかに該当する、と決めてある。もう1つの日本郵政公社法案は、@独立採算性で郵便、郵貯、簡保の業務を実施A総裁、副総裁2人、理事16人以内で組織する理事会が経営決定機関B総裁、業務監査の監事(3人)は総務相が任命。副総裁(総務相の認可後)と理事は総裁が任命。理事のうち3人以上、監事のうち1人以上は外部から登用C任期は総裁、副総裁が4年、理事、監事が2年D政令で定める額を国に納付。政令は公社経営の状況、その他の事情を勘案して定めるE総務相は公社に立入検査ができ、その権限の一部を首相(実質的には金融庁長官)に委任できるF公社に司法警察員の職務を行う郵政監察官を置く――が主な内容。

 3点で修正要求

 両法は03年4月1日の施行。このほか、日本郵政公社法施行法案と信書便法施行整備法案も提案された。このように法案を見る限り、ユニバーサルサービス(全国集配、均一料金)の方針は貫かれている。民間企業の関心高いポスト設置基準、許可を得ないと扱えない「信書」の定義などは、同法成立後に総務省が定める省令や指針(ガイドライン)に盛り込むよう結論を先送りした。自民党の修正要求ではまず第一に、クレジットカードやダイレクトメールなどは法案に明記して信書の定義を明確にし、民間の業務拡大を阻止する考えだ。第二は、民間開放の見返りとして、郵政公社の経営の自由度を高め、子会社設立や民間への出資が出来るようにすること。第三は公社の負担を軽減するため、法人税や預金保険料に相当する国庫納付金の支払いを完全に免除するなどだ。これには財務省が難色を示すなど法案の修正は容易ではない。このように国会での攻防は激しく、決着には時間が掛かりそうだ。