第339回(5月29日)切れ目ない安保法制 ⑯地球規模の後方支援に反発
 武力攻撃に至らない グレーゾーン 事態から集団自衛権行使まで切れ目ない対応を可能にする安全保障関連 11 法案は、 他国軍を後方支援する 「恒久法案」 と 自衛隊法改正など 10 改正案を 1 本に束ねた 「一括法案」 の 2 本立てで、 5 月 19 日に設置された衆院の 「我が国及び国際社会の平和安全法制特別委」 ( 45 委員 ・ 委員長 = 浜田靖一 元防衛相) に付託された。日米両政府は 4 月下旬、 日米防衛協力のための指針 (ガイドライン)の再改定に合意したが、 安保関連法制はこれと整合性を保ち、 再改定を具体化する内容。 新ガイドラインには専守防衛に徹してきた自衛隊が他国を武力で守る集団的自衛権を行使したり、 首相が 「アジア太平洋 や インド洋 にかけての地域」 を念頭に置く、 地球規模での自衛隊と米軍が軍事協力出来る規定が入っている。 審議入りは野党の反発で 5 日遅れ、 同 2 6日の衆院本会議で趣旨説明と首相に対する質疑が行われた後、 特別委での攻防に移った。 特別委は江渡聡徳前防衛相が野党折衝に当たる自民筆頭理事に、 野党も年金記録問題で鳴らした 長妻昭 氏や辻本清美 ・ 長島昭久 両氏 (以上民主)、 志位和夫 共産党委員長 ら安保の ベテラン が就任した。

平和憲法揺らぐ不安 ・ リスク質す
 安保論戦は自民党の谷垣禎一幹事長が 「キックオフ」 と言ったように同 20 日の党首討論が前哨戦になった。 先ず民主党の岡田克也代表は 「平和憲法が揺らぐという不安が国民にはある」 と指摘、 戦後日本の平和が維持されたのは 「日米同盟の抑止力と憲法 9 条であり、 自衛隊の活動範囲が広がれば、 リスクは高まる」 とし、 後方支援により自衛隊が他国領で集団的自衛権を行使する可能性や米国の戦争に巻き込まれる危険性を質した。 維新の党の松野頼久代表は、 国際平和維持活動 (PKO) 協力法の審議が 3 国会に跨った経緯に言及し、十分な審議時間の確保を要求。 志位共産党委員長は ポツダム 宣言を引き合いに首相の歴史認識を正した。 首相は  「自衛隊の実力行使は必要最小限度に留まる」 とした武力行使の3 原則を説明、 「一般に海外派兵は認められない。 外国の領土に上陸して戦闘行為をすることはないし、 大規模な空爆を (他国と) 共に行うことはない」 と強調。 ただし、他国領海での機雷除去は新 3 要件に合致すれば例外的に可能とした。 実態はどうか。 点検してみよう。

恒久法案と 10 改正束ね一括法案
 関連 11 法案は新しい恒久法として外国軍隊支援のため自衛隊の随時派遣を可能にする国際平和支援法案を新設するほか ①自衛隊が在外邦人救出や米艦 ・ 多国軍の武器などを防御する自衛隊法 ②国連以外の人道復興支援に自衛隊を派遣する PKO 協力法 ③日本周辺以外の 「重要影響事態」 で米軍などを後方支援する重要影響事態法 (周辺事態法の名称変更) ④大量破壊兵器運搬船などを検査対象に追加の船舶検査活動法 ⑤集団的自衛権の行使を認める新 3 要件を明文化した武力攻撃事態法 ⑥存立危機事態で外国軍の行動が円滑に実施されるための措置を盛り込んだ米軍行動関連措置法 ⑦外国軍が自衛隊と協力し武力攻撃を排するのに必要な措置を追加する特定公共施設利用法 ⑧存立危機事態など新事態で必要な規定を整備する海上輸送規正法 ⑨捕虜取扱法 ⑩存立危機事態 など新事態を審議事項に追加する NSC 設置法 ―― の10 本の改正案を 1 本の 「平和安全法制整備法案」 に束ねた一括法案だ。

燃料 ・ 弾薬支援は新 3 要件が前提
 恒久法の 「国際平和支援法案」 は、 活動の内容や期限をあらかじめ定めた従来の特別措置法と違って素早く自衛隊を紛争地に派遣、 他国軍への燃料や弾薬の提供などの後方支援を随時可能とするもの。 国際社会の平和と安全を脅かし、 日本が協力する必要がある事態を 「国際平和共同対処事態」 と定義し、 国連総会か国連安保理事会の決議を要件とするが、 自衛隊は 「戦闘が行われている現場」 以外で活動できるようになり、 他国軍の武力行使との 「一体化」 を避けるため非戦闘地域に限っていた従来の派遣よりも、 戦闘の最前線に近づく。 一括法の 「平和安全法制整備法案」 のうち自衛隊法改正案は、 昨年 7 月の閣議決定を踏まえ、 戦時中の機雷掃海などで集団的自衛権を行使する事態を 「存立危機事態」 と定義。 弾道ミサイルの発射警戒など 「日本の防衛に資する活動」 に従事する他国軍が急な攻撃を受けた場合、 自衛隊が防護するのを可能にした。 昨年 7 月の閣議決定は、 「自衛隊武力行使の新 3 要件」 として、 日本と密接な関係にある他国が武力攻撃され ①わが国の存立が脅かされ、 国民の生命、 自由及び幸福追求の権利が根底から脅かされる明白な危険がある事態 (存立危機事態) ②国民を守るために (外交努力など) 他に適当な手段がない ③武力の行使は事態に応じ合理的に必要と判断される (最小) 限度 ―― の 3 点を前提条件とした。

法案に他国の領土 ・ 領海明示迫る
 首相は党首討論で 「戦闘行為を目的として海外の (他国の ) 領土や領海に入っていくことは許されない」 と明言したが、 日本への石油供給ルートである中東 ・ ホルムズ 海峡が機雷で封鎖されれば、 「経済的にパニックが起きる」 と述べた。 首相はこの問題で 「機雷掃海は受動的かつ限定的、 危険物を除去する行為だが、 国際法上、武 力行使になる」 と 一般論を説明しながらも、 「必要最小限」 との 3 要件に合致すれば 「例外」 として自衛隊が機雷掃海の行使に出る可能性があることを示唆した。 この発言はこれまでにも繰り返し述べてきたが、 公明党は石油備蓄が半年間もあることを理由に経済混乱を否定、 紛争中の機雷掃海には反対だ。 代表質問や特別委には各党代表が質問に立ち、 岡田民主党代表は新3要件が政権の判断次第で、 戦争中の他国軍への自衛隊の後方支援が地球規模に拡大される点を懸念し、 「他国の領土、 領海、 領空では、やらないとはっきり法律に書くべきだ」 と迫った。

地球規模派遣で自衛隊リスク拡大 
  重要影響事態法案は、朝鮮半島有事を想定して作った周辺事態法から 「日本周辺」 という事実上の地理的制約をなくして名称を変更、 地球規模で自衛隊を派遣することが出来、 支援対象を豪州など米国以外の国にも広げることにした。 野党は衆院の代表質問や特別委質疑で、①国会論議を経ないままの、 解釈改憲による集団自衛権の行使は立憲主義に反する ②「存立危機事態」と 「重要影響事態」 の違いが判らない ③自衛隊の安全ばかりか、 国民の リスク も拡大する   ④時の政府が恣意的に法の運用をしかねない ―― などを激しく追及している。 各紙の論調は朝日が 「平和国家の根本的な変質」 、毎日が 「問題点の徹底議論を」 と批判的。読売が 「重要な前進」 、産経が 「法制整備は不可欠」 と評価。 地方紙は賛否両論だが批判論調が目立つ。 複雑な内容で集団的自衛権行使に関わる、 武力攻撃事態法、 自衛隊法の改正案などの詳細は次回で取り上げたい。 (以下次号)